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家電製品ミニレビュー

パナソニック「1.5Vリチウム電池単三形」

〜コンビニで買える乾電池型リチウム電池、どんな機器で使うとベスト?
by 藤山 哲人

 先日コンビニに行ったら、ある充電器が目に飛び込んできた。スマートフォン向けの充電器なのだが、中にはあまり見かけないパナソニックの電池が入っている。

 手に取ってよく見てみると、そこには「リチウム乾電池」と書いてあった。リチウム電池と聞くと、充電式の「リチウムイオン電池」を思い浮かべるが、この電池は使い捨ての乾電池なのだ。

 その後、量販店に行くと、このリチウム乾電池が単体でも売られていた。なんでも、デジカメなどの大電流機器に使うことで、アルカリ乾電池よりも長持ちするらしい。

コンビニで見つけたスマートフォン用の充電器。メーカーはinG.(多摩電子工業)で、正式名称は「リチウム乾電池交換式単三×2本コード AD28S」。定価は1280円と高いが、中には見慣れない「リチウム乾電池」が入っている 家電量販店に行ったら、リチウム乾電池単体でも売っていた。単三が4本入って1,280円だった。2本パックだと700円前後。今回のレビューは、このリチウム乾電池を中心に紹介していこう

 これはぜひ買って遊んで……いやいや、実験してみなくては! 一般的なアルカリ乾電池と比較して、どのような特徴があるのかを調べてみよう!


メーカー パナソニック inG.(多摩電子工業)
製品名 1.5Vリチウム乾電池
単3形4本パック
FR6SJ/4B
リチウム乾電池交換式
単三×2本コード
AD28S
希望小売価格 オープンプライス 1,280円
購入店舗 ヨドバシカメラ ファミリーマート
購入価格 1,280円 1,280円


使い捨てのリチウム電池は珍しくはないが、単三形だと話は別

 製品を紹介する前に、リチウム電池というジャンルの話から触れよう。使い捨てのリチウム電池と言えば、フィルムを使うタイプのカメラや、ビデオカメラなどの内蔵時計をバックアップするためのコイン型電池が有名。

 こういった電池は、型番に「CR」で始まるものが多く、スーパーなどでもフツーに売られている。1本当たりの電圧は3Vだが、カメラ用だと2本入って6Vとなっている場合もある。

コイン型のリチウム電池は、スーパーなどでも売っている。これも使い捨てのリチウム電池で、電圧は3V こちらもスーパーなどで見かける、フィルム式カメラ用の使い捨てリチウム電池。1本3Vなので、2本パックされたタイプだと電圧は6V

 が、このパナソニックのリチウム乾電池は、電圧が乾電池と同じ1.5Vなのだ。

エナジャイザーのリチウム乾電池「アルティメイト リチウム」。以前はフジフィルムが正規代理店だったが、現在はヒゲソリのシック・ジャパンが販売している

 これまでにも、単三型のリチウム電池はいくつかあった。とくに、アメリカのエナジャイザー社の単三リチウム電池「e2(イー・スクエア)」を見かけることが多い。この電池は超長持ちで、軽く、マイナス40℃の極寒でも使えるとのことで、デジカメ用の電池などとして、一部のユーザーに広まりつつある。現在は、その後継となる「ULTIMATE LITHIUM(アルティメイト リチウム)」が販売されている。

 ただコンビニで見かけた電池はパナソニック製だ。電池のエンジニアに聞いた噂話によると、単三のリチウム電池はエナジャイザーが特許を押さえているため、他社は作れないという話を耳にしたことがある。エナジャイザーと同じ製品なのか? まったく新しいものなのか? せっかくなので、これについても調査してみよう。


まずは電流が少ない豆電球で比較

 それでは早速、パナソニックのリチウム乾電池が、一体どのぐらい長持ちするのかを実際に調べてみよう。比較した対象となる電池は、同じくパナソニックのアルカリ電池「エボルタ」。そして、先ほど話題に出した、エナジャイザーのリチウム乾電池「ULTIMATE LITHIUM」も登場してもらおう。

 ちなみにパッケージによれば「パナソニックのアルカリ乾電池“エボルタ”の2倍長持ち」とある。コレには細かい条件が色々書かれていて、「500mW(ミリワット)連続放電、終止電圧0.9V(温度:20℃±2℃、相対湿度:60%±15%)。リモコンなどの低負荷機器では、アルカリ乾電池と同等の寿命になる場合があります」とのこと。

今回実験に使用する電池。パナソニックとエナジャイザーのリチウム乾電池と、パナソニックのアルカリ電池「エボルタ」だ パナソニックのリチウム乾電池のパッケージ裏面に書かれている注意書き。重さはアルカリ電池(エボルタではない)より35%軽く、寿命はエボルタの2倍あるという

 最初は、豆電球の点灯実験からスタート。今回使用する豆電球の消費電力は390mW(およそ0.26A)。先ほど挙げた性能発揮の条件では「500mWの場合」だったので、それよりも消費電力が少ないことになる。この条件で、どれだけ数値が出るかどうかが見ものだ。

 温度や湿度については、普段の生活空間――特に温度管理をしていない筆者の仕事部屋だ。電池が空になった指標の終止電圧は、0.9Vとした。

 なお本製品では、パッケージに「豆球式ライト、豆球使用の玩具に使用しないこと。豆球の寿命が短くなることがある」と明記されている。今回は実験のため敢えて豆電球を使ったが、読者の皆様が実際に使用される場合はご注意いただきたい(使用禁止に関する理由については後述)。

 まずは、アルカリ乾電池代表のエボルタと、パナソニックのリチウム乾電池の寿命の比較のグラフからご紹介しよう。結果は以下のグラフの通りになった。

豆電球における、パナソニックリチウム乾電池とアルカリ電池「エボルタ」との比較

 豆電球の場合、エボルタは8時間46分使えたのに対して、リチウム乾電池は14時間2分。つまりリチウム電池はエボルタの1.6倍長持ちしたことになる。メーカーの条件にあった500mWより少ない390mWだったためだろうか、2倍にはならなかったが、長持ちであることは確かだ。ちなみに、500mWは390mWのおよそ1.28倍。1.6倍に1.28をかけてみると、おお!ちょうど2.0倍だ! この数値は偶然一致したのかもしれないが。

 次に、パナソニックとエナジャイザーの比較をしたのが次のグラフだ。

豆電球における、パナソニックリチウム乾電池とエナジャイザーリチウム乾電池との比較

 パナソニックは14時間2分、エナジャイザーは13時間34分と、パナソニックがわずかに長もちする結果となった。とはいえ、割合にすれば3%の違いしかない。ほぼ同じ寿命と言ってもいいだろう。

 なお、パナソニックはエナジャイザーより僅かに電圧が低くなっているが、これは室温が関係しているのかもしれない。エナジャイザーは暖房を入れた室温20℃程度で実験したのだが、パナソニックは実験開始時は20℃の部屋だが、その後スグに暖房を切って寝てしまったので、徐々に室温が下がり10℃前後まで下がっていた可能性がある。いずれにせよ、あくまで参考値として見ていただきたい。

 パナソニックのリチウム乾電池のグラフを見ていると、あることが気になった。それは、豆電球を接続していないときの電圧の高さだ。新品のマンガンやアルカリ電池は、豆電球などの機器を接続しないと1.6V近くあり、接続するとだいたい1.5Vになる。

 リチウム乾電池は、負荷を接続しないときは1.8Vと高い。機器を接続すると、急に電圧が1.6V程度に下がるが、マンガンやアルカリ乾電池に比べると、それでも0.1V高くなっている。そのため機器側で乾電池は1.5Vとして厳密に設計されている場合は、0.1Vの差が故障につながる可能性がある。本製品で豆球の使用が制限されているのも、これが理由だろう。

豆電球における、点灯した電圧(グラフ上)と、点灯していない状態の電圧(グラフ下)
オキシライド電池。現在では発売されていない

 さて、「電圧が乾電池より高い電池」といえば、思い出されるのが「オキシライド乾電池」だ。パナソニックが2004年に発売した電池だが、初期電圧が1.8Vと高いことため、アルカリやマンガン電池の特性に合わせた機器で利用すると、異常に加熱するなどの不具合が発生する場合があったという。結局、後継となるエボルタが発売された後、オキシライド乾電池は生産中止となってしまった。このリチウム乾電池は大丈夫だろうか?

 しかし、リチウム乾電池とオキシライド乾電池の電圧の変化を見ると、たとえ初期電圧が1.8Vでも違いは明らかだ。

 オキシライド乾電池はグラフのようにしばらく高い電圧が続くが、リチウム乾電池は機器のスイッチを入れた瞬間からスルスルと電圧が1.6V〜1.5Vまで下がる。安心して使える特性ということだ。

豆電球における、パナソニックリチウム乾電池とアルカリ電池「エボルタ」、そしてオキシライド電池との寿命比較


スマートフォンを充電すると、アルカリ電池との違いが歴然!

 さて今度は、冒頭で紹介した、コンビニで売っていたスマートフォンの充電器を使って、リチウム乾電池とアルカリ乾電池、そしてエナジャイザーとの性能を比較してみよう。

 このスマホの充電器、非常に大電流だ。先の豆電球の消費電力は390mWだったが、この充電器は消費電力は5,550mW(=5.55W。電池2本で1.85A流れていた)。なにせスマホを充電していると、電池に直接触れなくなるほど熱くなるぐらいなのだ。

 このスマホの充電器に、それぞれの電池を入れてみて、NTTドコモのスマートフォン「XPERIA」に内蔵されている1,500mAhのバッテリーが、空の状態からどれだけ充電できるか挑戦した。その結果が次のグラフだ。

スマートフォン充電器を使って、パナソニックリチウム乾電池とアルカリ電池「エボルタ」、エナジャイザーのリチウム乾電池のスマホ電池(1,500mAh)充電量の比較
 

 リチウム乾電池恐るべし! 同じ充電器にエボルタを入れた場合は19%までの充電だったが、パナソニックのリチウム電池は54%! なんとアルカリ電池の2.8倍だ。

 さらにエナジャイザーにいたっては、64%も充電できてしまった。さすがに消費電力が多い機器では、売り文句以上の性能を発揮するようだ。

従来式の携帯電話の緊急充電に入っていたエボルタを取り出し、パナソニックのリチウム電池を入れてスマートフォンを充電してみた。結果、専用充電器を使う方が良い結果となった

 ここで、アルカリ電池とセットになって販売されていた携帯電話の充電器「ing. FD24F」に、リチウム乾電池を入れて充電してみた。この充電器では、スマートフォンへの対応は特に謳われていない。

 結果、消費電力は1,410mW。アルカリ電池よりも効果が得られるのは間違いないが、正式対応を謳った充電器以上の出力は得られなかった。


エナジャイザーのリチウム乾電池と同じ? 違う?

 というわけで、リチウム乾電池の長持ち性能がわかったところで、次は2つ目のテーマ「エナジャイザーのリチウム乾電池と同じ? 違う?」について調査してみよう。

 まずは外観から見比べよう。リチウム乾電池で特徴的なのは、プラス端子側に開いた穴だ。この穴はショートしたり、空の電池と新品の電池を混ぜて使ったときなどに、内部で発生するガスを放出するためのもの。

 パナソニックとエナジャイザーを見比べてみると、穴の大きさだけでなく、プラス端子の形までまったく同じと言っていいだろう。マイナス端子側も形はまったく同様だ。

パナソニックのリチウム乾電池 エナジャイザーのリチウム乾電池。普通の電池はプラス端子を左側にすると文字が読めるようになっているのだが、反対になっている
左がエナジャイザー、右がパナソニックのリチウム電池。プラス端子の穴がソックリだ マイナス端子側もウリふたりのエナジャイザーとパナソニック。OEMっぽい臭いがプンプンするぞ!

 次に、メーカー公表のスペックをまとめてみる。使用推奨期限や原産国に違いが見られるが、そのほかのスペックはほぼ同じとなっている。パナソニックの製品がエナジャイザーのOEMだという確証はないが、個人的には、その可能性は高いと感じた。


メーカー パナソニック エナジャイザー
直径 約14.4mm 14.5〜13.5mm
長さ 50.4mm 50.5〜49.5mm
重さ 14.5g 14.5g
使用可能温度 -40℃〜60℃ -40℃〜60℃
使用推奨期限 11年 14年
原産国 アメリカ シンガポール


リチウム乾電池はココで使うと性能を発揮する!

 このリチウム乾電池が活躍する場面は、やはり消費電力の多い機器だ。謳い文句ではアルカリ乾電池の2倍長持ちするとのことだったが、実験ではそれ以上に長持ちで性能を発揮できる結果も得られた。かたや、消費電力が少ないもので使うと、その性能を発揮できないばかりか、アルカリ乾電池とあまり変わらず、無駄な出費になってしまう。

 リチウム電池が4本で約1,300円程度、エボルタは4本550円程度なので、価格は2.3倍。単純計算で、エボルタより2.3倍以上長持ちする機器ではじめて経済的になる。

 それでは最後に、リチウム乾電池が効果を発揮するであろう具体的なシーンを列記して本稿を終えよう。以下のようなシーンには、値段が高くても、結果的に得られるメリットは大きいはずだ。

・スマートフォンの緊急充電
 実験では同社のアルカリ電池より2.8倍もの効果が得られた。経済的かつ長寿命に使える。

・デジタルカメラ・ストロボ
 これらも携帯充電器並み、もしくはそれ以上に消費電力が多いので、リチウム電池の方が得になる。

・ラジコン・ミニ四駆
 モーター系のオモチャの中でも、速度やパワーが求められるものは、消費電力が多いのでリチウム電池が威力を発揮する。ただし公式の大会などでは使えない場合がある点には要注意。

・アマチュア無線機
 無線人口が減っている今、恩恵を受けられるユーザーは少ないが、ハンディータイプの無線機のバッテリーとして利用価値が高い。

・0℃以下の寒い場所で使う機器用
 アルカリ乾電池は、0℃を下回ると極端に性能が落ちるので、スキー場や極寒の地での撮影、計測などに最適だ。






2012年1月25日 00:00