|
ナショナル 電気掃除機「MC-R7000JX」
|
現在発売されている掃除機は、紙パック式とサイクロン式の2種類に大別されるが、筆者は断然紙パック派である。もちろん、紙パック式よりも強力な吸引力があるとされているサイクロン式にも以前から興味はあった。
とはいえ、定期的なフィルター掃除が必要だったり、ゴミ捨て時にダストボックスから直接ゴミが出てくるため不潔そう、というイメージがあって、サイクロン式を試そうという気はあまり起こらなかった。吸引力が落ちるという欠点があるとしても、紙パックを捨てるだけでゴミ捨てが終わり、フィルター掃除もほとんど必要ない紙パック式の手軽さには勝てなかったわけだ。
しかし最近のサイクロン式掃除機は、フィルターの自動掃除機能が搭載されて長期間フィルター掃除を行なう必要がなくなっている機種が増えてきたこともあり、以前に比べると使い勝手が向上しているような印象を受ける。ゴミ捨てに関しては相変わらずのようだが、それでも捨てやすくするような工夫は施されているはず。
そう考え、一度サイクロン式も試してみることにした。選択したのは、ナショナルの「MC-R7000JX」。どうせ試すなら最新機種、それもフィルターの自動掃除機能などが搭載されたハイエンド機種しかないと考え、この機種を選択した。販売価格はヨドバシカメラで84,800円と、ハイエンド機種らしくなかなかの値段である。
● フィルター自動掃除とゴミの圧縮で吸引力を持続
MC-R7000JXは、さすがハイエンド機種と言っていいぐらい、たくさんの機能がてんこ盛りとなっている。その中で特に注目なのは、10年間フィルター掃除が不要とされているフィルターの自動掃除機能に、ダストボックス内に吸い込んだゴミの圧縮機能を組み合わせることで、吸引力の低下を防止する仕組みを実現している点だ。
サイクロン式掃除機の基本的な原理は、ダストボックス内に渦巻き状の気流を発生させてゴミを遠心分離するというものだ。
ただ実際には、遠心分離だけで完璧にゴミと空気を分離できるほどの気流を発生させることは難しく、分離しきれなかったゴミはフィルターによってキャッチしている。フィルターでゴミをキャッチするということは、時間が経つとフィルターが目詰まりして吸引力が落ちていくことになり、吸引力が低下する。そのため、サイクロン式の掃除機では定期的なフィルターの掃除が不可欠なのだが、これがけっこう面倒。そして、この問題を解消してくれるのがフィルターの自動掃除機能だ。
|
|
|
本体サイズは比較的大きく、重量も4.7kgとやや重いが、取り回しはスムーズだ
|
本体上部には、内部のゴミの貯まり具合やフィルタークリーニング中を示するインジケーターと、電源ケーブルの収納ボタンがある
|
本体内部。前方がダストボックスだ
|
|
|
|
ダストボックス後部のフィルターに、青い振動板が取り付けられており、電源を切るたびに左右に動いてフィルターに付着したゴミをふるい落とす
|
本体側の回転板が回転してフィルターを左右に動かす
|
ダストボックス上部のダイヤルが回転すると、内部の圧縮板が押し込まれゴミを圧縮する
|
|
|
|
本体のフタに用意されているモーターでこの部分が回転し、ダストボックス上部のダイヤルを回転させる
|
本体のフタに用意されているモーターでこの部分が回転し、ダストボックス上部のダイヤルを回転させる
|
このように圧縮版が下に押され、ゴミが圧縮される
|
フィルターの自動掃除機能は、昨今、サイクロン式のハイエンド掃除機でほぼもれなく搭載されている機能なので、もはや珍しいものではないだろう。サイクロン式掃除機の最大の弱点であるフィルター掃除の手間を低減するという意味でも、この機能の搭載はもはやサイクロン式掃除機になくてはならないものになっている。
しかしMC-R7000JXでは、単にフィルターの自動掃除機能を搭載するだけでなく、ダストボックス内のゴミの圧縮機能を組み合わせることで、たくさんのゴミを吸った状態でも吸引力の低下を防止し、常に優れた吸引力を維持できるように工夫されている。この点が、これまでの機種と大きく異なる部分だ。
MC-R7000JXでは、掃除機の電源を切るたびに、フィルター前に設置された振動板を動作させることによってフィルターに付着したゴミをふるい落とすのはもちろん、ダストボックス上部に設置されたプレス板が下に押し下げられ、ダストボックス内に貯まっているゴミを下部に圧縮するとともに、ダストボックスからの排出口に設置されているネットフィルターに付着したゴミもはがし落とす。これによって、次回利用時の空気の通り道を確保し、常に高い吸引力を持続できるというわけだ。
実際に利用してみると、電源を切るたびに10秒間ほどカタカタと音がする。この音は、振動板が左右に動いてフィルターを振動させゴミをふるい落としている時のもの。さらに最終段階で別のモーター音がするが、これはダストボックス内のゴミをプレス板で圧縮するときのものだ。横からダストボックスを見ていると、黄色いプレス板がゴミを下に押し下げている様子がはっきり確認できる。
筆者はMC-R7000JXが初めて利用するサイクロン式の掃除機なので、この仕様がどの程度の効果を発揮しているのか、比較するだけの材料を持ち合わせていない。そのため、具体的な効果のほどについては言及しないでおく。2日に1回の割合で掃除をしたが、1週間ほどゴミ捨てを行なわずに済んだ。この間、吸引力の低下を意識することが全くなかったことだけは付け加えておこう。
● 方式は違うものの、主な特徴は紙パック式ハイエンドモデルとほぼ同じ
フィルター自動掃除とゴミ圧縮機能以外にも様々な特徴がある。
まず、ヘッドに2本の回転ブラシを備える「ダブルドライブノズル」の搭載。これにより、じゅうたんの奥に潜んだゴミもしっかりかき出しつつ吸い込んでくれる。実際にラグを掃除してみると、これまでの掃除機では吸い切れていなかったのか、かなりのゴミを吸い込んでくれた。
また、ホースに配置されている赤外線センサーによって約20μmという微細なハウスダストの存在も見逃さない「ハウスダスト発見センサー」。センサーがゴミを関知するとランプが赤く光ったり点滅し、その場にどの程度のハウスダストがあるのかを目で確認しながら掃除できるのだ。実際このセンサーがあるおかげで、先ほどのラグもしっかり掃除できたし、ゴミが残っている場所も重点的に掃除できた。キレイになればランプが消えるため、無駄な掃除も省けて一石二鳥だ。これまで使っていた掃除機にはこの機能が用意されていなかったため、これは特に便利な機能だと感じた。
これら以外にも、ダブルドライブノズル部分を分離して小さなノズルでも利用できる2ピース構成のヘッドや、ノズル部分にマイナスイオン放出機構を盛り込むことでプラスに帯電したホコリを効率よく吸引し、拭き掃除に近い効果が得られる仕組み、排気口に用意された「メガアクティブイオン」発生器によってホコリやニオイ分子と結合して空気をきれいにする、といった特徴がある。
ちなみにこれらの特徴は、一足早く発売された紙パック式のハイエンドモデル「MC-P7000JX」に搭載されているものとほぼ同じ。紙パック方式、サイクロン方式と基本方式は異なるものの、双方ともハイエンドモデルということで、方式に直接関係のない点に関しては同じ機能がしっかり盛り込まれているというわけだ。
|
|
|
11:ホース、手元ブラシ、伸縮パイプ(伸びっこパイプ)、ダブルドライブノズル、すき間ノズルは、自由に組み合わせて利用可能
|
基本的な利用スタイルはこのような組み合わせとなる
|
ダブルドライブノズル裏面。2本のブラシとマイナスイオン発生器が用意されており、じゅうたんの奥のゴミもしっかり吸い取ってくれる
|
|
|
|
ダブルドライブノズルは先端部分を外して小さなノズルでも利用可能
|
手元ブラシ。ブラシ部分を収納することで先にパイプを接続できる
|
すき間ノズルは3段階に伸縮が可能
|
|
|
|
スイッチ部。自動ボタンを押せば、パイプの赤外線センサーが感知するゴミの量に応じて自動的に強度が変化する。センサーがゴミを関知すれば先端部分が赤く光る
|
赤外線センサーがゴミを関知する感度は、本体内のスイッチで3段階に設定可能
|
排気口にはフィルターが取り付けられており、排気風速を低減。またコンセント右に「メガアクティブイオン」発生器が用意され、排気のニオイも気にならない
|
|
|
先端部を本体に引っかけて立てて収納する
|
パイプを分離することで、コンパクトに収納することも可能
|
● 使い勝手はやはり紙パック式か
10日間ほどMC-R7000JXを使ってみて好印象を受けた点は、吸引力が落ちずに気持ちよく掃除ができるという点と、排気のニオイが全くしないという点に尽きる。
これまで使っていた紙パック式の掃除機では、ずっと排気のニオイに悩まされてきた。もちろん、紙パック式掃除機とはいえ、上位モデルの製品では排気のニオイが全く気にならないものも多く存在しているが、筆者が使っている掃除機ではそうではなかったこともあり、排気のニオイが全く気にならなくなったことは素直に嬉しく感じた。
吸引力が落ちないという点については、筆者がこれまでに使っていた紙パック式掃除機と比較してのこと。筆者が使っている紙パック式掃除機には、紙パックの目詰まりを解消するような機能は搭載されていないため、しばらく使っているとかなり吸引力が落ちてしまい、まだ容量的に余裕があっても紙パックを交換していた。それに対しMC-R7000JXでは、まだ10日間ほどではあるものの、使い始めと比較して吸引力が落ちたと感じることは全くなかった。
|
|
|
ダストボックスは、上部の取っ手を引き上げることで簡単に取り出せる
|
ダストボックス上部のプッシュボタンを押し込むと、下部のフタが開きゴミが落ちる
|
ゴミ箱の上などでフタを開くとゴミが落ちる。ただし、それだけでは完全なゴミ捨ては不可能で、内部にはかなりのゴミが残る
|
|
|
フィルターの自動掃除機能が用意されているとはいえ、ダストボックス側に付着したゴミはフィルターを外して行なう必要がある
|
細かな部分の掃除を行なうためのブラシが付属している
|
MC-R7000JXでは使うたびにゴミが圧縮されるということもあって、貯まったゴミもワンタッチでゴミ箱に落ちる。ただ、この機種単体というより、サイクロン式全般の問題だが、やはり、ゴミ捨てが面倒であることは変わりない。
ゴミの塊を捨てた後、ダストカップに残る細かなゴミの処理が面倒なのだ。たしかに、ゴミの塊を捨てて、それでおしまいにしてしまえば、10年間、メンテフリーで使えるのかもしれない。ただ、ダストカップに残った汚れもスッキリさせたいのが素直な心情だ。
筆者は、それまで使っていた紙パック式掃除機でダストカップに残った細かなゴミを吸い取って対処したが、1台で済ませるなら手でやらなければならず、非常に抵抗感がある。ダストカップをキレイにしようと思うたびに、このゴミ捨て作業をやらないといけないのかと思うと、優れた吸引力や、排気のニオイが全くないという利点も消し飛んでしまう。紙パックを使い捨てるという、エコやコストの観点を度外視すると、やはり、紙パックを取り出して捨てるだけの紙パック式の手軽さに一日の長があると言えるだろう。
筆者と同様に、おそらくこれくらいの高級機を買う層であれば、多少ランニングコストがかかっても手間のかからない紙パック式の方がいいと感じるのではないか。最近は、紙パックの目詰まりを防ぐ仕組みを取り入れていたり、排気のニオイのない紙パック式掃除機が増えていることを考えるとなおさらだ。
ちなみに、筆者が感じたMC-R7000JXの欠点はここだけ。長期間吸引力が落ちることなく快適に掃除ができる点や、排気のニオイが気にならないという点は、普及価格帯の紙パック式掃除機に勝る利点であり、ゴミ捨てさえ我慢できれば、ランニングコストがかからないという点も併せて十分魅力的な製品と言える。
そういった意味でも、サイクロン式掃除機のゴミ捨てに関しては、まだまだ工夫の余地がありそうだ。ダストカップそのものの掃除も含め、ゴミ捨ての手間がかからなくなれば、サイクロン式掃除機の魅力がグッと上がるはず。メーカーの皆さんにはぜひとも頑張っていただきたいと思う。
■URL
ナショナル(松下電器産業株式会社)
http://national.jp/
製品情報
http://ctlg.national.jp/product/info.do?pg=04&hb=MC-R7000JX
掃除機 関連記事リンク集
http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/cleaner.htm
■ 関連記事
・ ナショナル、10年メンテナンス不要のサイクロン式掃除機(2007/05/23)
・ 家電製品レビュー ナショナル「MC-P7000JX」(2007/05/16)
2007/07/05 00:00
- ページの先頭へ-
|