パナソニックのクリアLED電球は「日本から世界の未来を明るく照らす」
――グッドデザイン大賞候補のプレゼンテーション

グッドデザイン大賞の候補となった、パナソニックのクリアタイプのLED電球「LDAHV4L27CG」

 グッドデザイン大賞の候補作のデザイナーによる公開プレゼンテーション「グッドデザインプレゼンテーション・グランドステージ2011」が、10月29日、東京ミッドタウンにて開催された。候補としては既に6作品が選出されており、生活家電分野では、候補の1つであるパナソニックのクリアLED電球のプレゼンテーションが行なわれた。

 例年のグッドデザイン賞では、大賞決定の当日にプレゼンテーションを行ない、その後、審査員や受賞者による投票で大賞を選出していた。しかし今年は、グッドデザイン大賞を“より社会に開かれたものにするため”として、プレゼンテーションを事前に実施し、東京ミッドタウンで実施されている受賞展に来場した一般の人も投票できるようになった。投票期間は10月28日から11月6日まで。大賞発表は11月9日。

グッドデザイン大賞の候補となる6作品東京ミッドタウン5階では、グッドデザイン大賞の候補作品が展示されている。展示期間は11月13日まで展示会場では、グッドデザイン大賞の投票もできる。投票はiPadで行なう

生活家電ではパナソニックのクリアLED電球が候補。実はもう発売している

点灯中のようす

 生活家電分野で候補となったのは、パナソニックのLED電球「LDAHV4L27CG」。LDAHV4L27CGは、電球のカバー内部に白い塗料が塗られた「シリカ電球」とは違い、カバーが透明の「クリア電球」との置き換えを狙ったLED電球。一般的なLED電球は、LEDの直線的な光を広げるため、シリカ電球のような半透明の電球カバーを採用しているが、このLDAHV4L27CGでは、電球カバーは完全に透明となっている。

 また光源には、クリア電球の発光部「フィラメント」のような形状のLEDを搭載。クリア電球のように光を全方向に広げ、煌めき感と陰影のある光が演出できるという。

 このほか、本体は従来のクリア電球と同サイズとした一方で、消費電力は白熱電球の20Wから4.4W、定格寿命は1,500時間から40,000時間に延びている。使用できるソケットはE26口金。

電球カバーは透明のガラス素材を採用クリアタイプの白熱電球と同じ光り方をするというサイズもクリア電球と同じ
点灯中のようす消費電力は4.4Wで、寿命は40,000時間。白熱電球と比べると、約78%節電で、約26倍長持ちするという
品番は異なるものの、クリアタイプのLED電球はパナソニックから「クリア電球20形タイプ LDA4L-C」として発売されている

 なおパナソニックでは、本製品と品番は異なるものの、クリアタイプのLED電球「クリア電球20形タイプ LDA4L-C」を既に発売している。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は3,500円前後。


世界の白熱電球の66%がクリア電球。日本発の煌めく光が、世界の未来を明るく照らす

、パナソニック デザインカンパニー HAデザイン分野 HA第2開発グループ 采尾治彦氏

 プレゼンテーションには、パナソニック デザインカンパニー HAデザイン分野 HA第2開発グループの采尾治彦氏が登壇。采尾氏はLED電球の省エネ性について、「世界の白熱電球の総需要は約65億個。これをすべてをLED電球に変えると、約2億9千万KWという膨大な電力の削減につながる。地球環境にとって、とてつもないインパクトになる」とアピールした。

 また、クリアタイプの電球を開発した意図については、「日本では需要が少ないが、世界の総需要では、約66%がクリア電球。世界中の白熱電球を省エネルギーのLED電球に変えるには、クリア電球のLED化と普及が重要なミッションとなる」と、世界的に割合が高いクリア電球との置き換えを狙ったことを明らかにした。

采尾氏はプレゼンテーションにて、パナソニックを二股ソケット(電球と他の電化製品を同時に使用する器具)から発展してきた会社とし、「いつの時代も、生活者視点からアイディアを発想し、暮らしを豊かにしていく提案を続けてきた」と話す世界の白熱電球の総需要は約65億個全世界の白熱電球の需要のうち、約66%がクリア電球という。「クリア電球のLED化と普及が重要なミッション」(采尾氏)

 LDAHV4L27CGの光については、1本のローソクのような煌めく光を目指したという。

 「ローソクが作り出す光は、くっきりとした陰影をつくり、物の立体感や素材感を美しく見せ、またガラスなどに反射して、輝きを増すこともできる。周りのものを引き立てる力が魅力。そればかりでなく、人はこの光に癒しを感じ、心までも温められる。これこそ、私たちが目指した光。冷たい印象のあったLEDの光を、暖かく豊かな光に近づけることを目指した」

 販売地域については、先進国から新興国まで、世界展開する方針という。

 「さまざまな文化に根差した、多彩な照明器具に取り付けられるよう、世界中に展開していく。(LDAHV4L27CGの)光は、景色に溶け込んで暖かな街を作り、またクリスタルなどできらきらとした光を影を演出する。先進国から新興国まで、さまざまな国にマッチした光を広げていきたい」

LDAHV4L27CGは1本のローソクのような、煌めく光を目指したというガラスやシャンデリアのような器具に使えば、器具の輝きを増す効果があるという

 采尾氏は最後に、本製品のデザインのポイントとして、従来の形状を変えるのではなく、あくまで本来の姿を引き継ぐことにこだわったことを挙げた。

 「私たちは、デザインを安易に変えることを良しとせず、歴史を作ってきたろうそくの光や電球本来の形、大きさを継承することにこだわった。それをテクノロジーによって実現し、明かりの文化を未来につないでいく。“地球にやさしく、人にやさしく、物を大切に使う”という、日本独自の発想が、このLED電球のデザインの狙い。日本から世界の未来を明るく照らす、煌めく光を、世界中の皆様にお届けしたい」

ライバルはテレビ/新幹線/がん治療施設/ゲーム/震災のカーナビ移動支援サービス

 このほかの5候補についても、続けてプレゼンテーションが行われた。パナソニック以外の候補作、並びにプレゼンテーションのようすは、以下に写真を中心に紹介する。

・Samsung「3D SMART LED TV」

韓国の家電メーカーSamsungからは、テレビの外フレームが非常に薄い3Dテレビ「3D SMART LED TV」が選ばれた

・JR西日本/JR九州「N700系 7000/8000番代 新幹線」

九州新幹線に使用される新幹線車両「N700系 7000/8000番代」も候補となった

・放射能医学総合研究所、東芝、日本設計「新治療システムおよび重粒子線医療システム」

放射能医学総合研究所、東芝、日本設計による「新治療システムおよび重粒子線医療システム」は、重粒子線によるがん治療のシステムや施設など、全体のデザインが評価された重粒子線がん治療は、正常な細胞のダメージを抑えながら、がん細胞を重点的に治療する治療法。日常生活を送りながらがん治療できるという施設は重粒子線を防ぐため窓がすべて省かれているが、緑化を施すことで、日射負荷の軽減を図っている

・日本マイクロソフト「Kinect(キネクト) for Xbox360」

ゲームでは、Xbox360の「Kinect」が選ばれた。コントローラーを使わずに、自分の体を使って直感的に遊べる点が特徴“一緒に体験を共有する喜び”がコンセプトとなる

・本田技研工業「カーナビゲーションシステム『インターナビ』による情報サービスと、東日本大震災での移動支援の取り組み」

ホンダのカーナビゲーションシステム「インターナビ」は、東日本大震災における移動支援の取り組みが評価された震災翌日から、通行実績があるルートをウェブ上に公開した9月の台風12号における紀伊半島の通行実績についても、情報を提供している


 全6候補は、審査委員、受賞デザイナー、展示会来場者による投票を経たうえで、最高の得票を獲得した作品に「グッドデザイン大賞」が、それ以外には次点となる「グッドデザイン金賞」が贈られる。





(正藤 慶一)

2011年10月31日 00:00