LED電球、どれを買う?
東芝「E-CORE 一般電球形 10.6W LDA11L-G」
■明るいのに密閉器具にも対応。その秘密は電球カバーの放熱部にアリ
東芝ライテック「E-CORE(イー・コア) LED電球 一般電球形 10.6W 810lm(電球色) LDA11L-G」 |
60W形の白熱電球から取り換えても、明るさや光の広がり方がまったく遜色のないLED電球が、各社から次々と発売されている。今回はその中から、東芝ライテックのLED電球「E-CORE(イー・コア) 光が広がるタイプLED電球 LDA11L-G 810lm」を紹介しよう。
東芝の光が広がるタイプのLED電球では、昨年、全光束が485lmの「LDA8L-G」を紹介した。こちらは、2011年夏のランキング「LED電球はこれを買うべし!」において、485lm以上部門で特に使いやすいLED電球として選んだが、今回紹介するLDA11L-Gは、全光束が60W形白熱電球相当となる810lm(日本電球工業会基準)。明るさと光の拡散性を両立しているのだ。
明るさを実現するための技術には、「トリプルアーチ放熱板」というユニークな放熱技術を採用している。グローブ(電球のカバー。光源部)に細い放熱部を3カ所設けることで、明るさに悪影響を及ぼす熱を、光源部からも放熱している。そのため、ほかのLED電球ではあまり見かけられない独特なデザインとなっている。
また、光の拡散性を高めるために、電球のグローブにマルチ拡散グローブを採用。配光角は“電球形蛍光灯並み”という約260度で、LED電球特有のギラギラとした眩しさ(グレア)を抑えているのも特徴だ。
カットモデル。ヒートシンクと直結した「トリプルアーチ放熱板」で光源部からも効率良く放熱する | トリプルアーチ放熱板の放熱効果(カタログより抜粋) | マルチ拡散グローブの採用で、光は約260度広がる(カタログより抜粋) |
グローブ内で光を反射することで、不快を伴う眩しさ感や光のムラを低減しているという(カタログより抜粋) | 光源にはトリプルアーチ放熱板が挟み込まれているが、輝きは均一で眩しさが抑えられている |
メーカー名 | 東芝ライテック |
シリーズ名 | E-CORE (イー・コア) 光が広がるタイプ |
品番 | LDA11L-G |
全光束 | 810lm |
定格消費電力 | 10.6W |
口金タイプ | E26 |
光色 | 電球色相当 (2,700K) |
白熱電球と比較した光量 | 60W形相当(ランプ単体) |
定格寿命 | 40,000時間 |
調光器対応 | - |
密閉器具対応 | ○ |
配光角度 | 約260度 |
サイズ (高さ×直径) | 119×60 mm |
重量 | 183 g |
希望小売価格 | 7,350円 |
実売価格 | 4,480円(yodobashi.com) |
【基本スペック編】
■サイズ比較
実測したサイズは118×60mm(高さ×直径)。白熱電球より24mm、蛍光灯より4mm大きい。放熱板は白色で薄く、全体的なシルエットはとても電球に近い。フィンレスのヒートシンクはコンパクトで白色。30mmの口金付近は白熱電球よりも2mm細く、器具を選ばないだろう。ただ、グローブに設けられたトリプルアーチ放熱板のデザインは独特で、好みが分かれるかもしれない。
重量は実測で172gと、軽量化が進むLED電球の中ではかなり重い。撮影中に器具が重さで傾くような事は起こらなかったものの、多灯タイプや華奢な器具に取り付ける場合は、重さを考慮する必要がありそうだ。
■器具に取り付けたようす
器具とのバランスは「良い」と言えるだろう。電球形蛍光灯よりもさらに背は高いが、器具内部に収まっており、口金付近のヒートシンクはよほど覗き込まないと見えない。目立った違和感は感じられなかった。
【白熱電球:60W形】 電球の端が少し覗いている程度の角度から撮影した | 【電球形蛍光灯】 電球の直径は白熱電球と同じだが、背が高いため、内側のらせん状の蛍光管が透けて見える | 【E-CORE LDA11L-G】 電球の雰囲気に近いが、電球が丸見えになる器具の場合、トリプルアーチ放熱板が気になるかもしれない。放熱部はコンパクトなので、かなり奥まで覗き込まない限り見えてこない |
■光の広がりかたと配光性
光の拡散性は電球形蛍光灯に近い雰囲気だった。光は光源部を中心に、横方向へも床方向へも拡散している。グローブに挟み込まれている放熱板の影響はまったく無い。床や壁に影や光のムラができず、全体的に均一に光が拡散する印象だ。
電気スタンド型の器具に取り付けてみると、本製品の光が下方向へ届いているのがわかる。上方向への光の方は強いが、LED電球にありがちなクッキリとした影はできず、柔らかく光が拡散する。器具のシェード(傘)も、全体の2/3以上が明るく輝き、器具の雰囲気を十分に引き出している。このようなスタイルの器具にも問題なく取り替えられるだろう。
【白熱電球:60W形】 シェードは中心からまんべんなく光り、シェードの上下からほぼ同じ明るさの光が漏れる印象がある | 【電球形蛍光灯】 白熱電球と遜色なく、シェードのほぼ中心からまんべんなく光る。シェードの上下からもほぼ同じ明るさの光が漏れる | 【E-CORE LDA11L-G】 光が上方に強く放たれるが、下方へもしっかりと光が届いている。器具シェードは2/3以上が明るく輝いている |
■明るさ(55cm直下の照度)
直下照度は820lxだった。直下だけでなく、壁面へも光がしっかりと届いているので、結果的に60W形白熱電球よりもさらに明るい印象だ。60W形白熱電球から取り替えて、暗くなることはないだろう。
【白熱電球:60W形 800lx】 光源を55mm上方にセットし、直下照度を計測した | 【電球形蛍光灯:475lx】 | 【E-CORE LDA11L-G 820lx】 直下照度は60W形白熱電球の明るさを超えた。名実ともに「60W形白熱電球相当の明るさ」のLED電球だ |
背が高く、比較的重たいものの、明るさ、光の広がり方は60W形白熱電球と肩を並べる結果となった。使う前は、グローブのトリプルアーチ放熱板の影響が不安だったが、見た目以外に違和感はまったく感じられなかった。実使用でも実力を発揮してくれそうだ。
【実使用編】
ここからは実際の生活シーンに取り付けて、実際の使用環境での実力を探って行く。なお、密閉器具にも対応しているので、浴室や密閉型のインテリアライトにも使用した。
■玄関
明るさ、拡散性、光色、いずれも玄関にふさわしい。壁面、ドア、床面へ明るさがしっかり届いており、60W形白熱電球よりも全体的に明るい印象になった。光色は自然な暖かみがあり、影がクッキリと落ちないので、柔らかで親しみのある、明るい印象の玄関が演出できる。
【白熱電球:60W形】 床面まで光が届き、十分な明るさがある | 【電球形蛍光灯】 比較すると色が不自然に感じる。また、点灯して明るさが安定するまで時間がかかる | 【E-CORE LDA11L-G】 60W形白熱電球よりも,全体的に明るい印象になった。影の落ち方も柔らかく、玄関にふさわしい雰囲気だ |
■浴室
浴室も玄関と同様に、非常に良かった。電球が器具に覆われても、明るさが落ちず、浴室全体に心地良い明るさが行き渡る。光色も自然な電球色で、リラックスする空間にふさわしい。器具の輝き方も申し分ない。浴室で使用するLED電球としてイチオシだ。
【白熱電球:60W形】 浴室全体が十分に明るい | 【電球形蛍光灯】 比較すると色が不自然に感じる。また、点灯して明るさが安定するまで時間がかかる | 【E-CORE LDA11L-G】 60W形白熱電球と同様に、浴室全体が十分に明るい。影の落ち方も柔らかく雰囲気が良い |
※浴室で使用する場合は、器具が防滴構造であることが条件となります
■トイレ
もしトイレに60W形白熱電球を使用しているならば、交換しても問題ない。白熱電球と変わらない明るさで、しかも柔らかな印象が演出できる。
とは言うものの、トイレは短時間しか過ごさない場所なので、高価な本製品を使うのはもったいないかもしれない。配光角度は狭いものの、低価格化が進んでいる一般型のLED電球でも十分だろう。
【白熱電球:60W形】 明るく気持ちよく過ごせる | 【E-CORE LDA11L-G】 60W形白熱電球と変わらない明るさ。しかし、短時間しか使わないトイレに高価なLED電球は正直もったいない |
なお、トイレは点滅頻度が高いため、点滅回数が寿命に影響する電球形蛍光灯の写真は割愛する。
■リビングルーム
透過タイプの器具との相性はとても良い。器具はほぼ均等に輝き、60W形白熱電球と遜色ない明るさが得られた。テーブル面の明るさも変わらない。暖かみのある自然な光色は、リビングルームに適している。白熱電球から取り替えて、不満を感じないだろう。
非透過タイプの器具でも、とても良い結果が得られた。天井からの反射光もあり、器具が持つ印象、光と影のコントラストもさほど変わらず、白熱電球とほとんど変わらない印象だった。
【E-CORE LDA11L-G×2 インテリアライト2台】 くつろぎ感や落ち着きを演出する使い方に大変向いている。配光角度が狭い一般型のLED電球では作り出せない、白熱電球らしい雰囲気が得られる |
複数の局所照明を組み合わせた使い方もお勧めだ。光が上下左右に広がるので、部屋全体に柔らかな光が届き、くつろぎの空間にぴったりのやさしい雰囲気が演出できる。読書にも十分な明るさがテーブル面に届く。これも、白熱電球とほとんど変わらない演出ができるだろう。
■リビングルーム(インテリア照明)
密閉型のインテリア照明にも使える。器具は光のムラが出ず均等に輝き、白熱電球と同じ印象だった。ただし、40W形白熱電球よりもかなり明るくなってしまうので、アクセント的な使い方よりも、部屋全体を照らす使い方に向くだろう。
■食事の風景
食事のシーンにも十分に活用できる。色温度は2,700Kと、白熱電球の2,850Kよりも低めなため、全体的に多少赤っぽく見えるかもしれない。だが、食事全体がおいしそうに見え、ハムや目玉焼きの白味もくすんだ印象にならない。食器の材質による白さの違いもわかり、ランチョンマットの本来の色合いも自然な見え方だった。影が柔らかいため、落ち着いた雰囲気の食卓が演出できるだろう。
■60W形白熱電球と交換で、元が取れるのは【1年5カ月】
消費電力は、カタログ上では10.6Wだったが、実測ではたった9Wだった。実使用で60W形白熱電球と遜色ないのに、消費電力は1/6と少ないため、確実に電気代が節約できる。
初期費用となる電球代は、低価格化が進むLED電球の中で高めだが、1年5カ月で電球代は回収できる。電球代を回収してからも長い間使えるので、悪い選択ではないだろう。
電球形蛍光灯からの交換は、あまり現実的とは言えない。消費電力の差がほとんど無く、試算では蛍光灯を3個目に取替える8年11カ月でやっと逆転する。明るさや光色、点灯回数による寿命への影響を受けない点は、電球型蛍光灯より間違いなく優れている。しかし、現在これといった不満も無く電球形蛍光灯を使用しているのなら、無理に替える必要はないだろう。
使用光源 | 消費電力 (実測) | 1カ月 | 3カ月 | 半年 (6カ月) | 1年 | 1年 5カ月 | 2年 | 2年 3カ月 | 4年 | 8年 11カ月 |
東芝 E-CORE LDA11L-G | 9W | 4,528円 | 4,624円 | 4,768円 | 5,057円 | 5,297円 | 5,633円 | 5,778円 | 6,787円 | 9,622円 |
白熱電球 40W形 | 37W | 269円 | 665円 | 1,329円 | 2,587円 | 3,719円 | 5,174円 | 5,839円 | 10,348円 | 23,085円 |
白熱電球 60W形 | 56W | 370円 | 966円 | 1,932円 | 3,792円 | 5,425円 | 7,583円 | 8,549円 | 15,166円 | 33,825円 |
電球型蛍光灯 60W形 | 10W | 1,445円 | 1,554円 | 1,719円 | 2,047円 | 2,321円 | 2,704円 | 2,868円 | 4,018円 | 10,028円 |
※電気代は1kWh=22円で計算
■明かりの質、汎用性の高さはトップクラス。60W形白熱電球と交換するならコレ
東芝の「LDA11L-G」を一言で表すと、「完成度の高いLED電球」と言えるだろう。電球に求められる、明るさ、拡散性は、白熱電球と比較しても不満はまったくない。光色も自然で、演色性も良い印象だった。グローブに組み込まれたトリプルアーチ放熱板は、見た目の上で多少好みが別れるかもしれないが、実使用にはほとんど影響が無いこともわかった。要は、60W形白熱電球と変わらない使い心地が味わえるだろう。
敢えて不満点を挙げるなら、価格だろう。低価格化が進むLED電球で、実売価格が4,000円を軽く超える(yodobashi.com 5月14日時点の価格)のは、簡単には手を出しにくい。しかし、直下照度の高さと光の拡散性を両立しながら、密閉器具に対応したLED電球は、現時点でも少ない。電球らしい明かりの質が求められる場所に使うなら、価格に見合った価値は十分に感じられるだろう。なお、AMラジオの側で点灯しても、受信障害を受けることもなかった。
明かりの質、汎用性の高さは、数あるLED電球の中でもトップクラス。ほとんど違和感無く60W形白熱電球から取り替えられる、使い勝手の良いLED電球だ。60W形白熱電球の明るさ、使い勝手にこだわるならば、本製品を選んでおけばハズレはない。明るさ、拡散性、柔らかな雰囲気など、白熱電球の良さを引き継ぎながら、高い節電効果が期待できるだろう。
東芝「E-CORE 一般電球形 10.6W LDA11L-G」はこんなLED電球
・どんな60W形白熱電球に置き換えても問題ない汎用性の高さ。密閉器具対応で浴室もOK
・明るさも文句ナシ。60W形白熱電球を軽く超える
・光は均一に柔らかく輝き、ぎらつき感が低い。光の拡散性も高い
・60W形白熱電球と交換した場合、1年5カ月で電球代が回収できる(1日8時間使用)
2012年5月15日 00:00