家電製品ミニレビュー
メガホームジャパン「水瓶座の雫」
メガホームジャパン「水瓶座の雫」 |
3才と6才の子供がいる我が家では、“水問題”は見過ごせない。東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故により、都内の一部の水道水からも放射性物質が検出された。その直後、スーパーやコンビニの店頭からはペットボトルの水が消え、乳児のいる家庭に水を配布する自治体もあった。
これをきっかけに、我が家でも子供に飲ませる水について関心は高まった。今回は、安全な蒸留水が家庭で作れるという蒸留水器を試して見たい。メガホームジャパンの蒸留水器「水瓶座の雫 MH943SBS-G」という製品だ。
【編集部注】この記事で述べられている、水の浄化は、放射能を除去できるという意味ではありません。セシウムは沸点が671度と高く、蒸留することによって水中のセシウム濃度が下がる可能性はあります。ヨウ素は沸点が184度と低く、蒸留することによっても、濃度の低下が少ない可能性があります。
メーカー | メガホームジャパン |
製品名 | 水瓶座の雫 MH943SBS-G |
希望小売価格 | 30,800円 |
購入場所 | 直販サイト |
購入価格 | 28,369円 |
■家庭でもできる、安全な蒸留水作り
蒸留水とは、水を沸騰させた時に出る水蒸気を、冷やしてまた水に戻す“蒸留”という過程を通して、時間をかけて溜めた水のことだ。普通の水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル、不純物、イヤな臭いのもととなる塩素を取り除くことができるのはもちろん、砒素、水銀などの有害物質も除去できるので、“安全な水”といえる。
水瓶座の雫 MH943SBS-Gは、この蒸留水を作る装置である。今回使用したのは、本体の外装がステンレス製で、蒸留水を溜める容器がガラス製のもの。食品衛生法および電気用品安全法(PSE)に基づく製品検査にも合格しているという。
届いた製品は思ったより大きかった。本体サイズは約400×235×360mm(幅×奥行き×高さ)。蒸留水器本体重量は3.4kgだ。
蒸留水器はステンレス製 | 500mlペットボトルと大きさ比較。本体はかなり大きめ | 本体には電源プラグ差し込み口が2つ |
フタを取り外すときは、本体からコンセントを外す | 水を注ぐ内部 | フタにはファンが付属。電源が入ると回り出す |
上蓋の電源コードを本体の差し込み口に入れる | 電源プラグは、この白い線が見えなくなるまでしっかりコンセントに差し込む |
まずガラス容器を組み立てる。ステンレススチール製の帯を取り付け、取っ手を付属のネジで固定する。説明書はあまり親切ではないが、15分くらいで取り付けることができた。
ガラス容器の組み立てにはプラスドライバーが必要 | 溝にあわせてステンレススティールを巻く | ドライバーで取っ手を取り付ける |
次に吹き出し口のノズル部分に、付属の活性炭の小袋を半分に折って入れる。この小袋は25日で交換が必要で、あらかじめ6袋付属している。活性炭の成分は、植物ココナッツの皮。水をろ過し、においを除去する効果があるという。
活性炭は6つ入り。なくなったら直販サイトで買える | 吹き出し口ノズルに活性炭を入れる | 吹き出し口に装着する |
それでは水を注入しよう。本体内釜に表示してある満水目盛まで水を注ぎ、本体のリセットボタンを押すと電源が入る。水道水などの常温水約4Lの蒸留にかかる時間は約6時間、沸騰させた熱湯だと約5時間だ。
このように口を合わせる。リセットボタンを押すと電源が入り、蒸留が開始する | 1時間ほどすると、少しずつ蒸留水が出てくる | 約6時間で蒸留水がたっぷり! |
電源が入ると、フタの上にあるファンが回り始める。ポットなどに比べると音はかなり大きい。ファンからは暖かい風がでてきて、本体も熱くなるので、小さなお子さんが居るご家庭では、置き場所に注意が必要だろう。蒸留工程終了後には自動的にスイッチが切れるが、特にブザーなどは付いていない。
ファンが回っているので、音はうるさめ |
蒸留工程終了後、本体を開けるとビックリ。底に、ドロドロした水アカが付着している。はじめのうちはさっとすすげば汚れが落ちるが、だんだんとこびりついてくるので、1カ月に1度は付属のクエン酸を使って洗浄する。
空っぽになった本体は、底がドロドロ | 洗浄用のクエン酸も付属している |
本体に取っ手はなく、水を汲むときには不便を感じるが、本体自体はシンプルで頑強なので、長く使えそうだ。
味はとてもまろやかだ。「蒸留水はマズイ」という説もあるようだが、実際に飲んでみると個人的にはそれほどまずくは感じられなかった。活性炭でろ過されているからかもしれないが、クセがなく、むしろ飲みやすい。特に水の質で味が左右されるコーヒーやは、蒸留した水でいれると香りがよくなった気もする。まずいと言われる蒸留水。覚悟して飲んだが、実は飲みやすくて、おいしかった | コーヒーをいれてみた。こちらは香りがよく、まろやか |
■家庭でも手軽にできる水質調査。結果はいかに…
この蒸留という過程を経ることで、水にどういう変化が現れるのだろうか。水質の変化をチェックするため、(1)水道水 (2)浄水器に通した水道水 (3)水道水を蒸留した水 (4)ミネラルウォーター(硬水) (5)ミネラルウォーターを蒸留した水の5種類を、水質検査パックテスト「おいしい水検査セット」で計測した。このセットで計測できるのは、水道水の中に残留した塩素と硬度(ミネラル)の2種類だ。
おいしい水検査セット | 残留塩素と硬度を調べることができる |
塩素は、カルキ臭のもととなる物質だ。この臭いが鼻につき、水をまずく感じさせるもとになっている。一般的な水道水では1Lあたり0.5mg前後、多いところでは1.0mgを超える値が検出されるという。さっそく残留塩素を測ってみよう。
水道水…1Lあたり1mg | 浄水器に通した水道水…1Lあたり0.1mg | 水道水を蒸留した水…1Lあたり0.1mg |
ミネラルウォーター(硬水)…1Lあたり0.1mg | ミネラルウォーターを蒸留した水…1Lあたり0.1mg |
我が家の水道水には、予想以上に塩素が多く含まれていて驚いた。写真だとテスト結果の水の色が薄めだが、肉眼で比較したところ、1Lあたり1mgよりも少し濃いめの色だ。
意外だったのは、浄水器の結果だ。気休め程度の効果だと思っていた蛇口一体型の浄水器は、思いのほかしっかり塩素を除去していた。
塩素濃度が比較的高い我が家の水道水でも、蒸留することによって塩素をきれいに取り除けていた。蒸留水器があれば浄水器と併用する必要はないだろう。
いっぽうの硬度はどうだろうか。硬度は、カルシウムとマグネシウムの重量から算出する。日本国内の水道水に含まれる平均的な硬度は、1Lあたり20~200mg程度だ。
水道水…1Lあたり50mg | 浄水器に通した水道水…1Lあたり50mg | 水道水を蒸留した水…1Lあたり0mg |
ミネラルウォーター(硬水)…1Lあたり200mg | ミネラルウォーターを蒸留した水…1Lあたり0mg |
計測の結果、1Lあたり304mgという高い硬度のミネラルウォーターでも、蒸留の結果硬度はなんと0になっていた! ただし、塩素が除去されているぶん、いたむのが早い。出来上がった蒸留水は、必ず冷蔵庫に保存して、その日のうちに使い切ってしまうべきだろう。
硬水と飲み比べ。蒸留水はまろやかで飲みやすい。子供は「蒸留水のほうがおいしい」とのこと |
ミネラルウォーターと蒸留水を飲み比べたところ、蒸留水のほうがまろやかな味がした。子供にも飲み比べてもらったが、「蒸留水のほうが飲みやすい」とのことだった。試しにこの蒸留水を使ってお米をといで炊いたところ、これまたおいしく出来上がった。
なお、我が家が使用している浄水器はタカギの蛇口一体型浄水器「みず工房」だ。ホームページによると、ゴミ、残留塩素、農薬、カビ臭、鉛を取り除き、ミネラルは除去しない仕様になっている。
■重い水を買いに行く必要なし! 家庭で手軽に、安全な水が手に入る
ワットチェッカーで計測した。深夜などの消費電力の少ない時間帯に使うほうが良さそうだ |
気になる消費電力は、580Wとちょっと高め。常温の水道水から約6時間かけて蒸留した場合、実測した消費電力量は3.39kWh。1回あたり約74.6円の電気代がかかる。ピーク時の使用は避け、深夜などに使うよう配慮したい。
正直なところ、高額な機器と電気代をついやしてまで、蒸留水が必要かといえば疑問もないではない。ただし、不純物が取り除けるというだけでも、小さな子供がいる家庭では心強い。ミネラル分を含まない軟水なので、赤ちゃんのミルクを作るのにも安心して使用できる。
小さな子供がいると、重い水を買いに行く手間が省けるだけでもありがたいものだ。家でいつでも安全な水を作れるのは、心強い。この蒸留水器のおかげで、我が家の水問題は解決の糸口が見えてきたように思う。
2011年4月14日 00:00