家電製品ミニレビュー
象印マホービン「珈琲通 EC-KS50」
象印マホービン「珈琲通 EC-KS50」。カラーはレッドのほか、ダークブラウンも用意される |
スイッチを押すだけで、コーヒーを淹れてくれる家電といえばコーヒーメーカー。面倒なドリップの作業をマイコン制御で自動的にやってくれるので、“コーヒーが飲みたい”と思った矢先に作れるのがとてもうれしい。
そんなコーヒーメーカーの新製品として、今年1月に登場したのが、象印マホービンの「珈琲通(こーひーつう) EC-KS50」。この製品は、魔法瓶のコーヒーサーバーを採用している点、コーヒーの濃度を薄い/普通/濃いの3種類に調節できる点が特徴となる。
コーヒーを淹れたのを忘れて、せっかくのアツアツを冷ましてしまうことの多い私は、魔法瓶サーバーのコーヒーメーカーを以前から使いたいと思っていた。発売されたばかりの新モデルということもあって、購入した。
メーカー | 象印マホービン |
製品名 | 珈琲通 EC-KS50-RA |
希望小売価格 | 15,750円 |
購入店舗 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 8,163円 |
本体は240×165×315mm(幅×奥行き×高さ)と、コーヒーメーカーとしては並みのサイズだ。使用法も、普通のコーヒーメーカーと大差はない。本体正面の「スイングバスケット」部を開け、フィルターケースにペーパーフィルター(1×2サイズ)をセット、そこにコーヒーの粉を入れ、スイッチをONにすれば自動的にドリップが開始される。
本製品の特徴のひとつである魔法瓶のコーヒーサーバーを見てみよう。サイズはだいたい120×150mm(取っ手部を除く直径×高さ)と、一般的なコーヒーサーバーに比べるとやや大きめ。さらに、ステンレス製の銀色の外見もあって、コーヒーサーバーというより魔法瓶そのものといった印象を受ける。重さも中身がカラの状態で636gと、ずっしりとした感触がする。容量は最大675mlで、コーヒーカップは5杯、マグカップなら3杯まで淹れられるという。
本体を横から見たところ。サイズは240×165×315mm(幅×奥行き×高さ)と、一般的なコーヒーメーカーと変わらない | 写真の「スイングバスケット」部を開き、中のフィルターケースにコーヒーをセットする。ペーパーフィルターは一般的な1×2サイズを使用する |
コーヒーサーバーはステンレスによる魔法瓶構造 | 重量は636gと、やや重たさを感じる。ただし、落としてもステンレスなので割れない |
とりあえず一度、コーヒーを淹れてみる。着脱式の水タンクとフィルターケースを取り出し、水とコーヒーの粉をセットした後、本体脇にあるスイッチをONにすれば、ドリップがスタートする。この、タンクとフィルターケースが本体から取り出せるというのは、小さいことだがとても便利。またスイッチは運転後に自動でOFFになるので、わざわざ手動で切る必要がないのもうれしい。
本体からドリップされたコーヒーは、コーヒーサーバーの蓋にある丸い弁を通って、魔法瓶サーバー内へと入っていく。通常は弁は閉じているが、本体にセットした時に弁が押されて、コーヒーの通り道が開く仕組みだ。ダイレクトにサーバーにドリップされるため、ドリップ中のコーヒーの香りはやや控えめに感じられた。なお、カップに注ぐ際には、取っ手の上にあるレバーを押す。
フィルターケースは本体から取り外し可能。 | 水タンクも取り出せるので、水が注ぎ入れやすい | コーヒーの粉を入れるスプーンも同梱される |
主題と関係ないが、今回使用したコーヒーは京都・小川珈琲店のブランドのもの。スーパーでフツーに売られている | ドリップされたコーヒーは、サーバーの蓋にある弁を伝って、サーバー内に注がれていく |
できあがったコーヒーはアツアツでおいしかったが、この温かさが維持できるのが本製品の良いところ。ドリップ後のコーヒーの温度は76.2℃だったが、1時間後で71.9℃、2時間後でも68.3℃と、しばらく放っておいても、熱いコーヒーを楽しむことができる。さらに驚くべきは、5時間後でも56.2℃と、電子レンジで温めなおす必要がないほど温かかった。
経過時間 | 淹れ立て | 1時間後 | 2時間後 | 3時間後 | 4時間後 | 5時間後 | 6時間後 |
コーヒーの温度 | 76.2℃ | 71.9℃ | 68.3℃ | 64.1℃ | 60.0℃ | 56.2℃ | 53.0℃※ |
正直に言って、この魔法瓶サーバーはかなり便利だ。普通のコーヒーサーバーだと、淹れて1時間も立てばすぐに冷えてしまう。ヒーターで保温する機能を持ったコーヒーメーカーもあるが、消費電力を無駄に使ってしまったり、煮詰まりを起こして味が変わってしまう。しかしこれなら、消費電力ゼロ。淹れてから数時間程度なら、風味が悪くなることもない。
アツアツのコーヒーが長時間味わえるのはうれしい。おかわりにもちょうど良い | 5時間経っても、熱さを感じる50℃台後半を維持していた。ただし、50℃台前半に落ちると、ぬるさが感じられた |
コーヒーの濃度は、蒸気口の下にあるレバーで切り替える。左が「マイルド(薄い)」、中央が「レギュラー(普通)」、右が「ストロング(濃い)」 |
保温性能を紹介した後で、もう1つの特徴である、味の濃さの調節を見てみよう。本体の蒸気口の下にある「濃度調節レバー」を動かすことで、コーヒーの濃度を「マイルド(薄い)」、「レギュラー(普通)」、「ストロング(濃い)」の3段階に調節できる。
レバーひとつでそんなに変わるものかと思ったが、これがしっかり味に差が出る。ストロングは本当に濃く、渋さや苦さ、酸味がかなり強調される。逆にマイルドは口当たりが軽やかで、ブラックでも飲みやすい。デザートなど甘いものにはマイルド、夜通しの仕事や作業にはストロングが合うのではないだろうか。
しかし、濃度はどうやって変えているのか。その秘密はドリップ時のお湯の注ぎ方にあることが分かった。ストロングはコーヒーの粉全体にお湯を注いでいるが、マイルドは中心部にドリップしていない。ドリップの位置だけで、ここまで味が違うとは……ともかく、その時の気分や目的によって、味が変えられるのは便利だ。
レバーは浄水フィルター部についている。取り出してそれぞれを比べてみると、ストロングは中央に水の通り穴が開いているが、マイルドだと中央が閉じられ、逆に外側が開いている | ドリップ後のコーヒーのカスを見ても、ストロング(下)は中央に凹みがあるのに対し、マイルド(上)では中央が凹んでいない |
浄水フィルター以外のパーツを取り外し、マイルド→レギュラー→ストロングの順でドリップのお湯の注ぎ方を見てみた。ストロングは全体的にドリップをしているが、マイルドは中央にお湯を注いでいないのがわかる ※取扱説明書では、ステンレスサーバーなしでの使用を禁じています。決して真似をしないでください |
大きな特徴は以上だが、本製品はメンテナンスがラクなのも良いところ。タンクもフィルターケースも取り外せるので簡単に洗えるし、フィルターケースとコーヒーサーバー以外にコーヒーが付着することも少ない。サーバーは口が狭いため、内部に手を入れるのは難しいが、使用後に水洗いをすれば、そこまで汚れることもない。
欲をいえば、コーヒーサーバーの容量はもう少しあってもよかったかもしれない。コーヒーカップは5杯、マグカップなら3杯まで淹れられるが、多人数の場合には“おかわり”ができない。実は象印では、容量1.08Lの魔法瓶サーバーを備えた「EC-JS80」という製品も出しているので、これにした方が良かったかと一瞬考えたが、EC-JS80では濃度の調節機能がない。容量を重視するか濃度調節機能を取るか……悩ましいところだ。
最後になるが、本製品ではコーヒーサーバーに氷を入れれば、アイスコーヒーも作れる。魔法瓶サーバーによる保冷効果も期待できるので、これから暖かくなる季節にもピッタリといえそうだ。
氷を入れてアイスコーヒーも作れる。これから暖かくなる季節にピッタリだろう | 今ではすっかり、私の生活の一部になっている |
率直な感想は“もう魔法瓶サーバー以外はありえない”。ヒーターも使わずに、普通に使うだけで保温してくれるので、しばらくの間できたての味が楽しめる。場面に応じて、濃度が調節できるというのもうれしい機能だ。今ではすっかり、デザートのお供、仕事のお供として、私の生活の一部になっている。
これからは本製品のように、ドリップ後に保温してくれる魔法瓶サーバーが主流になってくるだろう。コーヒーメーカーの購入を検討している人は、サーバーが魔法瓶であるか否かを、ひとつの判断にすることを強くお勧めしたい。
2011年3月1日 00:00