日立、食材を眠らせるように保存する冷蔵庫

~LEDと光触媒で鮮度を維持
R-C6700

 日立アプライアンスは、食材を眠らせるように保存する冷蔵庫「R-C6700」など14機種を9月13日より順次発売する。価格はオープンプライス。定格容積が670LのR-C6700の市場想定価格は380,000円前後。

 同社の高級冷蔵庫シリーズの最新モデル。従来に引き続き、室内の気圧を約0.8気圧の真空状態にすることで、食材の酸化のほか、肉や魚鮮度の低下、野菜や果物の栄養素の減少を抑え、鮮度を保ちながら保存する「真空チルドルーム」を搭載している。

冷蔵室を開いたところ冷蔵室下部の真空チルドルーム

 新製品では肉や魚、生野菜を眠らせるように保存する「スリープ保存」を真空チルドルームに採用し、従来より保存性能を高めた点が特徴。

 日立では、食品の鮮度を長く保つため、炭酸ガスの効果に着目した。炭酸ガスは、業務用の保存技術として、流通食材のパック包装に注入されたり、低温、低酵素、高二酸化炭素(炭酸ガス)という3つの条件下に置くことで、リンゴやバナナの熟すスピードを抑制する「CA貯蔵(Controlled Atmosphere Storage)」として活用されている。

炭酸ガスは食材流通の現場などで保存技術として活用されている「ガス包装」で、包装材中に酸素や炭酸ガス、チッ素を注入して、流通中に鮮度を保っている

 スリープ保存機能では、炭酸ガスを発生させるために、チルドルーム内に光触媒とLED光源を搭載した。真空チルドルームに保存した肉や魚から出るニオイ成分や、野菜から出るエチレンガスが光触媒に触れ、さらにLED光に当たると、水分子と炭酸ガスに分解される。これにより、チルドルーム内に炭酸ガスが発生する。

炭酸ガスを生成するために、光触媒を利用した。これにより保存性能がアップしただけでなく、脱臭効果もあるという肉や魚のニオイ成分や野菜から出るエチレンガスが光触媒に触れる光触媒に触れた後、LED光にさらされることで、ニオイ物質やエチレンガスが水分子と炭酸ガスに分解される。エチレンガスは野菜の老化を促進するガス
会場では、肉や魚を入れたチルドルーム内の炭酸ガス濃度を測定する実験が行なわれた。通常の空気中の炭酸ガス濃度は0.04%程度。従来のチルドルームではほとんど値に変化がないが、LEDと光触媒を搭載した新モデルでは、炭酸ガス濃度が0.2%近くあった野菜を入れた場合で新旧のチルドルーム内の炭酸ガス濃度を測定。野菜は呼吸しているため、炭酸ガスの発生が著しく高い

 この炭酸ガスの働きにより、肉や魚の表面は弱酸性になって、タンパク質を分解する酵素などの働きが鈍り、鮮度が落ちるのを抑えるという。また野菜は、炭酸ガスに反応すると気孔を閉じて、呼吸を抑制するため、栄養素の消費を抑えるという。

炭酸ガス濃度の高い場所では、肉や魚はタンパク質を分解する酵素の働きが鈍り、鮮度の低下を抑える。また、野菜は光がある場所では光合成するが、光合成しない時は呼吸している。炭酸ガスに反応すると呼吸を抑えて、栄養素の消費を抑える炭酸ガスの働きによって、肉や魚のタンパク質を分解する酵素の働きが鈍ることや、野菜の呼吸を抑制することから、食品を眠らせるように保存する「スリープ保存」という呼称となっている
チルドルームのスリープ保存と冷凍室の保存の比較。生鮮度を表すK値は、鶏肉で約11%、マグロで約3%、スリープ保存のほうが低下を抑えていた。ビタミンCの残存量は、スリープ保存の方がキャベツで約12%、パプリカで約22%高かった冷蔵室と真空チルドルームに、ラップなしで保存したハムとチーズ。冷蔵室に入れたハムとチーズはしなびているが、真空チルドルームのほうはほとんど劣化が見られない

 このほか、光触媒が6種のニオイ成分を分解するため、チルドルーム内の脱臭に効果があるという。また、LED光源を採用したことで、チルドルーム内が明るく見やすくなっている。

光触媒は、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、ヘキサナール、アセトアルデヒド、プロパナール、酢酸の6種のニオイ成分に脱臭性能があるという真空チルドルームのカットモデル。左が従来モデル、手前が新モデル新モデルにはLEDを搭載で、庫内が見やすくなっている
野菜室カットモデル
製氷皿と急冷凍室冷凍室

温度センサーの数を1個から2個に増やした新冷却方式

 省エネ面では、庫内の冷却方式を改良。従来モデルでは、1つの温度センサーで冷却していたが、新冷却方式では、2つの温度センサーを採用し、それぞれ風路を設け、収納状況に合わせて上段と中段を別々に冷却できるようになった。また、冷蔵室に冷気を送り込む開閉口であるフラップも、従来モデルの1個から新モデルでは2個備えた。

 例えば、上段の収納量が多い場合、温度から検知して、上段のみ冷却することができるという。

冷蔵室内の2カ所に温度センサーを設置新冷却方式では、温度センサーとフラップを2個ずつ備え、庫内温度から収納量を見極める
上段冷却と中段冷却のそれぞれに風路を設けた上段の収納量が多い場合は上段のみ、中段の収納量が多い場合は中段のみ冷却することができる

 さらに、真空断熱材の使用面積が増え、断熱性も高めている。

真空断熱材を多く使用して、断熱性を高めた同社のフレックス真空断熱素材独自の2重袋で成型されている

  なお従来モデルに引き続き、同社独自の省エネ技術「フロストリサイクル冷却」を採用している。フロストリサイクル冷却とは、冷却器に付着した霜を庫内の冷却に再活用する冷却システム。

ケースの強度を高めて、収納力をアップ

 収納面では、収納ケースにガラス繊維強化プラスチック素材を採用したことで、従来モデルに比べて冷凍室で4L、野菜室で9L、収納容量が増えた。

 従来のケースでは、ケースの強度を補強するため、下面に補強材を付けていた。新モデルでは、ケース自体の強度が高まったため、補強材を大幅に取り除くことができ、そのぶん収納スペースが増えた。

 また冷凍室と野菜室において、背が高い飲料や食材の箱を立てたまま収納できる「たて収納スペース」を拡大。従来モデルではそれぞれ引き出し前面の隅にのみ用意されていたが、新製品では引き出し前面の全幅で食品を立てて収納できるようになった。

収納ケースに強度の高いガラス繊維強化プラスチックを採用従来よりも「たて収納コーナー」を拡大冷凍室ではアイスの箱や飲料、野菜室では2Lペットボトルや調味料のボトルも立てて入る

 R-C6700の本体サイズは825×728×1,818mm(幅×奥行き×高さ)。定格容量は670L。冷蔵室は346L、うちチルドルームは25L。冷凍室は204L。野菜室は120L。本体カラーはクリスタルブラウン、クリスタルシルバー、クリスタルブラック。

 ラインナップでは、デザインにこだわったモデルとして、本体前面をミラー調で仕上げた「R-CX6700」も用意される。カラーはクリスタルミラー。

日立アプライアンス常務取締役 金子友通 家電事業本部長

 日立が冷蔵庫を発売して、今年で80年目となる。日立アプライアンス常務取締役 金子友通 家電事業本部長は、「“エコ&ビッグ”をキーワードに、大容量で省エネ性の高い製品の開発に取り組んでいく」と方針を語った。




タイプ型番定格
内容積
冷蔵室
(真空チルド)
フロスト
リサイクル
新冷却方式店頭予想
価格
プレミアム6ドアR-C6700670L346(25)L38万円前後
R-CX670040万円前後
R-C6200620L324(22)L35万円前後
R-C5700565L295(19)L32万円前後
R-C5200517L274(17)L30万円前後
R-C4800475L252(14)L29万円前後
6ドアR-SF620CM620L324(22)L31万円前後
R-SF570CM565L295(19)L28万円前後
R-SF520CM517L274(17)L26万円前後
R-SF480CM475L252(14)L25万円前後
R-SF440CM441L232(13)L24万円前後
5ドアR-S500CM501L261(17)L-25万円前後
R-SL470CM470L230(17)L-24万円前後
R-S420CM415L215(12)L-23万円前後

 





(小林 樹)

2012年8月31日 00:00