やじうまミニレビュー

蓼科プランツ「箱田んぼ」

~ベランダで稲作ができる“田植えセット”
by 但見 裕子

やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです



蓼科プランツ「箱田んぼ」
 地方の生まれなので、子供の頃、田んぼは身近なものだった。しかし現在の生活範囲では、田んぼを見ることはまずない。

 だから、遠出をしたときの車窓から、満々と水をたたえた田んぼの青い稲を見ると、ちょっと吸い込まれるように見入ってしまうことがある。

 蓼科プランツの「箱田んぼ」は、そうした田んぼと離れた暮らしになってしまっている人のために、都会生活の中でも田んぼ体験ができるよう作られた製品だ。苗はもちろん、用土、容器、肥料が全部セットになっていて、庭先やベランダで稲作体験ができるという。

 田植えをし、稲刈りをし、脱穀、精米までを小規模ながらフルコースで行ない、最終的には自分で育てたお米を炊いて食べることができるということで、学校教育の場でも教材として使われているという。

メーカー蓼科プランツ
製品名箱田んぼ
希望小売価格5,460円
購入店舗日比谷花壇
購入価格5,460円

 「箱田んぼ」は、大きな箱で届けられた。持ち上げてみると、かなり重い。土まで入ったセットなのだから当然なのだが、「女一人で、玄関からベランダまで運ぶのには、このくらいが上限だろうな」という重さだ。箱ごと量ってみたら11.1㎏あった。

 箱を開けてみる。内容は、苗(根本を濡れた紙で包み、プラパックに入れてある)、大きなビニール袋に入った培土、「箱田んぼ」のロゴがプリントされた発泡スチロール製の容器、小袋に入った肥料、取扱説明書、薄手のゴム手袋だ。

こんな感じで玄関に届いた。手前の靴と比べてもらうと大きさがわかる箱を開けたところパッケージ内容。上が栽培用の発泡スチロール容器、下段左から取扱説明書、ゴム手袋、肥料、苗、培土

 取扱説明書は、ペラの紙を折り合わせた4ページながら、カラー写真が豊富に入っており読みやすい。また、手袋が入っているところに、軟弱な都会生活者への心遣いが感じられると思った。

 取説の表紙に、赤い線でかこって「お届け後、すぐに作業ができない場合は、苗をパックより取り出し、土をつけたまま2cm位水を入れたコップに浸けてください。」とある。荷物を受け取ったのが夕方だったので、とりあえず今日は田植えができない。指示通りコップの水につけて立てておいた。

 すると、家の猫が妙に興味を示し、苗にかじりつこうとする。大事な米の苗を食べられてはたまらないので、コップをベランダに出して窓を閉めた。

 窓の外で緑の苗が、さやさやと風に踊っている。

取扱説明書はカラーで見やすい到着後、すぐに作業できない場合は、苗はコップの水につけておく

 翌日は、いよいよベランダで田植えである。夫と二人ではじめた。風が強いがいい天気だ。

 まず、容器をベランダの高い位置にセットした。日当たりを考えてだ。これに培土を入れよう。袋を開けると、生々しい土の匂いがふわっと立ちのぼる。黒い、見るからにいい土だ。弱酸性に調節した水稲用の培土だそうだ。

 これを容器にザッと流し入れる。風で土ぼこりがわりと激しく飛んで、せき込んだ。土いじり自体初めてのお子さんに体験させてあげようというような場合には、風向きなどの対策をしてあげるのもいいかも知れない。もちろん大人は、土ぼこりくらいのことで文句を言ってはいけない。

日当たりを考えて、ベランダの高い位置に設置まずは容器に培土を入れる

 この土に水を加える。どのくらい加えるのが適当かという量は取説には指定がないので、とりあえず6L入りのバケツに8分目、5L弱ほどの水を加え、スコップでかきまぜた。

 水はわけなく土に吸い込まれた。まだまだのようだ。

 ここで夫が10Lのバケツに水を入れてきた。8L近く入っていたと思う。これを全て入れる。混ぜるにつれ、土に含まれていた空気がコポコポと泡立ち、土の色は黒さを増してきた。

 そうそう。付属の肥料を入れなくては。この小袋の肥料は、とりあえず半量を入れ、残りは、追肥用に保存しておく。

 さて、混ぜ終わった土の状態だが、結果的にどうも水が多かったようだ。少しだがゆるい。

 あとで、日比谷花壇のブログ「箱田んぼ観察日記」を見たところ、水を少しずつ入れながら、土を手でもんで固さを確かめていくのがいいようだ。

 よく見ると、取説にも、土を両手で混ぜている写真が載っている。この写真の下に「このように混ぜながら少しずつ水を入れます」とキャプションを入れておいて欲しかったなあ。もっというと「約○Lの水が入ります」と目安の量を書いておいて欲しいところだ。

 この状態で、土と水を約3時間なじませる。この3時間があるので、土の準備は遅くともお昼までにやらないと、田植えが夕方になってしまう。暗くなってからの田植えというのは何となく景気が悪いので、できれば避けておきたい。あるいは、本当の田植えと同じように、前の日までに土の準備をして水をはっておくのがいいのかも知れない。

バケツで水を入れるこれで培土のできあがり

田植えの前に、苗をほぐす
 さて、田植えだ。固めて巻いてある稲をほぐす。

 苗2本をまとめて1セットとして、6把の苗が入っているらしい。きれいに根分けしてあり、はずしやすい。

 6把入っているはずのところが、何かの間違いか7把入っていた。状態の悪い苗が入っていた場合用の予備なのかなとも思ったが、どこを読んでもそれについては言及されていない。ここは、おまけがあってラッキー、と考えることにして、7把をみな植えることにする。

 稲の苗を植えるのは初めてだ。「植える深さは培土の表面に根と茎の境目が隠れるくらい」という取説の文章を意識しつつ植え込んでいった。

 本当の田植えは、しゃがんで後じさりしながら植えていくので腰に大変に負担がかかるそうだが、「箱田んぼ」の場合にはこうして立ったまま高い位置に植えることができるのでまったくラクだ。

苗はきれいに根分けされている。本来6株のはずがなぜか7株入っていた苗を植える本来の田植えなら腰に負担が掛かるところだが、高い位置に置いたので立ったまま植えられるのはラク

 こうして、うちの田んぼはひとまずできあがったが、気になるのが折からの風である。苗が風に吹きまくられるので、倒れてしまわないか心配になってきた。

 日当たりということでこの場所を選んだのだが、この先もっともっと風の強い日もあるのだし、安全を考えて低い位置に移すことにした。ここなら磨りガラスのフェンスがあるので、日当たりがやや遮られる一方、風からはかなり守られる。

風で苗が倒れそうなので、風の届きにくい場所に変更。しかし、水が入ったあとなのですごく重かった
 とはいえ、水をたっぷり含んで重くなった「田んぼ」を動かすのはそうとう大変だった。

 たとえば台所でもズンドウなどの大きな鍋は、水をいっぱいに入れてからガス台に持っていこうと思っても重くて大変なので、まず鍋をガス台にきちんと置いてから水を入れるのがコツだ。「田んぼ」の場合は鍋よりずっと重いので、はじめによく考えて、秋までずっと「箱田んぼ」が置いてあっても大丈夫な位置で作業を始めた方がいいと思う。

 このまま順調にいけば、7月には稲が茎を増やして大きくなる「分蘖」が観察でき、8月には穂が出、9月から10月にかけて稲刈りができることになっている。次は、稲穂が出始めたあたりで経過をご報告したい。なお、今回購入した日比谷花壇では、注文の締め切りは6月27日24時までとなっている。購入をお考えの方は手続きを急いだ方がいいだろう。

稲を育てるのに必要な道具がすべて揃っているため、すぐに始められる
 箱田んぼの良いところは、稲を育てるのに必要な道具がすべて揃っているところだ。土や稲だけではなく、発泡スチロールの箱や手袋まで入っているので、他には水とスコップぐらいあれば、すぐに始めることができる。ベランダでの植物栽培やガーデニングに興味はあっても、土を入手するのも面倒で、なかなか踏み切れない人にとって、とてもありがたい製品だ。

 また、育てるのが稲で、収穫できるのが米というところも良い。以前ほどではないにせよ、日本人の主食は「米」であり、やはり特別な思い入れがある人が多いだろう。そのくせ、どのように米が育てられ、収穫されているかを知らない都会人も多いと思う。そういう人にとって、6把ほどの小さな苗から、稲を育て、お米を収穫するのは、大変面白く興味深いことだと思うのだ。

 毎日接していながら、どうやって作られているかを知らない製品は多い。お米もその1つだが、箱田んぼを使って、目の前で育っていく過程を知ることで、毎日食べるお米に対する態度も変わってくるかもしれない。

 食育の一環として好奇心の強い子供たちに、またベランダで何か育てたいが土や肥料の目配りが面倒に感じる大人たちに、さらに私のように田舎から出てきて、田んぼの風景が懐かしく感じる人もに、ぜひお勧めしたい。小さな苗とはいえ、緑の葉が風に揺れているのは、とても快い風景だ。


2010年 6月 23日   00:00