家電製品ミニレビュー
405「充電式サーキュレーター circ-001」
405「充電式サーキュレーター circ-001」 |
東日本大震災のあと、東京ではLEDを使った懐中電灯やラジオが長期間売り切れていた。次の地震に備えてのことだが、計画停電の実施も需要に拍車をかけた。停電の際にこそ、灯りや災害に関する情報は必要だからだ。
そしてこの夏は、「節電」が大きなテーマ。震災に伴う電力不足が迫っている今、売れている家電が扇風機だ。節電でもっとも効果が高いのは、エアコンを止めて扇風機を使うことだといわれている。しかし、万が一、計画停電が実施されることになったら、エアコンはもちろん、扇風機も役に立たない。
というわけで最近多く見かけるようになったのが、停電時にも動く、バッテリー駆動タイプのサーキュレーターや扇風機だ。今回は、LEDライトとFMラジオも内蔵した、405「充電式サーキュレーター circ-001」を試した。
メーカー | 405 |
製品名 | 充電式サーキュレーター circ-001 |
希望小売価格 | 12,800円 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 8,980円 |
製品の外箱の記載によると、405は「輸入元」と記載されている。ホームページを見ても、メーカーではなく、輸入業が主な業務のようだ。Amazonや楽天市場などにショップがある。
■アジアの発展途上国にありそうな雰囲気のデザイン
外箱は300×150×400mm(幅×奥行き×高さ)ぐらいの大きさだ。重さは4kgほどなので、思っていたよりも軽い。
外箱の裏面には英語で注意(Important)が記載されているが、輸入元による国内向けの外箱なのは明らかなので、できるだけ日本語で記載してほしかった。
外箱。表は日本語で書かれている | 裏の注意事項はなぜか英語。輸入元の名前は右下隅に小さく書かれている | 梱包の様子 |
パッケージ内には、サーキュレーター本体とACアダプタ、A4用紙1枚裏表の取扱説明書が入っている。取扱説明書は保証書兼用だが、問い合わせ窓口やメーカー名が書かれていない。何かあったら購入先へ問い合わせるようにというスタンスなのだろう。
取り出した本体のデザインは曲線が多く、有機的というか、ぐにゃっとした印象を受ける。スイッチ類も、わざわざ斜めに配置されている。日本国内向けというよりは、アジアの国々で見かけるノリだ。
本体サイズは260×115×345mm(幅×奥行き×高さ)。ファンの口径は8インチと書かれているが、要するに約20cmだ。重量は約3kgと軽く、最初はバッテリーが入っていないのかと思ったほどだ。
組立は特に必要ないが、スイッチには誤動作を防ぐシールが貼られているので、それを剥がしておく。
パッケージ内容は、本体、ACアダプタ、1枚の取扱説明書とシンプルだ | 本体の様子 | 本体背面 |
背面に電池ボックスのような部分があるが端子はない | 斜め後方から見る。有機的というか不思議な形だ | 本体側面 |
30cm定規との比較。写真から想像していたよりも小さい印象 | ACアダプタは背面に接続する |
■バッテリー駆動を生かせる場所
まず、ファンから試して見よう。充電時間は約18時間とされている。充電完了を知らせるランプは付いていないので、ACアダプタをつないで、適当に放って置いた。
充電できたと思ったところで、ファンを回してみる。ファンの強弱は「LOW」と「HIGH」の2段階だ。まず、LOWから試した。きちんと風が送られてくるが、ファンの音がうるさい。HIGHにすると、キュイーンという感じで音が高くなる。かなり大きな音だ。あらためて、この製品は扇風機というよりサーキュレーターだと思い知らされる。寝室で使おうとしたが、ファンの音がうるさくて眠れないので、別の部屋で動かすしかなかった。
LEDライトを点灯し、ファンを回す。最初がLOWで、次にHIGHに切り替える |
ファンの前には回転式のルーバーが付いており、多少の風向きを変えることができる。ルーバーはゆっくりと自動回転させることもでき、風が届く範囲を広げられる。これは扇風機の首振り機能には及ばないが、そこそこ役に立つ。
ファンの口径は約20cm | ファンの上に取っ手がある | ファンの中央部を回すことで、ルーバーを止めたり回したり調整できる |
バッテリーによるファンの駆動時間は、弱で約12時間、強で約10時間という。試しに一晩駆動させていると、弱でも強でも、8時間以上きっちり動作した。充電状態が表示されないので、満充電かどうかわからない製品だけれども、その割にはしっかり稼動してくれた。
1週間ほど使ってみて、この製品は扇風機の代わりに使うのにはやはり向いていないと思った。どうしても音がうるさくて、気になってしまう。部屋の隅に置いて、本来のサーキュレーターとして使うほうが良い。
普段の使い方としてお勧めできる例が2つある。1つは、入浴後の浴室の乾燥だ。ウチの浴室は窓が無く、湿気がこもりやすい。このサーキュレーターを入浴後に浴室の入り口で使うと乾きが早い。コンセントのことを考えずにパッと持って行って、すぐに風が出るので、とても便利だ。
もう1つが、洗濯物の室内干しだ。洗濯物の側で動作させておけば、乾燥が速くなるし、部屋干し特有の匂いを少なくすることができる。室内のコンセントはいつもいっぱいなので、コンセントを使わないこの製品は気軽に使えて良かった。本体の角度がもう少し上向きに変えられて、オフタイマーがついていれば、さらに便利になるだろう。
洗面所に置いて、浴室の乾燥をする。電源がいらないのでかなり便利 | 部屋干しの洗濯物に風を送る。角度が変えられないので、もうちょっと離した方が風が行き渡る |
もちろん、節電対策にも効果を発揮する。エアコンの設定温度を数度上げ、代わりにサーキュレーターを併用するのだ。また、夜間に充電しておいて、昼間にバッテリーで動作させれば、それだけで電力需要のピークを下げることができる。
万が一の停電の際には、貴重な冷房機器として活躍してくれるだろう。非常時には、多少の動作音が気になることよりも、しっかり風が届くかどうかということの方がずっと重要だ。
■いろいろな意味で賑やかな製品
LEDはかなり明るい。角度や光量が調整できないのが惜しい |
さらに、LEDランプとラジオを試してみよう。LEDランプはファンの上部に、24個並んでいる。方向は固定されている。スイッチはON/OFFのみで、強弱はない。LEDは大変明るく、まぶしいほどだ。6畳間程度ならば、これ1つで普通に生活ができる。
ただし、光の方向が調整できないので、本を読むのは難しい。上下に方向が変えられるとなお良かった。また、もう少し暗くても充分な時もあるので、半分だけ点ける「LOW」ポジションがほしい。LEDライト単体では約15時間点灯するとされており、最後は確認できなかったものの、夕方から翌日の朝まで点灯し続けていた。
ラジオはFMのみで、帯域は76~108MHzと広い。現在は、通常のFM放送に加え、テレビのアナログ放送のうち1チャンネルと3チャンネルの音声も受信できる。アナログ放送停波までの短い期間とはいえメリットではある。
ボリュームダイヤルを少し回すと、ラジオがオンになる。選局はスキャンボタンを押すだけで簡単だ。ロッドアンテナは内蔵されていないが、比較的感度が良く、鉄筋のビル内でも複数の局が聞こえた。しかし、周波数が表示されないので、いま聞いている局がどこなのかわかりにくい。音質はそれなりだが、音量が大きめで、複数の人間で聞くことができる。
FMラジオを操作。オートスキャン式で周波数表示がないので、どこの局を聞いているのかわかりにくい。音質はそれなりだが、音量は大きめ |
LEDライトとラジオは、そこそこ実用性があるが、どうしてもこれでなければならないというものではない。万が一の停電時への保険というかオマケぐらいに捉えるべきなのだろう。
■ピークシフトの一助に
約9,000円という価格は、サーキュレーターとしては高め。この製品は、バッテリーで駆動できるという利点をどう使いこなすかによって大きく評価が変わるだろう。
先にも述べたように、電力需要のピーク時である日中はバッテリで駆動させることで、ピークシフトに協力することができる。それ以外でも、浴室の乾燥や部屋干しの洗濯物など、コンセントと電源コードがいらないファンというのは、意外に便利だった。
しかし、現状では海外製品を日本向けに最低限改修したという状態の製品なので、できればもう少し、日本市場向けに実用性を磨いてほしい。動作音がもう少し小さくなるだけでも実用性は大きく向上するだろう。
バッテリー搭載の扇風機・サーキュレーターというジャンルには可能性を感じる。一部のパソコンのように、夜間勝手に充電しておいて、昼間にバッテリーで動作するという機能を持った扇風機が出てくると面白いのではないか。
2011年5月27日 00:00