ダイキンのストリーマ放電、水中のレジオネラ属菌を99.99%除去

~集団感染の防止に有効、加湿器や給湯器への導入も

ダイキンの除菌・脱臭技術「ストリーマ放電」。同社の空気清浄機やエアコンの一部に導入されている
 ダイキン工業は、同社の空気清浄機に搭載されている除菌・脱臭技術「ストリーマ放電」技術が、水に含まれるレジオネラ属菌を、24時間で99.99%分解・除去することを実証したと発表した。

 ストリーマ放電とは、ダイキン工業の空気清浄機やエアコンの一部に、「光速ストリーマ」という名前で搭載されている除菌・脱臭技術。ブラズマ放電の一種で、酸化分解力の高い活性種を三次元に広範囲に発生することで、ニオイや菌類、室内汚染物質のホルムアルデヒドなどに対して、除去効果があるとされる。これまでにも、インフルエンザウイルスやノロウイルス、花粉といった、空気中のウイルスやアレル物質を不活性化する効果が、大学など公的研究機関により証明されてきたが、水に含まれる菌の除菌効果については、初めての実証となる。

空気清浄機の本体内に搭載されているストリーマ放電ユニット(写真は除加湿清浄機「クリアフォース」)ストリーマ放電技術の取り組みは2000年に開始。10年の歴史があるストリーマ放電は、バリア放電やグロー放電と比べ、プラズマの領域が広く、分解力が高い

ストリーマ放電が生成する活性種とは、強力な酸化分解力を持つ生成物のこと。その酸化力は、オゾンの6倍、水酸ラジカルの2.3倍ストリーマ放電によって生まれた活性種による効果。これまでは、空気に対しての効果が実証されていた

レジオネラ属菌は、水のヌメリに繁殖しやすい菌。感染すると死に至る例も
 今回、分解・除去効果が実証されたレジオネラ属菌は、自然界では土壌や淡水、水のヌメリの中で繁殖しやすい菌で、一般生活の中では、加湿器や給湯設備、循環式浴槽(24時間風呂)や人工の噴水、空調用の冷却塔水など、水が停滞したり循環するような環境では高確率で生息しているという。感染すると、肺炎や高熱を引き起こし、死に至る例もあり、温泉施設や病院では、集団感染する危険がある。

 試験概要は、レジオネラ属菌が混入した生理食塩水200ccの容器に、ストリーマ放電で生成した活性種を空気ポンプで送り、1~24時間照射するというもの。その後、照射後のレジオネラ属菌と、未照射のレジオネラ属菌を48時間培養し、菌の数を比較する。容器内では、水車が生理食塩水を攪拌している。

 この結果、24時間後にレジオネラ属菌は99.99%以上除去できたことが実証できたという。

身近なところにも、レジオネラ菌が発生する恐れがあるというレジオネラ属菌の効果実証に使用された装置

この結果、ストリーマ放電を24時間照射することで、レジオネラ属菌を99.99%除去できたという照射前後のレジオネラ属菌レジオネラ属菌が除去されるメカニズム(推定)

実験内容。まず、ストリーマ放電によって活性種を作り出す次に活性種を、レジオネラ属菌を含んだ生理食塩水の容器に投入する。水を攪拌するための水車も用意される

東京慈恵会医科大学の総合医療学研究センター 臨床医学研究所 副所長 医学部医学科 臨床検査医学講座 準教授の保科定頼氏
 調査を行なった、東京慈恵会医科大学の総合医療学研究センター 臨床医学研究所 副所長 医学部医学科 臨床検査医学講座 準教授の保科定頼氏は、実験当初は「(ストリーマが)水に溶け込むのかなと思っていた」とのことだが、「5時間、6時間になると、菌がコロニーを形成する動きが遅くなり、小さくなってきた。そして24時間後にはゼロになっていた。さすがにこれは驚いた。もちろん学会で発表する予定」と話した。

 このほか、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌に対しても、ストリーマの照射で除去効果があったことが、財団法人日本食品分析センターの調べで実証されているという(緑膿菌は4時間照射、それ以外は24時間照射)。

ストリーマ放電により、水の中の大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌を除去する効果も実証された実験内容のまとめ他の除菌方法と比べた、ストリーマのメリット

ダイキン工業 空調生産本部 商品開発グループ 主任技師 工学博士 岡本誉士夫氏
 ダイキン工業の空調生産本部 商品開発グループ 主任技師 工学博士の岡本誉士夫氏は、「今回はあくまで24時間でのレジオネラ属除菌に関する除去効果の発表で、今後は活性種を効果的に水中に浸透させる技術が必要となる」としながらも、「ストリーマ放電は空気だけでなく水中の除菌もできることがわかった。今後は、加湿器や給湯器を含め、幅広く水を扱う用途に向けて実用化できるよう、研究開発を進めていきたい」との指針を示した。

 また、保科氏は実用化について「水を除菌するには、消毒液を用いた場合、残留物質の問題があるのでなかなか手が出しにくい。しかし、(ストリーマ放電による)活性種は残留がない。厚労省の認可をもらえば、病院内での清掃、院内感染の予防に導入し、患者の感染を抑えられるのではないかと期待している」と、医療現場への導入に期待を示した。

 ダイキン工業の加湿空気清浄機「うるおい光クリエール」、および除加湿清浄機「クリアフォース」では、最新モデルにて、加湿フィルターにストリーマを照射し、水に含まれた雑菌を除菌する「キレイ水加湿」という機能を備えている。

 なおダイキンでは、ストリーマ放電技術の効果実証や活動領域を検証する、外部の有識者や機関とともに追求する「ダイキン・ストリーマ技術・ソリューションフォーラム」を発足すると発表。社会問題や生活空間の課題点について、ストリーマ放電技術による社会貢献の可能性を探り、新たなソリューションを提案していくという。

ダイキンの加湿機能付き空気清浄機では、加湿する水にストリーマを通す「キレイ水加湿」という機能を搭載する機種があるストリーマ放電技術の新たなソリューションを提案する「ダイキン・ストリーマ技術・ソリューションフォーラム」を発足する



(正藤 慶一)

2010年7月14日 17:56