今年の冬はサブ暖房機器に注目!


 エアコンによる冷房を控えたり、温度設定を高めにしたりするなど、家庭でも企業でも“節電”のための対策が講じられた今夏のことはまだ記憶に新しいが、地域によっては夏以上に電力を使う冬がやってきた。

 3月の震災直後の計画停電等で電気を使えなかったことが尾を引いているのか、電気を一切使わない暖房器具である石油ストーブの売れ行きの高さが報じられている。

 だが、特に都心部では高気密住宅が増えているため、換気の必要性や火災の危険性などを考えると、あまりお勧めできるものではない。石油ストーブは“万が一、停電した際の非常用暖房器具”と考え、暖房家電を上手に組み合わせて使いたい。

 そこで、おすすめしたいのが、サブ暖房機器だ。夏にエアコンと扇風機、サーキュレーターを併用&賢く使い分けしたように、今冬はエアコンの温度を低めに設定しても暖かさを得られるようなサブ暖房機器への注目度が高まっている。夏の扇風機オンリーとは異なり、コタツ、電気カーペット、電気ヒーター、オイルヒーターなど暖房機器には様々な種類があるため、使う場所や使う人に応じた選び方がポイントとなる。そうしたサブ暖房機器の最新事情や、上手な使い方についてご紹介しよう。

省エネ性が高く、家族の絆も深めるコタツ

 そうしたサブ暖房機器の中でも、特に注目株なのがコタツだ。住宅の洋風化が進み、個室での生活時間が長くなる傾向にあった近年、影の薄い存在となっていたが、家族で食事を楽しむ“内食志向”や1か所に集まって照明や暖房の電気代を節約しようという機運にも合致する。

 これまでコタツのことを気にしてこなかった向きには、厚みのあるレモンヒーターを使用した“赤外線やぐらコタツ”のことを思い浮かべる人も多いかもしれないが、実はコタツもびっくりするほど進化している。

 消費電力も220W~600W程度と他の暖房機器に比べて小さく、コタツ布団と併用して使うために、暖房効率が高い。従来のサーモスタット機能による長いスパンでのヒーターのON/OFFと異なり、サーミスタによって必要に応じて細かくON/OFFを制御するので省エネ性にも優れる。エアコンの設定温度を低めにしても、コタツを併用することで十分に暖かさを感じられ、かつ節電にもつながる。ある程度、室内が暖まった後なら、コタツだけでも十分に暖を取ることができるだろう。

ヒーターユニットの厚みは5cm。赤外線やぐらコタツに比べて半分になっている250Wの遠赤クオーツヒーター2本の間にファンが付いているファンのを覆う金具には耐熱性脱臭塗料が塗られていて、ファンの回転とともに脱臭効果を発揮する
KOIZUMI ダイニングコタツKDR-3218

 1970年前半にコタツを一年中使えるインテリア性に優れた家具として使うことを提案し、「家具調コタツ」の先駆けとなったメーカー、小泉成器のヒーターユニットを見てみても、細い2本の遠赤ヒーターの間にファンを付け、コタツ内に暖気が行き渡るような仕組みになっている。アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルカルカプタンの4大臭気に威力を発揮する“耐熱性脱臭塗料”が塗られているため、コタツ内の気になるニオイも抑えられる。

 同社では、現在もインテリア性重視の考え方を貫き、ダイニングで椅子に座って暖を取れる「ダイニングコタツ」などに力を入れている。ダイニングタイプは若い世代向けと思われるかもしれないが、イスのほうが立ち座りの動作が楽だということで、高齢者にも人気があるという。

 天板に天然木の突板を使い、温もりと高級感のある仕上げにしているほか、専用ふとん使用時に天板をしっかりと固定し、すり落ちることのないように安全性にも配慮。10cmの継ぎ足を外せば、ソファにも合う高さに調節でき、リビングでテレビを見ながら暖まることもできる。さらに、温度センサーによるマイコン制御で、人の出入りによる温度変化にも細かく対応するという。

 2011年モデルからは切り忘れを防止のために、5時間後に自動で切れるタイマーも搭載、春から秋にかけての“家具”として使用する際に、紛失してしまいがちな電源コードが収納できるスペースも設けられるなど、細かな点まで配慮されている。

ダイニングコタツ専用のイスと布団を組み合わせた一例。専用布団を使用の場合、コタツ本体に固定できる仕組みになっている弱→1→2→3→4→5→強と無段階で温度を調節できる電子コントローラー。2011年モデルから5時間自動オフタイマーも搭載されている高さが調節できる継ぎ脚

・小泉成器
http://www.seiki.koizumi.co.jp/
・製品情報(PDF)
http://www.seiki.koizumi.co.jp/business/product_ct/pdf/2011season_P13-14.pdf

 一方、山善が2010年から発売している「平面パネルヒーターコタツ」WSY/WRIシリーズは、ヒーターの厚みを薄くしたフラットなパネルを採用しているため、コタツ内が広々としており、足や腰をヒーターの出っ張り部分にぶつける心配がない。また、高頻度で電源のON/OFFを繰り返すことで安定した温度を保つ。平面パネルヒーター以外のコタツでも、U字型で効率性が高く、速暖性のあるコルチェヒーターを採用したヒーターユニットの採用など、快適性・速暖性を高めたタイプに人気がある。

山善 平面パネルヒーターコタツ。出っ張りがないので脚にぶつからなく広々しているヒーターパネルが裏面全体にわたっているため、端まで暖気が行き届く山善 ダイニングコタツ SDKシリーズ

・山善
http://www.yamazen.co.jp/
・ニュースリリース
http://www.yamazen.co.jp/company/backnumber/node_5645

 そのほか、家電量販店のコジマからは、コタツの脚の部分に人感センサーを設置、人の不在を感知すると15分後に自動で電源オフとなる「省エネ家具調こたつ」も登場している。やぐらにかぶせることで約3度の保温効果がアップする“省エネシート”も付属しており、とことん電気のムダを省くことを追求している。“コジマオリジナルモデル”として発売しているので、チェックしてみてはどうだろう。

コジマオリジナルモデルの「省エネ家具調コタツ」コタツの脚にセットして使う人感センサー人の不在を感知すると15分後に待機モードになる
人感センサーの仕組み省エネシートを使うことで、保温性を高めて節電に

・コジマ
http://www.kojima.net/
・コジマ(直販サイト)
http://www.kojima.net/ec/top/CSfTop.jsp

  また、小泉成器、山善ともに、取り替え用の「ヒーターユニット」や、電力を自動でコントロールする5時間切りタイマー付きの「コタツコード」も単体で販売している。ヒーターユニットやコードだけを付け換えるだけで省エネ性や快適性が増すので、古いコタツを使用している場合は、ぜひおすすめしたい。

必要なところだけを暖めてムダを省く

 メイン暖房の暖気が届きにくいキッチンや、勉強部屋などの個室で使いたいのが、小さな暖房機器。カーボンヒーター遠赤カーボンヒーターや電気ファンヒーターなどは足元が冷えるキッチンや帰宅後に手が冷えて“とにかく暖気に当たりたい”という時に便利だ。

 たとえば小泉成器の「カーボンヒーター KKS-0612」は「サクラクレパス」とのコラボレーションで生まれた商品で、クーピーペンシル型のカラフルなデザインと、高さ63cmのコンパクトさや持ち運びのしやすさで人気を集めている。電源を入れて、わずか数秒で温かさを感じられるため、素早く暖を取りたいという時に役立つ。個室で使うなら、まずこれを使い、体が暖まったら、電気ひざ掛けなどのパーソナル暖房に切り替えるといいだろう。

小泉成器とサクラクレパスとのコラボレーションで生まれた遠赤電気ストーブKKS-0612。カラーは写真のきみどりのほか、みずいろ、むらさき、ももいろ、しろの5色展開高さ約63cmのコンパクトサイズ。重さも約1.2kgと軽量なので、使いたい場所に手軽に持ち運んで使える“とんがり部分”をひねるだけで、300W・600Wの2段階に強弱を切り換えられる。持ち運び時に便利な取っ手も付いている

・小泉成器
http://www.seiki.koizumi.co.jp/
・サクラクレパス
http://www.craypas.com/
・製品情報(PDF)
http://www.seiki.koizumi.co.jp/business/product_ct/pdf/2011season_P9-10.pdf

 また、ダイソンの“羽根のない扇風機”がファンヒーターとして進化した「エアマルチプライアー AM04 ファンヒーター」も、ヒーターの熱を素早く送り届けるので快適性が高い。本体を好きな角度に調整し、左右70度の首振り機能と併用することで、より正確かつ、均一に温風を行き渡らせることができる。羽根や発熱体がないため、お手入れが楽で安全なのもうれしい。

ダイソン「エアマルチプライアー AM04 ファンヒーター」ホワイト/シルバー。高さは約60cmアイアン/サテンブルー土台をずらすことで、上下の角度を自由に調節できる

・ダイソン
http://www.dyson.co.jp/
・製品情報
http://www.dyson.co.jp/store/productFan.asp?product=AM04-IRSBL

富士通ゼネラル「電気カーペットHC-20AWA」毛皮のような触り心地で高級感のある“メランジ調ファータッチ”のカバーを使用。断熱構造にも優れている

 そのほか、それほど気温が低くない時にはメイン暖房としても使える電気カーペットも上手に組み合わせて使いたい。カーペット全面を高温にして使った場合、消費電力が高くなるが、使用状況に応じて必要なところだけを暖める機能を持つものや、断熱性の高い素材を使用したものなら、省エネ性も高い。

 小さな子どものいる家庭にお勧めしたいのが、互いに電磁波を打ち消しあう2本の発熱線を採用し、電磁波を99%カットする富士通ゼネラルの電気カーペットだ。2011年モデルでは必要なところだけを暖める「3面7通り面積切換」機能のほか、室温センサーにより室内温度が20℃以上になるとカーペットの表面温度を自動的に下げる「ひかえめ運転」機能や、切り忘れを防止する「切タイマー」機能を搭載し、節電をサポートする機能を充実させている。

必要なところだけを暖める“3面7通り切り替え”でムダを防ぐ

・富士通ゼネラル
http://www.fujitsu-general.com/jp/
・製品情報
http://www.fujitsu-general.com/jp/products/hc/2011/lineup/hc-20awa-t.html

 また、山善の「省エネふわふわカーペット NUFタイプ」は、従来比約4倍の厚みにし、4重構造による優れた断熱性と保温性が特徴。発熱体からの熱を保温断熱フエルト上層で受け止め、空気層でその熱を保温して、床材に熱が逃げるのを防ぐ仕組みで、従来に比べ、約20%の省エネを実現しているという。クッション性が高く、長時間座っていても疲れにくいのも特徴だ。

山善「省エネふわふわカーペット」NUF-E201。本体のみなので、この上に同サイズのカバーを置いて使用する本体を持ち上げたところ。ふわふわのクッション感が特徴厚みは従来の4倍で断熱性が高い

・山善
http://www.yamazen.co.jp/
・製品情報(楽天市場内直販サイト)
http://item.rakuten.co.jp/e-kurashi/1517845/

暖まりにくいが冷めにくいオイルヒーターは使い方1つで省エネに

 ヒーター内部に密閉された難燃性のオイルが電気の力で暖められ、パネルからの放熱で部屋全体を暖める仕組みのオイルヒーター。発火や燃焼をしないために空気を汚さず、火災の心配もない安全性や、温風が発生しないために乾燥しにくく、ホコリの巻き上げもない点、ヒーターの表面の温度が低いので火傷の心配も少ないなど、魅力の多い暖房器具だ。

 輻射熱により、床や壁、天井、人体に熱を使える仕組みなので、部屋中が穏やかな暖かさ包まれる“暖房の質の高さ”も、「まるで日向ぼっこしているみたい」と言われる所以だ。

 しかし、オイルが暖まり、それが部屋全体に広がるまでに時間がかかること、部屋の開閉が多い場合、熱が逃げてしまいやすいことなどから、「ちっとも暖まらない」「電気代が高い」との声が聞かれたのも事実だ。

 この秋にデロンギから発売されたオイルヒーター「ドラゴンデジタル」は、自動で最適な電力レベルを選択しながら設定温度よりもわずかに控えめな運転で暖房を行なう「ECO運転モード」搭載。電子サーモスタットによって周辺の温度を感知し、自動で電源をON/OFFしながら、室温をコントロールする。新たにデジタルタイマーを採用したほか、ディスプレイには現在時刻、温度・電力レベル・運転モード・タイマー予約などの設定状態が表示されるようになったため、運転状態が一目で確認できるようになった。

デロンギ「デロンギ・オイルヒーター ドラゴンデジタル TDD0915W」現在時刻、設定状況が一目でわかるデジタル表示。真ん中のランプ(写真ではグリーンに点灯が、サーモスタット機能でこまめにON/OFFされる。実際に使用してみると、オフの時間が長いことに驚かされるオイルヒーターは寝室の暖房としても適している。ごく低めの温度設定でも十分だ

 熱しにくく冷めにくいというオイルヒーターの特性を生かしながら使うには、起床時間の30分~1時間前にスイッチが入るように設定し、外出や就寝の1時間前にはオフにするのがおすすめ。これまでの電子タイマーでは設定の仕方がわかりにくい、カチカチ音がするのが気になる…という人にも、デジタルタイマーの搭載で設定しやすく、音がしなくかったことは朗報だ。

 小さい子どもがいて家で長く過ごす場合や、夜中の授乳、受験勉強中など、オイルヒーターならではの利点が際立つシーンは多い。使い方を工夫して上手に役立てたい。

・デロンギ・ジャパン
http://www.delonghi.co.jp/
・ドラゴンデジタル TDD0915W
http://www.delonghi.co.jp/products/TDD0915W

使い分け、組み合わせで上手な“節電+快適”暖房を

 これまでエアコンやファンヒーターなどのメイン暖房に頼りきりだった暖房も、サブ暖房との併用や使い分けで、寒さを我慢しなくとも節電に役立つ。今回は特に触れなかったが、暖房効果を高める加湿器なども含めて、選択肢を広げていきたい。

 また、購入する際には、インテリア性も忘れてはならないポイントだ。コタツは暖房器具として使う時期よりも、家具として使うことのほうがずっと長いもの。1年中愛用できるように部屋のインテリアにマッチしたものを選ぼう。


 





神原サリー
新聞社勤務、フリーランスライターを経て顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」べく、家電分野を中心に執筆やコンサルティングの仕事をしている。企画・開発担当者や技術担当者への取材も積極的に行い、現場の声を聞くことを大切にしながら、マーケティングの観点を踏まえて分析。モノから入り、コトへとつなげる執筆・提案を得意とする。テレビ、ラジオ、新聞等、メディアへの出演も多数。


2011年12月1日 00:00