藤本健のソーラーリポート
小型ソーラーバッテリーってホントに使える? 5製品を試してみた

 「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)


 いざというときのために太陽光で携帯などの充電が可能なグッズを手元においておきたいというニーズは結構あるようで、キーホルダータイプの小さな太陽電池アクセサリーを付けている人をよく見かける。

 しかし、実際に使ってみると出力が小さすぎてまともに充電できなかったという経験がある人も少なくないだろう。そこで今回は、数千円で入手でき、大きめのパネルを持つ太陽電池グッズをいくつか使ってみた。


最近よく見かけるアクセサリータイプの太陽電池。でもあれってあまり役に立たない

 最近は大手量販店やファミレスのグッズ売り場などでも見かけるようになった太陽電池。キーホルダーやストラップタイプで携帯の充電ができるものが主流で、500円程度のものから数千円くらいものまでいろいろある。小さいし、カラフルでカワイイものが多いので、試しに買ってみたという人も多いのではないだろうか。

 ただ、こうした小型の太陽電池アクセサリーが、実際にどれだけ使えるかというとなかなか微妙なところ。完全に停電になった場合などには何かしらの役に立つかもしれないが、これで充電するというのは、普段使いには非現実的。というのも、面積的に見て太陽電池の出力が小さすぎて、待ち受け時の消費電力分をまかなえるかどうかも疑わしいレベルだからだ。例えば、電池パネルが2cm四方のものなら、出力は50mW(ミリワット)程度が限界。それも直射日光を垂直に受けた場合の話であって、適当に置いておけば充電できるというようなものではない。

 そう言うと、「太陽電池搭載の電卓は蛍光灯の下でも十分使えるではないか」という人もいるかもしれないが、それとこれとでは、いろいろな違いがある。まず、電卓の消費電力は1mW(ミリワット)以下と少ない。それに対し、携帯の充電は数百~数千mWと、ケタがずいぶん異なる。

 さらに、アクセサリーに搭載されている太陽電池と電卓に搭載されている太陽電池では種類が異なる。前者の多くが多結晶シリコン太陽電池が使われているが、後者はアモルファスシリコン太陽電池が使われている。多結晶シリコン太陽電池は、屋根の上に設置されているものと同様のもので、非常に高い変換効率を持っているが、太陽の光でないとほとんど反応しない。それに対しアモルファスシリコン太陽電池は、変換効率は低いが、蛍光灯やLEDの光でも反応するという特質を持っている。だから、太陽電池アクセサリーを室内の明るいところに置いておいても、まったくといっていいほど充電はできないのだ。

 もしアクセサリーで充電したいのであれば、日中に日当たりのいい場所に置き、できる限り、太陽に垂直になるようにするという工夫も必要。それでも、50mW程度の出力では、まともに充電できるかどうか微妙なところ。あまり過剰な期待をしないほうがいいだろう。


アクセサリー形より大きい、数千円レベルの携帯形ソーラー充電器は実際に使えるのか?

今回は小型のソーラー充電器5製品を用意し、その使い勝手を試してみた

 その一方で、アクセサリーよりも少し大きいが、その分ある程度の出力が期待できる小型のソーラー充電器がいろいろ出てきている。サイズは手帳くらいのものから、折り畳み式で広げると1mほどの長さになるものまでいろいろある。いずれも多結晶シリコン太陽電池を採用しているため、直射日光に当てて使うことが前提となっているが、価格的には数千円台、高くても1万円未満で入手できる。ストラップタイプのものに比較すると実用に値すると推測される。

 こうした太陽電池は震災後に特に増えてきているようだが、このような機材は特段新しいジャンルの製品というわけでもない。筆者も30年ほど前、2本の単三形ニッカドバッテリーが充電できる折り畳み式の太陽電池の充電器を購入、使っていた。今でも使うことができる長寿命な機材なのだ。

筆者が30年前に購入した、単三形ニッカドバッテリーが2本充電できる折り畳み式の充電器。こうした製品は以前からあったのだ

 この太陽電池と最近の製品と比較して、1点大きな違いがあることに気づくだろう。そう、この古い太陽電池は、パネルが長方形ではなく、扇型になっているのだ。これが当時の単結晶シリコン太陽電池の特徴でもあり、丸いシリコンウェハをカットした結果がこういう形になっているのだ。半径4cm弱という小さいサイズであることからも年代モノであることが分かるだろう。

 話がそれてしまったが、今回は、アクセサリよりも大きめの小型太陽電池について、最近、5つの機材を入手したので、ここで簡単に紹介してみよう。



普段は収納、使うときに4枚のパネルを取り出す――OTAS「Solar Case Charger」

OTAS「Solar Case Charger」。写真はパネルをすべて開いた状態

 今回扱う一番大きい太陽電池が、OTAS「Solar Case Charger(ソーラーケースチャージャー SW-050)」だ。家電Watch編集部が5,250円で購入した。

 本製品の特徴は、4枚つながった約11×12cm(縦×横)の太陽電池パネルを、普段は折り畳んで箱にしまっておけるというユニークな点だ。パネルは合成樹脂でできた財布のようなケースに収められており、チャックを開くと太陽電池セルそのものが取り出せるようになっている。

折り畳んでコンパクトにできる
折り畳んだパネルは、収納ケースの中に入れられる
太陽電池パネルは取り出せる取り出したパネル。直接に接続されているようだ

 それぞれのパネルの接続部を見ると、単純に直列に接続してあるようだ。終端に三端子レギュレータがあり、ここで電圧を安定化させているらしい。その先にもケーブルがつながっているが、ここに付属のコネクタを接続することで、au、DoCoMo、Softbankなど、各社の携帯と接続できるようになっている。さらにiPhone用のコネクタ、USBコネクタもあるので、さまざまな機器への電源供給が可能となっている。

 スペックを見ると出力電圧6V、出力電流660mAとなっており、パワー的にはそこそこのものがある。iPhoneの充電もできたが、iPadには出力不足でキチンと充電することはできなかった。

パネルには三端子レギュレータがあり、ここで電圧を安定化させているようだ各社の携帯電話の接続端子iPhoneには充電できたが、iPadは出力不足で充電できなかった

 このSolar Case Chagerにはオプションの外付け補助バッテリーが用意されている。2,000mAhのバッテリーを介すことで、昼間はこの補助バッテリーに充電し、夜間、補助バッテリーから携帯などへ電気を移すという使い方が可能になる。こちらの方が使い勝手は良いだろう。

・OTAS
http://www.otaskk.jp/
・ 製品情報
http://www.otaskk.jp/shopdetail/003002000059/order/


三面鏡のように開いて充電するバッテリー内蔵タイプ――aigo「ソーラーチャージャー I2911」

 もう1つ、家電Watch編集部が購入したのが、中国のaigoというメーカーの製品。こちらも折り畳み式だが、三面鏡のように開いて使うタイプのものだ。購入価格は9,980円とかなり高めだ。

aigoの「ソーラーチャージャー I2911」。本体内に充電池を搭載している折り畳みタイプで、三面鏡のように開いて使う

 太陽電池部分の最大出力は5.5V/200mAとなっており、こちらは発電したものを直接出力するのではなく、内蔵されているリチウムポリマーバッテリーに一旦充電した上で出力するという形で、安定性を向上させている。このバッテリーの容量は4,200mAhあり、最大出力も1,000mAと大きな電流を流せるため、外部機器に対して大きな電力供給が可能だ。

 その出力端子としては5V出力のUSBのほか8.4VのDC出力端子がある。付属のケーブル、コネクタを利用することで、DoCoMo、au、Softbankの携帯電話、iPhone、USB mini B、USB micro B、USB Aのそれぞれへ電源供給することが可能となっている。

 一方、USB出力端子の隣には、DC入力の端子も用意されている。こちらは付属のACアダプタを介して家庭用電源から充電するためのもの。つまり太陽電池とACのダブル電源方式というわけだ。

左がUSBとDCの出力端子。右はAC入力端子各社携帯電話に接続するコネクタも用意されている

 カタログによるとフル充電するのにACアダプターなら約4時間、太陽電池なら約12時間とある。細かく測定していないのでこの数値が正確かどうかはよく分からないが、おそらく昼間の光を垂直に浴び続けた場合のもの。窓際の日なたに置いておくという使い方だと、晴天が3日続いて満充電にできるかどうか、というレベルであると考えていいだろう。現在どの程度の容量が溜まっているかはボタンを押すと4段階のLEDランプで知らせてくれる。

 さすがに大出力ができるだけに、iPhoneはもちろん、iPadへの充電もできた。ただし、太陽電池で約半分に溜まった容量をiPadへ送ったところ、i充電状況が5%程度増えたところでバッテリー切れとなった。太陽光だけだと結構な時間が必要になるのは覚悟しなければいけない。

AC充電の場合、専用のアダプターが付属する電池残量を4段階のランプで確認する機能もある

・エグゼモード(国内販売代理店)
http://www.exemode.com/
・aigo
http://jp.aigo.com/index.html
・ 製品情報
http://jp.aigo.com/products/i2911.html


LEDライト付き、出力電圧も切り替えられる「SOLAR CHARGER & FLASHLIGHT」

あきばお~で買った「SOLAR CHARGER & FLASHLIGHT」はノーブランド品。本体内にリチウムポリマー電池も内蔵している

 「SOLAR CHARGER & FLASHLIGHT」は、筆者が今年5月に、秋葉原の「あきばお~」で2,000円で購入した、中国製のノーブランド製品だ。

 これも太陽電池とリチウムポリマーバッテリーがセットとなっているもので、パネル自体の出力は0.8Wと書かれている。約9×4cm(縦×横)というパネルの大きさから考えて、0.8Wもの出力があるとは思えないが、見た目から多結晶シリコン太陽電池が採用されていると推測される。

 名称がSOLAR CHARGER & FLASHLIGHTとなっていることからも分かるとおり、ここには白色LEDが3つ搭載されており、スイッチを「LIGHT」に合わせることで、点灯できるようになっている。本体には充電中を示す赤いLEDが1つあるほか、現在の充電状況を25%、50%、75%、100%と4段階で示すLEDがあり、日光を浴びていると、これらが点灯するようになっている。

白色LEDが3つ搭載されており、ランプが点灯できる日光を浴びていると、赤いLEDランプが点灯。残量もLEDで示される

 一方、出力はUSB mini端子を通じて行なわれるが、スイッチによって3.7V、4.2V、5.5V、9Vの4段階での切り替えができるようになっている。USB端子を使うのに、電圧が切り替えられていいのかという疑問を持ったが、5.5Vの出力に設定したところ、携帯電話の充電はできた。

 ただ、全体的には性能面、品質面において、実使用には厳しい機材だった。数カ月窓際に置いていたが、バッテリーが自然放電しやすいのか、満充電になることはなく、ちょっと使っただけですぐ電池が空になってしまう。また、出力電圧がやや低めなのか、iPhoneにはまったく充電できなかった。

・あきばお~
http://www.akibaoo.co.jp/01/main


999円で買った電池内蔵タイプ「Solar Mobile Charger SBC-03」

 2カ月前、秋葉原のビートオンという店で999円で販売されていたのを見つけて購入したのが、この「Solar Mobile Chager SBC-03」という製品だ。プリンストンテクノロジーが輸入・販売元となっているが、10月18日現在、同社のWebサイトを見てもまったく情報はない。

「Solar Mobile Charger SBC-03」は、999円と非常に安価だった開くと太陽電池パネルが2枚。1,200mAの電池も内蔵している

 こちらは蝶番(ちょうつがい)で接続された2つ折のパネルとなっており、やはり充電池内蔵のタイプとなっている。太陽電池のパネル面を見ると、昔懐かしいリボンシリコン電池のようにも見えるが、特に種類に関する記載はない。仕様としては太陽電池の出力は5.5V/140mAで、1,200mAの容量の充電池と書かれている。太陽光であれば10時間で充電できるとされているが、実際にはやはり3日以上かかると考えていいだろう。

 内部の充電池があることから、充電されていれば、陽が差していようといまいと携帯への充電は可能。やはりUSBのミニ端子経由で出力されるようになっている。ここに接続するケーブルおよびコネクタとして、DoCoMo用、au用、Softbank用、iPhone用が付属しているので、すぐに利用できるのも便利なところだ。

出力用USB端子各社の携帯電話用コネクタも付属する

 充電状況を示すランプがないので、どのくらい充電できているのかが分からないのが欠点だが、リチウム電池内蔵であることから太陽のあたっていないところに持っていってもUSBからiPhone、iPadへの充電はできた。今回試した中では999円と最も安いので、試しに買ってみるもの良いだろう。

・ビートオン
http://beat-on.jp/


USB出力なし、乾電池形の充電池を充電する「ソーラーバッテリーチャージャー ES884」

ソーラーバッテリーチャージャー ES884

 最後に紹介するのは、やはり秋葉原の老舗の電子部品ショップ、秋月電子通商で1,200円で買った「ES884」。底面にニッカドやニッケル水素の単3電池2本を入れるボックスがついており、太陽光で電池が充電できるようになっている。機能的にいえば、冒頭で紹介した、筆者が30年前に買ったソーラーチャージャーに一番近い。

 今回試したほかの機器はUSB出力を基本にしているが、これだけは一世代古いのか、USBはなく、さまざまな機器と接続可能なマルチ端子が搭載れている。本体のスイッチ切り替えによって3V、6V、9V、12Vのそれぞれから選択できるようになっている(30、31)。ワニ口クリップ経由で9Vの006P電池にも充電できるのもユニークなところだ。

本体内に電池を投入し、その電池を充電する仕組みだ電圧が3/6/9/12Vから選べるUSB出力はなく、写真の「マルチ端子」で出力する。ワニ口クリップで9V電池も充電できる点もユニークだ

 試しにワニ口クリップの電圧をテスターで測定してみると、太陽に当たっている際の電圧は、スイッチに表示されている電圧とほぼ同じ値になっていた。しかし、ニッケル水素電池を入れた状態だと、まず充電に大半の電力を消費してしまうのか、6V以上に設定しても4.5V程度にしかならない。またこの状態のまま、日陰にもっていくと、どの電圧モードでも2.5V程度の出力となるようだった。

 この電圧を見ても、携帯電話の充電用途にはあまり適さない。しかし、ニッケル水素電池の充電専用器具としてならば、意外と便利に使えるはずだ。

・秋月電子通商
http://akizukidenshi.com/
・製品情報
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-02918/


 以上、5つの小型太陽電池をピックアップしてみたが、全体的には太陽の力だけで日々の携帯の充電に役立つほどのパワーを備えたものはなく、いざというときに多少は役に立つかもしれない、という程度のものが多かった。

 過剰な期待は禁物だが、どうやらパネルの面積が広い製品ほど発電効果は高く、多少は携帯の充電などに役立てることができるようだ。基本的に太陽光による発電は、パネルの大きさに左右されることは間違いない。実用性を求めるよりも、“ソーラー”というエコな気分を味わう製品と考えた方が良いものもある。それを理解した上で、楽しんでほしい



 




2011年10月19日 00:00