【特別企画】

パナソニックの“オールLED”モデルハウスを見る

by 正藤 慶一



東京都新宿住宅展示場内にオープンした、パナホームのモデルハウス
 パナホームは2009年10月、モデルハウス「EL SOLANA(エルソラーナ)」を 東京都新宿区の東京都新宿住宅展示場内にオープンした。このモデルハウスは親世帯棟と子世帯棟で構成される二世帯住宅だが、このうち親世帯の全照明をLEDとしている点が特徴となる。LEDはすべてパナソニック電工製。“オールLED住宅”は、同社によれば住宅業界でも珍しい例だという。

 2009年から発売が相次ぐLED電球で、俄然注目を浴びる光源「LED」は、暮らしをどのように変えるのか。同モデルハウスをLED照明に注目して紹介する。

 

新宿展示場の最寄駅は京王線初台駅および地下鉄大江戸線西新宿五丁目駅。高層建築物の谷間に戸建住宅が並んでいる展示場には他社のモデルハウスも展示されている
 


オールLEDでランニングコスト削減、部屋のプランニングも自在に

 モデルハウスの概要は、親世棟帯が総床面積120.8平方mの2階建て、子世帯棟が総床面積155.02平方mの3階建てとなる。親世帯棟は全74照明をLEDとした“オールLEDハウス”で、子世帯棟はLED照明25灯と蛍光灯45灯を組み合わせた、言わば“ハイブリッド照明ハウスだ。

 また、導入されているLED照明は、同じパナソニックグループのパナソニック電工製。住宅用LED照明器具「EVERLEDS(エバーレッズ)」シリーズとなる。

モデルハウスの構成。“オールLED”なのは親世帯棟で、子世帯棟はLEDと蛍光灯を併用している

 このモデルハウスが“オールLED”仕様となったのは、パナホームが新しいモデルハウスを作るタイミングと、パナソニック電工の新商品が揃うタイミングが合致したことがきっかけとなった。このような“オールLED住宅”は、同社によれば住宅業界では初の例だという。

   「オープンの半年ほど前から、新しいモデルハウスで新しい提案ができれば良いと考えていましたが、パナソニック電工が秋にLEDの品揃えが揃うタイミングも合うので、それなら一棟まるごとLED照明を使ったモデルハウスを作ろうか、という話になりました」(パナホームの東京支社 営業企画センター所長 寺谷信弥氏)

 オールLEDを採用したことによるメリットは、まずランニングコストの削減が挙げられる。従来の白熱灯や蛍光灯を常時点灯した場合、親世帯では年間の電気代を40,883円、子世帯では年間で約24,363円削減できるという。

  また、照明のプランニングに携わった、パナソニック電工 照明事業本部 インテリア照明事業部 東武ILCの川端俊夫氏は、プランニングのしやすさも指摘。「コンパクトに作れるため、従来のように大きな商品を作る必要はなく、また長寿命でフリーメンテナンスなので、天井が高くても脚立や昇降装置を使って器具を降ろすといった手間もありません」という。

パナホーム 東京支社 営業企画センター所長 寺谷信弥氏パナソニック電工 照明事業本部 インテリア照明事業部 東武ILCの川端俊夫氏
 

LED照明だからこそできた高天井設計――“オールLED”の親世帯棟


 まずは“オールLED”の親世帯から見ていこう。

【1階:リビング・ダイニング・キッチン・浴室】

リビングは中2階が吹き抜けの高天井タイプ。天井には床面を照らし、壁面には天井を照らす照明が付いている
 玄関からすぐのリビングは12畳で、中2階フロアを吹き抜けとした高天井仕様となる。オールLEDのため、一般的な住宅にあるようなシーリングの蛍光灯はないが、天井に取り付けられた60WクラスのLEDダウンライトが床面を、また壁に取り付けられた四角く細長いLEDが天井を照らすよう設計されている。LEDは直線的な光を放つため、高天井でも十分に床や天井に光が届いている。

 高天井におけるLEDのメリットはメンテナンス性もある。天井が高いと、ライトが切れた際の交換が大変だが、LEDは長寿命のため、基本的にはフリーメンテナンスとなる。1日6時間の使用なら、13年間交換が不要となる。

 また、ライコン(ライトコントロール)を使って、食事やホームシアターなど、シーンに合わせた照明プランを選ぶこともできる。

 LEDは直線的な光は、浴室でも活きる。光が広がらないため、浴室に陰影ができ、高級感を演出する効果もあるという。

ライコンを使って、シーンに合わせた照明も設定可能食卓の天井には、天吊型で多灯タイプのLED照明を採用
オープンキッチンにもLED照明を採用。LEDの光は熱を発しないため、頭も熱くならず、食材の温度もわかりやすいという天井と壁のスキマにも間接照明が
浴室はあえて陰影を作り出し、高級感のある空間を演出している洗面ルームの照明の光色は、洗濯物の汚れがよくわかるよう昼白色としているキッチンの脇には小さなデスクを設置。卓上のライトは、深澤直人氏デザインの「MODIFY(モディファイ)」を使っている


【中2階:アトリエ・収納】

中2階はアトリエ。1階同様に高天井仕様となる
 親世帯は2階建てだが、1階と2階の間には“中2階”としてアトリエとポケット収納コーナーが設けられている。アトリエも1階同様天井が高いため、LEDの指向性の強い光が床と天井に届いている。

 一方、ポケット収納は天井が120cmと低く、しゃがまないと歩けないほどだが、このような低い天井スペースにもLEDが向くという。電球を入れるとそれだけでランプが出っ張ってしまうため、引っかかってしまう恐れもあるが、LEDなら光源が小さくて済むため、問題がないとのことだ。

 また、LEDは蛍光灯と違って紫外線を発しないため、絵画や収納していた衣類が変色することも防げるという。

天井からのLEDの光が、床面まで届いている壁面に搭載されたスポットライト
12.5畳の収納スペース。高さは120cmとしゃがまないと入れないが、LEDを採用することで器具が出っ張らず広い空間となっている蛍光灯のように紫外線を発しないため、絵画や衣服の色の劣化もないという

【2階:主寝室・セカンドリビング】

寝室は、ベッドに寝ていると光が目に入らない関節照明の空間となっている
 中2階を昇ると、主寝室とセカンドリビングのスペースになる。

 主寝室で特徴的なのが、すべての光がベッドから直接見えない作りになっている点。“オール間接光”のため、強い光が目に入って眠れなくなる、ということが構造上なくなっている。やすらぎの空間を演出するための配慮だ。

 主寝室ではおもしろいライトがあった。ベッドサイドに設けられた「LEDタスクライト LGB71570」だ。壁に埋め込まれたLEDライトなのだが、使うときはライトを押せばスポットライトが飛び出し、角度を変えることで読書灯として使える。使わなくなったらまた壁に押し込むこともできる。常夜灯としても使えるなど、小さいのにマルチに使えるという便利さが魅力だ。

「LEDタスクライト LGB71570」は、使うときだけ顔をだす埋込式のライト。常夜灯としても使えるセカンドリビングルーム

蛍光灯とLEDをミックスした子世帯棟


【1階:和室】

 子世帯棟の1階フロアは5.5畳の和室。ほとんどが電球型蛍光灯だが、床の間にLEDが採用されている。

1階の和室。主照明は蛍光灯床の間の間接照明はLED


【2階:リビング・ダイニング・キッチン】

2階はリビング・ダイニング・キッチン
 2階は10畳のリビング、6畳のダイニング、6畳のキッチンが繋がった広々とした空間。こちらも基本的には電球型蛍光灯がほとんどだが、食卓を照らす3灯のみLEDを採用している。

 この食卓では高演色性のLEDを使用しており、食事をおいしく見せることができる。また、蛍光灯のように光が広がらないため、家族みんなの視線を食事に集める効果も期待できるという。

 リビングにはライコンが搭載されており、親世帯棟の1階同様、シーンに合わせたライトが演出できる。


食卓の3灯がLED照明。蛍光灯と比べて光が広がらないが、かえって全員の視線を食卓に集められるというリビングルーム。液晶テレビ下の明かりはホームシアター用リビングにも「MODIFY」が使用されている

生活用品のほとんどはパナソニック製。写真はタンクレストイレ「アラウーノ」IHクッキングヒーターにレンジフードもパナソニック製冷蔵庫は「エコナビ」搭載の最新モデルだ

【3階:洋室・子供部屋・ファミリールーム】

 3階の洋室には、白熱電球と蛍光灯、LEDという3種類の光源を備えた部屋があり、切り替えることでそれぞれの光源の特性を実際の部屋で体感できる。記者の感覚では、白熱電球とLEDはほぼ同じように感じたが、蛍光灯はシーリングの1灯タイプだったこともあって、明るすぎる印象を受けた。

 子供部屋は、部屋の一角に敢えてライトを設置せず、光の陰影が感じられるようなおもしろい作りになっている。

3階では、光源の違いによる室内のようすの変化が体験できる。写真は白熱電球(撮影時のホワイトバランスは3,200K、ストロボ不使用)LEDはこちら。左の写真と比べるとやや黄色がかているが、肉眼ではあまりかわらない(撮影時のホワイトバランスは3,200K、ストロボ不使用)蛍光灯はシーリングの一灯タイプ。無駄に明るく感じられれた(撮影時のホワイトバランスは3,200K、ストロボ不使用)
子供部屋子供部屋の天井には、一角にあえてダウンライトを設置せず、陰影を作り出す狙いがあるというスタンド照明も「MODIFY」

コスト面では蛍光灯とのハイブリッド照明が現実的

 ところで、全館すべてLED照明にしなかったのには、価格面が大きく影響している。寺谷氏によれば、このモデルハウスを作るに当たって、通常よりも倍の費用が掛かったという。

 「LEDはまだ価格が高く、家一軒をすべてLEDにするというのは、今購入を検討されている方には現実的な話ではありません。やはり、蛍光灯と一緒にミックスする形が、もっとも現実的なエコ照明プランだと思います。オールLEDハウスは、最新の技術を使ったらこうなるというのも見せるためのものとなっています」(寺谷氏)

 また価格のほかにも、LEDが持つ光の特性もあるという。

 「LEDはオールマイティーではありません。光は前に向かって出るかわりに、後ろに光が出しにくい。そうなると、ベースとなる明かりは蛍光灯で、手元やアクセント照明にはLEDを使用するといった方が、コストを含めたトータルバランスとしては良いと思います」(川端氏)

 つまり、“オールLED”よりも、蛍光灯を交ぜた“ハイブリッド照明”の方が、現実的な照明プランということだ。

 その一方で、寺谷氏は「パナホームの住宅の標準仕様でも、玄関灯や防犯灯などでLEDは導入され始めています。コストに関しては、時間の問題ではないでしょうか」と話している。蛍光灯との組み合わせで、LEDは徐々に暮らしに浸透し始めている。


 東京都新宿住宅展示場の所在地は東京都新宿区西新宿4-36。受付時間は10時から18時まで。

エクステリアもLED照明となっている
外壁には汚れが付きにくい光触媒のタイルを採用天井には1kWクラスの太陽電池パネルを搭載している。京セラ製だが、パナソニックが三洋電機を子会社化したことにより、今後は三洋電機製に切り換える予定とのこと