家電製品ミニレビュー

三洋電機「eneloop stick booster」

〜単三形eneloop 2本で充電! モバイル電源の新定番
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 携帯電話やiPod、ニンテンドーDSといったモバイル機器の普及で、身近な存在になりつつあるモバイル外部電源。その中でも定番的な位置づけになっているのが、三洋電機の「eneloop mobile booster(エネループ モバイル ブースター)」シリーズだ。昨年11月にeneloop関連製品がリニューアルされたのに従い、一斉にモデルチェンジしたが、従来ラインナップとは全く別に、新製品として発表されたのがこの「eneloop stick booster(エネループ スティック ブースター)」だ。


メーカー三洋電機
製品名eneloop stick booster KBC-D1AS
購入価格1,980円
購入店舗ヨドバシ.com

 eneloopの外部電源は複数あるが、専用リチウムイオン電池式と、このstick boosterのように、単三形電池を使うタイプと、2種類に分かれる。同じブランドでも複数のラインナップがあるため、多くの人が考えるのは、「いったいどれを選べばいいの?」ということだろう。製品の詳細に入る前に、まずこの点を考察したい。

 本来ならば、「とりあえずこれを買っておけば大丈夫!」ときっぱり断言したいところなのだが、なかなかそうはいかない。それぞれに長所と短所があるのだ。ポイントは「容量」と「外出先で電池がなくなった時の対処があるか」に絞られる。 ごく簡単に言ってしまうと、前者が強いのがリチウムイオン電池式、後者に強いのがニッケル水素電池式である。

 まず、「容量」について。専用リチウムイオン電池式の利点は、エネルギー密度がニッケル水素電池より高いため、同じ大きさ・重さならニッケル水素電池式より多くの電力を取り出せることだ。たとえば、大きいサイズのKBC-L2ASでは240分、小さいサイズのKBC-L3ASでも120分、給電できる。実測重量はそれぞれ137g、75g。eneloopを使うstick boosterは90分で、重量74gとなっており、その点では分が悪い。

 

stick boosterは74g(eneloop込み)240分給電できるKBC-L2ASは137g120分給電のKBC-L3ASは75g
 一方、専用リチウムイオン電池式の弱点は、外出先で電池が切れたらオシマイ、ただの荷物になってしまうこと。使い切ったあとは、AC電源なり、USBなりで本体を充電しなければ、使い物にならない。これが、stick boosterのようなニッケル水素電池式であれば、外出先で単三形eneloopが手に入れば、また給電ができる。単三形eneloopは、最近はコンビニなどでも置いているところが多く、いざというときの安心感はある。

 ここで、「じゃあ、アルカリ電池とかで充電できるの?」と思われる方もいるだろう。これについては後ほど検証する。

 リチウムイオン電池式の2機種については、以前にレビューしているので詳細はそちらでご覧頂くとして、ここではシリーズの仕様を簡単に表にまとめた。選ぶ際のポイントは、「容量が欲しい!」ならリチウムイオン電池タイプを、容量より、「いざとなったとき、コンビニで電源が買える安心感が欲しい!」ならニッケル水素電池タイプ、ということになると思う。


製品名KBC-L2ASKBC-L3ASeneloop stick booster
電源内蔵リチウムイオン電池単三形eneloop 2本
USBポート数211
給電時間240分120分90分
充電方法AC/USBUSB別途充電器が必要
USBポートからの充電時間14時間7時間-
ACアダプタからの充電時間7時間--
重量(実測)1377574
重量1gあたりの給電時間1.75分/g1.6分/g1.22分/g
購入価格4,950円3,582円1,980円

 さて、今回のstick boosterだが、結論から言ってしまうと、iPhoneに代表されるスマートフォンと組み合わせて購入するには最適な製品だと言える。

スティック状の本体はしっくり手に馴染む裏側に電池を入れる向きの表示があるフタに付いたスイッチで給電のON/OFFを切り替える

 まず、持ち運びに適したスティック状の本体。スマートフォンやケータイを充電する場合、そのモバイル機器を使用しながら、接続して充電する機会が自然と多くなる。すると、外部電源の本体がジャマになるが、スティック状ならポケットやカバンにもスッと収まる。

 もう1つは、電源のストックが効くこと。つまり、「今日は外出中、ずーっとiPhoneを使っていそうだから、2,3回充電がいるな」と思ったら、充電済のeneloopを余分に持って行くだけでいいのだ。なにを当たり前のことを、と言われるかもしれないが、リチウムイオン電池式は、どんなに容量が大きかろうが、内蔵電池の容量がなくなってしまえばそこで終わり。家で充電し忘れた、なんてことがあれば、まったく使い物にならなくなってしまう。

 その日の状況に合わせて、あらかじめ入ってる2本だけに留めて荷物を軽くしたり、予備を何本も持っていって安心感を得たり、融通が利くのは利点だ。

 

完全放電の状態から充電できるスイッチをスライドさせ、この状態になっていると給電する53%まで充電できた
 なお発表当時、三洋電機に問い合わせた際、「iPhoneならば放電状態から約70%まで充電できる」と回答があった。実際に完全放電状態からの充電を試してみると、普通にメールやSMSを使いながらの状態で、53%まで充電できた。使用しながらなので、こんなものだろう。単純に考えると、満充電の状態にしたいなら、予備で2本、eneloopを持ち歩く必要があるだろう。

 気になるのは、先ほど触れた、「じゃあ、アルカリ電池で充電できるの?」という点だ。取扱説明書を見ると、種類や残量が異なる電池を混ぜるな、という内容の注意書きはあるが、「eneloop以外は使うな」とは書いていない。

 

パナソニックのアルカリ電池でもテストしたが……
 そこでコンビニでも手に入りやすい、定番製品のパナソニックのアルカリ電池を使用して、同じ条件で充電してみた。結果は、一応充電はできるものの、放電状態から15%までしか充電できなかった。そもそもの電池特性と容量の違いによるものだろう。コンビニでeneloopより安価なアルカリ電池を買って充電、というのは、不可能ではないが、緊急時の気休め程度にしかならない。もし売っているのならば多少の出費をしても、繰り返し使え、より長く給電できるeneloopを買う方がよい選択と言えるだろう。

 もう1つ、薦められるポイントは価格だ。eneloop 2本が付いて1,980円と、リチウムイオン電池式の2機種に比べ、半額以下となっており、非常に買いやすい。ただし、電源となるeneloopを充電することができないため、別途、充電器を購入する必要がある。

 これまでまったくeneloopを使っていない場合は、充電器も購入せねばならず、価格面のメリットはない。だが、既に家庭で使っている場合は、持っている充電器やeneloopを資産として有効に活用できる点は魅力だろう。

 

iPhone OS 3.0以降が推奨されている
 ちなみに、iPhoneは完全放電時から充電するのに、通常より高い電圧が必要とされる仕様になっており、サードパーティの汎用充電器の中には、完全放電の状態からは充電できないものも存在する。だが、この製品に関してはメーカーが正式にiPhone対応を謳っており、完全放電の状態からも問題なく充電できるようになっている。なお、iPhoneの場合は、iPhone OS 3.0以上が推奨されている。

 2週間ほど毎日持ち歩いて使ったが、使い勝手の面で言うと、単三形eneloopを使うという構造上、充電を忘れやすいことに気づいた。たとえば、これまで使っていたリチウムイオン電池式のものであれば、会社に来たときにUSBケーブルにつなぎ、退社時に外してカバンに入れるだけでよかった。

 だが、stick boosterの場合、電池が切れると、フタを開けて中のeneloopを取り出し、充電器にセットし、充電が終わったらまたeneloopを本体に戻す、という作業が必要になる。これが毎日となると、意外と忘れやすい。毎日の充電を忘れ、いざ使おうとしたら残量がなかった、なんてことや、そもそも充電したeneloopを戻し忘れたということもあり、途中からは、その日の使用頻度の予想にかかわらず、常に2本は予備のeneloopをカバンに入れるようになった。

 ここまで述べてきた特徴や、使用してきた実感を総合すると、とりあえずカバンの中に入れておく、というようなライトユーザーにうってつけの製品だと感じた。特にeneloopの使用環境がすでに整っている場合は、stick boosterはお得な選択だ。また、ライトな用途に加えて、予備の電池を持ち歩いてヘビーにも使えるため、これからスマートフォンを買う人にもお勧めだ。

 毎日のように外部電源を使用するヘビーなユーザーは難しい選択になるが、大容量、そして充電作業の手軽さというリチウムイオン電池式のメリットと、いくらでも予備の電源を持てるstick boosterのメリットをはかりにかけて選べばよいだろう。





2010年2月4日 00:00