家電製品ミニレビュー

ダイソン「エアマルチプライアー AM02 タワーファン」

~もはや使わない日はない、スリムで設置しやすい羽根なし扇風機
by 正藤 慶一
ダイソン「エアマルチプライアー AM02 タワーファン」

 過去2週にわたって、ダイソンの羽根のない扇風機「エアマルチプライアー」シリーズを紹介している。先々週は小型の「AM01 テーブルファン」、先週はリビング扇の「AMO3 フロアーファン」を紹介したが、今回は最後の1つ「AM02 タワーファン」について紹介させていただきたい。

 このタワーファンが過去2回のモデルと異なるのが、風の吹き出し口の形状。テーブルファン、フロアーファンはともに真ん丸だったが、このタワーファンは縦長で楕円形という独特の形状をしている。エアマルチプライアーシリーズ自体、扇風機らしくない形状だが、とくに本製品は扇風機に見えない。

 しかし、使ってみると、これが非常に使い勝手が良い。正直に言って、かなり気に入ってしまった。今回は、このタワーファンの使用感をくわしくレポートしたい。


メーカーダイソン
製品名エアマルチプライアー AM02 タワーファン
購入場所ダイソンオンラインストア
購入価格54,000円


はめこむだけの簡単組み立て。風も心地良い。送風範囲も広い

 一番最初に気に入ったのが、組み立ての簡単さだ。

 メインとなるパーツは、台座部と本体部、そして楕円形の輪っか部分というたった3パーツだけ。しかも、これを台座と本体、本体と楕円部分を手順どおりにはめるだけで、使用できる状態になる。ネジを締めこんだりする作業は一切ない。このシンプルさに、使う前から心を打たれてしまった。

タワーファンのパーツは写真の3つのみ取り付けは各パーツをはめるだけ。写真は台座と本体を合わせたところだが、後は楕円の輪っか部分をセットするだけだ
パッケージには、ダイソンの創業者で会長の、ジェームズ・ダイソン氏の写真も本体カラーは「ホワイト/シルバー」を選択。なんだかMac Book Proとも相性の良いカラーリングだ

 次に気に入ったのが、風の心地よさだ。

 タワーファンでは、本体の吸気口から、1秒間に約33Lの空気を吸い込む。輪っかの吹き出し口で周囲の空気を巻きこむことで、風を増幅し、吸気の約16倍となる28Lの風を放出する構造になっている。一般的な扇風機のように、羽根を回して風を作らないため、風にムラができにくいというのだ。

本体の風の吸込口手で触れてもあまり風の吸い込みが感じられないが、ビニールテープを当てると、テープが吸込口に寄せられているのがわかる
輪っか部分の奥にあるスリットから風が出る吸い込んだ空気の16倍の風量を吹出すという
 そんなに風が違うものか、と本体底部の電源ボタンを押して運転を開始したが、これがまったく違う。一般的な扇風機のような、羽根で風を切ったような“断片”がなく、切れ目がない連続的な風が肌に当たるのだ。長時間風を受けても、ストレスがかからず、非常に心地良い。

 また、送風範囲が縦に広いので、イスに座った状態でも、座布団に座った状態でも、身体全体に風が当たる。前後の角度調節はできないが、そんなものは不要なほど、満遍なく身体全体に風を送ってくれるのだ。

 ちなみに、風量は本体下部のツマミで無段階に、または付属のリモコンで8段階に調節できる。エアコンの効いている部屋なら、最弱運転でも涼しさが感じられ、エアコンなしでも、リモコンの2~3段階くらいで涼しかった。お風呂上がりも5段階くらいで十分だった。

操作パネルは本体の一番下の部分にある。左のボタンがON/OFFで、右が首振り。真ん中は風量を無段階で切り替えるツマミだリモコンも付属する。ボタン上のアイコンで、なんとなく操作が想像できるだろう本製品には前後の傾斜機能はないが、普通に使って体全体に風が当たるので、まったく問題ない

スリムな本体、部屋の隅に置いて首振り運転もできる

左は我が家にずっと昔からある普通の扇風機。土台部分の設置面積は、タワーファンの方が明らかに小さい

 さらに良かったのが、本体がスリムなので、狭いところにも簡単に置けるところだ。

 本製品のサイズは、250×1,007mm(直径×高さ)だが、この直径250mmという台座の小ささが良い。我が家にあった一般的なリビング扇の台座は直径360mmなので、10cmほど小さいことになる。もちろんタテには長いのだが、狭い我が家には設置面積が小さい方が嬉しい。

 これだけスリムなので、部屋の隅に置いても首振り運転をしても、まったく問題ない。本製品は、本体およびリモコンの首振りボタンを押すことで、約80度程度の首振り運転ができるが、壁に引っかかることなく、スムーズに首を振ってくれる。風をやや強めにすれば、室内全体に風を送ることも可能だ。

 普通の扇風機だったら、羽根と羽根ガード部が大きいため、壁にガツンを頭(ガード部)をぶつけてしまう。でもタワーファンなら、台座より出っ張っている箇所はないため、難なく首振り運転してくれるのだ。


部屋の隅に、普通の扇風機を置いたところ。首振り運転すると、壁に頭がガツンと当たる一方、タワーファンは、壁に当たることなく、スムーズに首振り運転する


リモコンはそんなところに置くのか!

 操作面についても、特に不自由は感じられなかった。これは、リモコンが良いことが貢献しているだろう。

 本製品の操作パネルは、本体と台座部の間の、非常に低い位置にある。ここで運転のON/OFFや首振り運転を切り替えたり、風量を調節することになる。

 これだけだったら、操作するたびにいちいち屈まないといけないため、操作は非常に面倒。だが、リモコンはこれらの操作がすべてできるため、立った状態でも離れた場所でも、ラクに運転が切り替えられる。

実は、リモコンの置き場所に一番驚いた。扇風機のリモコンは置き場所に困って紛失しがちだが、タワーファンは本体の一番上の部分に、マグネットで置ける
 このリモコンで最もスマートなのが、置き場所だ。タワーファンの一番上の曲面部にポンと置くだけで、磁石の力で上に固定できる。扇風機のリモコンは置き場所に困ることが多いが、これなら分かりやすい。立ったままでリモコンが取れるし、置ける。

 なお、この“上に載せる”タイプのリモコンは、フロアーファンにも搭載されている(テーブルファンはなし)。「そういうやり方があったか!」という驚きを感じさせる、いかにもダイソンらしいアイディアだ。


運転音は、弱めの風量なら気にならないレベル

 ところで、気になる「運転音」についてだが、率直な感想を言えば、あまり気にならなかった。

 もちろん、運転音がゼロというわけではない。一番弱い状態でも「フオー」という風の音はするし、徐々に風量を上げていくに従って「ブオー」という強い音に変わっていく。最大ともなれば、ドライヤーに匹敵するのでは? というくらいの強烈な運転音がある。

 実際に、風呂上りなど早く涼しくなりたい時に、風量をリモコンの第5~6段階くらいまで上げみたが、さすがにうるさいと感じた。


運転をリモコンで最弱から8段階まで切り替えているところ

 とはいえ、通常使用する最弱の風量、およびリモコンで第3段階くらいまでの風量なら、普段の生活の邪魔になるほどではなかった。テレビの音は十分に聞こえるし、電話の通話の妨げにもならない。我が家のデスクトップパソコンの運転音と同程度。送風音が不快に感じられることもなかった。

 “とにかく静音性を重視!”という人には向かないかもしれないが、それでも一般的な扇風機と比べても、別段うるさいというわけではない。普通に使う場合には、気にする必要はないだろう。


消費電力は最小5Wと省エネ。普通の扇風機では味わえないメリット満載の扇風機

リモコンで運転を切り替えた場合の消費電力。最小だとたったの5Wだ

 最後に、節電が重視される時期なので、消費電力について紹介しておこう。

 自宅で測定した消費電力は、最弱運転で5W、リモコン操作で2段階目が9W、同じく5段階目が26W、8段階時で53Wだった(風量はリモコンで操作)。一般的な扇風機の場合、最小でも20Wほど。弱めの設定にしておけば、エアコンよりも省電力なのはもちろん、一般的な扇風機よりも節電できてしまう。

 以上、ダイソンのタワーファンについて紹介してきたが、大いに気に入った製品だ。使い勝手が良く、風は心地よく、送風範囲も広い。スリムなので狭い我が家にも置けて、リモコン操作も簡単。しかも、消費電力も少なく、運転音も気にならなかった。前後の角度調節はできないものの、それが不便に感じることもなかった。機能面では、ケチのつけようがない。

 あとは、54,000円という高価な値段だけが問題だ。これ1台だけで、安い扇風機なら何台も、いや10台以上も買えてしまうことを考えると、そう簡単には手を出しにくい。だが、前述のような、ほかの扇風機では絶対に味わえない多くのメリットがある。それだけの対価を払う価値は十分にあると、個人的には感じている。

我が家では、デスク脇など、滞在時間が長いところに据え置きで使っている

 用法としては、大型で持ち運びは不便なので、部屋の隅に据え置いて、部屋全体に風を送って涼を得たり、デスク脇など滞在時間が長い場所に置いて使う、などが適しているだろう。ほかのシリーズとの使い分けについては、こまめに移動させたい場合はテーブルファン、角度や高さを変えてフレキシブルに使いたい場合はフロアーファンが良いだろう。

 今までの扇風機とはまったく異なるが、とても便利で、快適で、省エネな扇風機だ。読者の皆様も、この風を一度、体験していただきたい。







2011年7月11日 00:00