長期レビュー

ヤマハ「PAS Brace-L」 最終回

~ママチャリとは違うスポーツタイプならではの走りが味わえる
by スタパ齋藤

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



ヤマハ「PAS Brace-L」(2010年モデル)

 ヤマハ電動自転車「PAS Brace-L」の長期レビュー第3回。最終回となる今回は、電動アシスト周辺の機能や電池の保ち、各種装備やその使用感などを見ていきたい。なお、第1回のレポートはこちら、第2回はこちら

 まずは肝心要の電動アシスト機構の機能。ハンドル左側にあるメインスイッチをオンにすればアシストが効くようになるのは、ほかの電動自転車と同様。誰でも迷うことなく使えるだろう。

ハンドルの左側にあるのがメインスイッチ。アシストのオン/オフやモード切替などはすべてこのスイッチ(リモコン)で行なうアシストモードは[HIGH]、[LOW]、[HIGH]+[AUTO ECO]、[LOW]+[AUTO ECO]。合計4種類のアシストモードから選べるんですな
各アシストモードの動作イメージ。[AUTO ECO]をオンにすると節電しつつアシストする(※図はPAS Brace-L付属説明書より抜粋)

 各アシストモードを使い比べてみたが、当然、シチュエーションに応じて各モードを使い分けるのが最良。たとえば、いつもは[LOW]に、急坂上がるときは[HIGH]に、みたいな。理屈ではそうなのだが、しかし拙者の場合、あれこれ試した結果、オートエコモードプラスをオンにしての[LOW]、つまり[LOW]+[AUTO ECO]にしっぱなし状態となった。

 オートエコモードプラス([AUTO ECO]ボタン押下)にしておくと、上の図のようにBrace-Lがアシスト力を適切に変化させてくれる。ペダルを強く踏んでいれば[HIGH]に、弱めで踏んでいるなら[LOW]に、ほとんど踏んでいない場合はアシスト力をオフにする。また、Brace-LにはS.P.E.C.8(スペックエイト/ShiftPosition Electric Control×内装8段変速)が採用されていて、現在のギアの段数を感知しつつ最適なアシスト力を出す。

 オートエコモードプラスだと、かなりインテリジェントにアシスト力をコントロールしてくれるんですな。そして、より節電となる[LOW]+[AUTO ECO]だと、トータルの走行距離が伸びる。ので、拙者はこのモードを使いっぱなしになった。

 ちなみに満充電での走行距離は以下のとおり。今回レポートしているBrace-Lの機種名は「PV26SL」なので、その項目を見ておくんニャさい。ただし、細かい条件によりこの走行距離は変わってくるので、あくまでもご参考までに。

Brace-L(PV26SL)の走行距離。計測方法により2種類の目安がある。※図はPAS Brace-L付属説明書より抜粋
新規定に沿って計測した走行距離はこのとおり。※図はPAS Brace-L付属説明書より抜粋。
こちらは旧規定。ちょっとややこしいですな。※図はPAS Brace-L付属説明書より抜粋。

 てなわけで、[LOW]+[AUTO ECO]だと最も節電=いちばん長い距離走れるんですな。

 ……でも、節電はいいけど、[LOW]+[AUTO ECO]って脚が疲れたりするのでは? とか思うでしょ。拙者も理屈上ではそう思うんですよ。このモードは結局、必要最低限しかアシストしないんだから。

 しかし実際に各モードを使い比べてみると、なんつーか、かなり意識しないとアシスト力の違いがハッキリとはわからない感じなのだ。大雑把に言えばどのモードもまあそんなに大きな差がないという印象で、だったらいちばん電池が長保ちする[LOW]+[AUTO ECO] モードがイイじゃん!! と。

 ナゼかしら? とか思うんだが、これはたぶんBrace-Lがスポーツ自転車としてそこそこマトモだからだと思う。セミスリックタイヤで高剛性フレームで、正しいライディングポジションを取れて、8段変速。この時点で「よく走る自転車」なんですな。これにアシスト機能が加わり、走り出しとか上り坂とか加速時には力を貸してくれる。

 ママチャリタイプの電動自転車のように「いつもアシスト力に頼りっぱなし」ではなく「ポイントポイントでアシスト力を使う」という走行スタイルになりがちだから、まあどのモードでもそーんなには大きな差がないように感じる、のだと思う。ちなみに、Brace-Lは電源をオフにしても最後に設定したモードを覚えておいてくれる。

 あとBrace-L、平地をスイスイとスピーディーに走ってくれるのに加え、坂道にもミョーに強いっス。もしかしたら強(パワー)モード───アシスト電流を標準モードよりも高くしてアシスト感を向上させた走行モードが働くから、通常モード走行時とのギャップで坂道パワフルに感じる? 8段変速で無理せず坂を上がりつつアシストも働くから? とにかく、力強い。これまで「この坂は電動自転車でも微妙にツラいなあ」とか思っていた場所でもスイッと登れちゃったりした。

 話は変わって、Brace-Lを使っていて便利だと感じる装備などを少々。拙者的に便利度が高いのは、前輪のクイックレバー。工具ナシで前輪を外せるシクミですな。これがあると車載が現実的。たとえば走りたいエリアまで自転車をクルマに乗せて運び、そこで自転車を下ろしてサイクリングできるってわけですな。

Brace-Lの前輪はクイックレバーにより固定されているレバーを手で倒せば、このように前輪が外れるのだ車載した様子。転倒防止の固定具などが必須ですな

 車載する場合は、上記のような固定具が必須だろう。Brace-Lを横倒しにしてもよいが、場所を取るし、不安定になって危険。あと、Brace-Lは重いので、じつはクルマの中に持ち上げて入れるのがちょっとタイヘン。女性だと無理かもしれない。

 ほか、バッテリー充電器の「わかりやすさ」やバッテリーロックと同じ鍵を使えるワイヤーロック、それから白色LEDライトなんかも便利な感じですな。

単三電池×4本使用の白色LEDヘッドライトが付属する。ハンドルから容易に外せる付属ワイヤーロックの鍵は、バッテリー盗難防止の鍵と共通充電器。左側のガイダンスがちょっと便利だったりする

 個人的にプチ残念なのが、ワイヤーロックが1本しか付属しないこと。Brace-Lは前輪やサドルがクイックレバー式なので、工具ナシで外せる。カンタンに盗まれちゃう危険性があるわけですな。前輪およびサドルのためのセキュリティロック的なものを、バッテリーや付属ワイヤーロックと共通の鍵で使えたら良かったナ、と。

 もうひとつ、せっかくのスポーツ自転車なのだから、フレームサイズのバリエーションを用意して欲しかった。ユーザーの体にバッチリ合ったフレームサイズのBrace-Lがあれば、より快適&効率良くサイクリングができると思う。

 ほかは大きな違和感ナシっていうか全体的によくできたスポーツタイプの電動自転車だと思う。拙者が買うとしたらBrace-Lのようなスポーツタイプがいい!! とか強く思った。何より走っていて気持ち良くて楽しくて、そして疲れないってのは大きな魅力。ママチャリタイプの電動自転車とはひと味もふた味も違う走りをするBrace-Lなので、できればぜひ試乗してみてほしい。



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2011年4月15日 00:00