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第27回:赤外線とは(後編)



 先週は「赤外線」の基本的な仕組みについて解説しましたが、今回は電気ストーブやこたつなどの暖房器具、オーブンレンジなどの調理器具などで利用される、赤外線の加熱について見ていきましょう。


分子の振動による「摩擦熱」で発熱する

写真はパナソニックのスチームオーブンレンジ「3つ星ビストロ NE-R3000」。赤外線で調理する機能を搭載している
 赤外線加熱で利用される赤外線は、波長が15μmから1mmほどの、いわゆる遠赤外線が中心となります。家電製品では、電気ストーブやこたつなどの暖房器具、調理器具などで利用されています。

 赤外線で加熱できる理由は、「摩擦熱」にあります。まず、物質の表面に届いた赤外線が分子に吸収されます。すると分子は、赤外線のエネルギーによって活発に振動を始めます。分子が振動を始めると、周囲の分子がぶつかり合って摩擦が起こり、熱が発生します。

 最もわかりやすい例として、太陽の熱が挙げられます。太陽と地球は真空の宇宙空間で隔たれていますので、太陽の熱が直接地球に届いているわけではありません。しかし太陽は、様々な波長の電磁波を放出しており、その電磁波に赤外線も含まれています。その赤外線が地球に届き、地表などに吸収されて発熱しているのです。

 なお、先週「近赤外線はリモコンなどの通信機器に利用される」と述べましたが、中には近赤外線を利用した暖房機器や調理家電もあります。遠赤外線と近赤外線を比べると、遠赤外線は物質の表面を熱し、近赤外線は表面を透過した内部を加熱するという違いがあります。パナソニックのスチームオーブンレンジ「三つ星ビストロ」では、この2つのヒーターを搭載することで、食品の表面をパリッと、内部をジューシーに仕上げる効果を狙っています。


「三つ星ビストロ」の赤外線加熱で調理したチキン 「三つ星ビストロ」では、食品の表面は遠赤外線で、内部を近赤外線で温めることで、外はカリッと、中はジューシーに仕上げられるという

炎が発生せず、エネルギー効率も高い

 赤外線での加熱と、ガスや石油といった可燃物質を燃焼させて加熱することの違いには、まず1つに炎を発しないため、比較的安全な点が挙げられます。

 ガスや石油では、非常に高温な炎の熱により、鍋や空気に直接熱を伝えて、調理や暖房などを行っています。いわゆる、熱伝導と呼ばれるものです。都市ガスを利用したガスレンジの炎の温度は、1,700~1,900℃と言われています。

 それに対し、電気ストーブやこたつなどに搭載されている赤外線ヒーターは、表面温度が炎に比べると非常に低くなっており、高くても600℃ほどとなっています。それでも、ヒーターから離れた場所でもかなりの熱さが感じられます。これは前述の通り、熱源から遠赤外線が大量に放出され、その遠赤外線が体に届き、体が発熱して温かさを感じていることによるものです。

 なお、このように、熱源から遠赤外線などの電磁波が放出されることを「輻射」または「放射」、遠赤外線によって物質が加熱されるエネルギーのことを「輻射熱」「放射熱」などと呼びます。

 また、エネルギー効率に優れるという点も特徴となります。赤外線ヒーターなどの輻射を利用する熱源では、可視光線や熱の放出に比べ、赤外線の輻射が圧倒的に高い割合を占めています。しかも輻射される赤外線が物質を直接加熱することになりますので、損失が非常に少なく、効率の良い加熱が行なえるのです。

 ただし、赤外線加熱では、熱源自体がそれほど高温とならないために、熱伝導や空気の対流などによる加熱はあまり期待できません。また、当然赤外線が届かない場所では暖かさが感じられません。赤外線加熱方式の電気ストーブで、本体の横や背面など赤外線の届かない場所が温かくなかったり、部屋全体を温めるのにあまり適していないのはこのためです。


ヒーターから離れていても、輻射熱によって物体を加熱できる(写真はユーアイ商事「焼きグルメ」) 輻射熱は空気を通り抜け、物体を直接暖める。そのためエネルギー効率に優れるが、室内全体の空気を暖めるのには向かない点に注意だ(写真はナショナル「遠赤外線カーボンストーブ DS-C906」)



【赤外線】の、ここだけは押さえたいポイント

・分子が振動することによる摩擦熱で加熱できる
・加熱には主に遠赤外線が使用され、物体の表面を熱する効果がある
・熱源から離れた場所でも、輻射熱で効率よく温められる

2008年11月28日 初版





URL
  暖房器具 関連記事リンク集
  http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/heat.htm
  現代家電の基礎用語 バックナンバー
  http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/

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2008/11/28 00:05
平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。

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