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そこが知りたい家電の新技術
シャープ「コンビニクーラー CV-U71」

~除湿機の“副産物”で冷やす、持ち運べるクーラー
Reported by 倉増 裕

シャープ「コンビニクーラー」 のラインナップ
 エアコン以外の暑さ対策の器具として「コンビニクーラー」という新しい製品があるのはご存知だろうか。

 高温多湿な日本の夏には、湿度と温度という2つの問題があるが、これを手軽に解決する機器として登場したのがシャープの「コンビニクーラー」である。除湿とスポット冷風を同時に実現するというもので、エアコンよりも電力消費は少なく、トランク型の本体を持ち運んで使えるというメリットがある。夏商戦の注目の一品だ。





「本当に欲しいものを商品化した」

シャープ株式会社 電化システム事業本部空調システム事業部国内商品企画部 主事 岸広次氏
 この商品が誕生したのは、扇風機やエアコンといった従来の冷房器具に飽き足らなかった人物が、自分が本当に欲しい冷房器具は何かと考えたことがきっかけだ。

 シャープ株式会社 電化システム事業本部空調システム事業部国内商品企画部 主事 岸広次氏は「夏の暑い日にはエアコンを使いたくなりますが、電気代が気になります。私が本当に欲しいのは、暑過ぎず涼し過ぎない自分だけの空間。吹く風が少しだけ涼しくて、しかもコンスタントにそよそよと吹いてくれれば」と語る。生ぬるい風を送る扇風機や、部屋全体を冷やすエアコンではあり得ない心地良さ。この心地良さを求めて開発されたのが、コンビニクーラーなのだ。

 そんなコンビニクーラーだが、「クーラー」との名がついているものの、内部構造は「除湿機」をベースにしているという。


除湿の際に発生する“副産物”で冷房

 コンビニクーラーに触れる前に、そのベースとなる除湿機の仕組みについて解説しよう。

 除湿機は、本体内部のコンプレッサーで圧縮・液化した冷媒を蒸発機に送り込み、ガスが気化する際の冷気で空気を冷やすことで、空気中の水分が周辺に結露。この水分を採取して除湿する仕組みになっている。コップに冷やした水を入れると、ガラス表面に水滴が生じるという結露現象を利用したものだ。気化したフロンガスは再びコンプレッサーへと返されるので、これを電力で循環することで、コンスタントな除湿が可能になる。

 コンビニクーラーは、この除湿段階の“副産物”として生まれた冷気を利用して、冷風を生み出すのだ。

 構造そのものは極めてシンプルだ。従来の除湿機では、除湿処理によって冷やされた空気が温風と混ざり合って排気されていたが、コンビニクーラーでは暖かい空気と冷たい空気を分ける構造になっている。冷たい空気を前面から、暖かい空気を背面から出すことで、除湿機の正面に立つと冷風だけを楽しめるのだ。


コンビニクーラーの内部前面。エアコンと同様に、熱交換器やコンプレッサーが備えられている 水タンクが満水になると音とランプで知らせる。容量は、パーソナル機のCV-U71CHでは1.8L コンビニクーラーの構造図。従来の除湿機は、除湿処理によって冷やされた空気が温風と混ざり合って排気されていた(写真右図)が、コンビニクーラーでは、排出口を2つに分けた(写真左図)

 ところで、冷媒が圧縮されて液体になる時には熱が発生する。そのため、理論的には気化時の冷気との相殺により、温度変化はない。しかも、実際にはコンプレッサーを作動させるモーターの熱がプラスされるので、その分熱量は増加することになる。これがエアコンとの大きな違いで、締め切った室内でコンビニクーラーを使い続けると、原理的には室温が上がることになる。つまり、エアコンのように部屋全体を冷やすためのものではない。

 しかし、限られた範囲内で冷風が欲しいという需要は、キッチンでの調理や、入浴後など、意外に多いのが現実だ。

 さて、「コンビニクーラー」というネーミングだが、除湿と冷風がどこでも便利に使えることから名付けられた。「ただの“冷風機能付き除湿器”では、この製品の魅力に気づいてもらえません。そこであれこれ考えた結果、“コンビニクーラー”としました。これなら、お客様の注意を引きつけられると思ったのです」(岸氏)


防菌イオンの力で消臭効果も

 上記のような除湿、クーラー機能に加え、「防臭」という効果もあるのがコンビニクーラーの魅力でもある。外に洗濯物を干せない雨の日など、衣類を乾燥するのにコンビニクーラーはありがたい存在だが、部屋干し独特の臭いも気になる。この臭いの元凶は雑菌で、洗濯しても繊維に染み込んでいるため除去できなかった油成分やタンパク質に、空気中の雑菌が付着して分解され、中性脂肪酸を生成し、臭いを発するというものだ。

 空気中の雑菌は、水分がなければ生存できないので、除湿するだけでかなりの防臭効果を得ることができる。コンビニクーラーは除湿機能に加えて、空気中に浮遊する雑菌を除菌イオンで除去することによって、消臭効果を高めている。臭いの元凶となる雑菌を除去して、その繁殖を抑える効果があるのだ。

「除菌イオンは、当社の空気清浄機だけでなく、自動車メーカーさんなど他社製品にも搭載されるほど、その効果が認められています。それを使わない手はありません」(岸氏)


「除菌イオン」により、においを元からカットできるという 「除菌イオン」を示すロゴマーク。同社の空気清浄機やエアコンでも搭載されているおなじみの機能だ

持ち運びできるクーラーの優位性

本体上部には取っ手を、底部にはキャスターを用意。室内の持ち運びに簡単だ
 コンビニクーラーの長所として、除湿、局所冷房、消臭の効果があることがわかったが、もう1つ重要な点についてここで触れておこう。それは、「持ち運びができる」という点である。

 当たり前のことだが、人間は動いても、エアコンは動いてくれない。家の中では、押入れの中、熱を発散するキッチン、バス、脱衣所など、冷風が必要な場所はたくさんあるが、これらの場所にエアコンの風はなかなか届かない。

 「スポット的に風を当てるためには、いろいろなところに持ち運べなければ、意味がありません。しかし、コンプレッサーを積んでいるため、重量もそれなりにあります。どうしたら、動かして使ってもらえるのか。明確なメッセージを送るため、ハンドルとキャスターを付け、スーツケースのような形にしました」(岸氏)

 コンビニクーラーでは、移動での使用を前提とし、本体上部にはトランクのような取っ手と、底部にキャスターをつけ、簡単に持ち運べる縦型のデザインとした。これなら、必要な時に必要な場所へと移動させれば、たちまちそこが涼しくなる。部屋全体を冷やす機器ではないため、モバイル性は重要な要素だ。

 また、エアコンだとスイッチを入れてから十数分経たないことには部屋全体が冷えないが、コンビニクーラーの立ち上がりは早く、短時間に涼しくなりたい場合などはまさに格好のツールとなる。コンビニクーラーの場合は目の前で使うものだけに、スイッチを入れてすぐに冷風が吹かなければ意味がない。


CV-U71CH(左)と、2005年モデルのCV-S71C(右)
CV-S71Cの取っ手
CV-U71CHの取っ手

斬新なオレンジは個性派に人気
上面のパネルは見やすく操作も簡単

ポイントは「送風系の工夫」

 すでに述べたように、除湿機の送風系を冷風と温風に分けて出すという構造がコンビニクーラーの基本だ。では、これらを分けて排出するためには、どのような技術的課題があるのだろうか。

 「冷風を生み出す送風系の仕組みを、一から作り直さなければなりませんでした。経路を分けるだけなら簡単なのですが、送風効率や省エネ性、静音性は妥協できません。そのために、送風ファンやダクトの形状をいろいろ試し、徹底的にチューニングしてあります」(岸氏)

 一例をあげると、送風ファンとこれを取り巻くケーシングの形状がある。ファンと聞いて、扇風機のようなプロペラ状を羽根を連想する人もいるだろう。しかし、プロペラ状のファンは、あくまで周囲に何もない環境で風を起こすための形状であり、送風効率の面では必ずしも最適の形状ではないという。

 コンビニクーラーで使用されているファンは、素人目にはファンというよりも、水車を連想させる形状だ。実はこのファンは、空気中で回転させても一向に風は生じない。ところが、ファン全体がスッポリと入るケーシングの中で回転すると、高い効率で風が巻き起こるというのだ。

 また、コンビニクーラーはエアコンに比べて身体に近いところで使うことから、静音性も重要。弱運転時の動作音は、39dBで落とした。これは、「図書館の中」と同じくらいの静かさである。


水車を連想させる送風ファン
送風ファンは本体内に4つ連なってセットされている
送風口

 ところで、冷風と温風を分けて出すという機構を考えると、現行のコンビニクーラーのような「除湿+冷房」だけでなく、「除湿+暖房」があってもよさそうなものである。岸氏にこれについて伺ってみると、「コンビニクーラーでは室温より13℃低い風を出しており、誰でも涼しいと感じられますが、暖房の場合は、室温より13℃高い温風を出して暖かいと感じてもらうのは難しいですね」とのことだ。確かに、室温が0℃の部屋で13℃の温風を出した場合、暖かいと感じられるかは疑問である。冷房と暖房は、同列には扱えないようだ。


家庭の冷房の新たなトレンドとなる可能性も

 今や、エアコンの除湿機能に押され、市場が縮小している除湿機だが、コンビニクーラーにはこうした状況に風穴を開ける存在と言えそうだ。昨年の年間需要は50万台~60万台。まだまだ伸びる余地がある。コンビニクーラーの今後の進化を期待したい。





URL
  シャープ株式会社
  http://www.sharp.co.jp/
  製品情報
  http://www.sharp.co.jp/products/menu/plasma/conveni_cooler/

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2007/07/30 00:05

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