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第30回:太陽電池とは



二酸化炭素や有害物質を発生しないクリーンな発電が可能

シャープの太陽電池モジュール
 太陽電池とは、光を受けることで電気が発生する発電装置のことを指します。なじみ深いのは、電卓や時計、携帯電話の充電器といったものですが、今後期待されるのは、屋根に設置して太陽光発電として利用する住宅用のものです。業務用途としては、街灯の電力源や工場・店舗など大規模の屋上に設置するといった使用例もあります。

 太陽電池の発電の仕組みは、まず、太陽電池に光が届くと、太陽電池を構成する表面の半導体が、その光のエネルギーを吸収します。すると、「光電効果」という現象により半導体内部で電子が発生します。その電子を取り出すことで電気が発生するというわけです。光を受けることで電気が発生するこれらの現象をまとめて「光起電力効果」と言います。

 このように太陽電池は、光のエネルギーを直接電気に変換しています。そのため、発電時に二酸化炭素や有害物質を一切発生しません。しかも、太陽光を利用すれば、発電の元となるエネルギーも用意する必要がありません。つまり、風力発電や水力発電とともに、非常にクリーンな発電システムと言えるのです。

 メリットとしてはこのほか、20年以上の長寿命、メンテナンスの容易さなどもメリットとして挙がります。さらに、住宅用の太陽光発電システムの場合は、自宅の太陽電池で発電した余分な電気を電力会社に売って収入を得ることも可能です。

 ちなみに、「太陽電池」という名称ですが、必ずしも太陽の光でなければ発電できないということはなく、蛍光灯や白熱電球などの照明器具が放つ光でも発電できます。


住宅の屋根に太陽電池を取り付ける住宅用発電装置として期待されている。写真は三菱電機の「ダイヤモンドソーラー」 シャープの葛城工場。屋上に太陽電池を設置し、自らの工場の電力の一部をまかなっている 三洋電機「eneloop solar charger」のように、家庭用の製品にも搭載されている

太陽電池の基本的な構造。半導体(シリコン)が光エネルギーを吸収すると、「光電効果」により電子が発生。ここから電気を取り出す 太陽電池はもともと「セル」という小さなもの。これを組み合わせて大規模な発電システムが作れる(資料元:三洋電機)

常に光がないと発電しない。住宅用ではコストの高さも問題

 デメリットとしては、乾電池や充電池とは違い、電力を蓄える機能が備わっていない点が挙げられます。つまり、常に光が当たっていないと発電できないため、夜は電気を作り出すことはできません。曇りや雨の日も発電はできますが、晴れの日よりも発電量は減ってしまいます。

 また、住宅用の発電装置として導入する際のデメリットとしては、コストの高さが挙げられます。過去と比較すれば安価になってきてはいますが、太陽電池の最大出力(太陽電池容量)が3kW前後のクラスを導入するとしたら、コストはおよそ200万円ほどとなります。現在市販されている太陽電池は、発電効率が向上したことで、15~20年ほどで元が取れるようですが、初期導入コストの高さを考えると、なかなか導入に踏み切れないはずです。

 このほかにも、製造時の消費電力が多いという点もデメリットとして挙げられることもあります。ただし、現在製造されている太陽電池では、製造技術の進化や太陽電池自体の効率や寿命が向上していることもあって、製造時に消費する電力を1年半ほどで発電できるようになっています。それ以降は完全にクリーンな電力が発電され続けるということになりますので、やはりクリーンな発電システムと考えて間違いないでしょう。


補助金カットにより普及が鈍化。鍵はコストにあり

 前述の通り太陽電池はクリーンな発電システムのため、地球温暖化の影響から世界的に注目されています。特にヨーロッパ各国での普及率の伸びは目覚ましく、特に住宅設置用途としての太陽電池の普及が進んでいます。

 この背景には各国政府が大胆な補助金政策を実施したことがあります。具体的な政策例としては、ドイツでは太陽電池をはじめとしたクリーンな発電システムで発電した電力のうち、余剰の電力を電力会社が電気代の2~3倍の値段で買い取ることを義務づける「固定価格買い取り制度」を導入しています。これにより、導入コストも短期間で焼却できるようになり、爆発的に普及が進んでいます。

 それに対し日本は、ここ数年、住宅設置用途としての太陽電池の普及が伸び悩んでいます。もともと日本は、世界で最も住宅用の太陽電池が普及する太陽電池の先進国でした。トップシェアのシャープをはじめ、京セラや三洋電機など、太陽電池の有力企業も日本に集中していました。しかし、2005年に太陽電池を住宅に設置した際に支給されていた国の補助金が廃止されたことを受け、普及が伸び悩んでしまいました。その結果、太陽電池のトップシェアをドイツのメーカー「Qセルズ」に奪われてしまい、シャープは2位に転落してしまったのです。このことからも、太陽電池の最大の問題点は、導入するうえでのコストをどうクリアするか、という点にかかっています。


色素増感太陽電池を用いたソニーの「Hana-Akari」 。色素を塗るだけで作製できるため、生産時のエネルギーや資源が抑えた安価な製造が可能になる新しい太陽電池だ
 ただ、世界的な需要増や技術の進化などで、太陽電池のコストは年々低下しています。現在実用化されている太陽電池の中で最も普及しているのは、素材にシリコンを利用したものですが、シリコンの代わりに無機化合物や有機化合物を利用することで、より安価に製造できる太陽電池の開発も進んできています。

 また、日本でも補助金制度の復活が決まり、2009年度より補助金申請の受付が開始されます。今後は日本でも再び住宅用の太陽電池の普及が加速していくでしょう。




【太陽電池】の、ここだけは押さえたいポイント

・発電時に二酸化炭素や有害物質を発生しないクリーンな発電システム
・光を常に照射していないと電気が発生しない
・屋根に設置すれば家庭でも発電も可能。高コストも国の補助金制度が再開される

2008年12月19日 初版


URL
  現代家電の基礎用語 バックナンバー
  http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/

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2008/12/19 00:06
平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。

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