三洋、“次世代の環境配慮型工場”加西グリーンエナジーパークを公開

~カメラで人数を検知して空調、照明を制御するなど最新の技術

 三洋電機は、兵庫県加西市の新工場「加西グリーンエナジーパーク(GEP)」を、10月22日のグランドオープンにあたり、10月18日、報道関係者にその様子を公開した。

 加西グリーンエナジーパークは、エネルギーの効率的な活用を実証する実験場に位置づけるとともに、顧客への最適な省エネシステムを提案するショールームとして活用することを目的に、約50億円を投資して完成させたもので、「低炭素社会の実現に向けた次世代の環境配慮型工場」としている。

兵庫県加西市にある加西グリーンエナジーパーク約50億円を投資して作った次世代の環境配慮型工場だとする
加西グリーンエナジーパークの模型図加西グリーンエナジーパークのロゴ加西グリーンエナジーパークは10月22日にグランドオープンする。それを前後して内覧会を開催している
加西グリーンエナジーパークの全体像加西グリーンエナジーパークの概要入口のゲートの屋根にもHITダブル太陽電池が設置されている
電気自動車の充電ができるソーチャージングステーション「Solalib」電気自動車に充電している様子
加西グリーンエナジーパーク内にあるソーラー駐輪場ソーラー駐輪場の蓄電池システム充電するエネループバイクのバッテリー
リチウムイオンソーラー街路灯街灯の下にカメラを内蔵したものもある
三洋電機・佐野精一郎社長

 三洋電機の佐野精一郎社長は、「加西グリーンエナジーパークは壮大な実験場である。三洋電機のエネルギー技術の粋を集めたものであり、技術者の努力の結晶である」などと位置づけた。

 業界トップクラスの変換効率を誇るHIT太陽電池による1MWの太陽光発電システム、世界最大規模となる1.5MWhの大容量・高電圧リチウムイオン電池による蓄電システム、各種省エネ機器を連携制御するエネルギーマネージメントシステム(EMS)などを駆使。エネルギーの最適活用を図る大規模スマートエナジーシステムを擁した新工場となっている。

 加西工場は、2010年4月から車載用リチウムイオン電池を月産100万台で生産をスタート。2015年度には月産1000万セルに拡大。工場内には、HEV工場のほか、白物家電を担当する三洋電機コンシューマエレクトロニクスの空気清浄機、掃除機、エネループバイクの担当部門などが入居。さらに管理棟、蓄電池棟などで構成される。敷地面積は約18万8,000平方m。

 「2年前に加西の地を訪れたが、ビルがまったくなく、晴天の日の夜は空一面に星が輝く。電車でも来にくい場所にある。そうしたことをつい昨日のように思い出す」と、佐野社長がいうように、環境に恵まれた場所だ。

 管理棟および工場棟の屋上と壁面には、一般家庭約330世帯分となる約5,200枚太陽電池モジュールを設置。年間1,080MWhの発電が見込まれる。管理棟の壁面には、通常のHIT太陽電池に比べて約20%効率が高いHITダブルを壁面に設置できるダブルファサード工法を採用。両面から効率的に発電でき、余剰冷気による冷却で変換効率を高めることができるのも特徴だ。

管理棟の一階はショールームになっている発電量、蓄電量、使用電力状況をリアルタイムで把握することで、省エネの予測とそれに基づく制御を行なう現在の発電状況などを画面に表示しているところ
携帯電話を置くだけでが充電できる太陽電池テーブル管理棟の壁面に設置されたHITダブル太陽電池HITダブルファサード工法で設置している

 また、1.5MWhのリチウムイオンメガバッテリー(蓄電)システムは、約1,000台の電池システムを活用し、一般家庭の一日の電力消費量の150世帯分となる約1,520kWhを蓄電。総セル数は約31万セルとなる。鉛蓄電池などに比べて環境にやさしく、特別な設置環境が不要などの特徴を持ち、2~3割安価な深夜電力や、余剰太陽光発電電力を蓄電し、昼間に利用するといったエコな使い方ができる。

 また、加西グリーンエナジーパークには、パナソニック電工が開発した直流で建物内に配電する「DC配電」や直流駆動のパソコンやLED照明も導入。これらパナソニックグループによる最新環境技術システムを活用したエネルギーマネジメントの実験場と位置づけ、今後の商品開発、システム開発に反映させるという。

 「LED照明では総合効率が、ACの82%からDCは92%に、パソコン電源では75%から88%に高まる」(佐野社長)とした。

 一方で、省エネへの取り組みとして、ネットワークカメラで人数を検知し、空調や照明を制御する「STAIMSカメラ省エネシステム」を採用。約10%以上の省エネを目指す。

 これらの効率的なエネルギー利用によって、年間2,480トンのCO2排出量を削減。25%の削減を目指すという。

CO2削減目標として25%を掲げる創エネ、蓄エネ、省エネのの3つを最適に制御する「スマートエナジーシステム」を採用するネットワークカメラで人数を検知し最適な空調や照明を制御する「STAIMS省エネカメラシステム」を採用
管理棟2階の食堂。ネットワークカメラで空調、照明、外気をコントロールするこのカメラを使って人数を感知して、15ブロックに分かれた照明、8ブロックに分かれた空調を制御。外光にも反応する厨房には厨房EMSを導入。稼働時間帯にあわせた機器制御や調理作業者へ起動、停止指示を出す
厨房内の見える化を実現している売店EMSとして、ネットワークカメラで人を感知してショーケースのLED照明を制御する棟内にはLED照明を導入。一部で直流型も採用している

 さらに、三洋電機はバッテリーマネジメントシステムを開発。これにより、加西グリーンエナジーパークに設置された約31万本の円筒形リチウムイオン電池セルから構成される世界最大規模の蓄電システムをマネジメントすることも明らかにした。

 バッテリーマネジメントシステムは、多数の蓄電用標準電池システムとこれらを制御するバッテリーマネジメントコントローラーを組み合わせたもので、18,650サイズの円筒形リチウムイオン電池セルを312本内蔵し、1ユニットあたり1.6kWhの蓄電が可能になる。

 「一軒あたり一日8kWを消費すると考えると、5台組み合わせれば一軒分の蓄電が可能になる。電気が届かない地域には、太陽光システムと組み合わせて導入すれば、すぐに活用できるなどのメリットがある」とした。

 ノートPCで培った充放電制御を活用し、蓄電池棟にある約25万個のセルの電圧、電流、温度などの電池状態を正確に把握し、最適充放電制御を行なうことで、セル間/蓄電ユニット間の電圧バランスをコントロールできる。蓄電ユニットは1台から数千台まで用途別に柔軟に拡張ができるようになる。

加西グリーンエナジーパークの8割の蓄電システムが入る蓄電池棟蓄電池棟の屋根にも太陽電池が設置されている蓄電池棟に設置された大型蓄電池。1ラックに10台が入る。蓄電池棟には80ラックが設置されている
蓄電池棟に入る大型蓄電池。1ユニットに312本の蓄電池が入る。これで4ユニットが重なった状態大型蓄電池事業を太陽電池事業などに次ぐ第4の柱に育てる2015年度に三洋電機は1,000億円規模の売り上げを目指す

 三洋電機の佐野精一郎社長は、「加西グリーンエナジーパークにおけるコア技術は“スマートエナジーシステム”発電量、蓄電量、使用電力状況をリアルタイムで表示し、省エネ効果の予測とそれに基づく統合制御を行ない、エネルギーの見える化を進めることで、社員の環境意識の向上も計れる。また、同時に集中管理、遠隔管理といったサービス展開の実験も行なう」としたほか、「大型蓄電事業をエナジー事業の4本目の柱とし、育成、強化していく考えであり、10月1日付けで大型蓄電事業部を立ち上げたのもそうした狙いから。市場の拡大にあわせて、住宅用、系統安定化用、業務用といった領域に蓄電システムを提供し、CO2排出量の削減に貢献していく。大型蓄電池は2015年には1兆円の市場規模、2020年には2兆円以上の市場規模見込まれる。個人的にはこの倍の市場規模になると見ているが、コンサバティブにみてもこれぐらいの規模になる。三洋電機は2015年度に1,000億円レベルの事業規模を目指す」とした。




(大河原 克行)

2010年10月19日 13:05