京セラ、滋賀県野洲市の太陽電池の新生産拠点を公開

〜2012年度には倍以上となる1GWの生産規模に

野洲事業所に新設された新工場「京セラ滋賀野洲工場」(イメージ写真)
 京セラは、今年6月に稼働を開始する、滋賀県野洲市の太陽電池セルの新工場「京セラ滋賀野洲工場」を報道陣に公開した。

 滋賀野洲工場は、同社としては滋賀県八日市工場に続く第二の太陽電池セルの生産拠点。もともとあった同社の野洲事業所の敷地内に、新棟として建設された。今後、需要拡大が見込まれる太陽電池セルの生産体制を強化を主な目的とし、研究開発の拠点としても機能する。京セラグループの国内にある工場としては、最大規模の施設になるという。

 新工場で生産されるセルは、変換効率16.9%の新世代のもの。2009年度に生産しているセルは16.5%となっており、モジュール出力で210wから215wに向上した。このセルは産業用から家庭用まであらゆる太陽光発電モジュールの基幹部品となる。新工場では八日市工場の生産効率と比較すると、生産効率も20%上がる予定で、今後は最新の設備と製造技術を導入する、太陽電池事業の中心をなす拠点となる。

 新工場建設にも見られるように、京セラは太陽電池事業へ注力する姿勢を見せており、発電量単位で2012年度には2009年度見込みの倍以上となる生産を見込む。

 

京セラ社長の久芳徹夫氏
 記者会見に出席した同社社長の久芳徹夫氏は、「太陽電池市場は不況で一時的に減少したが、2009年度は計画通り、400MWの生産を達成する見込み。国内では住宅用を中心に、海外では大規模案件の増加に伴い、生産計画を2010年度は550MWだったのを600MW、2011年度には650MWを800MWに上方修正する。2012年度には1GWを目指す」としている。

 京セラは部品、基礎技術に強みのあるメーカーである一方、民生用機器ではあまり馴染みがないが、家庭用太陽光発電システムにも積極的な姿勢だ。久芳氏は「家庭向け余剰電力の買い取り制度や補助金などが追い風になり、急激に拡大している。今後は販売体制を充実させるため、業界で唯一展開しているフランチャイズ店において、2011年3月に150店舗体制を確立する。施工、メンテナンス、アフターサービスについても重要になってくると考えている。当社独自の施工師認定制度で強みを発揮したい」と語っており、販売網強化に取り組む。

セルは国内の2つの工場で、モジュールは海外生産する体制となる新工場は6月から稼働予定野洲工場では変換効率16.9%の新世代のパネルを生産する
生産計画を上方修正。2012年には1GWを目指す併せて販売体制も強化。住宅用の需要を取り込むため、フランチャイズ店を2011年3月までに150店舗に増やす海外向け産業用についても、米国、欧州ともに販売代理店を100店舗規模へと拡大する

 ところで京セラは、太陽電池セルの製造に、高効率だが高コストと一般的に言われる「多結晶シリコン方式」を採用しているが、一方で「薄膜式」など、より低コストな技術もある。多結晶シリコンにこだわる理由について記者から質問を受けた久芳氏は、「多結晶シリコン方式は高効率なので、場所が限られた住宅用などで有利。だが、場所の制約があまりない、発電所など事業用でも受注が取れている実績がある」と自信を見せる一方で、「(低コストを望む)市場の要求も見逃せない。どこまできたらやらなければならないかを見極めている。研究開発はしており、準備はしている」とも語り、柔軟な姿勢も見せた。

京セラ 野洲事業所工場内にはまだ設備が入っていない
セルの製造プロセス京セラは多結晶シリコン方式を採用するモジュール製造プロセス。モジュールの製造は海外の工場で行なう
この工場で製造される工程。【1】セルの原料となるシリコンの基材【2】シリコンを鋳造し、ブロックにする
【3】ブロックをスライスし……【4】基盤を製造する
新工場で製造される変換効率16.9%のパネルのサンプル白く見える電極部を薄くし、光を受ける面積を広くして効率を上げた
 また、国際市場について久芳氏は「アメリカはオバマ大統領就任以来、グリーン・ニューディール政策ということで需要増に期待していたが、不況の影響が大きく、期待はずれだった。だが、今年は上向くだろう。ヨーロッパでも電気の買い取りの割合が減る、という報道もあるが昨年よりはよい状況になるのではないか」としており、明るい見通しを示した。





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2010年3月2日 16:15