長期レビュー
象印「パンくらぶ BB-KT10」 最終回
最終回となる今回は、BB-KT10の一番の特徴でもある「ホームメイドコース」を中心に紹介する。ホームメイドコースは、コネ・発酵・焼き時間を自由に調整できるコースでこだわりパンや、オリジナルのパンが作れるちょっと上級者向けのコースだ。
製品の概要と基本の食パンを紹介した1回目はこちら、米粉パンや国産小麦パンを中心に紹介した2回目はこちらから。
■ホームメイドコースでバラエティ豊かなパン作り! ハンバーガーパンズも簡単
ホームメイドコースなら、コネ、ねかし、発酵など自由に設定できる |
「ホームメイド」コースは、作りたいレシピにあわせて、コネ・発酵・焼き時間をそれぞれ自由に調節できる。さっぱりしたパンが好きならコネ時間を短く、もっちりしたパンが好きなら発酵時間を短くするなど、オリジナルのパンを作ることができるのだ。各工程の設定時間は、1回目のコネが0~15分、2回目のコネが0分または5~15分、ねかしが0~20分、手作業がオフまたは1時間、発酵が0~2時間、焼きが0~1時間10分と、それぞれかなり細かい調節がきく。
中でも便利なのは途中で「手作業」設定ができること。1回目のコネ工程後に生地を取り出して、シナモンロールやマーブルパンなどの加工をする。終わったら生地を再度本体に戻すと、続きの工程から始まるので、設定をし直す必要がないのだ。
さっそくホームメイドコースを利用して、ハンバーガーを作ることにした。ハンバーガーのバンズといえば、ふんわりとした食感であり、パティを引き立てるようなさっぱりした風味であることが重要だ。
取扱説明書のレシピにパティの作り方も記載されているので、先に作っておく。レシピは、家庭で作る普通のハンバーグとほとんど同じで、挽肉、玉ねぎ、パン粉などをコネて作る。
ハンバーガーのバンズは、コネ時間を長く設定する。コネ時間を長くすることで、さっくりとしたバンズができるという。手作業をオフにして二次発酵までホームベーカリーにおまかせし、最後に成形して焼くのは手作業となる。ホームベーカリーで生地を作るのにかかった時間は1時間30分ほど。その後、手で丸めて霧吹きをして生地が約2倍になるまで発酵させたあと、180℃に熱したオーブンで約15分焼いて完成だ。
丸く焼いたパンを半分に切ってから、パティ、分厚く切ったトマト、レタス、ケチャップなどを一緒にはさんでいただく。
おいしいバンズのおかげで、なんとも贅沢なハンバーガーだ。風味がよく、ほどよく歯ごたえもある。分厚くなってしまって子供は食べにくそうだったが、大人は大変おいしくいただいた。子供用にはバンズを小さめに作った方がいいかもしれない。手作りなら、バンズの大きさも調節できるので便利だ。ハンバーガーといえばジャンクフードのイメージだが、これなら栄養も満点で、子供にも安心して食べさせることができる。
焼き上がったハンバーガーバンズ。しっかり膨らんでいる | 切ってみると生地はふんわり。外はサクッとしている | 自家製パティを挟んで、オリジナルハンバーガーのできあがり! こんなハンバーガーなら、子供にも安心して出すことができる |
■ホームメイドコースの「手作業」時間を活用すれば、シナモンロールもできる!
次に、ホームメイドコースの「手作業」を使ったシナモンロール作りに挑戦した。ホームメイドコースでは、手作業を設定すると工程の途中で1時間の手作業タイムが設けられる。その間に生地を取り出し、加工するだ。手作業が1時間かからなかった場合は、生地をパンケースに戻して「スタート」ボタンを押せば、再開される。これはとても便利な機能だ。
ホームベーカリーで作った生地を取りだして、まずは20分ほど休ませ、綿棒で伸ばす。そこに、あらかじめ混ぜておいたグラニュー糖とシナモンをふって、くるっと丸めて棒状にしておく。あとは包丁で切って10等分し、パンケースに戻して再スタートする。
手作業時間が設けられているので、そこで一手間加えられる。手作業コールまであと何分か一目でわかるようになっていて便利 | 取り出した生地は少々ベタッとしているので、打ち粉をつけてから綿棒で伸ばす | 手前2/3に牛乳を塗り、上に混ぜておいたグラニュー糖とシナモンをふる |
棒状に丸め、10等分に切る | 断面はきちんとロール状になっていた | パンケースに戻し、再度スタートを押すと、続きの発酵から再開される。1時間以上経過してしまうと、自動的に再スタートされるので注意が必要 |
焼き上がったパンに、アイシングで飾り付けをすれば完成だ。簡単にシナモンロールができて感激である。後で食べるときは、レンジで軽くあたためてから食べるとおいしい。子供達にも大好評だ。
おいしそうなシナモンロールの完成! シナモンの香りが部屋中に漂う | 粉砂糖があればアイシングをする。水を入れすぎたために色が薄くなってしまった | 切ってみると、マーブル状にシナモンシュガーが入っている。甘くてとてもおいしい |
パン作りは気温や材料の鮮度などによっても出来が左右されるので、その時々に応じて調整できるホームメイドコースは、こだわりがある方でも満足できるだろう。シナモンロールのように、途中で手作業が入るパンも簡単にできるのは嬉しい。いちいち発酵やコネを再設定しなくてもスタートボタンを押せば続きから開始してくれるので便利だ。
前回作ったホームメイドのレシピはメモリーできるので、次回もそのまま作ることができる。可能であれば、3パターンほどメモリーできると、なお嬉しい。
■パンも自家製なら、ジャムも自家製で。無添加で安心!
BB-KT10には、ジャム専用の「ジャムコース」が搭載されている。材料をセットしたらあとはおまかせで作ることができるので、とても簡単。ただ、鍋で煮詰めるより水っぽくなるので、気になる方は鍋で煮詰め直すか、ペクチンを追加するとよいだろう。
パンに付けるのはもちろん、無糖ヨーグルトに入れてもおいしい。ホームベーカリーで焼いた焼きたてのパンに自家製ジャムをつけていただくなんていう贅沢なこともできる。ただし、日持ちはしないので新鮮なうちに食べきる必要がある。
材料はいちごと砂糖とレモン汁だけ。あとはホームベーカリー「ジャムコース」でおまかせ | いちごがゴロゴロ入ったジャムの出来上がり。好みにより、いちごをつぶしてから作ればもっとドロッとした感じになる |
■こんな失敗に注意! ホームベーカリーを使う上で大事なポイント
初心者でも簡単にパンを焼くことができるホームベーカリーだが、いくつか注意したい基本的なポイントがある。
1.使用する材料は、新鮮なものを
パンはデリケートなので、新鮮な材料を使うと上手に焼ける。同じように焼いても、新鮮な材料とそうでない材料では、膨らみ方が全く違う。
2.水温にも注意 夏は冷水を使って
パンは室温によっても仕上がりが変わる。これから夏場に入ると、水の温度が高くなり、ドライイーストの発酵が進みすぎてうまく膨らまなくなってしまう。夏場にタイマーを使う場合、冷水を使ってセットしておいたほうがいいだろう。
3.ドライイーストはしっかり管理
ドライイーストは、一度封を開けたら、口をテープなどでしっかり閉じて、冷蔵庫に入れて保管する。イースト菌は生きているので、一度開けてしまったら、なるべく早く使い切ったほうがいい。今回のレビューで古いドライイーストを使ってみたのだが、やはりほとんど膨らまず、重いパンになってしまった。
4.羽根の付け忘れにはご用心
慣れてくると、必ず一度はやってしまうのが、ハネのつけ忘れ。ハネを忘れて焼いたパンは悲惨な状態だ。どんなに優秀なホームベーカリーでも、ハネがなければコネることはできない。
古いドライイーストを使って焼いた基本の食パン。小さっ! 高さもなく、重いパンになってしまった。ふんわり感は全くナシ | 今回もやってしまったハネのつけ忘れ。レーズンが焦げて悲しいことに。朝、パンを予定していたのにこうなってしまって、大あわて。意外にやってしまう失敗なので、気をつけよう。ハネがないときはブザーなどで警告してくれると嬉しいのだが…… |
5.パンの保管は冷凍保存がおすすめ
自家製パンは保存料無添加のため、傷みが早い。これから梅雨のシーズンに入るので、さらに傷みが早くなる。一斤タイプは家族4人なら食べきってしまえる量だが、残す場合は冷凍保存をおすすめする。
乳幼児にも安心して食べさせることができる自家製パン。安全なパンを家族みんなでおいしく食べるために、作る時は少しの気遣いをお忘れなく!
■パン作りにこだわりがある人も納得のホームベーカリー
象印のホームベーカリーで特徴的なのは、開始時と終了時の軽快な音楽である。調理開始時とタイマーの予約操作完了時は「おおスザンナ」、できあがり時は「アビニョンの橋で」が流れる。セットすると楽しげな音楽が流れるので、子供に「明日の朝はパンなんだね」と笑顔で声をかけられる。
気になる点は、液晶画面だ。ホームベーカリーは中のパンケースを上に持ち上げて取り出すため、家庭のキッチンでは低めの場所に置く。BB-KT10は液晶画面が上部ではなく、前面に付いているため、確認しづらいのだ。我が家でもホームベーカリーは下の方の棚に置いたため、液晶部分を見るためにかがむ必要があった。できることなら、上部に液晶画面を付けて、薄暗いキッチンでも見やすいよう液晶にはバックライトを付けてほしいところだ。
細かい仕様に関しては、気になる点はあったが、何よりパンがおいしく焼けるので全体の満足度はとても高い。特に、基本の食パンの完成度は高く、とてもおいしい。また、子供のために甘いパンや、キャラパンを作れるホームメイドコースも我が家ではとても魅力的だ。
使い始めてからは、ホームベーカリーを使ったレパートリーが確実に増えた。子供のママ友仲間でも、ホームベーカリーを活用している人は多いが、簡単においしい食パンが焼ける、というだけではもう物足りないという声も聞かれる。これなら一手間加えたいこだわり派にも、満足できるだろう。
2010年6月16日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)