地球温暖化の問題が表面化して以降、様々な分野での省エネルギーへの取り組みが盛んになるにつれ、我々消費者の省エネルギー意識もかなり高まってきている。事実、家庭で利用する家電製品でも、省エネルギーに優れる製品を優先して選択する人がかなり増えているようだ。
そういった中、2008年4月14日に東芝ライテック株式会社が画期的な発表を行った。それは、2010年を目途にシリカ電球など白熱電球の製造を中止するというものだ。この発表以降、国内の白熱電球製造メーカーの多くが追従し、2012年を目途に白熱電球の製造を中止したり規模を縮小すると相次いで発表。これによって、家庭で利用されている白熱電球の多くが、近い将来電球形蛍光灯に切り替わる可能性が高くなり、俄然注目されるようになってきたのだ。
そこで、国内で高いシェアを誇る、パナソニック株式会社 ライティング社および東芝ライテック株式会社の2社に、電球形蛍光灯に関するこれまでの課題と改良、そして今後の展望について話を伺った。改めて電球形蛍光灯についての解説を行うとともに、2社の取り組みについて詳しく紹介したいと思う。
■ 基本解説 同じ光なのにどうしてエコ? 白熱電球と電球形蛍光灯の基本的な違い
■ 東芝ライテック編 ~より白熱電球に近い光・形状を目指して
■ パナソニック編 ~蛍光管からコイルまで、すべてを自社で造る強み
● 基本解説 同じ光なのにどうしてエコ? 白熱電球と電球形蛍光灯の基本的な違い
本編に移る前に、電球形蛍光灯はなぜ白熱電球と消費電力に差が出るのだろうか、という根本的な疑問をお持ちの方もいらっしゃるだろう。以前「現代家電の基礎用語」にて解説しているが、ここで改めて電球他が蛍光灯の特徴や仕組みなどをおさらいする。
電球形蛍光灯とは、白熱電球とほぼ同じ形状の蛍光灯のことで、白熱電球などを取り付けるソケットに取り付けられる口金(ソケット)を採用し、同じ照明器具に取り付けるものだ。基本的には白熱電球と同じ感覚で利用できると考えて差し支えない。
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白熱電球と比べ、消費電力の少なさと寿命の長さが電球形蛍光灯の主な特徴
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電球形蛍光灯の最大の特徴となるのが、白熱電球に比べて大幅に消費電力が低いという点だ。同じ明るさの製品を比べた場合、電球形蛍光灯の消費電力は白熱電球の1/4~1/5ほどとなる。例えば、60Wの明るさのもので比較した場合、白熱電球では消費電力が50~60Wほどになるのに対し、電球形蛍光灯の消費電力は、10~12Wほどでしかない。当然、同じ時間だけ利用した場合の消費電力量も抑えられるので、優れた省エネ効果が発揮され、電気代も低く抑えられることとなる。
また、寿命が長いという点も重要な特徴だ。白熱電球の寿命は1,000~2,000時間ほどなのに対し、電球形蛍光灯の寿命は6,000~10,000時間ほどと、3~10倍ほどの長寿命を誇っている。それだけ交換の頻度が少なくすむということで、交換時のコストを抑えられるのはもちろんのこと、資源の節約にもつながるのだ。
さらに、消費電力が低いことは、発熱も少ないということにもつながる。発熱が少ないと、使用している部屋の温度上昇が抑えられるので、夏場などの空調コストも抑えられる。つまり、それ自身の省エネ性だけでなく、二次的な省エネ性のメリットもあるのだ。
● 白熱電球はエネルギーのほとんどを熱で失ってしまう
なぜ同じライトなのに、消費電力など省エネ性能にここまで差がでてくるのか。その答えは、それぞれが光を放つ構造に隠されている。
白熱電球は、内部のフィラメントに電流を流し、光を放つほど高温な状態にする仕組みとなっている。炎から光が発せられるのと同じ原理だ。仕組みは非常に単純だが、実は消費電力の9割近くが熱として放出されてしまうために、発光効率(消費電力に対する光束の量)が非常に悪いという大きな欠点がある。
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白熱電球は、電球内部の「フィラメント」という部分に電流を流すことで光る
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点灯中の白熱電球を見ると、中央部だけが光っているのがわかる。この部分が「フィラメント」だ
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一方蛍光灯は、白熱電球とは全く異なる原理で光を発生させている。
蛍光灯は、内側に蛍光物質を塗布したガラス製の管と、その管の両端に取り付けられている2つの電極、水銀によって成り立っている。電極に電圧を加えると、電極に塗布されている「エミッタ」という物質から電子が飛び出し、マイナス側の電極からプラス側の電極へと電子が移動する。すると、電子が蛍光管に封入された水銀とぶつかり、紫外線が発生。その紫外線が蛍光管の内側に塗布された蛍光物質に当たり、可視光線が発生して明るく光る仕組みになっている。この際、白熱電球に比べて可視光線への変換効率が高く、また熱損失も少ないため、同じ明るさでも消費電力が1/4~1/5ほどに抑えられる。この基本的な発光の原理は、一般的な蛍光灯も電球形蛍光灯も全く同じだ。
ところで、蛍光灯を点灯する――エミッタから電子を放出させるには、電極に大きな電圧を加える必要がある。そのため、蛍光灯を取り付ける照明器具には、電圧を高めるための「スターター」や「インバーター回路」といった回路が取り付けられている。これがないと、点灯回路や安定回路がないと、蛍光灯を点灯させることはできない。
しかし、白熱電球で多く採用されている「E26」「E17」といった口金(ソケット)では、白熱電球の利用を想定した構造のため、点灯回路や安定回路は取り付けられていない。単純に電球型にした蛍光灯を取り付けても点灯させられずに利用できない。そこで電球形蛍光灯には、蛍光管以外にインバータ回路も内蔵されている。これによって、取り付ける照明器具を問わず、白熱電球のかわりとして利用できるようになっているわけだ。
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蛍光灯では、蛍光管の電極に電流を流し、電極に塗布されている「エミッタ」がマイナス極からプラス極へ移ることで、光を発生している
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エミッタの塗布量が多いほど寿命が長くなる
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同じソケットに取り付けられるものの、白熱電球と電球形蛍光灯では、内部の構造はまったく異なっている
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● 点灯スピードの遅い、点滅に弱いなどのデメリットも
メリットだらけのように見える電球形蛍光灯だが、白熱電球と比べて欠点となる部分も存在している。
最も大きな欠点と言えるのが、本来の明るさになるまでに時間がかかる点だ。白熱電球は、電源を入れた直後からほぼ100%の明るさが発揮される。しかし電球形蛍光灯は、電極がある程度温かくならなければ電子の放出量が少なく、本来の明るさが発揮されないのだ。これは全ての蛍光灯に当てはまる性質で、そのために点灯直後はやや暗く感じることがある。特に気温の低くなる冬場には、その傾向が顕著に表れる。
このほか、点滅を繰り返すと、エミッタが減ってしまい、寿命が短くなる点や、インバーター回路を内蔵することで白熱電球よりもサイズが大きくなり、照明器具によっては取り付けられない点も欠点だ。さらにいえば、温度が上がりすぎると明るさや寿命が損なわれるため、熱がこもりやすい密閉型の照明器具では利用できない、調光器に対応できないことも挙げられる。
しかし、これら欠点は、現在ではかなり解消されつつある。点灯直後の明るさについては、電極の構造やエミッタの材質を見直すなどで、数年前の製品と比べて大幅に改善されている。点滅性能も20,000~40,000回ほどにまで改善されているため、トイレや玄関でON/OFFを繰り返す場所での利用にも十分対応できるようになっている。また、サイズについても、白熱電球とほぼ同じサイズの製品が登場しており、ほぼ解消されたと考えていいだろう。
● 初期購入費は高いが、トータルコストでは電球形蛍光灯が有利
上の項で電球形蛍光灯の欠点について取り上げたが、実際に購入するとなると、また別の問題が出てくる。値段が比較的高めのため、なかなか手を出しにくいところだ。
白熱電球の販売価格は100円前後と、非常に安価。それに対し電球形蛍光灯は、安いものでも600円前後、平均では1,000円前後と、白熱電球に比べてかなり高価となっている。この価格差のため、購入時にためらう人が多いのも頷ける。
確かに、電球形蛍光灯は白熱電球に比べて初期投資がかかる。しかし、寿命が白熱電球の3~10倍ほどあるため、長期間利用した場合の白熱電球の交換コストを考えると、電球形蛍光灯が飛び抜けて高いということはない。しかも、消費電力は白熱電球の1/4~1/5ほどしかないので、電気代にも大きな差が生じることになる。つまり、長期間での交換コストと電気代を加えたトータルコストでは、電球形蛍光灯のほうがお得なのは間違いない。
まだ欠点が完全に解消されたわけではないが、電球形蛍光灯にはさまざまなメリットがあり、白熱電球の置き換え用途として最適な製品であることは間違いないだろう。
しかし、メーカー側の話によれば、電球形蛍光灯が世に出た当時は、簡単に白熱電球と置き換えられる代物ではなかったようだ。その欠点を補う技術革新を繰り返すことで、置き換え用途としての地位が高まっていったという。
それでは、電球形蛍光灯「ネオボール」シリーズで知られる東芝ライテック、「パルックボール」シリーズでお馴染みのパナソニックに、電球形蛍光灯のこれまでの技術革新、さらにはこれからの次世代の照明に関する展望など、省エネ照明の過去と未来について話を聞いてみよう。
【東芝ライテック編】より白熱電球に近い光・形状をめざして >>
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2009/01/05 00:02
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