家電製品ミニレビュー
Panasonicロゴの新eneloopと新充電式EVOLTAの実力【前編】
by 藤山 哲人(2013/9/19 00:00)
長年愛され続けたニッケル水素電池「eneloop(エネループ)」。今年春に実施されたリニューアルでは、電池本体の「eneloop」ロゴ部分が「Panasonic」と塗り替えられ、eneloopの文字はPanasonicロゴよりも小さくなり、ネットでは「こんなのeneloopじゃない!」という声があちこちで聞かれた。新eneloopはよりによってeneloopのロゴ部分がPanasonicロゴになってしまったので、結果的にeneloopファンの感情を逆なでしてしまったというわけだ。
筆者もその気持ちは分からないでもないが、ここでちょっと落ち着こう。外見は確かに今までとは異なるが、今回のリニューアルによってスペック上の電池性能は進化した。eneloopでは、繰り返し使用回数は従来の約1,800回から、約2,100回に伸びた。
一方、eneloopに追いつけ追い越せとばかりに張り合っていた、パナソニックブランドのニッケル水素電池「充電式EVOLTA」も、eneloopと同時にリニューアルされた。こちらは容量が増えており、従来の1,900mAhから1,950mAhと、50mAhだけ増えている。
スペックでは確かに性能が向上したようだが、実際の製品ではどのような違いがあるのだろう? 今回は、 旧eneloopと新eneloop、旧充電式EVOLTAと新充電式EVOLTAについて、デザインの話は抜きにして、中身がどのように変わったのを調べてみよう。なお今回の比較は、全て単三形を使用している点を予めご理解いただきたい。
メーカー | パナソニック | パナソニック |
---|---|---|
製品名 | eneloop | 充電式EVOLTA |
購入場所 | Amazon.co.jp | Amazon.co.jp |
単三形4本パックの価格 | 1,005円 | 1,154円 |
・レビュー内の実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。 ・実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません。 ・新eneloopと新充電式EVOLTAは新品を使用していますが、電池を活性化させるため、3回の充放電(リフレッシュ充電)を行なっています。リフレッシュ充電をしていない製品では、同様の実験を行なっても結果が異なる場合があります。旧eneloopと旧充電式EVOLTAについては、使用回数が少ないものを使用しています。 ・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。 |
新eneloopは繰り返し利用回数が300回増加
新旧の電池について、まずは見た目から比較してみるが、パッケージ以外に外観の変更はなく、大きさもまったく同じ。新eleloopは旧タイプと比べて0.1g重かったが、これは誤差の範囲だろう。
新旧タイプで大きく変わったのは、冒頭でも述べたとおり繰り返し利用回数。従来の1,800回から2,100回に増えている。割合にすると17%増。2011年に行なわれたリニューアルでは、それ以前のタイプの1,500回から1,800回へと20%増えたので、ほぼ同等程度のアップデートと考えて良いだろう。
気になったのは電圧だ。測ってみると、旧eneloopはニッケル水素電池の中でもとりわけ高い電圧(負荷未接続時)が高く、1.4V以上を見せていたが、新eneloopは1.37Vと、フツーのニッケル水素電池なみの電圧まで落ちている。
たかだか0.1V未満の話と思われてしまうかもしれないが、電池が空になったとされる終止電圧が1.0Vなので、ニッケル水素電池における0.1V近い電圧差は、利用時間を左右する要因となる。旧eneloopの乾電池代わりに使えるほど高い電圧が好きだったのだが、魅力が半減してしまった感じだ。
タイプ | 旧eneloop | 新eneloop |
---|---|---|
型番 | HR-3UTGB | BK-3MCC |
サイズ | 14.15×50.3mm | 14.15×50.3mm |
重量(実測) | 25.7g | 25.8g |
容量 | 1,900mAh | 1,900mAh |
繰り返し回数 | 1,800回 | 2,100回 |
残存率(1年後) | 90% | 90% |
初期電圧(実測) | 1.43V | 1.37V |
製造国 | 日本 | 日本 |
新充電式EVOLTAは容量増加も、1年後の残存率が減少
充電式EVOLTAの改良点については、こちらも冒頭で述べたとおり、電池容量が1,900mAhから1,950mAhに50mAh増加した点。割合で言うと2.6%増と、スズメの涙ほどではあるが、この50mAh増量でどれだけ長持ちになるのだろうか。
不思議なのは、1年後の残存率が5%減ってしまったことだ。旧充電式EVOLTAはeneloopに“追いつけ追い越せ”といった感じで残存率を85%まで高めていたが、新型になって80%に落ちている。
電圧を調べたところ、eneloop同様に下がっている結果となった。比較対象の旧充電式EVOLTAは何十回も使ったものなので、性格な数値とはいえないが、旧充電式EVOLTAで1.4V台あった電圧は、新充電式EVOLTAでは1.39Vに下がってしまった。
タイプ | 旧充電式EVOLTA | 新充電式EVOLTA |
---|---|---|
型番 | HHR-3MWS | BK-3MLE |
サイズ | 14.2×50.3mm | 14.2×50.4mm |
重量(実測) | 26.7g | 27.6g |
容量 | 1,900mAh | 1,950mAh |
繰り返し回数 | 1,800回 | 1,800回 |
残存率(1年後) | 85% | 80% |
初期電圧(実測) | 1.42V | 1.39V |
製造国 | 中国 | 中国 |
デザインについては、EVOLTAに関して言えば、昔より垢抜けて良い感じに見える(笑)。いままで充電式EVOLTAの「Panasonic」ロゴはグレー、「EVOLTA」のロゴは緑で印刷されていたのだが、今回は両方のロゴが、下地のシルバーが浮き出るような印刷に変わっている。eneloopのカッコよさを取り入れたという感じだ。
ここで、新eneloopと新充電式EVOLTAの違いをまとめてみる。性能差は、eneloopが繰り返し利用回数を重視したタイプになっており、新充電式EVOLTAが1,800回に対して新eneloopは2,100回となっている。一方で充電式EVOLTAは、容量を重視したタイプとなっており、eneloopの1,900mAhに対してEVOLTAは1,950mAhだ。
ありったけの電力を使うミニ四駆で性能テスト。結果はいかに?
ここで実際の機器を動かして、新旧eneloop&新旧充電式EVOLTAの合計4製品の性能差を見てみよう。使うのは、子どもも大人もハマるモーターで走るプラモデル「ミニ四駆」だ。タイムを競うレース用のプラモデルなので、消費する電力もハンパない。アルカリ電池だとだいたい数分ぐらいで使い切ってしまうが、新旧のeneloopと充電式EVOLTAはどうだろうか?
実験は以前アルカリ電池の性能比較で使った、ミニ四駆とその速度を測定するオリジナル装置を利用する。ミニ四駆の車輪の回転を受けてモーターを回転させ、そこで発電した電圧を「速度」としている。速度が遅ければ発電できる電圧は低く、速ければ高くなるという具合だ。ちなみにミニ四駆の公式競技においては、ニッケル水素電池は使用禁止となっている。
乾電池は数分で使い切ってしまうが、容量が多く、細く長く電気を供給できるニッケル水素電池は30分以上走行できた。下段は車輪に仕込んだモーターで発電できた電圧、つまり速度を示している。
一番速く走れたのは新eneloopだ。下段の速度を見ると、スタートダッシュこそ旧eneloop遅れるものの、以降は3つの中で最高速をマークしつつ、44分近く走行できた。電圧も中盤からの粘りが強く、終始高い電圧を維持して、長時間利用できた。
その次は新充電式EVOLTAと旧eneloopで、ほぼ互角の性能といってもいいだろう。上段の電圧を見ても、下段の速度を見てもほぼ同じグラフとなっている。
ただ不思議な点が1つある。新充電式EVOLTAは1,950mAhと、ほかの電池より50mAh容量が多いにもかかわらず、利用時間が一番短いという点だ。その理由はよくわからないが、とりあえず当方の実験環境ではこのような結果となった。
次回は出力の低い一般的な機器で比較
今回はカタログスペックの検証とミニ四駆の走行テストをしてみた。スペックからは、繰り返し利用回数を重視したeneloop、1回の利用時間を重視した充電式EVOLTAという方向付けがされている。しかし実際に使ってみると、必ずしも充電式EVOLTAがeneloopより長持ちということもないようだ。
明日掲載の後編では、もう少し消費電力の少ない一般的な機器を想定して、それぞれの電池がどのぐらい利用できるかを調べてみよう。