パナソニック、三洋の“世界最高水準”太陽光発電を発売

~グループ化後、初のコラボ製品

太陽光発電システム HIT215シリーズ
 パナソニック電工は、住宅用で“世界最高水準”のモジュール変換効率を備えた太陽電池パネル「太陽光発電システム HIT215シリーズ」を、7月1日に発売する。1枚当たりの希望小売価格は156,450円(工事費別)。

 三洋電機の太陽電池モジュール「HIT太陽電池」を採用した太陽光発電システム。三洋は2009年12月にパナソニックグループに入ったが、これが初のコラボレーション商品となる。

 HIT太陽電池は、「ハイブリッド型単結晶シリコン」という三洋独自の技術を採用した太陽電池。半導体の接合点「PN接合面」がきれいな界面で形成できるため、多結晶や単結晶シリコンに比べて電子のロスが少なく、電気の変換効率が高い点が特徴。設置面積が少ない場合でも多く発電できるという。モジュール変換効率の16.8%について、パナソニックでは“世界最高水準”としている。

 さらに、夏場の高温時の能力低下にも強く、表面温度が75℃に達した場合、従来のパネルと比べて約10%高く出力できるという。

215シリーズで使用されるHIT太陽電池。三洋製結晶シリコンとアモルファスシリコンのハイブリッドモデルとなるPN接合面がキレイな界面となっているため、変換効率が高い。

夏場の出力低下も少ないという高温時の性能比較。33℃の時はあまり変わらないが、75℃と高温になると、右側のHIT太陽電池の性能が、多結晶型よりも高くなっているHIT太陽電池の特徴のまとめ

 今回販売されるのは、新築向けの「野地ぴたF」、リフォームに適した「屋根置き」の2タイプ。「野路ぴた」は屋根の下地に直接設置する工法のため、屋根との段差が少ないフラットデザイン。そのため、太陽電池を設置した部分の瓦が不要となり、耐風、防水性も高いという。「屋根置き」は、既存の瓦の上に金具を設置するだけで、簡単に施工できるという。

 さらに、家庭用ネットワークシステム「ライフィニティ」、薄型テレビ「ビエラ」と繋ぐことで、発電した電力や、家庭内の商品電力などを表示することも可能。また、同社のオール電化製品や家電製品と合わせることで、家庭内全体でエネルギーを節約する「家まるごとCO2削減」が実現できるという。なお、オール電化と太陽光発電3kWを併用した場合、ガスと電気の併用に比べてCO2排出量は約56%を減らせるという。

新築向け、リフォーム向けの2タイプが用意される新築向けは、太陽電池の下の瓦が不要。また、防水、耐風性能も高いという。一方リフォーム向けは、瓦の上に設置するため、屋根とパネルの間にスペースができる
家庭用ネットワークシステム「ライフィニティ」と液晶テレビ「ビエラ」とともに使うことで、ビエラの画面上で太陽電池の稼働状況が確認できる発電実績の画面オール電化と太陽電池を併せることで、CO2排出量を通常の住宅の半分以上削減できるという

 太陽電池パネルのサイズは1,580×812×35mmで、重量は15kg。最大出力は215W。

 下位モデルとして、モジュール変換効率が16.4%の太陽電池パネルを採用した「HIT210シリーズ」も発売する。希望小売価格は150,150円。

HIT太陽電池で“最後のピースが埋まった”

 パナソニック 代表取締役副社長 坂本俊弘氏
 パナソニック 代表取締役副社長の坂本俊弘氏は、パナソニックグループとして太陽電池を発売することについて、「これまで太陽光発電システムについては、グループ外の他社製品を使うしかなかった。しかし、今回新たに(HIT太陽電池が)加わったことで、あたかもジグソーパズルの最後のピースをはめこんだかのように、パナソニックの“家丸ごと”ソリューションの基本骨格が完成した」と評価。加えて、2012年度までに三洋販売分と合わせて国内シェアNo.1となる35%を目指す方針を示した。

 販売・施工体制については「(業界全体で)無責任な一部業者による販売、施行トラブルが多発している」としながらも、「パナソニックは“正しい販売”、“正しい施工”、“安心のアフターサービス”ができる販売店とパートナーシップを結んでいる」と、安全性をアピール。全国65カ所に商品が体験できるショールームを開設し、また全国7カ所に施工店の育成施設も設置。顧客向けには見積もりがシミュレートできるツールをWEB上に公開するなどのサービスを行なっていくという。

HIT太陽電池がパナソニックグループの商品となったことで、“あたかも最後のピースがはまったよう”と坂本氏は話す2012年度には国内シェア35%でNo.1を目指す

 パナソニック電工 常務取締役 住建マーケティング本部長の井戸正弘氏は、国内の太陽光発電システム市場が拡大している点を指摘。2012年は、2008年比で出荷が5.5倍になる見通しを示した。

 「2009年1月より補助金制度が復活し、2010年度には401億円の予算が計上されている。また、発電1kW当たり48円で買い取る余剰電力買取制度が、10年間の固定制度としてスタートした。さらに、改正省エネ法の施行や住宅エコポイント、優遇税制などもある。太陽光発電システムの普及が加速している」(井戸氏)

パナソニック電工 常務取締役 住建マーケティング本部長 井戸正弘氏補助金制度や余剰電力買取制度など、太陽光発電システムの普及が加速しているという

 三洋電機の執行役員 ソーラー事業部 事業部長の前田哲宏氏は、「三洋電機が持つ高い高効率化技術と、パナソニックが持つ商品開発ノウハウを融合することで、より効率的な技術の商品化を図っていきたい」と、さらなる高効率パネルに意欲を示した。そのうえで、「より性能の高い次世代太陽電池を展開していくためには、リーズナブルな価格設定と、ご要望に応えるだけの供給能力が必要になる。パナソニックグループのイタコナのノウハウや製造・開発面でも協力いただきながら、HIT太陽電池のこれまでの実績に裏付けされた信頼性を活かし、コストダウンを目指していきたい」と、パナソニックとの協力体制を歓迎した。

三洋電機 執行役員 ソーラー事業部 事業部長の前田哲宏氏HIT太陽電池の高効率化をさらに推進していくというHIT太陽電池の前で写真撮影に望む坂本氏、井戸氏、前田氏



(正藤 慶一)

2010年5月31日 18:25