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長期レビュー 三洋電機「eneloop bike」 (3/4)
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~坂道を倒してやるっ!
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Reported by
白根 雅彦
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「家電製品長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です(編集部)。
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三洋電機「eneloop bike」
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やはり、問題は坂道だ。
電動アシスト自転車は、時速10km以上だとアシストパワーが減少する。時速10km以下で、かつ継続的にパワーが必要とされる場面、つまり上りの坂道でこそ、電動アシスト自転車は100%のパワーを発揮できる。電動アシスト自転車に乗っておきながら坂道に挑戦しないのは、まさに宝の持ち腐れ。というわけで、eneloop bike連続レビュー第3回となる今回は、坂道の試乗レビューをお届けする。
1回目の記事はこちら、2回目の記事はこちらだ。
例によって筆者はほかの電動アシスト自転車にはそれほど乗ったことはないので、乗り比べレビューではなく、どちらかというと電動アシスト初心者によるレビューとなることをご承知いただきたい。
● 忠臣蔵の名場面を彩る「南部坂」を登る
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江戸時代初期に南部家中屋敷があったためこの名前になった。「忠臣蔵」で大石内蔵助が主君の妻、瑤泉院を訪ねる「南部坂雪の別れ」で有名。登りにくいほど急なので「難歩坂」とも書かれたという
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まず1本目の坂は赤坂の南部坂だ。Wikipediaによると、忠臣蔵の一場面に登場するらしい。
南部坂はそれほど長くはないが、「13%」の斜度表示がある。角度でいえば、だいたい7度くらいか。図形的にみるとそれほどでもないが、坂としてはたいしたものだ。路面は急坂特有の、丸い溝が入った路面処理が施されている。
eneloop bikeで上ってみると、さすがに斜度がそこそこあるため、それなりの力を入れないと進まない。しかし、立ち漕ぎしないでも、座ったままでスムーズに走ることができる。
試しに坂の途中で止まり、停止状態から発進してみても、とくに苦労することなく漕ぎ出せる。このくらいの坂ならば、「勢いをつけて上る」という感じではない。さすがeneloop bikeだ、なんともないぜ。余裕の勝利である。
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いよいよ出発
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坂道としてはけっこうな傾斜がある
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だが余裕の勝利
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一方、坂の途中でアシストを切ってみると、当然だが、かなりきつかった。上れないことはないが、立ち漕ぎをしないとつらい。アシストオフで上るならば、降りて押した方が楽だとすら感じられる。
● 都会の中の静寂、本氷川坂を制覇
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本氷川坂。赤坂の裏手にあり、都会のど真ん中なのに静寂を保っている。かつてこの坂沿いに、勝海舟が住んでいた
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2本目の坂は、本氷川坂。南部坂のすぐ近くで、赤坂の氷川神社と日銀の氷川寮に挟まれたところにある。交通量は少ない道だが、日銀の氷川寮があるせいか、やけに客待ちタクシーが多い。
斜度の表示はないが、南部坂に比べると斜度は緩く感じられる。路面もノーマル仕様で溝などは入っていなかった。eneloop bikeで上ってみると、まったく手応えがない。緩い坂ではないが、eneloop bikeだと、かなりあっさりと上れてしまう。この坂も楽勝である。
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氷川神社が近くにある
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登り切った右手には、物々しい警備に囲まれた日銀氷川寮がある
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勾配はきつく、うねっている
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● 高級住宅地を貫く暗闇坂をクリア
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オーストリア大使館の森の脇を通る暗闇坂
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3本目の坂は、暗闇坂だ。六本木ヒルズの南にあり、オーストリア大使館が面している。周囲は高級住宅地で、通る車はタクシーか高級外車かどちらかといった雰囲気。
この暗闇坂、長さはそれなりにあるのだが、斜度は南部坂ほどではない。いちおう路面は坂道仕様で丸い溝が入っているが、そんなことはとくに関係なく、斜度的にはeneloop bikeの敵ではない。むしろはアシストなしでも上れそうだが、長さがそこそこあるので、アシストがないと途中で力が尽きてしまいそうだ。
ちなみにこの暗闇坂、車道と歩道が段差付きのガードレールで区別されているのだが、車道は一方通行(上り方向)で交通量も多く、歩道も狭いため、坂道とかは関係なしに、自転車では走りづらい。
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樹木に包まれて暗かったことからこの名前になった
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暗闇坂。頭上を樹が覆って薄暗い。さらにカーブしているため、通行には注意が必要
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斜度はきつくない。楽々クリア
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● フランス大使館裏、趣ある青木坂をゆく
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フランス大使館の裏手にある青木坂
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続いての4本目は青木坂だ。広尾駅の近く、フランス大使館の裏手にある。先の暗闇坂からは、1kmちょっとしか離れておらず、eneloop bikeだとすぐに移動できてしまう。一方、カメラマンとして同行した編集者はタクシー移動なのだが、空車を捕まえるのに手間取ったようで、筆者は10分ほど待つことになった。このくらいの距離だと、タクシーや電車よりも自転車の方が便利だ。あと、フランス大使館の裏でサングラスをかけたままボケーっとたたずんでいても、職質は受けなかった。今日も日本は平和である。
青木坂には坂道向けの丸い溝の路面処理が施されている。しかし、斜度も長さもそれほどきつくはない。斜度がきつい南部坂、坂の距離が長い暗闇坂を踏破した私とeneloop bikeにとっては敵ではない。トライしてみると、あっさりと上り切れてしまった。
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こうやってみると傾斜がそこそこありそうだが、eneloop bikeではそれほど苦労を感じなかった
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なんか余裕綽々で坂道を上っている筆者
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楽勝
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ここまで坂を上ってみた感想としては、アシストありならば坂もそれほどつらくなく、何度か往復することになっても負担を感じることはなかった。しかしアシストがもしなかったら、と考えると、できれば何度も往復するのは避けたいな、と思ってしまう。やはりアシストは偉大だ。
● 目黒の難所、行人坂に挑戦
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行人坂。かつて修行僧が登ったため、この名前が付いたという。この斜度、もう階段にした方がいいんじゃないか
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本来はこの企画、青木坂で終了の予定だったが、バッテリも筆者の体力もまだ少し余裕があったので、ちょっと足をのばして目黒の駅近くにある行人坂にも行ってみることにした。
この行人坂、ご存じの方も多いかもしれないが、なかなかグレイトな坂である。目黒駅から西方向に下る坂道なのだが、目黒雅叙園などに向かうには最短ルートになるため、交通量、とくに歩行者が多い。しかし20%以上はありそうな傾斜で、長さもそこそこある。坂の下の会社に勤める知人に聞いたところ、雪の日などは危険なので遠回りすることもあるそうだ。おそらくはキツさ・長さともに本日最強の敵といっても過言ではないだろう。
だが、どんな強敵だろうと、オレとeneloop bikeが力を合わせて倒してやるっ!
さすがのeneloop bikeも、この行人坂ばかりは、スイスイとは上れなかった。アシストを効かせていても、それなりに踏ん張らないと前に進まない。モーターは出力限界に達しているのかもしれない。
しかし、それでも立ち漕ぎが必要なわけでもなく、座り漕ぎだけで上ることができた。また、坂道途中で停止からの発進も可能だった。すごいぜeneloop bike。おまえとオレのコンビなら、世界だって夢じゃない。
いや、もしかしたらオレが単体ですごいのかも。そう思って途中、試しにアシストを切ってみた……な、なんだと……う、うごけない……。たしかに脚の筋肉は万全の状態ではないが、それにしても、ほとんど動けないとは。立ち漕ぎしても十分な速度が出せず、まともに走れない。さすがは行人坂だ。しかし、その行人坂すらも制覇するeneloop bikeは、もっとすごいと感じた。
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坂の下には雅叙園がある
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座り漕ぎで上れているのが絵的におかしいレベルの傾斜
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坂の中腹にある案内板と祠。このあとアシストを切って走ろうとしたらコケそうになったのは秘密だ
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● アシストは偉大だっ!
今回は5本の坂を上ってみたが、やはり「アシストは坂に効く」と感じた。普通の斜度の坂ならば、何度上ろうとそれほど疲れない(バッテリーは消費するけど)。さすがに行人坂クラスの急坂では、アシストがあっても脚力が弱い人にはつらいかもしれないが、そもそも行人坂クラスだとアシストなしでは漕いで上れる気がしないくらいなので、それを普通に漕いで上れるだけ、やはりeneloop bikeは偉大だ。
坂道が多い地形を自転車で走る人にとって、電動アシスト自転車はありがたい存在だ。とくにeneloop bikeは、昨年12月の法改正によって最大1:2のアシスト出力に対応しているので、坂道の快適さが向上している。
アシストも万能ではなく、極端な急坂だとモーター出力が限界に達し、それなりの脚力が必要になるが、逆にモーター出力が飽和しないレベルの坂道で苦戦していた人にとっては、少ない脚力で最大アシスト出力を得られるようになったアシスト比率向上は、ありがたい改善ポイントだろう。
街乗りや坂道を実走してきたeneloop bike連続レビューだが、いよいよ最終回となる第4回は、長距離実走レビューをお届けする。
その1 /
その2 /
その3 /
その4
■URL
三洋電機
http://www.sanyo.co.jp/
製品情報
http://www.e-life-sanyo.com/eneloopbike/
■ 関連記事
・ 三洋、新規格対応の強力アシスト電動自転車「eneloop bike」(2008/12/01)
・ 第33回:電動アシスト自転車とは(2009/01/23)
・ 長期レビュー 三洋電機「eneloop bike」(1/4)(2009/03/05)
・ 長期レビュー 三洋電機「eneloop bike」 (2/4)(2009/03/12)
■ 参考文献
大石学著「坂の町・江戸東京を歩く」2007年、PHP研究所
タモリ著「タモリのTOKYO坂道美学入門」2004年、講談社
2009/03/23 00:00
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