家電製品ミニレビュー

サンジェルマン「GENTOS 閃 SG-305」

~照射範囲が調節できる、明るいLED懐中電灯
by 藤原 大蔵

 ビシッと明るい懐中電灯は、かつてはどうしても大きなものになりがちだった。なぜなら、それまでは懐中電灯の光源には豆電球が使用されており、明るさを得るためには、乾電池の本数を増やして電力を大きくする必要があったからである。

 ところが最近は、光源に豆電球ではなく、小電力でも明るさが得られるLEDを用いた懐中電灯が出回ってきている。以前はLEDを搭載するだけで値段も高かったが、最近は手頃になってきた。

 今回はそんな“LED懐中電灯”の中から、手のひらサイズなのに明るく、しかも照射角度が調整できる機能も備えた、サンジェルマンの「GENTOS 閃(ジェントス・セン) SG-305」(以降、閃)を紹介しよう。

サンジェルマン「GENTOS 閃 SG-305」。「閃」の文字がひときわ目立つパッケージだ本体

メーカーサンジェルマン
製品名GENTOS 閃(ジェントス セン)
品番SG-305
購入店舗Amazon.co.jp
購入価格2,246円


本体はコンパクトで手に馴染む


ゴツイ本体だが、手に良く馴染む大きさで質感の高い触感
 購入するうえでまずポイントになったのが、そのコンパクトな本体。29×103mm(最大直径×高さ)と、手の中にすっぽり入るぐらい小さい。それでいながら、手にした時の収まりが良い。見た目はゴツいが、アルミ製の本体は多少手荒に扱っても大丈夫そうな安心感がある。細部の仕上げも丁寧で、実売価格以上の質の良さを感じる。重量も102gと軽い。

 光源部を覗き込んでみると、厚めのレンズ越しに小さなLEDが見える。分解できない作りなので具体的なサイズはわからないが、数mm四方のかなり小さなLEDが確認できた。

 電源は単四形のアルカリ電池が3本。専用の電池フォルダーにひとまとめにして本体に装着する。あとはテールキャップにある、ひときわ目立つオレンジ色のスイッチを押せば点灯する。

単四形の乾電池3本を電池フォルダーにまとめて本体に装着。購入時にテスト用の電池が付属する直径20mmほどのプッシュ式のスイッチ。点灯/消灯はこのスイッチを押すだけ光源部をのぞき込むと、かなり小さな正方形のLEDが確認できる


直視できない明るさ。照射範囲が広い「ワイド」、狭めだが明るい「スポット」が選択可

文庫本が普通に読めるほど明るい。写真はワイドビーム時
 ライトを点けると、光源を直視できないほどの明るさに驚いた。1m先の壁を照らすと、直径80cmほど光の円がくっきりと浮かぶ。その明るさは最大で192Lxと、普通に本が読めるほどだ。

 本製品は、照射範囲を広くしたり狭めたりできる点が特徴。初期状態では、照射範囲が最大の「ワイドビーム」になっている(前述の数値もワイドビーム時のもの)。ここでヘッド部分を回転させると照射範囲が狭くなり、明るさがどんどん増していく。照射範囲を最大に絞り込んだ「スポットビーム」の時には、ワイドビームの半分となる直径40cmの明るい円が映し出される。

 このスポットビーム時の中心部の明るさを計測すると、なんと2,515Lx!! この明るさは、室内で使用するLEDデスクライトと同等、またはそれ以上のもの。つまり、デスクワークがラクに行えるほどの明るさを、乾電池だけで点灯できてしまうのだ。

光の範囲調節はヘッド部分を回すだけ。滑り止めの加工があり回しやすい。写真はスポットビームにした様子だが、その時全長が約3mmほど伸びるワイドビーム時の明るさ。1m先を照らすと直径約80cmの範囲を照らす。懐中電灯としては十分明るい。光のムラが少し気になるところだが、実使用では思ったほど気にならなかった1m先を照らしたスポットビーム時の明るさ。中心部はなんと2,515Lx!! LEDデスクライト並の明るさが得られる

 この2つのモードの光の軌跡を比べるために、閃を2mの高さに固定し点灯させてみると、ワイドビームの照射範囲は直径170cmとかなり広く、しかもはっきりした明るさが感じられた。スポットビームは、照射範囲は直径85cmとやや狭めではあるが、ワイドよりもかなりまぶしい明るさが得られた。


 照射角度は、ワイドビームでは約30度、スポットビーム時は約8度となる。室内での使用や手元付近を照らすのなら、ワイドモードでも十分だろう。実際、天井を照らしてみたところ間接光としても十分に使えそうなほど明るい。一方のスポットビームは、さらに遠くを照らしたい時、強力な明るさが必要な時に活用するのが良いだろう。無段階調整にも対応しているため、用途に応じて照射角度を変えることも可能だ。

2mの高さから床面をワイドビーム(約30度)で照射した様子。床面には170cmの半円が広がる同じく2mの高さから床面をスポットビーム(約8度)で照射した様子。床面には約85cmの半円が広がる。ワイドよりもかなりまぶしい

フツーの懐中電灯よりも明るく、色の再現性も高い

 ここで、閃とコンパクト豆電球タイプの懐中電灯「マグライト MINI-AA」と比較してみると、閃は豆電球タイプのものと比べて比較にならないほど明るかった。正確には、豆電球ライトは電圧が3Vタイプなので、4.5Vの閃との比較は決してフェアではない。しかし、明るさの差はあまりに歴然。一度閃の明るさを体験すると、それまで十分明るいと思っていた豆電球タイプのものが、ものすごく暗く感じてしまう。

 また、モノ本来の色を正確に映し出す「演色性」も、豆電球タイプより優れている。豆電球タイプはどうしても赤っぽい光になるため、色の微妙な変化がわかりにくいが、閃の光色はニュートラルな白色光。明るさも十分に備えているため、白い花びらの微妙な色の変化も良くわかる。

白いバラを閃で照らして撮影。白い花びらの微妙な色の階調もしっかり見えるこちらは豆電球型の懐中電灯で照らした様子。比較すると、ものすごく暗く感じる
閃でホーロー製のヤカンの内側を照らすと、内側の色もはっきりわかる豆電球型は、光色が赤いため、正しい色がわかりにくい

 この明るさと演色性の高さは、夜桜を見物した時に非常に重宝した。外灯にボンヤリ照らされている桜に光を向けると、花びらの薄いピンク色がはっきりわかるほど、キリっと暗闇に美しい桜が浮かび上がった。公園内の暗い道のりも、スポットを使えば10m先までしっかりと照らすことができた。ちなみに、この日はやや雨が降っていたが、防滴仕様なので、多少水に濡れても大丈夫。ストラップも付いているので持ち歩きやすかった。

5m先にある桜を照らす。外灯にボンヤリ浮かぶ桜が、色もはっきりわかるほど鮮やかに照らし出されたこちらは明るくなった夜明け前に使用。空に負けないほど明るい夜の公園の柵をスポットビームで照らす。10m以上先も、柵の色がわかるほど明るく照らし出された

それほど長くはない連続点灯時間。充電池に非対応な点も注意

 コンパクトでとても明るく、扱いもとても簡単な閃であるが、実を言うといくつかの欠点がある。

 まずは「連続点灯時間」。10時間程度と、意外と短い。懐中電灯の中には、より長時間明るく照らせるものもあり、例えば、パナソニックの「エボルタ付きLED懐中電灯」の場合、単3形アルカリ電池2本で連続70時間点灯できる。もちろん、閃はそのぶん明るさが得られるが、その代わりに点灯時間が犠牲になっているというわけだ。したがって、イザという時の非常用懐中電灯として利用するには、やや心もとないものになる。

 ただし、前述の豆電球の懐中電灯は、単3形アルカリ乾電池2本で、連続4時間まで。それよりは倍以上長持ちするのは事実。ちょっとした探し物や、短時間に納まる作業に利用するには十分だろう。

 もう1点、「充電池が使えない」というのもある。防滴仕様のため、本体内部はほぼ密閉状態。充電池はガスを発生する恐れがあり、最悪の場合は本体が破裂する危険性があるとのことだ。充電池を使いたい人は、SG-305とスペックが同じで、エネループに対応したSG-355を購入すると良いだろう。ただし、色はブラックで、価格は500円強高いという違いがある。

天井を照らしているところ。ややムラができやすいが、実使用ではあまり気にならなかった
 また細かい点であるが、ワイドモードでの使用中、光の中心部が周辺よりも少し暗くなってしまうなど、ムラができやすい点も気になった。ただし、気になったのは平面を照らした撮影時のみで、実使用ではあまり問題にならなかった。

誰でも使えるオールラウンドタイプのLED懐中電灯

 コンパクトで手に馴染む使い心地に、小さなものもしっかり照らす明るさ、色の再現度の高さなど、非常に高い能力を備えた製品だ。値段も手ごろでビシッと明るいので、ひとつ持っていれば何かと便利。老若男女問わず、全ての人にお薦めしたくなる懐中電灯だ。




2010年5月7日 00:00