第16回:1万円でスマホが充電できる太陽光発電システムを自作しよう!


売電制度や補助金制度などでますます注目を集めている太陽光発電。今回はこれを自作してみよう

 多くの大型家電量販店では、太陽光発電のコーナーが設けられ、畳ほどの大きさのパネルが飾られている。筆者も興味があったので、その横にある小さな設置相談コーナーを覗いてみた。そこには導入事例やら予算などが書かれた一覧表があり、値段を調べてみてビックリ! 一般的な導入価格は、およそ200~300万円というのだ。

 確かに太陽光発電システムは、太陽電池パネル以外にも、発電した直流(DC)の電気を、家庭で使う交流(AC)の電気に変換するパワーコンディショナや、パネルを屋根に積むための架台なども必要になるので、100万円以上はかかるだろうとは思っていたが、こんなに高いものとは知らなかった。

 そこで筆者はひらめいた! 家の屋根に付けたり余剰電力を売電したりするからここまで高くなるわけで、小規模な太陽光発電なら、1万円程度で安く自作することも可能じゃないか? 太陽電池でバッテリーを充電し、そのバッテリーから充電したバッテリーからDC/ACコンバータを使って、コンセントのような100Vを出力できるようにすればいいんじゃないか?

 家電ラボのモットーは「分からんことは、自分で調べる!やってみる!」。

 Do it oneself!

 ということで今回のお題は「1万円で太陽光発電システムを自作する!」だ。

■■注意■■

・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。
・この記事を読んで行なった行為(分解など)によって、生じた損害は筆者および、家電Watch編集部、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・内部構造などに関する記述は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。
・製作した太陽電池を使用したことにより、携帯電話が破損する可能性があります。制作、使用にあたっては自己責任にてお願いいたします。


太陽光発電パネルはミニサイズでもお金がかかる

畳サイズのパナソニック製HIT233は1枚15万円! 一般家庭だとだいたい10枚ぐらいを南側に配置するとか……パネルだけで150万円っすか!

 しかし、太陽電池パネル1枚の価格すら知らない筆者。量販店のチラシでは、総額のみが提示されているだけだったので、とりあえず太陽電池パネルの相場と性能から調べていくことにする。屋根に乗せる太陽電池パネルの価格をWebを調べてみると、例えばこんな具合だった。



パナソニックHIT233(VBHN233SJ01)
最大出力233W
最大電圧42.7V
最大電流5.47A
結晶種別単結晶
発電効率18.20%
サイズ1,580×812×35mm
重量15kg
価格152,250円/1枚

 なんと畳サイズのパネルは1枚15万円! これは特別パナソニックが高いというわけではなくて、他メーカーでもだいたい10~15万円のようだ。しかも、アキバのパーツ屋で「コレ1枚ちょうだい!」って買うものじゃなく、施工業者がトラックで運んでくるようなシロモノなので、あえなく断念。

アキバで購入した太陽光発電パネル。多結晶なので、単結晶に比べると発電効率が悪くなるが、そのぶん価格が安い。それでも畳サイズは1万円以下で買うのは無理なので、A3用紙サイズを購入

 いきなり出鼻をくじかれたが、秋葉原に行けば、スペックは不明ながらも安いパネルがたくさん売っている。そこで目を付けたのが、電子工作のメッカ「秋月電子」で見つけたコレ。


オプトサプライ(香港)OSSM-SF0012
最大出力12W
最大電圧18V
最大電流0.67A
結晶種別多結晶
発電効率不明
サイズ380×275×25mm
重量1.5kg
価格4,950円/1枚

 工作費が1万円程度なので、その半額を注ぎ込んだ太陽電池パネルだが、畳サイズがA3用紙サイズまで小さくなっちゃった……

 しかしこのパネルは最大18V出力できるので、12Vのカーバッテリーなら十分充電できる。しかもバッテリーの電力がパネルに逆流しないよう、ダイオードという素子がついているので、そのままバッテリーに接続すれば充電できてしまうのだ(ただし電圧が18Vあるので本来14V程度で充電すべきバッテリーには負荷がかかる)。

出力される電圧は20.64V(負荷未接続時)電流は0.38A。曇りなのでチョット少なめだ

バッテリーと連携するのは予算的に不可能

カーバッテリーは思いのほか高かった……。写真のパナソニックのバッテリーは、左の容量が55Ah(55,000mA)、右が約46Ah(46,000mAh)。モバイルバッテリに比べると桁違い

 とりあえずパネルが手に入ったので、次は発電した電池を蓄えるバッテリーが必要になる。まずは自動車用のバッテリーの価格を調べてみたが、また値段にビックリ! 1,600ccクラスの車で使う、性能そこそこの中型バッテリーが1万円! ぬぅ……、太陽光パネルより高い。完全に予算オーバーするので、カーバッテリーはあきらめよう。

以前パソコン用のUPSを自作したときのバッテリー。容量は12Ahと小さく、PCを安全にシャットダウンするぐらいの短時間しか利用できない

 次に目を付けたのは「UPS(無停電電源装置)」に入っているバッテリーだ。UPSとは、停電時などにパソコンのデータを安全に保存して、電源を遮断するまでの数十分を駆動する装置のこと。容量はカーバッテリーの半分程度だが、これだと5,000円ぐらいで手に入る。しかし、いかんせん容量が小さく、100Vの電気を数十分しかを取り出せない。太陽電池で充電するとどのぐらい時間がかかるかを計算してみると、快晴の日で2日ほど必要。2日かかって充電して数十分しか使えないってのは、ちょっと寂しすぎる……

 さらにこれらのバッテリー(鉛蓄電池)は、一度でも完全に使い切ると、2度と使えなくなってしまうという難しさがある(車で言う「上がった状態」がコレ)。また、12VのカーバッテリーやUPSのバッテリーは、おおよそ14Vで充電しなけれならず、18Vの太陽電池パネルだと電圧が少し高すぎるという問題もある。これらをクリアするには、太陽電池とバッテリーの充放電を制御するコントローラが別途必要になってくるが、これまた安いヤツでも5,000円程度。さらに12Vのバッテリーから100Vを取り出せるDC/ACコンバータも5,000円ぐらいするので、予算は膨らむばかりだ。

 本格的な太陽光発電も百万円単位でお金がかかるが、ミニ太陽光発電システムでも、やっぱり数万円単位でお金がかかることが分かった。


電池などパーツを省いて、直接スマートフォンを充電すればイケるんじゃないか?

パソコンの14cm空冷用ファンを回してみた。モーターなら多少高めの電圧をかけても大丈夫。実際に接続するときは、壊れてもいいものにしておこう

 自作太陽光発電の厳しさに打ちひしがれた筆者。手元には、まだ太陽電池のパネルだけしかない(笑)。かなりロンリーハートなので、パソコン用の空冷ファンなどをつないで遊んでみた。

 太陽電池のスペックからすると、晴天であればファンが7個ほど回せる。でも曇ってしまうと3個も回せるかどうか、というほど貧弱な坊やだ。太陽から取り出せるエネルギーって少ねー! 超少ネー!

 ここで思いついたのが、バッテリーやコンバーターなどを省けば、お小遣い程度でミニ太陽光発電が作れるんじゃないか、ということ。カーバッテリーなどに蓄電するのではなくて、スマートフォンのバッテリーに直接繋いで充電してしまえば、コントローラやらDC/ACコンバータも不要になるじゃないか!

 太陽電池パネルを使ったスマートフォンの充電器はたくさんあるが、USBから出力できるのは最大でも5V 0.5A~1A程度。筆者もいろいろ試したが、たいていの太陽光充電器は、一日中充電器につないでおいてやっと充電できるかどうか? というところだ。

 しかし、買ってきた太陽電池パネルの最大出力は12Wあるので、ロスがゼロと仮定すれば、5V/2.4A程度出力できるじゃないか! 出力の半分がロスしたとしても、1.2Aは出力できるはず。これなら、スマホをUSBよりも早く急速充電することだって可能だ。

 ということで、方針転換。A3サイズの太陽電池パネルを使って、スマートフォンの急速充電器を作ることにしよう。これなら予算内の1万円ぐらいで作れそうだ。

 さて、スマートフォン用の太陽光発電装置を作るうえで購入したのが右下の部品だ。

以前にレビューしたA4サイズの太陽電池スマホ充電器。かなり使えるものだったが、最大で0.9A程度しか出せなかった太陽電池パネルの電圧をUSBの5Vに変換するDC/DCコンバータの主要部品

1)10cm角ぐらいの基板
 部品を乗せるためのボードで、価格は1枚100円ほど。

2)DC/DCコンバータ
 太陽電池の電圧は18Vと高いうえに、日陰に入ると電圧も下がってしまう。そこで不安定な電圧を、安定したUSBの5Vに下げるための部品だ。秋月電子で1個500円だった。

3)DC/DCコンバータの外付け電解コンデンサ
 DC/DCコンバータには、電解コンデンサと呼ばれる部品と、コンデンサと呼ばれる部品を半田付けしないと動かない。これらの部品は、ザックリ言うと充電式の電池のような働きをする。太陽電池やDC/DCコンバータは、どうしても電力が不安定になってしまうので、余剰の電力があるときには一時的にコンデンサに蓄え、不足したときにコンデンサの電力を放出して安定させるというものだ。充電式の電池は容量をmAhで示すが、コンデンサの場合はμF(マイクロファラド)という単位で示される。

 ここではDC/DCコンバータで指定されているものより大容量タイプを使い、雲が太陽を瞬間的に遮った場合でも安定して5Vを出力できるようにしている。価格は全部で400円程度。

4)USBコネクタ
 パソコンについているUSBのメスコネクタから、スマホ充電用の電源を取る。1A以上出力できるはずなので、2口タイプを用意した。価格は200円程度。

5)ケース
 DC/DCコンバータを入れるためにケース。基板を裸で使っているとショートなどで壊れてしまうので、できればケースに入れたい。価格は700円程度。

6)直流用電流計(3A)
 なくてもかまわないのだが、太陽電池パネルをどの向きにすると一番電力を発生できるかが、ひと目で分かる。これはぜひ付けておきたい。って言うか、今回製作してみて、市販品にもぜひ電流計を付けるべき! というぐらい便利に使える。価格は1,500円程度。

いざ製作! おお! ちゃんとピッタリ5Vが出力できるぞ!

 さっそく作ってみた。結果から言うと、これだけデカイパネルを使えば、そこらへんで売っているモバイル太陽電池チャージャーよりもかなり実用的。市販のチャージャーを使うと、充電に朝から夕方までかかってしまうこともあるが、自作したチャージャーならコンセントに差し込んで充電するのと同じ時間だ。

 読者の中には「これは作ってみたい!」という方もいると思われるので、製作仮定を丁寧に説明していこう。

 まず中心となる部品はDC/DCコンバータなので、これを基板の中央に鎮座させ、電解コンデンサなどをマニュアル通りに半田付けしていく。

DC/DCコンバータには9つの足(半田付け箇所)があるが、説明書どおりに半田付けする基板の裏面はこんな感じになる
コンバータに添付のマニュアルの回路図

 完成した基板は以下の写真の通り。太陽電池の変わりに12Vの電源を接続してみたところ、出力側から5.04Vが出力できた。

円筒形の電解コンデンサには、プラスとマイナスがあるので注意。完成するとこんな感じになり、左に太陽電池を接続すると、右からUSB用の5Vが出力される太陽電池の変わりに12Vの電源をつないで見ると、USB側にはほぼ5Vの電圧が出た

 最後にUSBコネクタを接続しよう。円筒形の電解コンデンサが2個ついている側が、5Vの出力になるので、近くにUSBコネクタを配置して、DC/DCコンバータの5V出力と、通称「グランド」と呼ばれるマイナス側を接続する。

USBコネクタを適当な場所に配置USBコネクタの向かって右側にマイナス(GND)、左側にプラス(5V)が来るように配線。中央2本の信号線はショートさせる

 注意するのは、USBコネクタには4つの端子があるが、コネクタに向かって一番右がグランド(マイナス)に、一番左が5Vになるなるように接続すること。これを間違えると、スマホを壊しかねない。

 さらにもう1点ポイントがある。USBコネクタの中央2本の端子をショート(短絡)させるのだ。この中央2本の端子は、PCとデータのやり取りをする信号線だが、これをショートすれば、スマホがUSB-ACアダプタと認識し、急速充電できるようになる。なおショートさせない場合は、500mAしか出力しない低速充電器とスマホ側に判断されてしまう恐れがある。

 ただし、最新のスマホの一部やプレイステーション3のコントローラなどは、ACアダプタ側と通信を行ない、急速充電可能かどうかを調べるものもあるため、これらには対応できない。

晴れているときは、急速充電並みの出力がある

 こうしてできた完成品を、南側のベランダに固定して、夜明けから日没までの電流を測った。なおこの日は、午前中が曇りで午後から快晴だった。

 午前中は雲も多く、太陽が太陽電池パネルの斜め横から差し込んでいるため、発電効率が悪く、平均すると0.4~0.5Aといったところだ。しかし昼前になると快晴となり、ピークでは1.4A、平均でも1.2A近くの電流が流れている。これならスマホの急速充電も十分イケそうだ。

市販品と比べるとかなり高い電流を出力している。縦軸が出力電流で、横軸が時刻を示す
市販の太陽電池スマホ充電器の出力電流。オレンジの線がA4サイズの大きなパネル、緑がA5サイズの小さなパネル

 これだけでも充電器としては機能するが、電流計をUSBコネクタとDC/DCコンバータの間に挟んで、スマホにどれだけの電流が流れているかが分かるように改造してみた。こうすると、2台目のスマホを接続して電流計の値が上がらなければ、「今の太陽光の強さでは2台同時充電ができない」というのがひと目で分かるようになる。

 さらに副次効果として、太陽電池パネルに真正面から太陽光が差し込んでいるかを確認するのに便利。斜めから差し込んでいる場合は、出力電流も下がるので、パネルのベストな向きや仰角がひと目で分かるのだ。これは便利だ!

電流計も追加した。USBコネクタのプラスにつながる回路を切断して、そこに電流計を挟み込む曇天の夕方だったので発電量は少ないが、真正面から太陽に当てると0.7Aとなったパネルを傾けて、太陽光が斜めに当たると発電量が減り0.2Aまで減った

 なおここではUSB出力に電流計を入れたが、12V側に入れればスマホを接続していないくてもベストな仰角と向きが分かるようになる。これは超便利な機能なので、ぜひとも市販のチャージャーにも備えて欲しい機能だ。

スマートフォンを急速充電! これは使えるじゃないのさっ!

 それでは、実際のスマートフォンがどれだけ充電できるのか。東芝の「REGZA PHONE T-01D」(NTTドコモ バッテリー容量は1,400mAh)を実際に充電してみることにした。

スマホをコントローラのUSBコネクタに接続して充電開始急速充電時に流れる電流は機種によりけりだが、東芝のT-01Dでは0.9A(900mA)流れるようだ充電開始時は快晴だったものの、充電を終えるころには雲が多く時折太陽を遮ってしまていた

 当日の空模様は、充電開始時は雲1つない快晴だったが、充電終了近くになると雲が多くなり、写真のように太陽光を雲が遮ってしまってっいた。この空模様の中で充電したのが以下のグラフだ。これはスマホのバッテリーの状態を記録する「Battry Mix」というアプリで表示させたもの。これを見ると、ACアダプタで充電したのとほぼ同じ時間で急速充電されていることが分かる。

太陽電池パネルで充電したグラフ。充電開始時のバッテリー残量は41%で、2時間10分で100%になっている。99%からなかなか100%にならないのは、太陽光が雲に隠れてしまったため付属のACアダプタで充電したグラフ。スタートは残量25%からほぼ2時間で100%になっている

 スタート時のバッテリ残量には16%の違いがあるものの、太陽電池パネルとACアダプタで充電したグラフの傾きは同じで、急速充電ができているのが分かる。太陽電池のグラフは99%から100%になるまでに40分程度かかっているが、これは雲で太陽光が遮られなかなか100%まで充電できなったようだ。

何台同時充電できるかを試すために、いろいろな端末を用意した実験当日は雲が少ない快晴GALAXY TABの急速充電は、ピッタリ1A必要

 さて次に試したのは、サムスンのタブレット「GALAXY TAB SC-01C」(NTTドコモ バッテリー容量4,000mAh)だ。普通のスマホに比べると画面が7インチもあるので、バッテリー容量も大きく、充電にも1A必要となる。実験当日の空模様は一日中雲が少ない快晴の日だった。

 ではレグザフォンと同様にBattryMixのグラフを見てみよう。太陽電池の方は充電開始時のバッテリー残量が62%からスタート。ACアダプタでは56%から充電を開始した。グラフの傾きはどちらも同じ角度になっているので、太陽電池でも急速充電ができたことが分かる。

GALAXY TABを太陽電池で充電した場合は、2時間半でフル充電になったACアダプタで充電した場合は、残量が太陽電池のときより6%少なかったので3時間でフル充電

 ただ、GALAXY TABと普通のスマホで同時充電をしてみたところ、電流不足で互いに低速充電になってしまった。以前の実験で最大1.2~1.4Aまで出力できることが分かっているが、GALAXY TABと普通のスマホを急速充電するには、およそ2Aが必要になるので急速充電はできない。したがって2台同時充電は、先に示した倍の時間が必要だ。

 また、曇りの日だと太陽電池は1Aも出力できないので、これも低速充電となり、ACアダプタで充電するときのおよそ2倍の時間がかかる。もし曇天でも急速充電したいという場合は、太陽電池パネルをもう1枚追加するか、大型のものに変更するしかない。

 そして雨の日はというと……まったく充電できない。畳1畳サイズのパネルを使えば、もしかしたら充電できるかも知れないが。太陽電池は、メッチャ雨に打たれ弱いのだ。

 ここで、実験で偶然に判明したスマホのクセにも触れておこう。今回試した端末では、途中で急速充電に必要な電流が取れなくなると、以降は低速充電に切り換えてしまうという点だ。太陽が雲に隠れてしまい、一時的に1Aを割ってしまうと、以降は低速充電になってしまう。たとえ再び晴れて1A以上出力できるようになっても、だ。

 このようなクセがあるスマホは、太陽に雲がかかっているときに充電し始めると、いつまで経っても急速充電モードにならない。機種によって挙動は異なるだろうが、太陽が雲で隠れていないときに時々USBコネクタを抜き差しすると、低速→急速に切り替わるだろう。

予算が余ったので、仰角制御システムも作って、モバイル化してみよう!

 A3用紙サイズの太陽電池パネルがあれば、8,000円程度でスマホ急速受電器が作れることが分かった。予算にも余裕が出たので、ここで少し改良を加えて、より使いやすく改造してみよう。

 まずは「モバイル化」だ。パネルの重量だけでも1.5kgあるので、背負う以外のモバイル化はない。だったら背負ってってしまえばいいのだ!

 しかし問題は背中に背負ってしまうと、刻一刻と変わる太陽の仰角に合わせて、腰を曲げて歩かなければならず、世界に認めてもらうのは難しい。そこで発電効率を大きく左右するパネルの仰角を制御するシステムの開発に着手しよう。

 作り方の大筋は、以下の写真で見て欲しい。部品代はおよそ7,000円程度となる。

試作では1428.2:1で作ってみたが、回転が遅すぎるので555.4:1で作るといい平ギアを2つ付けて巻き取り装置にする。左側の平ギアは穴が4mmのもの、右のギアは穴が3mmのもの
ベースの木材にL字の金具を取り付ける。大きな金具は引き上げ機構用で、小さな金具はパネルの軸固定用大きなL字金具の先に引き戸用の戸車を取り付けて滑車代わりにするパネル側には動滑車となるプーリーをネジ止め。プーリーがスムーズに動くようにすること
パネルの回転軸を小さなL字金具に固定。これもスムーズに動くようにすること完成したら、大きなL字金具の先端にローブを固定し、パネルのプーリー、戸車を経由して、巻き取り用ウィンチに結びつける
中点OFFの6Pトグルスイッチをこのように配線すると、電池のプラスとマイナスを入れ替えられるので、モーターを正転・逆転できるケース加工はある程度工具が必要になるが、見た目にキレイな仕上がりになる

 仰角制御システムができたら、山登り用のアルミ製の背負子(しょいこ)に載せて、システムをモバイル化しよう。

このシステムは、モバイルで使ってこそ性能を発揮する! アウトドア仕様に改造だ!何十kgもないので安いやつで十分。これは3,000円で買ったものパイプを壁面に固定する金具を使って、背負子に固定する
コントローラはカメラの雲台を使ってパイプに固定パイプを背負子に固定して、宇宙服っぽい感じにアルミは柔らかいので、パイプを固定するときはナットなどを入れて補強

 では完成品を持ち出して、アウトドアで使ってみよう! 実験場所は、本装置の元となったパーツが売られていた秋葉原だ。総重量5kgあるが、背負子に載せているため、重たさはさほど感じられない。


制御パネルを使って太陽電池パネルの角度を調整。これで太陽を背にして歩けば完璧だ

 まずは制御パネルを使って、太陽の仰角を調整しよう。これで太陽を背にして2時間も歩いていればスマホを急速充電できる! 素晴らしい!

コントローラの仰角スイッチでパネルの角度を太陽に合わせる背負子モバイルタイプなので、両腕が空いており、買い物などでも困らない。ただし、超目立つのである程度の度胸と勇気が必要になる
喫茶店に入るならオープンカフェがオススメ。30分も一休みしていれば、その間に10%程スマホを充電できる

 がっ! 実際に使って問題もあった。それはパネルを南に向けて、太陽光を多く当てる必要があるため、北に向かってしか歩けないということだ。アキバの西や東の部品屋やら家電量販店に行きたいのだが、北にしか進めないとなると上野のアメ横でしか買い物ができん! しかも大都会・東京はビルが立ち並んでいるので、アチコチに日陰があり、充電効率悪っ!

 そして太陽電池スマホ急速充電器(モバイル版)には、道行く人々が羨む視線がズバズバ刺さる。今回のアキバロケでは、すれ違う人の5割以上が振り向き、信号待ちしていると後ろから何やら囁きが聞こえてきた。きっと「なにあのカッコイイシステム、俺も欲しい!」という声だろう。とにかくこのシステムは、街中で注目の的になること確実なので、度胸と勇気がいくらか必要になる。

 実際に街中で使ってみて、太陽光発電装置をモバイル化するうえで、今後解決したい課題が浮かび上がってきた。

1)西や東に向かって進めるようパネルを左右にする機構が必要
 太陽電池パネルを左右に振る機構を作れば、太陽の位置に関係なく、自由に歩き回ることが可能。

2)せっかくスマホを持っているんだから太陽自動追尾化も夢じゃない
 太陽の向きは現在地と向かっている方向さえ分かれば、計算で仰角と東西へのフリが求められる。スマホには位置測定のGPSも、電子コンパスも備えているので、腕と時間があればじゅうぶんに実現可能だ。

 開発スキルのあるメーカーさん、ぜひチャレンジしてください!

太陽光発電はパネルが大きい割りに出力が少ない

スマホを急速充電させるだけでも、これだけ大掛かりになっていまう太陽光発電。家庭の電源として使うには、まだまだ大きな課題が残っている

 今回の実験や製作で分かったことは、太陽電池パネルは電圧はそこそこ出るものの、電流がパネルの大きさの割に小さいということだ。クリーンエネルギーへの転換する声が高まっているが、発電所をオール太陽光発電にしたら、国土全体がパネルにならないかが心配だ。

 ただし、太陽電池は使い方次第で非常に有用になるのも確か。スマートフォンの急速充電器程度であれば、大きめの太陽電池パネルを使うと、市販品ではなかなかできないスマホの急速充電が可能だ。しかも市販品より安く作れる!なにせ急速充電ができて、製作費は8,000円程度(モバイル化するにはプラス7,000円程度)。実用性も高いので、これは自作する価値十分と言えるだろう。半田付けに自信のある読者は、ぜひ作ってみて欲しい。

 自作は無理という方も、この記事を通して、太陽光発電の長所と短所、クセなどがお分かりいただけただろう。最近は発電効率が高いパネルが発売されたというニュースも多く見かけられ、価格も年々安くなってきているが、それでも出力が弱かったり、日陰になると出力が落ちたりといった課題も残る。太陽電池はこれからまだまだ成長する余地のある技術なのだ。





2012年10月25日 00:00