● クーラーのない部屋に“スポット冷風”のコンビニクーラーを導入
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「コンビニクーラー CV-W80CH」本体。スーツケース型の冷風・衣類乾燥 除湿機です
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毎日暑いですね。暑すぎると、仕事も家事も効率が悪くて、ちっともはかどりません……個人的には喉がとても弱いのでクーラーは好きではなく、普段はできるだけ扇風機でやりすごしているのですが、さすがに室温が35℃を超えると扇風機をつけても風が生ぬるくて効果がなくなってきます。
しかたがないのでクーラーでも……と思っても、我が家にはリビングと寝室以外エアコンがありません。もともとリビングにはビルトインのエアコンが備え付けてありましたが、マンションのベランダが狭いため、これ以上増設するには室外機を共有する「マルチタイプ」しか設置できませんでした。マルチタイプは機能も最新ではなく、値段も高め。迷ったあげく普通のタイプを寝室に設置してしまい、ほかの部屋にクーラーが設置できなくなりました。
エアコンを設置していないそのほかの部屋は、エアコンのあるリビングから続き部屋なのでまるごと冷やせばいいのですが、さすがにリビング用の巨大なビルトインクーラーを、昼間1人で使うには気がひけます。
しかし、これだけ暑いと我慢も限界。悩んだあげく、人のいる場所だけに冷風が送れる“スポット冷風”にひかれて「コンビニクーラー CV-W80CH」を買うことにしました。メーカー希望小売価格はオープンプライス。Amazon.cp.jpで25,140円でした。
コンビニクーラーのおかげで、今ではかなり快適です。買って良かった製品ではあるのですが、「期待通り」の部分と「期待と違う」部分のある製品でしたので、ご紹介したいと思います。
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本体右側面。下部に排水タンクがあります
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本体左側面。何も配置されずすっきりしています
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背面の上部には吹出口が、両脇には吸気のためのフィルターがあります
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コンビニクーラーは、基本的には「除湿機」です
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本体上部の背面吹出口からは、「クール」時に温風が出るほか、「ドライ」時にも多少風が出ます
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ケーブルは本体直づけで取り外しできません
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● 冷風が出せる高機能な除湿機。電気代もお得
扇風機以上に部屋を涼しくするもので、エアコンのように工事がいらないアイテムとしては、おもに冷風機や冷風扇があります。冷風機は内部にコンプレッサーを搭載し、除湿機能がついたもの。価格は2万円前後で、除湿機としても使えるため、洗濯物の乾燥などにも役立ちます。一方の冷風扇は、安いものなら3,000円台から手に入る手頃なものですが、室温が高すぎると効果が弱くなり、水の蒸発熱を使って冷風を出すのでただでさえ蒸し暑い部屋の湿度が余計に上がるという欠点があります。
今回のコンビニクーラーは、前者の「冷風機」の機能を持った除湿機。エアコンと違って室外機と室内機が一体になった構造なので壁に固定する必要がなく移動もラクですが、本体の背面から温風も排出するため、部屋全体を冷やすことはできません。温風を排出する背面は、開けた窓や、ドアを開けた出入り口に向けて置くことで、なるべく室外に温風を排出して、室内に効率的に冷風を出すことができます。逆に、締め切った部屋で使うとむしろ室温は多少上がります。基本的には、冷風が出る前面だけを、スポット的に冷やすものと考えた方がよさそうです。
今回の「CV-W80CH」は、昨年発売された「CV-U71CH」よりも除湿能力がアップし、さらに冷風の温度が室温から12~13℃差だったのが、13~14℃差とより涼しい風になったなど機能が強化されている製品です。
我が家の場合、ビルトインクーラーの消費電力は1,190Wと大型で、一時間あたり電気代は約26円です。それに比べると、消費電力が475Wのコンビニクーラーは「冷風」時でも一時間あたり約4.5円(室温30℃で使用の場合)と格安。料金にして約1/6ですから、使う価値は十分あります。
また、我が家の扇風機の消費電力は45Wで1時間あたり約1円と、さすがに冷風よりも格安。ただし、コンビニクーラーの「送風」は29Wで約0.6円と扇風機よりもさらに安く、消費電力の低さがよくわかります。
たとえば、我が家の電気代で計算すると、ビルトインクーラーを毎日7時間かけ続けると電気代は1カ月約5,642円分になります。これをコンビニクーラーに切り換えると1カ月約977円ですから、本体の価格25,370円で計算すると、5.4カ月分ほど。2シーズン使えば電気代だけで元は取れそうです。
● スーツケース型で移動もラクラク
コンビニクーラーの第一印象は、大きなスーツケースそのもの。上部の取っ手部分のデザインや、下部の角を保護したデザインなどがその印象を強くしていて、「持ち運びやすい」というイメージを連想させます。
本体のカラーはホワイト系とブラック系のみ。素材は全体的にプラスチックですが、光沢のある前面にはキルティングのような凹凸のある加工がされていて、高級感を後押ししています。持ち手のある中央部分はつや消し、表面や背面はつやのある加工で、送風口にあるシルバーのラインがアクセントになっています。
底面には4個のキャスターが付いているため、取っ手部分を持っての移動はごく簡単。ただし、左右に動くだけで前後には動かないため、本当のスーツケースのような自由自在な動きではありません。冷風運転時など、動かしはじめに全体が少し揺れることがあるので、動く方向をある程度制限しているのかもしれません。
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本体上部のハンドルは、かなりしっかりした作りで約12.5kgある本体の方向転換をするときにも持ち上げやすくなっています
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本体前面の「除菌イオン」マーク。部屋干し衣類特有のニオイや浮遊「カビ菌」を抑えます
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前面はキルティングのような凹凸のあるデザイン。下隅には本当のスーツケースのように角あてがあってかわいい加工
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4つのキャスターで安定した移動が可能です
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ただし、移動は横方向のみ。スーツケースのように前後には動きません
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コードを垂らしたままだとキャスターでひいてしまうので、手に持って移動
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畳は傷つきやすいので、横方向も持って移動
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● 「冷風」「自動除湿運転」「衣類乾燥」「送風運転」と機能は多彩
操作ボタンは、上部にある操作パネルにすべてまとめられています。「運転」ボタンで電源を入れ、「運転切換」ボタンで駆動モードを選択。冷風や送風のときは「切換つまみ」を「クール」に、自動除湿や衣類乾燥のときは「ドライ」に切り換えます。
「風量切換」で風量を「強」「弱」で選べるほか、吹き出し口が上下に動く「スイングルーバー」のON/OFF、部屋のかび臭さを抑える「除菌イオン」のON/OFFも個別に設定できます。
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操作パネルは上部の一箇所にまとめられています
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SHARPのロゴ上にあるのが「満水」マーク。左から、「運転入/切ボタン」、「切タイマーボタン」、「除菌イオン入/切ボタン」、「風量切換ボタン」
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「スイングルーバー」、「運転切換ボタン」、「切換つまみ」。運転切換ボタン上の運転切換ランプで使用するモードを確認します
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また、運転開始から12時間で自動的に運転が停止しますが、排水タンクが満水になっても停止します。排水タンクは最大で6時間程度で満水になるため、そのほうが早く電源が切れるでしょう。2時間/4時間のタイマーもあるので、衣類乾燥などのときには便利です。
使用できるコースは、おもに5種類。クーラー代わりに使う「冷風」、梅雨などで湿度の高いときに使う「自動除湿運転」、洗濯物を乾かしたいときに使う「衣類乾燥」や「ヒート速乾運転」、扇風機代わりに使う「送風運転」です。
各モードはそれぞれ吹き出す風の種類と向きをコントロールすることで切り換えています。「自動除湿運転」と「衣類乾燥運転」は前面から冷風と温風が、背面から温風が吹き出します。「冷風運転」は前面左から冷風が出て、背面から温風を排出。「送風運転」は前面左と背面から風が出ます。
● 「冷風」はエアコンとは別物。使い方にはコツがある
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前面上部にある「前面吹出口」は、「スイングルーバー」をONにすると上下に約90度動き、約120度の範囲で風が届きます。冷風が出るのはこの「前面吹出口」の左半分だけ
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実際に使ってみると、冷風は想像していたよりも使い方にコツがあることを知りました。まずは、冷風のあたる位置。送風口の位置が高いので、イスやソファに座っているときには上半身を中心に冷風があたります。キッチンで使うときなどに立っているとひざから上、畳に座っていると肩から上ぐらいに冷風があたるイメージです。冷風は送風口の左側半分から出てくるのですが、その送風口から50cmぐらいまでが快適な範囲。1m以上離れてしまうと、ほとんど冷風の効果を感じません。
また、身体のどの面に冷風をあてるかの角度も重要です。スイングルーバーを使っても、冷風は上下に動くだけで左右には動かないため、本当にスポット的に冷風があたります。
極端に言えば右腕のほうにあてると左腕は暑いというぐらい。たとえば、お風呂あがりに前面に向かって座ると本当に涼しくて快適ですが、イスに座って仕事をしているときは、置く位置が悪いと部分的にだけ冷えてくるので、ときどき場所を動かして使うときもあります。どうしても、部屋全体を冷やすクーラーのようなイメージを持ちがちなのですが、長時間連続で使うというよりも、あまりに暑いときに涼を取るものとして、扇風機と使い分けるのが自然だなと感じてきました。
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キッチンで使うときは、スイングルーバーを使うと膝から上が全体に涼しくて快適。暑いキッチンの皿洗いのときなどに便利そう
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蒸し暑く、多湿の脱衣所には除湿機能の高いコンビニクーラーはぴったり
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畳に座って使うときは、肩から頭にかけてが涼しく感じます
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50cm程度の距離で使うと快適。イスに座って使う分にはちょうどいい高さ
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タテルーバーは左と右に分かれていて、手動で動かすことができます
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この、送風口の位置と置く角度については、当初イメージしていたよりも制限があるように感じました。スポットクーラーではなく「スポット冷風」と表記されていたのは正しく、たとえばシャープのホームページにどんな位置を冷やせるか図解されていますが、この図でソファにいる人には、足もとまで冷風があたっていないわけです。このあたりは、「部屋全体を冷やす」クーラーや、「なんとなく広い範囲が涼しくなる」首振り式の扇風機との使い勝手の違いを感じることになりました。
それでも、扇風機と違って「冷風が出る」ことは大きな利点ですし、クーラーのようにつけてしばらくしないと涼しくならないのとは違って、つけてすぐに冷風にあたれる便利さはピカイチ。私の普段の使い方は、日差しが強くなって扇風機では耐えられなくなったら、「冷風 強」涼み、しばらくは「冷風 弱」で落ち着きます。これは、「弱」ならあまりあてる角度が気にならない上に涼しさも感じるから。で、日差しが落ちてきたら送風モードにしたり、扇風機に切り換えて使っています。
ちなみに、駆動音は「冷風 強」のときはサーキュレーターぐらいの音がしますが、「弱」だとほどんど気にならなくなり、「送風」はごく静か。ふとんでは送風口よりも高さが低いので冷風機としては使えませんが、ベッドなら脇に置いてある程度涼めます。静かな「弱」にタイマーをかければ寝付きやすいのではないでしょうか。
● 排水タンクは1日で満水。除菌イオンで部屋干し臭さがない
予想以上にすごさを感じたのは除湿機能の高さです。基本的には除湿機なのであたりまえかもしれませんが、今の時期、1日1回は必ず排水タンクの水を捨てています。湿度計で見ると5%~10%減っている程度なのですが、排水タンクの容量は1.8Lと2Lのペットボトル1本分に近い量なわけですから、捨てるたびに夏の湿度の高さを思い知らされます。
加湿器の場合は、なぜか毎日の水の追加がとても面倒だったのですが、排水はそれほど苦になりません。水道水のカルキの汚れに悩まされることがないせいかもしれません。
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排水タンクは下部の取っ手を持って引き出します
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四角い排水タンクにフタがついた状態でセットされています
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フタは簡単に外せますが、排水のときは丸い「排水口」から出せばいいので毎回外す必要はありません
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満水を知らせるフロート。取り外さずに使います
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排水が貯まるとフロートが浮き、「満水停止装置」が働いて停止します
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こんなふうに排水がたまっていき、満水になると、約1.8Lたまります
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我が家は冬になると湿度が10%台になってしまうほど乾燥している部屋なのですが、引っ越し前に以前住んでいたアパートは湿度が極度に高くて、この時期は本当にカビとの戦いでした。この極度の湿気は扇風機では焼け石に水という感じで、しまい込んでいた革のコートが全部ダメになってしまったり、ふとんがジメジメしているように感じて毎日長時間干す必要があったり、脱衣所の換気に四苦八苦したりと大変でした。除湿機がこんなに簡単に移動できて、これだけ効果が高いなら、もっと早くに導入すべきだったなぁと後悔しました。
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カビがはえる前に、押し入れも定期的に除湿を
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ベッドの高さがあれば、寝室で使うにも実用的。「冷房 弱」や「送風」ならごく静かです
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もう1つ、衣類乾燥の機能については、除菌イオンの効果を思ったより感じました。室内に普通に部屋干ししてしまうと、玄関まで部屋干しの臭いがムッと臭うときがありますが、コンビニクーラーをかけているとそれがありません。夏は温風を出すことで部屋がものすごく暑くなるのではないかと思いましたが、室温のアップはそれほど感じませんでした。
ただし、温風をあてる角度で効果にかなり違いが出ます。手前に大きなタオルなどがあるとそれですべて遮ってしまうので、手前には大きなものを置かず、後方上部まで段々に干せるタイプの室内物干しを使うとか、高い位置に干して下から上に向かって全体にあてるなどしたほうが、効率的に乾かせそうです。浴室乾燥ほどの強い効果はありませんが、部屋干しの効率アップには確実に役立ちます。
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左側面のフィルター。各フィルターの下部には、左右がわかりやすいように「右」「左」と表記されています
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右側面のフィルター。汚れたら水洗いできます
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衣類乾燥をするときは、10cm以上離して使用。風のあたる位置が重要なので、背の低い室内物干しを使うときは、裏がえして逆側にもあてて使うと効率的
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● クーラーではないけれど、冷風自体はクーラー並に涼しい
“コンビニクーラー”という絶妙のネーミングと、スーツケース型で移動がしやすいイメージから、期待がふくらみすぎてしまうこの製品ですが、機能を超える期待は誤解のもと。クーラーではなく“スポット冷風機”だ、という点を考慮して、「部屋全体は冷えない」ことがわかっていれば、買ったあともがっかりはしないでしょう。
また、リビング、キッチン、寝室、脱衣所などどこにでも使える点は十分便利ですが、同時に使えるのは1人。スイングルーバーは左右に動きませんし、背面からは温風が吹き出して局地的に温度が10℃ぐらいアップします。もしその方向に人が座るようならまず使えません。
昼間1人でクーラーを使うのが気が引けるけれど、扇風機では限界があるときや、クーラーが設置しにくい部屋でひとりで涼みたいとき、そしてキッチンや脱衣所、ガレージなど「人がいる場所だけ、ちょっと涼しくなればいい」という使い方には最適なアイテムです。
■URL
シャープ株式会社
http://www.sharp.co.jp/
製品情報
http://www.sharp.co.jp/products/living/conveni_coole/prod01/cvw80chw/index.html
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http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/air.htm#other
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2008/08/01 00:00
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