家電製品ミニレビュー

ダイソン「エアマルチプライアー AM04 ファンヒーター」

~クリーンで安全に使えるパーソナルユース向け暖房機
by スタパ齋藤
ダイソン「エアマルチプライアー AM04 ファンヒーター」。カラーはアイアン/サテンブルーとホワイト/シルバーがある。ダイソンオンラインストア価格は57,000円

 家電Watch編集部から「貴様は扇風機の類が好きだから新発売の温風も出る扇風機を試してみなはれ」風なメールとともに、ダイソンの「エアマルチプライアー AM04 ファンヒーター」が送られてきた。羽根のない扇風機ことエアマルチプライアーの新型ですな。夏は扇風機、冬はファンヒーターとして使えるという新製品で、2011年10月20日に家電量販店でも発売された。


メーカーダイソン
製品名エアマルチプライアー AM04 ファンヒーター
希望小売価格オープンプライス
購入場所ダイソン オンラインストア
購入価格57,000円


 以前にダイソンの「エアマルチプライアー AM02 タワーファン」についてレポートした。縦に長い楕円の空間から空気を送り出す、外見的に非常にユニークな扇風機ですな。今回レポートするエアマルチプライアー AM04 ファンヒーター(以下、AM04)は、このタワーファンを小型化して温風も出せるようにしたようなファンヒーターだ。送風技術としてダイソンのエアマルチプライアーテクノロジーを搭載している。
一般的な扇風機の送風イメージ。羽根の回転でムラのある送風になるというエアマルチプライアーの送風イメージ。均一でムラのない送風が可能だというエアマルチプライアーは、吸い込んだ風の6倍の風量を発生させることができる
従来型のヒーターの暖気の送風イメージ。部屋全体を暖めにくいというエアマルチプライアーにより、AM04は部屋を均一に暖められるというAM04には首振り機能もあるので、部屋全体に効率良く暖気を送れる

 AM04は、上の図のようにエアマルチプライアーテクノロジーにより、暖気を効率良く送風できるという。また、約70度の首振り機能や、前後角10度の角度調整機能もあるので、より均一に部屋全体を暖めることが可能だそうだ。

 エアマルチプライアー搭載扇風機は、弱い風から強い風までスムーズに送風する感じで、俺的には扇風機としてもサーキュレーターとしても実用的という印象を持っている。で、暖気を送り出せるAM04は、ぶっちゃけ、自ら暖気を送風するサーキュレーター的な存在かな、という事前の印象を持った。

 さて、実際にAM04を試してみる前に、AM04のスペック的な部分を少々。サイズは200×200×579mm(幅×奥行き×高さ)で、質量は2.42kg。ダイソンのエアマルチプライアーシリーズ中、最も小さい製品となる。

 AM04はファンヒーターではあるが、送風も可能。つまり夏場にはエアマルチプライアー扇風機として使えるんですな。ちなみにファンヒーターとして使ったときの最大消費電力は1,200W。扇風機として使った場合の最大消費電力は20W。暖房器具としての対応できる床面積の正式発表はないが、約8~10畳程度の部屋までは対応できるそうだ。

サイズは200×200×579mm(幅×奥行き×高さ)で、質量は2.42kg。サイズ比較用にiPad 2を置いてみた自動首振り機能があり、約70度の範囲で送風の向きを変える上下角度調整も行える。前後に約10度、送風角度を変えられる
本体下部に操作パネルがある。風量や設定温度などは数字2桁(白色7セグLED×2)で表示される小型のリモコンが付属する。これによりAM04の全機能をリモートコントロールできる付属のリモコンは、このようにAM04の上部に磁力で吸着して置いておける

 最近は朝夕ずいぶん冷えるようになったので、比較的に嬉々としつつ早速AM04を試用開始。

 電源を入れて温度設定を行なうと、まずは3分間のウォームアップ運転を行う。ウォームアップ運転中は風量調節を行えない。ウォームアップ運転中に送り出される温風については、AM04をしばらく使っていない場合は冷たい風~温風へと徐々に変わっていく感じ。一時的にAM04の電源を切ってまた入れた場合などは、わりとすぐに温風が出てくる。

 設定温度だが、目標とする室温を0~37℃の間で1℃刻みで設定して温風を送風できる(温風モード)。ただし、設定温度が室温より高くないとAM04は動作しない(風が出ない)。使ってみると一瞬「?」と思う挙動だが、設定温度になったらAM04からの送風が自動停止するあたり、なんか省エネな感じで好印象ではある。

 なお、前述のとおりAM04にはヒーターを機能させず送風のみ行ない、夏場などに扇風機として使える涼風モードがある。このモードを利用する場合は、設定温度を0℃にすればよい。

 風量の設定は1~10の10段階で行なう。1が最小で10が最大風量ですな。同じ風量設定(数値)でも、風量は温風モードと涼風モードで異なる。

 運転音は、温風モードで最小風量1にして使った場合、一般的なファンヒーターやエアコンなどと比べると「最小風量なのにちょっとウルサい」という印象になる。風量5にするとさらに少し音量が大きくなり、風量10だと明らかにウルサい。俺の場合は、AM04を自分から2mの距離に置いて試用しているが、仕事中には風量1~4くらいまでが限度で、それを超えると仕事に集中しにくくなる。

 涼風モードでの運転音は、最小風量1の設定が「温風モードの最大風量10のとき程度の運転音」となるようだ。わりとウルサめ。そして最大風量10とかにすると、けっこーヤカマシい。少しイジワルな言い方にはなるが、「AM04と同等またはそれ以上の風量が出せて、かつ、より静かで、しかも安価な扇風機は多々ある」と言えてしまう。

 さて、温風モードでの使い心地だが、素直に暖かくてイイっす。前述のように2m程度の距離に置いて使うと、温風送風開始後間もなく、寒さで緊張していた体がリラックスする。風量1で暖かい空気が緩やかに流れてくる感覚。春風、的な。首振り運転をさせると、さらに気流が弱まり、風による違和感が大きく減る。

 そんな感じで心地良く温風を受けていると、しばらくして確かに部屋全体が暖まってくるのがわかる。部屋の広さにもよるとは思うが、赤外線タイプのヒーターやストーブなどのように、局部的にはとても暖かいとか、床付近が妙に寒い、といった偏りが非常に少ない。

 また、ニオイがほとんどないのも好印象。ホコリなどが焦げたり、機器自体のニオイが出たりということがない。わりと暖かいんだけど無臭で使える暖房器具体験って……意外なほど少ないような気がする。

 それと、暖房器具に感じがちな「危険」をあまり感じさせないのもAM04の特徴かもしれない。低重心で倒れにくかったり、本体転倒時に電源が自動で切れる転倒安全機構を搭載しているなどの基本的な安全性に加え、そもそも本体があまり熱くならないのが良い。実際には楕円部分の内側が「数十秒などは触れ続けられない程度熱くなる」のだが、触ったら一発で火傷という温度にまでは至らない。お子さんやペットがある家庭でも比較的に安心して使えそうだ。

 小型で安全でそこそこ暖かい暖房器具として使っていて、良かったシチュエーションもいくつか。たとえば朝起きたとき。ベッドから出る前に、リモコンでAM04を温風モードにすると、ほんの数分で「ベッドから出てもブルッとしない程度の温風」に当たれる。あるいはお風呂に入る前に脱衣所でAM04を動かせば、やはり数分で「脱いでも寒くは感じない程度」の脱衣所室温になる。小型軽量なので、こんなふうに必要な場所に一時的に持って行って使うにも便利だと感じた。

 逆に、AM04にナイのが「急速で強力な暖かさ」だろう。そもそもAM04にはガスストーブなど火を使った暖房器具のような力強い暖かさはない。遠赤外線ストーブ的な、皮膚の中に入ってくるような熱もない。でも、真冬とかに帰宅した瞬間、アツい熱源に手をかざして速攻で暖まりたくなったりするじゃないスか。AM04ではそーゆーコトはできないと思う。

 てな感じで、やはりまだ「主役となる暖房器具」とは感じにくいAM04。しかし、パーソナルユースならまずまず使える暖房能力で、コンパクトでクリーンで、なるべく安全に使いたいシチュエーションにもよくマッチして……てな利点を考えると、実用的な場面は多いように思う。ありきたりではない暖房器具として部分部分光るものがあるので、ぜひ店頭で実機に触れてみてほしい。






2011年11月11日 00:00