やじうまミニレビュー

FDK「僕はスマホ充電用の乾電池です! 」

~スマホ充電用に特化した乾電池の実力は?
by 藤山 哲人


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


富士通のスマートフォン充電用アルカリ乾電池「僕はスマホ充電用の乾電池です! 」

 電池メーカー「FDK」から登場した、新しい電池の名前があまりにも直球すぎる!

 家電Watchをご覧の皆さんは、約2カ月前のニュースを見て、ディスプレイの前で思わず大笑い、もしくは苦笑したであろう。こんなネーミングだ。

「僕はスマホ充電用の乾電池です!」

 これシャレじゃなくで、正真正銘の製品名だからスゲー!

 今回は「僕はスマホ充電用の乾電池です! 」(以下、「僕はスマホ~」と略)が、本当にスマートフォンの充電にベストマッチな乾電池なのかを調べてみたい。


メーカーFDK
製品名僕はスマホ充電用の乾電池です!
アルカリ乾電池 単三形 4個パック
LR6SUMAHO
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格382円

 「僕はスマホ~」のメーカーであるFDKは、電池メーカーとしては超老舗なのだが、株式の7割近くを富士通が持っているように、正真正銘の富士通の子会社。でも多くの会社に乾電池をOEM供給していたりする。大げさに言えば電池業界のフィクサー(黒幕)的存在なのだ。

「僕はスマホ~」という製品名の横には富士通のロゴが印刷されている裏返すとメーカー名はFDK株式会社となっていて、事情を知らない人は違和感を覚えることだろう
少し古いがローソンブランドの電池も、よーく見てみるとFDKのOEMだったり

比較はFDKの従来モデルとパナソニックEVOLTAを使う

5種類の電池で実際にスマホを充電してみることに

 というわけで、FDKの「僕はスマホ充電用の乾電池です! 」でスマホをさっそく充電実験してみたいが、この電池だけをテストしても性能の評価は難しい。

 そこで比較対象として、同じくFDKから発売されている何本かのアルカリ電池と、量販店やスーパーでも簡単に入手できるアルカリ乾電池の代表として、パナソニックのアルカリ電池「EVOLTA(エボルタ)」を用意。これらの電池をスマートフォンの充電に使用して、本当に「僕はスマホ充電用の乾電池です!」が優れているのかを検証しよう。


【エントリーナンバー1】FDK:僕はスマホ充電用の乾電池です!

電池の寿命とされる0.9Vになっても、できるだけ多くの電流を出せるようにチューニングされているという。サイズは単三形のみ

 今のところ大きな家電量販店などでしか見かけないが、FDKの広報によれば、今後は販路をスーパーやコンビニに広げて、入手しやすくなるという。また、後述するFDKの電池のパッケージを替えただけのものではなく、放電特性などをスマホ充電用に最適化したまったく別の電池だということだ。価格は4本セットで380~420円程度。液漏れ防止設計となっている


【エントリーナンバー2】FDK:G-PLUS

携帯ラジオからデジタル機器まで、幅広い対応ができるG-PLUS。廉価版のR-SPECより高性能で、単1~単5に加え角型9Vの006Pタイプもある

 FDKのアルカリ電池では中位クラスに位置するもので、大電流のデジタル機器からラジオなどの省電力機器まで、ワイドレンジにカバーする。価格は単三形が4本セットで300~470円程度。


【エントリーナンバー3】FDK:PremiumG

FDKの最高グレードアルカリ乾電池。G-PLUSよりさらに大電流出力の性能がアップされている

 FDKでは最高級(G-PLUSのワンランク上)のアルカリ電池。G-PLUSのワイドレンジに加え、液漏れ防止構造を採用し、使用推奨期限が G-PLUSの倍の10年になっている。価格は単三形が4セットで450円前後。


【エントリーナンバー4】FDK:D RANGE

デジタル機器向けとして大電流に特化したアルカリ電池。デジカメやストロボ向け

 昨年まではデジタル機器向けとしてFDKの最高グレードに位置づけられていたのがこの「D RANGE」。デジカメやストロボなど大電流に特化したアルカリ電池だったが、ワイドレンジのPremiumGに統合され、現在は製造中止となっている。とはいえ、まだ販売されている店もあり、価格帯は単三形が4本セットで350~600円となっている。


【エントリーナンバー5】パナソニック:EVOLTA

コンビニやスーパーならどこでも手に入ると言っても過言ではないアルカリ乾電池のEVOLTA。パナソニックのアルカリ電池では、ハイグレードに位置づけられる

 「世界一長持ち」がキャッチフレーズのおなじみEVOLTA。小電流~大電流までのワイドレンジ対応で、使用推奨期限10年、液漏れ防止対策もされている。FDKのPremiumGと真っ向から対決するアルカリ乾電池だ。パナソニック製の乾電池は自社生産となっている。価格は単三形が4本セットで400~500円


【使用するスマートフォン充電器】単三電池2本式のスマートフォン専用充電器

パナソニックのリチウム乾電池付属でコンビになどで販売されているアリスティのAD28S

 以前にレビューしたパナソニックのリチウム乾電池が付属されていたスマホの緊急充電器を使って、これらの電池でスマートフォンを充電する。なおこの充電器は、アルカリ電池にもちゃんと対応している。


【使用するスマートフォン】富士通:T-01D REGZA Phoneスマートフォン

実験に使った富士通のREGZA Phone(T-01D)。なんか挙動があやしく2012年8月のOSアップデートが待ち遠しいぞ内蔵バッテリー容量は1,400mAhとなっている
スマホのバッテリー状態などを監視できるBattery Mix。画面のようなグラフに加え、リスト形式でも表示できる

 このスマートフォンの内蔵バッテリー容量は1,400mAh。充電は、スマホの電池残量がおよそ20~50%の状態から行なっている。電池の消費が多い各種設定は、次のようになっている。

・WiFi:ON
・モバイルデータ通信:ON
・画面の明るさ:およそ40%で自動調整
・GPS:OFF
・Bluetooth:OFF

 なおバッテリー容量の変化は、Battery Mixと言うアプリを利用した。


■■注意■■

・乾電池やスマートフォンの電池は、室温にも大きく左右されます。以降の実験は、室温およそ30℃程度の環境で実験していますが、途中でエアコンなどを利用して室温28℃まで下げた場合もあるなど、常に一定ではありません。
・実験結果は、筆者が独自に調査したものです。数値は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。


単三形電池2本式の充電器では約30%ほど充電できる

実際に充電してみて、スマホのバッテリ残量がどれだけ増えたかを調べてみた

 それではさっそく、先に紹介した充電器に、それぞれの電池を入れ、スマホの内蔵バッテリーを充電。結果、どれくらい充電できたかを調べたのが次のグラフだ。


EVOLTAがトップに! FDKの「僕はスマホ~」、PremiumG、製造中止のD RANGEは同着で2位となった

 今回調べた中で、一番スマホに充電できたのはEVOLTAで、35%の充電が可能だった。スマホ内蔵のバッテリー容量から計算すると、約490mAhの充電ができることになる。対する「僕はスマホ~」は29%で、容量に換算すると約406mAhということになる。結論から言うと、スマホの充電ではEVOLTAの方が高性能という結果になった。

 30%ほどの電池残量があれば、長めの電話をするにも十分。動画サイトでムービーを見たり、ムービーの撮影をする場合でも、20分はイケるだろう。

 このパーセンテージを、充電できた容量に換算してみると、次のようになる。

実験に使ったT-01D REGZA Phoneは、スマホにしてはバッテリー容量が少ない1,400mAhなので、最新モデルではもっと少なくなるだろう。

 EVOLTAが充電できたのは490mAh。いわゆる「ガラケー」と称されるフィーチャーフォンなら、内蔵バッテリーはだいたい800~900mAh程度なので、60%程度の充電が可能だ。

 FDKの「僕はスマホ~」は406mAhで、ガラケーであれば約50%の充電が可能ということになる。数値的には、「D RANGE」「Premium G」など、従来の最高級レベルとほぼ同等の性能を備えている結果になった。

 また、それぞれの充電にかかった時間を調べてみた。基本的にはより多くスマホに給電できた電池ほど長く掛かっている。

EVOLTAは充電できた容量が490mAhと多いので時間が長くかかり、「僕はスマホ~」は406mAhと少ないのでEVOLTAより短時間になっている

 仮にEVOLTAで「僕はスマホ~」と同じ406mAhを充電するのにかかる時間を計算してみると、1時間28分となる。「僕はスマホ~」が充電にかかった時間は1時間35分なので、より短時間でスマホを充電したい人にとっても、EVOLTAの方が優勢という結果になった。

ランニングコストではエボルタよりも優勢に

 それぞれの乾電池でどれだけスマホを充電できるかが分かったが、電池の価格には結構差がある。そこで1mAhあたりのコストを計算して、一番安く充電できる電池を調べてみよう。

 ただし電池の価格は店によりけりなので、ここではヨドバシカメラの通販で4本パックを購入し、うち2本を使った場合で計算してみよう。なおD RANGEは生産中止となっているため、ここでは除外している。


製品名ヨドバシカメラ価格
EVOLTA510円
G-PLUS260円
僕はスマホ~420円
PremiumG498円

 この価格を元に、1mAhあたりのコストを計算してみると、次のようになる。

一番経済的なのは「僕はスマホ~」。僅差でEVOLTAとなった

 EVOLTAはスマホをより多く充電できるものの、「僕はスマホ~」に比べ少し割高なので、僅差で「僕はスマホ~」が安い結果となった。

  ここまでの実験から言えるのは、「僕はスマホ~」はパナソニックのEVOLTAには劣るものの、FDKの他のアルカリ電池と比べるとランニングコストも安く、ハイグレードのPremiumGと同じだけスマホを充電できる。FDKのアルカリ電池の中では、確かにスマートフォンの充電に特化していると言えるだろう。

スマホ以外にも使える

 「僕はスマホ充電用の乾電池です! 」とデカデカと宣言され、末尾には「! 」マークが付くほどなので、スマホの充電以外には使えないの? と思ってしまう人も多いだろう。

パッケージの裏には「スマホの充電以外にも使えます」とある

 しかしパッケージの裏には、こっそりと「スマホの緊急充電器以外でもご使用いただけます」とある(笑)。「オイオイ! ここまで断言しておいてそりゃないだろ? 」とツッコミたくなくるが、スマホの充電にピッタリな放電特性を持たせているだけで、フツーのアルカリ乾電池に変わりはないのだ。

 そこで今度は、電池が熱くなるほどの大電流とは打って変わって、小電流の豆電球を連続点灯したときの寿命や電圧を調べてみた。


おお! 省電力の機器でもパフォーマンスいいじゃん! ちなみにG-PLUSのカーブが5時間当たりで歪んでいるのは、暑くて死にそうでエアコンをつけたせいです。すいません……

  このグラフは、横軸が豆電球を点灯できた時間の長さ、縦軸が電圧となっている。一番長持ちしたのは、FDKのハイグレード電池PremiumGだが、「僕はスマホ~」も10時間15分も利用できた。

 一方、スマホの充電ではナンバーワンだったEVOLTAは、高い電圧を出し続けられるが、そのぶん使える時間が短くなるようだ。

 このように「僕はスマホ~」は、スマートフォンの充電だけでなく、懐中電灯やオモチャなど小電力の機器の電池としても使えるようだ。細かいことを言えば、電圧が普通のアルカリ電池より若干低めなので、懐中電灯が暗く感じたり、モーターが遅くなるということもあるかもしれない。


「僕はスマホ充電用の乾電池です! 」は未知の可能性も秘めている

今回の実験でスマホの充電でも高いパフォーマンスを発揮するのはもちろん、省電力の機器でもいい感じに長持ちなのが分かった「僕はスマホ充電用の乾電池です! 」

 今回の実験では、何年もの販売実績を積み重ねているパナソニックのEVOLTAの方が性能が上だったが、新参者としては健闘したといえるだろう。FDKの中では性能と価格で最もスマホの充電に適していたのは間違いない。

 ちなみにFDKによれば、今後「僕はスマホ充電用の乾電池です!」を標準添付したスマホの緊急充電器を発売するという。今回利用した緊急充電器はサードパーティー製だったが、FDKは充電器の要となるDC/DCコンバータ(電池2本の3VをUSBの5Vに変換する部品)も自社で生産しているため、「僕はスマホ充電用の乾電池です!」に特化した緊急充電器が今後発売されれば、EVOLTAよりも充電できる容量が多い緊急充電器となる可能性も秘めている。

 スマホの充電は、電池の特性や充電器の性能、スマホ側の充電回路が絡み合ってくるので、すべて電池やスマホをテストするのは不可能だ。特に電池は使ってみなければ性能が分からない。「僕はスマホ充電用の乾電池です!」を見かけたら、今回の実験結果を参考に、充電具合を確かめて欲しい。





2012年 8月 7日   00:00