家電製品ミニレビュー
三洋電機「加湿器 CFK-VWX07C」
■一昨年の製品が65%引きに
三洋電機「加湿器 CFK-VWX07C」 |
1月の末にAmazonのランキングをチェックしていると、加湿器の部門で大きな動きがあった。三洋電機の「加湿器 CFK-VWX07C」という製品が、ベストセラーになっていたのだ。
CFK-VWX07Cは、一昨年(2009年)の9月に発売された製品で、シリーズでも上位にあたる。昨年(2010年)は下位のCFK-VWX05は、“C”から“D”になったが、CFK-VWX07はCのままでモデルチェンジされなかった。つまり、やや型は古いが現役の製品というわけだ。
価格はオープンプライスで、発表の時点では28,000円前後の価格だったが、その時点では9,927円で販売されていた。当初価格のほぼ65%引きにあたる。なるほど、売れるわけだ。
今年の東京は、2月になっても寒く乾いた日が続いている。まだ、これから加湿器を購入しても使える期間は長いだろう。
というわけで、今回は、この1万円弱の加湿器を購入して試してみた。1年ちょっと前の製品とはいえ、この価格に見合う性能を持っているのかどうか。どのように使えば良いのかをチェックしてみよう。
メーカー | 三洋電機 |
製品名 | 加湿器 CFK-VWX07C |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 9,927円 |
■思っていたよりも大きい
到着した箱は想像していたよりも一回り大きかった。それもそのはずでCFK-VWX07Cは、37×28×40cm(幅×奥行き×高さ)もあるのだ。加湿器というよりも小型の空気清浄機に見える大きさだ。デザインは白とグレーを基調にしたシンプルなデザインで、いかにも清潔感がある。
外箱はシンプルなデザイン | 取扱説明書と本体だけが入っている | 厳重に梱包されている |
とりあえずテープをはいで、袋を外して行く | 基本的な使い方が貼られている。取扱説明書より、これの方がわかりやすい |
箱から本体を出していると、我が家の猫「鉄蔵」が、さっそくチェックにきた。そこで、並んでもらうと、高さがあまり変わらない。鉄蔵は約4.5kgもある大きめの猫なので、そのつもりで写真を見ていただきたい。狭い部屋だと存在感のある大きさだ。
取り出した本体 | 大きめの猫と比較。加湿器の高さはちょうど40cmある | 本体の奥行きは25cmぐらいある |
また、本体には水が入っていることもあって、あまり部屋を移動して使うというタイプの製品ではない。どちらかといえば、特定の部屋の安定した場所にひっそりと置かれているという使い方が向いている。
【お詫びと訂正】初出時に持ち手がないと記載しておりましたが、操作パネル後方、ルーバーの周りに折りたたまれています。お詫びして訂正させていただきます。ご教示いただいた読者の皆様にお礼申し上げます。
加湿器につきものの水タンクは、本体の背面に背負うような形になっている。この容量が4.5Lつまり4,500ccもあるので、それなりの大きさがある。台所のシンクや深めの洗面台で、ぎりぎり蛇口の下に立てられる大きさだ。水を入れる口の直径が8cmあるといえば、だいたい想像してもらえると思う。水を一杯に入れると約5kgあるので、片手で下げると重い。ともかく、水交換の頻度を下げるためにタンクを大きくしたいという設計者の気持ちが伝わってくる。
操作パネル。後方に持ち手がたたまれている | ルーバーは手動で開ける。ここから風が出てくる | 右側面。吸気はこちらの面から |
吸気用のフィルタ。掃除機で1週間に1回ぐらい掃除することが推奨されている | 本体の隅は丸みを帯びている | 背面にランドセルのように水タンクをしょっている |
斜め後ろから見た状態 | 水タンクは、カバーで固定されている | 左側面には吸気口がない |
取り扱いの注意と仕様。「長期間使用しないときや、お手入れのとき以外は、電源プラグを抜かないでください」とある | 左側面の角から電源コードが生えている |
この加湿器は、メーカーでは「ヒーターレスファン加湿方式」と言っている。一般には「気化式」と呼ばれるもので、簡単に言うと濡れたフィルターに風を当てて湿度を上げるという方式だ。
気化式の利点は、消費電力が少ないことと、蒸気や湯などでやけどをする心配がないことだ。おかげで、猫が風の吹き出し口を覗き込んで、ニオイを嗅いでいても、そのまま放っておける。動物や子供がいる家庭では重要な利点だろう。
逆に欠点は、出てくる空気の温度が低いこと、加湿力が弱いこと、フィルタが水に浸かっているのでメンテナンスが必要なことなどだ。
以上のような知識をもって、とりあえず水タンクを満たし、電源スイッチを入れてみた。初期の状態では、運転モードは「おまかせ」、部屋のサイズは「リビング-標準」になっていた。
操作パネル。初期状態はこういう設定。湿度30%なのでファンが強く回る | 水タンク。手前の注水口の部分が下になる | 注水口の直径は8cmもある。高さは30cm強 |
そう、この製品は、一般的な運転モードのほかに、部屋の広さと状況を3段階で指定できるのだ。つまり、同じ「おまかせ」であっても、部屋の広さを一番小さい「寝室」から「リビング-標準」「リビング-急速」へ変えていくと、ファンの回転数が上がるようになっている。
ちなみに運転モードは「おまかせ」「しっとり」「おやすみ」「静音」「強」の5段階だ。
気化式の場合、ファンの強さ(回転数)でしか、湿度調整の調整はできない。たとえば、スチーム式のように、ヒーターを強くして、より多くの蒸気を出すというようなことはできないのだ。
それにしては運転モードと部屋の種類を2重にしているのは、ちょっと操作が複雑すぎる気がする。部屋の種別をなくして、代わりに運転モードに一定時間だけ「強」で動作してあとは「おまかせ」になる「ターボ」というモードを作れば十分ではないだろう。
■静音モードでの消費電力は、わずか6W
操作に行数を取られてしまったが、電源を入れた直後の状態に戻ろう。「おまかせ」と「リビング-標準」での動作だが、思っていたよりもファンの音が大きい。比較的高い周波数なので、TVを見ていても気になってしまう。音がうるさいせいで、鉄蔵の耳もずっと加湿器の方向を向いている。
いろいろ試した結果、我が家では「リビング-標準」で「静音」で動作させることになった。このモードであれば、存在を忘れていられるのだ。
このモードでの加湿量は、1時間に約300mlとされている。洋室で8畳、木造の和室で5畳ぐらいが適当な広さだ。ただし、1日中動かしていると、12畳のリビングでもそこそこ加湿されている感じがある。
CFK-VWX07Cの前面パネルには、湿度計が内蔵されており、上面のパネルに湿度がデジタル表示されるが、これが45%ぐらいで安定している。なお、本体の湿度計の数字を、ほかの湿度計とくらべてみたが、ほぼ一致しているので信用して大丈夫だ。
「しっとり」や「強」にすれば、もっと湿度は上がるが、もともと気化式は足りない湿度を補うという性質の方法で、スチーム式のように蒸気で強引に湿度を上げるというものとは性格が違う。急速に湿度を上げたり、むりやりにしっとりさせたりするよりは、自然のままに、ちょっと湿度を上げるという使い方の方が似合っているのだ。
というわけで、タイマーを駆使したり、操作モードをやたらと切り替えたりするよりは、「静音」モードにして1日中動かしておく方法をお勧めしたい。ちなみに、このモードでは消費電力はわずか6Wでしかない。
電源を入れ、モードを切り換えているところ。最初はおまかせ→しっとり→おやすみ→静音→強→おまかせの順で切り換え、一巡した後は、部屋のサイズで「リビング-標準」→「リビング-急速」を選択。最後に、一番静かな「寝室-おやすみ」、多用する「リビング-静音」を選び、終了している |
とはいえ、「音」も環境ととらえて、もう少し静かなファンと構造を考えてほしかったとは思う。そうすれば、製品のイメージがぐっと向上し、用途も広くなっただろう。
ついでに言うと、水タンクから水が落ちるゴボッという音が10分~20分に1回ぐらいするので、慣れるまでは気になる。ちなみに、この音は猫が調子が悪いときに立てるある種の音に似ているので、うちの妻は目が覚めてしまうという。これは特殊な例だが、耳ざとい人が寝室に置くときは注意が必要だろう。
■水道水を使って、コンセントは抜かないのが使うコツ
今回は、試用期間が短いため、フィルタや水タンクの掃除については、試せなかったので、ご了承いただきたい。
しかし、この製品の場合、気化式の短所である水タンクの汚れについては、個人的にはあまり心配していない。この製品に搭載されている電解水除菌システム「virus washer(ウイルスウォッシャー)」は同社の空気清浄機などで使用経験があり、それほど汚れないことを体感しているからだ。
LED表示を暗めに設定できるが、真っ暗にはできない | 本体背面から加湿トレイを抜いた状態。水が入っているのはこの部分だけで、本体内は濡れないようになっている。白い四角が加湿フィルター | 加湿フィルターのアップ。交換時期は18カ月ごととされている |
水タンクを外した状態。ここから水がたまっていく | 使用中はフロートの部分にも少し水が入っている |
加湿トレイを抜いた状態で、本体内を見る。トレイ以外には水がまわらないように設計されている | 本体上のルーバー部分から加湿トレイを見たところ。奥に水がたまっているのがわかる |
ただし、ウイルスウォッシャーには、2つほど注意する点がある。1つは、必ず水道水を使用すること、もう1つは、できるだけ電源を入れた状態にしておくことだ。
なぜ水道水かというと、この殺菌方式が水道水中の塩化物イオンをもとにしているからだ。簡単に言えば、井戸水、浄水器の水、ミネラルウォーターなどでは、塩化物イオンが含まれておらず、殺菌ができなくなるということらしい。私は浄水器を使うのが好きで、猫草にかける水も浄水を使ってしまうほどだが、この製品については我慢して水道水を使っている。
もう1つが、この方式が電気分解によるものであり、電源を必要とすると言うことだ。つまり、待機電流をカットするために電源コードをコンセントから抜いていると殺菌できない。やっぱり、特定の場所で、電源を入れっぱなしにして動かしておくべきほうが、なにかと都合が良い製品なのだ。
「水道水以外は禁止」との注意 | うちの洗面台は深めだが、それでも立てると蛇口ぎりぎりだ | 移動時に持てるよう取っ手が付いている |
■「環境」を考えた三洋電機らしい製品
最後のこの製品の長所と短所を、改めてまとめてみる。
●長所
・水タンクが大きく、加湿時間が長い。リビング+静音で半日(12時間)ぐらい持つ
・蒸気などが出ず、子供や動物にも安全
・加湿しすぎることがなく、穏やかな性質
・ウイルスウォッシャーで水や水タンクが殺菌されている
・消費電力が小さい
●短所
・本体が大きくスペースが必要
・ファンの音が大きめ
・出てくる空気が、やや冷たい
・電源コードの抜き差しに制限がある
というわけで、真っ先にお勧めできる用途としては、子供部屋への設置だ。安全で、水の補充頻度が低い。ファンの音も「静音」か「おやすみ」であれば気にならないだろう。子供の健康が気になる人は前向きに検討するべきだ。
逆に向いていないのは、帰宅したら短時間で湿度を上げたいというような人や、加湿器を使うときと使わないときをはっきりさせたいという人、肌やノドのために高めの湿度を保ちたいという人だ。そういう用途には、パワーのあるスチーム式の方が満足度が高いはずだ。
いろいろと書いてきたが、使ってみてわかったのは、この「CFK-VWX07C」という加湿器が、いかにも三洋電機らしい製品だということだ。
つまり、無駄なエネルギーを使わずに快適で清潔な生活を送るための道具として、よく考えられていると感じる。「Think GAIA」をテーゼとしていた会社が、テーゼに忠実に一生懸命作った製品なのだ。そういう姿勢に共感を覚える人たちにも、ぜひお勧めしたい。
使い方を選ぶ製品ではあるが、やはりこれが1万円弱ならお買い得だと思う。
2011年2月7日 00:00