藤山哲人のモバイルバッテリー診断

イーサプライ「リストバンド型モバイルバッテリー」

~腕時計感覚で装着する、ウェアラブルなバッテリー

「モバイルバッテリー診断」は、スマートフォンの外部電源として普及しているモバイルバッテリーをレビューするコーナーです。(編集部)
イーサプライ「リストバンド型モバイルバッテリー」。パッケージには「POWER BANK Wrist」とも

 噂のメガネ型情報端末「Google Glass」をはじめとして、すでに発売されている腕時計型の端末など、次世代デバイスのキーワードは「ウェアラブル」、つまり身に付けられるということだ。そこで今回は、ウェアラブルなモバイルバッテリーを紹介しよう。

メーカー名イーサプライ
品名・型番POWER BANK Wrist
バッテリー容量1,500mAh
繰り返し利用回数非公表
サイズ
(幅×奥行き×高さ)
253×35×13mm
重量79g
カラー国内ではブラックのみ
実売価格4,000円程度
対応スマートフォンAndroid:○
iPhone:×
iPad:×

 イーサプライの「リストバンド型モバイルバッテリー」は、細長く柔らかい形状のモバイルバッテリーで、腕時計のように、腕に巻き付けて使える点が特徴だ。

 ホントにコレ使えるのか? という理由からピックアップしたモバイルバッテリーだけに、ツッコミどころ満載なので、まず断っておきたいことがある。このモバイルバッテリーは容量が1,500mAhで、スマートフォンをフル充電するためのものではないという点だ。次のようなときに使うという前提を念頭に置かないと、清く正しく公正な視点で見られなくなるので注意。

・バッテリー切れしそうだが、相手の話が長引きそうで電話が切れない

・バッテリー切れしそうだが、もう少しだけデータ通信やナビをしたい

 スマートフォンを急速充電できるほどの出力もない。あくまでもこのモバイルバッテリーは、スマートフォンを利用中にバッテリー切れを起こさないための緊急用という点に注意して欲しい。

リストバンド形状の本体と付属品
(上部)ほぼ中央にあるのがバッテリー残量計と電源ボタンのセル。その他は小さな電池が入ったセルとなっている
(上部から見て右)miniUSBコネクタは、充放電兼用のコネクタ
(下部)装着はスナップボタンで2段階の太さに調節可能。ゴムはソフトゴムで肌触りも柔らか
(上部から見て左)反対側面にコネクタはない。厚さはおよそ8mmで、重さは79g
■■注意■■

・実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。
・実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません。
・実験結果に基づいた実容量やロス率は、その値を保障するものではありません。
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにはお答えできません。

安っぽくてクセがあるけど(笑)、実用性は高い!

 まず腕への装着感は、ソフトゴムで肌触りもよく、さほど重さもない。少し大きめの腕時計をしている感じで、しばらくすると腕につけていることを感じなくなる。

 スナップボタン式の長さ調整2段階のロックは安っぽさ爆発だが、おいしいネタを提供しているとも言える。

ロックは2段階のスナップボタンで、安っぽさ爆発している点がネタとして好印象
腕につけると、厳ついGショック(腕時計)をつけた感覚だ。充電しながらスマートフォンを使うとこんな感じ。ケーブルがちょっと、ほんのちょっとだけ短い……

 気になる点としては、スマートフォンの充電用コネクタが上部にある場合は、ケーブルがわずかに短いため少し持ちづらい。あと1~2cm長さが欲しかった。iPhoneのように下部にコネクタがついている機種は、ケーブルが長く感じるかもしれない。

充電の実測テストに利用した、2012年夏モデルの富士通製ARROWS X F-10D。内蔵バッテリー容量は1,800mAh

 続けてモバイルバッテリーとしての性能を、内蔵バッテリー容量1,800mAhのスマートフォン(ARROWS X F-10D)を実際に充電して調べてみた。

・スマートフォン充電テストの結果
充電回数「50%」(948mAh相当)
※測定条件は、WiFi:ON、Bluetooth:ON、GPS:ON、省電力モード:OFF、画面OFFの状態で充電、電池残量約10%から充電開始し90%程度までを繰り返し、アプリ「Battery Mix」にて容量変化を記録

 結果はスマートフォンを50%充電できた。緊急用のモバイルバッテリーとしては申し分ない容量だ。腕に装着した状態でスマートフォンのナビ機能を使っていると、バッテリー消費が著しいが、これなら目的地まで十分たどり着けるだろう。

スマートフォンを充電するときは、添付のケーブルに7種類の変換コネクタを取り付けて使う。たいていの機器には対応できるハズだが、iPhone 5のLightningコネクタなどは機器に添付のケーブルを利用。ただし変換コネクタが必要

 小型ゆえ、コネクタにも若干クセがある。通常のモバイルバッテリーは、パソコンでおなじみのフルサイズUSBコネクタの差し込み口となっているが、本製品はMiniUSBと特殊だ。そこで添付のケーブルは、取り替え可能な7種の変換コネクタになっている。スマートフォンでおなじみのmicroUSBはもちろん、docomo/SoftBank用の携帯電話コネクタ、iPhone用のDockコネクタ、任天堂DSにPSPなどさまざまだ。

 もしスマートフォンが特殊なコネクタになっている場合は、機器に添付のケーブルを使い、フルサイズUSBコネクタをMiniUSBに変換するといい。

【スマートフォン充電(出力)スペック】
項目詳細
USBコネクタ数1(MiniUSB)
USB最大電流0.75A(750mA) ただし3.5V出力時
充電ケーブル (コネクタ)MiniUSB-MicroUSB/MiniUSB/Dock/FOAMA/任天堂DS/PSP/他
残量インジケータ1色4灯式(25%刻み)
自動電源OFF本体電源ON時も有効
40mAでOFFを確認

モバイルバッテリーとしての性能は高いが急速充電できない

 先にも軽く触れたとおり、たいていのスマートフォンは約1Aで急速充電するが、パソコンなどのUSBコネクタからでも充電できる低速充電モードも備えている。その場合に必要なのは急速充電の半分の0.5A(500mA)だ。

 このモバイルバッテリーは、低速充電のみに対応しているので、独自の測定器を用いて連続して500mAの電流を流し、電圧と電流の変化、そしてスマートフォンに充電できる実容量を測定した。

 なお実用量とは、パッケージの「○○mAh」というバッテリー容量のうち、実際にスマートフォンを充電できる容量を示す。実用量率は、表示容量に対する割合で、値が大きいほど高性能バッテリーといえる。

連続電圧変移
連続電流変移

 まず電圧の安定性は、ズバ抜けて安定している。規格ではUSBコネクタの出力電圧は5Vと定められているが、実際には5.15V出力されているようだ。とはいえこれは誤差の範囲内で、スマートフォンをはじめとした機器を破損することはない。

 電流もかなり安定しているという印象だ。だいたい420mAを中心に出力できていて、規格では500mA必要な低速充電だが420mAでも十分に安定して充電できた。

 さてこの実験を元に1,500mAhという表示容量から、実際にスマートフォンへ充電できる実容量を計算してみたところ、69%という値になった。一般的なモバイルバッテリーの実容量率は60%前半以下なので、69%という本製品はロスが少なく優秀なバッテリーと言える。

実容量ロス率

 なお計算を元に出した実用量から、各種スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機をおよそ何回充電できるかは、次のとおりになる。Android系の場合()内が内蔵バッテリー容量を示している。

【実用量と各種スマートフォンの充電回数予測】
項目詳細
バッテリー表示容量1,500mAh
連続利用時の実用量1,037mAh(69%)
連続実用量1,000mAh あたりの価格3,859円
充電回数(理論値)Android(1,300mAh):0.7回
Android(1,500mAh):0.6回
Android(1,800mAh):0.5回
Android(2,000mAh):0.5回
Android(2,200mAh):0.4回
Android(2,500mAh):0.4回
Android(3,000mAh):0.3回
iPhone 4S(1,432mAh):0.6回
iPhone 5(1,434mAh):0.6回
ソニー PSP(1,200mAh):0.8回
任天堂 3DS(1,300mAh):0.7回

充電に7時間半は時間がかかりすぎ

 急速充電はできないものの、緊急用のバッテリーとしては十分な性能を持つ本製品だが、充電性能はどうだろうか? 充電時間に関する表記がなかったので、実際に空~満タンまでの充電時間を3回測定して、その平均を取ったところ7時間半となった。容量1,500mAhにしては、ちょっと時間がかかり過ぎだ。

モバイルバッテリーを充電するケーブルは、別のケーブルになっている。写真右側が充電用ケーブル
実験に使ったUSB-ACアダプタは2A出力のもの

 また一般的なモバイルバッテリーは、同梱されている1本のケーブルでスマートフォンなどの機器と、バッテリー本体を充電できるが、本製品はそれらのケーブルが別になっている点が面倒だ。

 なお繰り返し利用回数も公表されていない。一般的なバッテリーと同様に500回なので表記をしなかったのか、それ以下なので利用回数はあえて伏せたのかは分からない。

【本体充電スペック】
項目詳細
本体充電用コネクタminiUSB(出力兼用)
添付充電器(仕様)なし
充電時間(カタログ値)表記なし
充電時間(実測)7時間26分
繰り返し利用回数非公表

出先での電話が多い営業職やマネージャ職にオススメ

 ウェアラブルな「リストバンド型モバイルバッテリー」は、あくまでも緊急用のバッテリーだ。営業やマネージャなど常に現場との連絡が必要で、メールよりも電話でやり取りすることが多い場合などに活躍するだろう。また外でデータ端末やナビとして使う場合も同様だ。変わった使い方としては、ゲームなどで行列の暇つぶしをしているときの電源としてもいい。近々だと冬のコミケの7時間待ちとか……(そこまでバッテリー持たないかも)。

 しかし何よりいちばんオススメしたいのは、ウェアラブルデバイスがらみの会話のネタとして使うのがいちばんカッコよく、笑いも取れるというところだ。

【総合評価】
メーカー・品名イーサプライ リストバンド型モバイルバッテリー
ロスの少なさ ★★★★☆(4)
持ち歩きやすさ★★★★☆(3)
単位容量の安さ★☆☆☆☆(1)
 充電の早さ ★★☆☆☆(2)
使い勝手のよさ★★☆☆☆(2)

藤山 哲人