INAX、太陽光パネルの発電効率を向上する新素材
「保水セラミックス」の実証研究を開始

INAXが開発した新素材「保水セラミックス」。高い保水性能と蒸発性能、耐候性を備えている

 INAXは、太陽光パネルの発電効率を向上する新素材「保水セラミックス」の実証研究を、3月25日から愛知県の大同大学と共同で開始したと発表した。

 保水セラミックスとは、保水率60%以上という高い保水性能を備えた多孔質(内部に微細な孔が空いた)セラミックス。水が狭く細いところに入ろうとする「毛細管現象」による高い蒸発性能や耐候性も備えている。この保水セラミックスに蓄えた水分を使って、太陽光発電の温度上昇を抑えることで、発電効率を高めることができるという。

 太陽光パネルは表面温度が上昇すると、発電効率が低下するという性質がある。同社によれば、夏季にパネル表面が50~60℃になると、定格発電量よりも10%以上低下する可能性があるという。しかし、これまでにINAXと大同大学が行なった実験では、太陽光パネルの裏側に保水セラミックスを設置し、間隔を置いて散水する「間歇(かんけつ)水冷」をすることで、水の気化熱により、約50℃のパネルを約10℃低下することができたという。

保水セラミックスを利用した、太陽光発電効率向上システム。パネル裏面に保水セラミックスを設置している保水セラミックスの有無による、太陽電池モジュールの表面温度の差

 25日から実施された実証研究の目的は、保水セラミックスの最適形状や、設計や施工方法の改善による最も効率的なシステムを把握すること。散水方法や保水セラミックスの形状などを変えた6種類の試験条件で、出力2.5kWの太陽光パネルの出力データを収集する。2012年2月に中間報告、2013年3月に最終成果が報告される。

 INAXでは、保水セラミックスを用いて、最も効率的な太陽電池の冷却システムを開発することで、低炭素社会の実現に貢献するとしている。

3月からの実験では、保水セラミックスの形状による冷却効率の差も検証される全6種類の試験条件で、出力データを収集する





(正藤 慶一)

2011年3月28日 00:00