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「東芝白物家電の始まり」。東芝ライフスタイルがマイディア(美的)新体制の事業方針説明

 東芝ライフスタイルは、8月8日、新体制における同社の事業方針について説明した。同社の石渡 敏郎社長は、「2017年度(2017年1月~12月)において黒字転換を図る」と宣言。

 「東芝の白物家電事業においては、継続的な構造改革を行っており、とくに、2015年度には思い切った構造改革を実施した。大幅な固定費削減が図られており、2016年度にはその刈り取りができる。コストダウンへの取り組みも進めており、2017年度には、これらの成果が期待できる。2017年度の黒字化には自信を持っている」と述べた。

東芝ライフスタイル 代表取締役社長・石渡 敏郎氏

 東芝は、2016年6月30日付けで、白物家電事業を担当する東芝ライフスタイルの株式の80.1%を、中国マイディアグループ(美的集団)に約537億円で譲渡。今後40年間に渡り、東芝ブランドを継続しながら、白物家電事業を展開することになる。これまで東芝ライフスタイルで取り扱っていたテレビやレコーダーなどの映像事業は、東芝の100%子会社である東芝映像ソリューションに移管した。

 マイディアグループは、世界第2位の白物家電メーカーであり、全世界200カ国以上で展開。総売上高は約228億ドルを誇る、フォーチュン500社の1社。全世界に11万人の従業員を持ち、中国国内で14カ所、海外で7カ所の生産拠点を有する。過去10年で45億ドルを研究開発に投資。1万人の技術者、2万1,000件の特許を持つという。東芝とは、1993年にエアコンにおいて技術協力を開始して以降、コンプレッサーや電子レンジ、IH炊飯器で技術協力や合弁会社設立を行なってきた経緯がある。

 一方、東芝は、2003年10月に、東芝家電製造として分社子会社化。その後、東芝ホームアプライアンス、東芝ライフスタイルへと社名を変更して、現在に至っている。

マイディアに東芝ライフスタイルの株式の80.1%を譲渡
これまで東芝ライフスタイルで扱っていた映像事業は東芝映像ソリューションに移管

白物家電は東芝ブランドを継続

石渡社長

 東芝ライフスタイルの石渡 敏郎社長は、「白物家電事業における開発、製造、販売、アフターサービスの事業主体は、これからも変わらず継続する。東芝とマイディアによる戦略的パートナーシップを強化し、今後、お互いが持つ能力と、資源を引き続き活用し、さらなる成長機会を求めていくことになる。日本のお客様には安心して、購入、利用していただけ、品質やカスタマサービスについても責任を持って提供していく」とした。

 日本および海外において、白物家電において浸透している東芝ブランドを維持すること、品質水準とアフターサービスを維持すること、社名を含めてすべての体制を維持することを強調。東芝ライフスタイルの国内7社(製造2社、販売5社)、中国6社(製造4社、販売2社)、アジア6社(製造3社、販売3社)も活用していく。さらに、製品の流通については、引き続き、東芝コンシューママーケティングを通じて行なうことになるという。

 「東芝ブランドの冷蔵庫、洗濯機、エアコン、掃除機、調理機器、電池などの開発、製造、販売体制は、東芝ライフスタイルが継続することになる。東芝ライフスタイルが持つブランド、人材、コア技術を生かす一方、マイディアグループが持つグローバル展開、製品開発力、世界的ネットワーク、品質を組み合わせることで、事業シナジーが発揮できる」としている。

製品の開発や製造、販売体制は変わらず継続
国内ほか、中国、アジアのグループ会社も活用していく

 さらに石渡社長は、「研究開発、マーケティング、ブランディング、生産機能を生かすとともに、短期的には、部品調達先の共通化とともに、様々な製品において、数千万台という規模で生産しているマイディアグループの調達規模を生かすことで、製品コストをさげることができる。また、製品ラインアップを補完することで、製品群の充実を図ることができる。一方、中長期的には設計、開発の技術協力、相互の製造拠点を活用した生産のほか、スマート家電の共同開発、グローバル人材の育成などを考えいる」と述べた。

 東芝と中国スカイワースとの連携の継続については、「マイディアを含めた3社で、中国市場への展開などの今後の方針について検討していく。いい方向に進めたい」とした。

マイディアグループ副社長・顧 炎民氏が会長に就任

 経営体制では、東芝ライフスタイル会長として、マイディアグループの副社長を務める顧 炎民氏と、取締役副社長として林 南氏の2人の役員が就任する。

新役員体制

 ビデオメッセージを寄せた顧会長は、「東芝とは、20年以上に渡り、双方にとって有益な数多くのプロジェクトを生み出してきた。これは人と人との関係であり、時間をかけたことで、友好、親善の関係が多く築かれ、今回の新たな関係は多大な努力と人間関係から生まれた成果である。中国の家電企業は規模とコスト競争力において、世界において重要な位置を占めている。リーマンシッョク以降、製品の優位性、効率化、グローバル化といった事業変革に取り組み、ユーザーの使用感の向上での改善が図れた。

 また多くの先進企業との連携により、海外拠点を拡大した。マイディアグループのDNAには、パートナーシップと知的所有権の尊重が含まれており、それによって成功してきた。東芝との戦略的パートナーシップも、この伝統を維持している。これは東芝のブランド、組織、従業員を守り、引き続き投資をしていくことを意味している。事業の対象外だった地域にも東芝ブランド展開し、名実ともに世界的ブランドにしたいと考えている。

 グローバル経営とは、ローカル経営であると理解しており、権限委譲も行なっている。東芝ライフスタイルに自主経営を正式に認めている。過去に難しい状況を経たことを承知しており、継続的な投資や支援によって、東芝の家電事業を活性化させ、顧客のためによりよい価値を創造し、各国のマイディアグループ各社に対しても、多くの成長機会を提供できると確信している。この事業に取り組めることを楽しみにしている」とした。

ビデオメッセージを寄せた顧 炎民会長

白物家電をグローバルに展開するチャンス

 また、石渡社長は、新体制の取り組みについて、製品や開発などの観点から説明した。

 製品面においては、グローバルにおける製品ラインアップの補完、拡大ができるとして、ハイエンドからスタンダードまでの幅広い製品群を網羅。国内市場向けに、東芝ライフスタイルの製品ラインアップを補完できるとともに、海外の販売エリアの拡大が可能になるとしている。

 「これまで日本にはなかった製品も投入でき、日本における東芝ブランドの拡大、充実が可能になる。顧客の要望を聞きながら、東芝品質で、新たな製品ラインアップを揃えることができる。また、米国や欧州、インドなど、東芝ブランドとして参入できていなかった市場にも参入していくことができる。どの市場から展開していくかどうかは現時点では未定だが、名実ともに、東芝の白物家電がグローバルに展開していくチャンスを掴んだといえる」と述べた。

 日本国内では、東芝ブランドもマイディアブランドも、東芝ライフスタイルが管理するが、「国内は東芝ブランドに統一。マイディアブランドの製品を日本で提供していくことは考えていない」としたほか、「東芝ブランドの使用期間の40年間は目安であり、成果があれば続けていくことになるだろう」とした。

東芝とマイディアの強みを活かしてグローバル展開を図る
海外市場で販売地域の拡大が見込めるという

 東芝ライフスタイル・林 南副社長も、「日本の顧客に対して、価値を提供していくことができるかが、ブランド戦略を行なう上での判断のポイントとなる。東芝は、多くの人に愛されているブランド。日本においては、東芝ブランドのビジネスを展開していくことが基本になる」とした。

 また、「東芝は、300L以下の冷蔵庫、単機能の小型電子レンジなどは持っていないが、マイディアの製品を生かして、東芝の品質、東芝のスペック基準を用いながら、国内向けに製品化を進める考えである。その際には、東芝の技術も入るため、東芝ブランドで展開していく。1年以内に新たな製品を投入したい。小物家電製品もその形でやっていくことになる」とした。

東芝ライフスタイル 取締役副社長・林 南氏

 アジア、中近東では、両社のブランドが存在することになるが、「東芝とマイディアブランドが、激しく1位、2位を争っているエリアはない。東芝、アジア、中近東で歴史的にも強いポジションがあるので、ここでは東芝ブランドを継続していく。今後は、各地域においてブランド戦略を慎重に考えていく必要もあるが、最も効果的なブランドで投入していくことになる」と語った。

 さらに、「東芝は海外生産に舵を切っていたため、円安局面では東芝の白物家電は競合他社に対して不利だった。円安局面においても、利益を確保できるコスト競争力を持ちたい。マイディアが10の部品を購入していたのに対して、東芝は1。それを今後は一緒になることで、11の規模を購入できる。これは即効性があるもので、東芝ライフスタイルにとっては大きなメリットがある」とした。

 開発面では、人材や設備、技術における協力により、開発、設計を強化。両社が持つIoT技術およびスマート家電技術の強化などを通じて、付加価値の高い製品を生み出すとともに、コスト競争力が強化できるという。

 東芝ブランドの冷蔵庫、洗濯機、クリーナーは東芝ライフスタイル愛知事業所で開発。オーブンレンジおよびIH炊飯器は東芝ホームテクノで開発。エアコンは東芝キャリアで開発する体制を維持する。

 「両社の製品事業部が、ミーティングをしてプランを策定している。活発な議論が各事業部、各工場で行なわれており、その成果に期待してほしい」とした。

白物家電の開発は、東芝ライフスタイル愛知事業所や東芝ホームテクノなどで行なう体制を維持

 IoTへの取り組みについては、「各社からIoT化された製品が出ているが、それによって、なにができるのかといったことが提示できていない。マイディアグループとし連携し、参入できる分野から、スマート家電を展開していきたい。IoTやスマート家電は、世界中のマーケットに共通するものであり、力を入れていきたい領域である」と語った。

 一方、石渡社長は、「東芝のなかでは、コスト削減が優先され、成長投資が難しかったのは否めない事実。だが、マイディアグループでは、東芝ブランドの製品を拡大する方針を掲げており、我々もそれに期待している。技術投資やマーケティング投資は拡大していくことになるだろう。私が感じているのは東芝ブランドが毀損しているということ。もう一度、日本の市場から信頼を得るためには、ブランドの再生が必要。いい製品を出すのに加えて、積極的なマーケティング投資が必要である」と述べた。

IoTは参入できる分野から力を入れていきたいという

東芝の白物家電の始まりに

 社員に向けては、「これは東芝の白物家電の始まりである」とし、「日本の市場で、しっかりやっていくことは当然だが、東芝の白物家電事業がグローバルブランドになるチャンスである。世界で有名な白物家電メーカーと互して市場展開できるようになる。そのチャンスが手に入り、成長分野への投資も行なえる。すでに、冷蔵庫、洗濯機、クリーナーなどにおいて、具体的なプロジェクトがを数10個走っている。社員のモチベーションも高い」とした。

 さらに、石渡社長は、「すべての主要家電製品の国内1号機は東芝である。東芝の白物家電は、イノベーションの連続であり、人々のライフスタイルを変えるモノづくりを続けてきた。86年前に、国産第1号の洗濯機を発売した際には、主婦を家事労働から解放して、読書をする時間を提供したいという提案を行なった。この精神はこれからも継続する。人を想う製品を、東芝ブランドとして引き続き提供する。安全で、快適なライフスタイルを提供する東芝ブランドの製品を、引き続き提供していくことになる」と語った。

 なお、今回の会見から、美的集団、ミディアグループなどの呼び名があった呼称を、マイディアグループに統一。「マイディアとも相談の上で、正式名称としてマイディアを採用することにした」と説明。「マイアイディアという意味があり、そこからも会社のポリシーを感じてもらえる」とした。