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使うとポイ活になるポータブル電源? 生まれた理由を聞いた
2026年7月15日 09:04
非常時の備えやアウトドアなどに活用できるポータブル電源。大容量や高出力、急速充電など様々なモデルが登場するなかで、特に使いやすさを重視し、しかも使うとポイントがたまる“ポイ活”までできるという「solarich(ソラリッチ)」をご存じだろうか?
既存のポータブル電源とは一線を画すアプローチはどこから生まれたのか。ソラリッチ誕生の背景について岩井一弘 代表取締役に話を聞いた。
生活空間で毎日使いやすいポータブル電源
ソラリッチの取り扱うプロダクトはポータブル電源のみであり、最初の製品名がソラリッチに決まったあとで、企業名を製品名と同じ名前に変更した。つまり同社は「ポータブル電源ソラリッチのための会社」ともいえる。
昨年、GREEN FUNDINGでクラウドファンディングを実施。支援額は目標500,000円に対して、支援人数582人、総額52,926,269円を獲得して注目された。人気の秘密を探るため、まずは簡単にどんな製品か紹介したい。
本体デザインは、リビングや個室で日常的に利用しやすい親しみのあるフォルムが特徴的で、前面パネルの着せ替えができる。ユニークなのは、使えば使うほどポイントがたまる「ポイ活」への対応だ。このポイ活の詳細は後ほど説明する。
ポータブル電源の仕様としては、リン酸鉄リチウムバッテリーを採用。容量は614.4Whで、AC出力は90~110V、瞬間最大出力は1,600W、同時給電は最大7台(AC×2、USB Type-C×2、USB Type-A×2、シガーソケット×1)。コンセント充電で最短1.2時間でのフル充電、充電しながら給電するパススルー充電にも対応する。
本体サイズは301×227×193mm(幅×奥行き×高さ)で、高さはペットボトルとほぼ同じ。重量は約8.5kgでハンドルが付いているため、部屋を移動するくらいの持ち運びなら苦にはならない。ハンドルを折りたたんだ上に充電中のスマホなどの小物をのせられる専用トレーが付属する。
UPS機能を備え、停電時には0.01秒で給電を切り替えるため、デスクトップパソコンなどの停電に弱い電化製品のバックアップ電源としても導入できる。拡張バッテリーにも対応し、最大6台(総容量4,298Wh)まで増設可能だ。
ポータブル電源を、普段は収納スペースに保管している人も少なくないと思うが、岩井さんは「しまっておく」のではなく、リビングなどの生活空間に出して普段使いすることを推奨している。それは、いざというときにこそ使うものだからだ。
必要になったときに充電されていなかったり、使い方がわからなかったら意味がない。そこでソラリッチは、普段からリビングなどの生活空間で活用し、普段使いすることで有事にもすんなり使えるようにすることを推奨。そのための仕様や設計になっている。
リビングなどで目に触れる機会を多くなるため、外観のデザインには気を配り、四隅は丸みを帯びた柔らかいフォルムで、本体カラーはホワイト。前面パネルを木目やカラフルなパネルに着せ替えることもできる。
別売のソーラーパネルと接続して発電し、充電に利用することで節電も可能。そして、発電によって「どれだけ節電できたか」を専用アプリで可視化でき、それがポイント獲得につながるポイ活にも対応する。ポータブル電源の用途として防災やアウトドア用はよく目にするが、ポイ活は珍しい。最大6,000種類のポイントやギフトと交換でき、使えば使うほどお得になるという。
このポイント獲得やパネルの着せ替えは、普段使いしてもらうために生まれた付加価値であり、すべては物置や押し入れにしまい込まないために考えた工夫とのことだ。
同社が行なったポータブル電源に対してのアンケートでも、回答した約400名のうち9割が「持っていても月に1回も使っていない」との結果が出ていた。
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ポータブル電源は使わないとバッテリーが劣化して自然放電してしまう。もしもの災害時に使おうと思ったら電源が入らなかった……では元も子もない。
そのためソラリッチは「毎日使いたくなるポータブル電源」というコンセプトに絞り、毎日使ってもらうためにポイントや普段使いを推奨しているという。
普段から使うことで防災訓練にもつながり、いつ何が起きても「うちの家電なら何分間使えるか」「ソーラーパネルは何時にどの方角に出せば、どのくらい電気がためられるか」といった使い方を自然に覚えやすい。
「いつでも災害に備えられることこそがソラリッチの一番の魅力」と岩井さんは語る。
なぜいまポータブル電源に着目したのか
国内ポータブル電源市場を見ると、Jackery、Anker、EcoFlowが知られるほか、海外でも広く展開するBLUETII、音響分野で日本人になじみ深いJVCケンウッド、日本発ブランドのPowerArQなどもひしめく群雄割拠の戦場だ。
後発で他に製品を持たないソラリッチがこの市場に新規参入したことは、リスキーなようにも映る。なぜレッドオーシャンともいえるポータブル電源市場に参入したのか。これは岩井さんに聞きたかった大きな疑問だ。
岩井さんはかつて2014年にECのスマホケース専門店として株式会社OVER'sを設立し、2022年にOVER'sをForest株式会社にバイアウト。売却益でソラリッチの親会社となる「株式会社おもてなしアース」を創立する。
このとき岩井さんは「ただ利益を出す会社ではなく、利益をどう使うかまで考えた企業にしたい」との思いから、社会問題の解決に貢献できる事業を検討した。様々な社会問題を見るなかで、電気代の高騰や未電化地域の問題が特に目に付いたという。
「ソーラーパネルが解決策になりそうだけれど、自分がそこで何ができるかと自問して、ソーラーパネルとポータブル電源の組み合わせであれば、EC販売の経験を活かせると考えました」と岩井さんは説明する。
メインターゲットを女性や高齢者に
ソーラーパネルで発電し、節電しながら充電することを念頭にポータブル電源の企画を始めた岩井さんだが、コストパフォーマンスでは大手メーカーに太刀打ちできない。魅力のある付加価値を提案できるかどうか、どのような特長なら打ち出せるか、考えなければならない。
岩井さんはポータブル電源市場を調査するうちに、各社から発売中の製品はいずれも「一部のITリテラシーが高い男性」にユーザーがかたよっており、一般の主婦や高齢者が取り残されていることに気が付いた。そこで、ターゲットを40~60代の女性に絞り、8割がそこに入るように企画を練っていった。
岩井さんはこのターゲットにリーチするためにいくつも工夫を凝らした。いずれも最初から準備されたものではなく、試行錯誤しながら段階的に実現していった。整理すると大きく5つに分けられる。1つずつ詳しく見ていこう。
【1】ガジェット感の払拭
【2】いざという時に使えない問題の解消
【3】街の電気屋さんのような手厚いサポート
【4】ポイ活との連動
【5】安全性の確保
【1】ガジェット感の払拭
岩井さんが企画を練り始めた頃、市場には丸みを帯びたデザインの製品がなく、全体的に黒っぽいガジェット感の強い製品が多くて、女性が室内に置いて普段使いしやすいようなかわいいシルエットのものが存在しなかった。現在では一部で登場してきているが、傾向としては大きく変わっていない。
そこでソラリッチではガジェット感の払拭と、細かな使い勝手を良くする設計に取り組んだ。
本体カラーはホワイトをベースにして角には丸みを付け、操作ボタンや液晶パネル、コンセントプラグやUSBコネクタを挿すソケットなどはすべて前面に配置した。充電用のケーブルが散らからないように押さえておける、ケーブルホルダーやケーブルフックなども用意。本体底にはキャスターも付けた。
本体前面はカバーを交換でき、木目や大理石風を含む9色を準備。インテリアに合わせて選べる。交換用カバーは販売開始後でも追加でラインナップしやすく、要望次第では新しいカラーやデザインも検討していくという。
【2】いざという時に使えない問題の解消
先ほど説明した通り、いざ使おうという時に充電できていなかったり、使い方が分からなかったりして使えないと困る。
このため、岩井さんはポータブル電源を日常的な利用に向けた啓蒙や、毎日使いたくなる仕掛け作りに注力した。サポートやポイ活との連動などは、この流れで出てきた工夫だ。
大手メーカーが効率化のためにAIチャットやWebマニュアルに移行する中、敢えて紙のマニュアルを用意し、サポートは垢抜けなくてもケースバイケースに対応できるようにLINEの利用にこだわった。
正しい使い方が習得できる動画も作って公開。ベランダや庭でソーラー充電を毎日行ないたくなるよう、アプリにゲームらしさを取り入れ、ポイ活とも連動。いざという時にユーザーが迷わず使えるよう、売って終わりにするのではなく、購入後の動向も重視しているのだ。
【3】街の電気屋さんのような手厚いサポート
売って終わりにしない商売といえば、「街の電気屋さん」は1つの代名詞だ。顧客の満足感を次の商売につなげるため、顧客とWIN-WINになる信頼関係構築を重視し、無理な販売は決してせず、ときには顧客の期待と異なったとしても「相談して良かった」と思われる提案を心がける。
岩井さんが目指しているのは、ポータブル電源に関して、街の電気屋さんのように顧客からの相談に親身になって答えながら、ソラリッチを気に入って使い続けてもらうことだ。
「被災地で停電になった時、自力で3日間(72時間)過ごせるかどうかが無事に生き延びられるかどうかの目安とされています。しかし、せっかく防災用にポータブル電源を購入しても、自宅にある電化製品が何時間、あるいは何回使えるのか、いざというときにどういう優先順位で使うべきかまで考えているユーザーはあまりいません。
そのため、何にどれだけ使えるか書き込める早見表を作って同梱しました。製品が宝の持ち腐れにならないよう、ポータブル電源を使う人なら当然知っているようなことでも、改めて説明する分かりやすいマニュアルを用意し、操作方法や使い道の疑問を解消できるよう、電話やLINEでしっかりサポートしています」(岩井さん)
また、ユーザーが自宅で使っている家電の型番をLINEでソラリッチに送ると、それがソラリッチで何分使えるか、岩井さんが調べて回答しているという。迅速に調べて答えられるようにしているので、それほど時間は取られないそうだが、注文数が増えるにつれてうれしい悲鳴を上げる業務になりそうだ。
岩井さんはユーザーがソラリッチを使い終わった後のことにも気配りしている。バッテリー製品の廃棄は地域によって方法が異なるため、ユーザーが悩まなくていいように専用のダンボールを用意して、回収の連絡先などを案内しており、このあたりもユーザーに安心感を与える要素といえるだろう。
【4】ポイ活との連動
一番の特徴ともいえる「ポイ活連動」は、文字通り充電するだけでポイントをためられるものだ。専用アプリで節電と獲得ポイント数を可視化し、環境への貢献度も分かるようになっており、利用するほどイラストの木が育っていき、木の成長によるボーナスポイントも獲得できるなど、ゲーム感覚で楽しめる。
この機能は女性に人気で、ソーラーパネルで発電するとポイントがたまりやすいため、毎朝ベランダにソーラーパネルを出すのが日課になる人もいるそうだ。
岩井さんは「ポイ活に熱中するあまり、電力を無駄に消費してまで発電するのは止めましょうと呼びかけています」と話す。
なお、本体とソーラーパネルの接続にはフラットケーブルを採用。本体は室内に残してソーラーパネルを屋外に出し、窓を閉められるように配慮した。パネルは太陽の方向に向けた状態がもっとも発電効率が良くなるため、角度が調べられるソーラートラッカーを標準で付属。さらにマンションのベランダなど、下の方の日当たりが悪い場所用に物干し竿に吊り下げるためのS字フックも付属する念の入れようだ。
【5】安全性の確保
最後に触れておきたいのが安全性だ。岩井さんはキャンプや車中泊などでは、車内が高温になるなど過酷な環境になることがあり、そうした環境ではなく、「人間が心地よいと感じる20~25℃の室内」での使用を推奨している。
人間にとって暑すぎる場所や寒すぎる場所は、バッテリーにとってもハードな環境になる。そうした場所ですぐに火が出るということはなくても、期待通りに動作できなかったり、劣化するペースが上がったりするので気を付けたい。
岩井さんは製品の想定外のトラブルを未然に防ぐためにも、家庭内での安全で安定した利用を推進したい考えだ。
ソーラーと空をリッチにしたい
ポータブル電源を使い慣れていない女性や高齢者をターゲットにして、使いこなせず後悔することのないよう、手間暇のかかる手厚いサポートを心がけているうちに、ソラリッチは直接競合する製品のないユニークな存在になっていた。岩井さんはレッドオーシャンの中にブルーオーシャンを作り出していたのだ。
もちろん、すべて順調だったわけではない。岩井さんによれば取り組み始めたばかりのころは紆余曲折もあったという。
最初はアメリカ市場への進出も視野に、現在と正反対の質実剛健路線を考え、「ゴリラエナジー」という名前で、真っ黒なごつい本体にして大容量でポイ活を売りにしようとしたそうだ。社名もゴリラエナジーにして商標も取ったほどだったが、ふと「ゴリラエナジーでポイ活はやらないだろう」と我に返ったという。「自分は何をやりたくて始めたのか」と改めて考え直し、名前もソラリッチに決まった。
ソラリッチの名前は「ソーラー(solar)」と「空」、この2つに「リッチ」を掛けたもの。太陽光で環境も財布も豊かにしたい。使えば使うほどお得になる。防災に役立ち、ポイントもたまる。操作もゲーム感覚で楽しく一石三鳥というわけだ。
冒頭で触れたとおり、製品名が決まると社名もソラリッチに変更。こちらも商標を取った。コンセプトが変わるたびに社名も製品名も変更するフットワークの良さが面白い。
今後はバッテリーマネジメントシステム(BMS)をブラッシュアップしながら、月に1回程度、都内で体験会を開催し、ソラリッチの購入者が快適に使えるようなフォローアップに取り組んでいきたいとのこと。ポータブル電源に興味を持っていても、実際に使い続けられそうか迷っている人などは、この機会に検討してもよさそうだ。










