やじうまミニレビュー
カシオ計算機「DV-220W-N」
カシオ計算機「DV-220W-N」 |
電子卓上計算機、略して「電卓」を単独の機器として持っている人は減ってきている。いま、居酒屋のレジ前で割り勘の計算をするときは、スマートフォンを使うだろう。事務作業で電卓が必要な場合も、パソコンを机に備えているサラリーマンであれば、パソコンの電卓機能や表計算ソフトを使うだろう。
しかし、会社内で伝票の検算をするときなど、ある程度の量の数字を計算するときには、単独の電卓がほしくなる。やはり、キーの打ちやすさやの点ではスマホやパソコンよりも、断然優れているのだ。
今回は、液晶を2つ持つことで、これまでにない使い勝手を実現したという、カシオ計算機のツイン液晶電卓「DV-220W-N」を紹介したい。
メーカー | カシオ計算機 |
製品名 | DV-220W-N |
価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 2,558円 |
カシオは、正式社名をカシオ計算機というだけあって、1972年の「カシオ ミニ」や、1983年の「カード電卓」など、電卓の歴史において忘れられない製品をいくつも出している。
今回、発表されたツイン液晶電卓は、液晶を2つ持つことによって、使いやすさを向上させたというユニークな提案だ。ツイン液晶電卓は、3機種が用意されて いるが、今回は一番大きいデスクタイプの「DV-220W-N」を選んだ。ほかに、一回り小さいジャストタイプの「JV-220W-N」と、さらに小さい ミニジャストタイプ「MV-220W-N」がある。
3機種とも12桁の桁数など、機能的な部分はほぼ共通だ。取り扱い説明書も3機種で共通になっている。あえていえば、端数処理が異なっていて、一般的な端数処理なしに加え、DVは切り上げ/切り捨て/四捨五入、JVは切り捨て/四捨五入が選択できるようになっている。
■2つの液晶と専用キーを備える
ツイン液晶電卓のパッケージは、通常のブリスターパックで、店頭では本体が見える状態で吊り下げて販売されている。電卓本体以外には、A3用紙2つ折りの取り扱い説明書が付いているだけだ。
パッケージはブリスター形で商品が見える | パッケージの背面にはツイン液晶の3つのメリットが書かれている |
ツイン液晶が最大の特徴 | 取り扱い説明書に書かれたツイン液晶の使用例 |
パッケージから取り出すと、デスクタイプなので本体は大きく、サイズは135×187mm(幅×奥行き)で、A4用紙半分ぐらいの大きさだ。使い始めに乾電池を入れようとしたら、電池を入れるところがない。電源は、太陽電池とLR44の補助電池の併用なので、乾電池は必要ないのだ。ちなみに補助電池のLR44の寿命は、1日1時間の使用で3年間とされている。
本体全景 | 一般の電卓と異なりメモリー関係のキーがない | 液晶周囲に「計算切替」などのキーがある |
液晶部分には角度が付いていて見やすい | 底面のゴム足は大きくすべりにくい |
この製品の最大の特徴となるツイン液晶は、大きな通常の液晶の下に、幅が3分の2ほどの大きさで並んでいる。取り扱い説明書では、大きい方の液晶を「メイン画面」、小さい方の液晶を「サブ画面」と呼んでいる。液晶の脇には「計算切替/△/▽」という3つの見慣れないキーがある。
ほかのキーを眺めると、「億/万/税抜/税込」などのキーが独立しており、いかにも伝票計算に使われる実用向けな雰囲気が強い。
一般の電卓と異なっているのは、「M+(メモリー加算)/M-(メモリー減算)/MR(メモリー内容表示)/MC(メモリークリアー)」などのメモリー関係のキーがないことだ。これは、あとで説明するツイン液晶電卓の特性によるものだ。
キーのタッチはカチャカチャという感触で、高級感は感じられないが、キー自体は、間隔が広く余裕のある配列で打ちやすい。
30cm定規との大きさ比較 | デスクタイプなので、フルサイズのキーボードと比べても大きめだ | 底面積はA4用紙半分ほどある |
■直感的に使える2つの液晶
この製品の目玉であるツイン液晶について見ていこう。2つの液晶を使う機能は3つ用意されている。
まず、「ツイン計算機能」。これは、液晶ごとに計算機があると思えば良い。つまり、キーボードを共有している2台の電卓があって、それぞれの計算結果がメインとサブのそれぞれに表示されているわけだ。どっちの液晶側を操作するかは、「計算切替」キーで切り替えることができる。
この機能が一番便利だったのは検算のときだ。最初の計算をメイン画面で行なったあとで、「計算切替」を押し、同じ計算をサブ画面で行なう。2つの液晶の数字が合えば、結果が正しいというわけだ。
通常の電卓であれば、こういうときは1回目の結果を紙にメモしておくだろう。また、電卓を使いこなしている人であれば計算結果を「M+」キーでメモリーに入れておき、2回目の計算結果を「M-」で引いて、差分を「MR」キーで表示させるだろう。このように、メモリ機能に慣れていれば同じことはできるが、直感的な操作という点では、ツイン液晶の方が分かりやすい。
また、ツイン計算機能には、電卓で何かを計算中に、別の計算をちょっとしたいというときに、サブ画面に切り替えて使うという用途もある。
【ツイン計算機能】「計算切替」キーを使って、2つの液晶でそれぞれ計算を行なった例。結果が一目で見比べられる | 【数字メモ機能】メイン画面で計算し、「▽」キーでサブ画面に値をコピーした例。サブ画面に「メモ」と表示される |
次に、「数字メモ機能」。「▽」キーを押すとメイン画面で表示している数字を、サブ画面にコピーするというものだ。逆に「△」キーを押すと、サブ画面の数字をメイン画面にコピーできる。
さっきの検算の例でいうと、液晶を切り替えて2つの電卓で比較するよりも、一度計算した結果をサブ液晶にメモしておくというほうが直感的に使いこなせる人もいるだろう。紙にメモしておく代わりにサブ画面にメモしておく感覚なので応用範囲も広い。
また、一般の電卓でいえば「▽」が「M+」キーに、「△」が「MR」キーに当たるわけだが、メモリーの内容がサブ画面に表示されているのでいつでも確認ができるという点で、ツイン液晶のメリットがある。
最後の1つが「アシスタント表示機能」。例えば、15,000×100という計算をすると、メイン画面には1,500,000という結果が表示される。ここで、「億万表示」キーを押すと、サブ画面に「150万」と表示される。
つまり、位取りで間違いそうな桁数の多い数字を、わかりやすいように位取りしてサブ画面に表示する機能なのだ。
さらに入力に位取りキーを使うと、リアルタイムで表示される。例えば、「1」「億」「+」「5」「00」「0」「万」「=」という計算をすると、メイン画面には「150,000,000」と表示されるのと同時に、サブ画面に「1億5000万」と表示される。
【アシスタント表示機能】メイン画面で計算して、「億万表示」キーを押すと、サブ画面に万単位で表示される | 「億」「万」などのキーを使って入力すると、下の液晶に億万表示される | 液晶は12桁なので、最大表示は「9,999億9,999万」となる |
なお、位取りされる単位は「億」と「万」だけだ。12桁の数字を入れても、9999億まで1兆には届かないだから、実用的には、これで良いのだけれど、「1億×1万」と入力すると「1兆」と表示するような計算ができると、なお面白かったと思う。
また、入力キーとして「千」が欲しいと思った。レシートなどの検算をしていると、3桁目でカンマが入っている数字を打つことが多いので、「万」よりも「千」の方が直感的に打ちやすいのだ。今ある「√」を置き換えてくれてもよい。
■便利だが、一般的な操作ルールも取り入れて欲しい
ツイン液晶電卓の一番のメリットは、サブ画面側に計算結果などの数字を“置いておく”ことができることだ。同じことは、これまでの電卓でもメモリ機能を使うことで実現できたが、ツイン液晶は、目の前に2つの液晶があることで直感的に使いこなせる。電卓を使う時にメモ用紙が欠かせないような人には便利な製品だ。
ただし、ある程度、電卓に対する知識があると、従来の「M+/M-/MR/MC」などのメモリー関係のキーが無いのでかえって戸惑ってしまう。例えば、従来のメモリー関係のキーは残し、サブ画面にはメモリーの内容を表示するというモードを作ると、従来の電卓に慣れた人でもツイン液晶のメリットが得られるだろう。
電卓入門者の方には奨められるが、この製品独自の使い方に留まってしまうのが惜しい。メモリー機能と併用することで、一般的な電卓と同じ操作が覚えられるというメリットもある。電卓の使い方は、基礎的な教養なので、できるだけ一般的なルールに則した方が良いと思うのだ。
いろいろ書いたが、現状でも実用性の高い電卓で、ツイン液晶を使いこなさなくても、ごく普通に使える製品だ。ツイン液晶という機能に限って言えば、もっと面白い使い方のアイデアがありそうだ。現状でも便利な機能なので、ぜひうまく育てて欲しいと思う。
2012年 3月 15日 00:00
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