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EUPA「TSK-5109」
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今回ご紹介するのはヨーグルトメーカーである。我が家の近所は物価が安く、400gの低脂肪ヨーグルトが100円コンビニで売っている。味にこだわらず、コストだけ考えると自宅で作るメリットはほとんどない。でも、できれば美味しい、自分の口に合うものが食べたいところだ。
わたしは「安瀬平連峰ヨーグルト」というヨーグルトが気に入っている。美味しんぼ的に表現すると、酸味がきつくなくまろやかな口当たり、そして牛乳のうまみが詰まったヨーグルトなのである(たぶん)。製品は加糖と無糖があり(無糖は受注生産)、加糖のものは果糖を使っている。
ところが、「安瀬平連峰ヨーグルト」は、400g×6個で2,520円となかなか高級なお値段。さらに、生活圏内のスーパーやデパートに置いていないため、通販を利用するしかない。ヨーグルトの配送は冬場でもクール便を使うから、広島の牧場からの送料は1,000円近くもかかってしまう。送料も考えたら、400gのヨーグルト1個を入手するのに、586円もかかる計算になる。
そこで、考えたのがヨーグルトメーカーなのだ。「安瀬平連峰ヨーグルト」自体を種菌として、まったく同じ味は無理としても、似たような味のヨーグルトが自宅で作れたら、これはかなりのコストダウン。試してみる価値はあるだろう。
● カスピ海するか否か、それが問題だ~機種選びのポイント
というわけで早速、Amazon.co.jpのホーム&キッチンカテゴリで「ヨーグルト」を検索してみた。製品を比べてみるうち、選ぶポイントがいくつかあることがわかった。
箇条書きで挙げると、以下の4つだ。
・温度設定機能の有無
・タイマー機能の有無
・牛乳パックを発酵容器としてそのまま使えるかどうか
・牛乳パックが使えるものでは、対応する牛乳パックのサイズ
最初に目に付いたのは、「ケフィア、カスピ海ヨーグルトは作れません」と断っている製品が多いことだ。もしかして常識なのかもしれないが(わたしは知らなかったわけですが)、これは、乳酸菌によって発酵適正温度が違うためだそうだ。
あちこちのサイトの情報を総合してみると、通常のヨーグルトに使われているのはブルガリア菌・サーモフィラス菌・アシドフィラス菌・ビフィズス菌などで、発酵適正温度はおおむね40~45℃程度らしい。これに比べ、ケフィアヨーグルトの乳酸菌は25℃前後、カスピ海ヨーグルトの乳酸菌は20~30℃が適正温度だという。このため、設定温度が調節できない製品では、ケフィアやカスピ海ヨーグルトには対応していないのだ。
もっとも、ケフィアやカスピ海の発酵適正温度、20~30℃あたりというのは、東京などでは平均的な室温というか常温だ。カスピ海ヨーグルトを自宅で作るのが流行ったのは、室温で作れる手軽さが受けたことも理由の1つらしい。ただし、当たり前だが冬場は室温が下がり発酵に時間がかかるので、設定温度25℃前後のカスピ海専用ヨーグルトメーカーも市販されている。
以上を踏まえて機種を選んでみる。今回お目当ての「安瀬平連峰ヨーグルト」はケフィアでもカスピ海でもなく、一般的な乳酸菌の類のようなので、温度設定機能は不要そうだ。タイマーはあった方がいい。発酵が進むと酸っぱくなるわけだが、わたくしは酸っぱめの味が苦手なのだ。
また、発酵に専用容器を使う機種は、いちいち洗うのが面倒だ。牛乳パックでそのまま作る方が、雑菌が入る可能性も減るはずだし。それから、1Lと500mlの牛乳パック、どちらかではなく両方に対応するものがいい。最後に、値段はもちろん安い方がいい。
というわけで、選んだのがEUPAの「TSK-5109」だ。値段はAmazonで980円だった。安っ!!
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EUPA「TSK-5109」本体
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前面ダイヤル。購入時はタイマーとばかり思い込んでいたが、実はスイッチを入れた時間を忘れないようにするメモ程度の機能しかなかった
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付属のスプーンと牛乳パック用のフタ。ヨーグルト自体を種菌として使う場合は、このスプーンで計量して投入する。1Lの牛乳パックでも手を入れずに下まで混ぜられるよう、長い柄がついている
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● 作り方は超簡単
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種菌として使う、わたしが執着しているところの「安瀬平連峰ヨーグルト」(右)と、スーパーで購入した1L200円くらいの「特選北海道牛乳」(左)
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EUPA「TSK-5109」が届いたので、「安瀬平連峰ヨーグルト」クローン増殖計画にさっそく着手する。まずは取り扱い説明書(取説)を一読。ここで、タイマーだと思っていた本体前面のダイヤルが、ただの、止める時間を指し示すための単なる目印の役割しか果たさないことが判明。軽くショックを受けるも、なにしろ980円の製品なわけですぐ立ち直った。
さて、取説によれば、発酵時間により出来上がりの味がコントロール可能だという。目安としては、「まろやか(8時間)→普通(10時間)→酸味が強い(12時間)」。わたしは酸味が苦手なので8時間に決定。
以下、作業手順を紹介する。
1)まずは、付属のキャップとスプーンを熱湯消毒する。プラスチック製のため、鍋などで煮沸してしまうと変形のおそれがあるので避けるように、と取扱説明書には注意書きがあった。しばらく熱湯にひたしておく。
2)次に、用意した乳酸菌または種となるヨーグルトを牛乳に入れる。ヨーグルトを種菌に使う場合は、付属のスプーンで、牛乳1Lパックなら2杯、500mlパックなら1杯入れて、よく混ぜる
3)牛乳パックを本体に設置して電源を入れる。
作業は以上で終了だ。拍子抜けするほど簡単なのであった。あとは8時間待つだけ。
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フタとスプーンは熱湯消毒する。こういう時、ボッコボコに沸騰するティファールの電気ケトルは便利だ
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熱湯消毒したフタとスプーン、「TSK-5109」本体、種菌として使うヨーグルト、牛乳。用意するのはこれで全部。本体の透明なドーム状のフタをパカッと外し、四角い穴に牛乳パックを設置して発酵に適した温度に温めるという仕組み
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付属のスプーンでヨーグルトを計量する。1Lパックなら2杯、500ミリLなら1杯
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スプーンでよく混ぜる。ヨーグルト発酵に雑菌は禁物なので、1Lパックでも手を突っ込まなくてもいいよう、スプーンの柄はかなり長くなっている
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● できたーー!! 同じ味だよおっかさん!
8時間たって、牛乳パックを開けてみる。淡黄色のホエー(乳清)が少し分離して、ヨーグルトがゆるめに固まっている様子は、薄い出汁で炊いた高野豆腐のようだ(わかりにくいか)。
味は、8時間で止めたこともあり、たしかにあまり酸っぱくはない。でも、できたてでぬるいこともあり、元のヨーグルトと同じかというと、あまりぴんとこない。オリジナルと比べてみると、少しゆるい、つまり液体に近い感じだ。もう少し、発酵させた方がいいのかもしれない。8時間経過した時点ですでに夜の10時だったので、とりあえず味見をして、冷蔵庫に入れて一晩置いてみた。
正直この時点では、んーまあ980円のヨーグルトメーカーだし、牛乳もふつーの高温殺菌牛乳だしこんなもんかなと思っていた。
ところが、翌朝、というより昼近くになって牛乳パックを開けてみると、冷蔵庫の中で少し発酵が進んだため、オリジナルとほぼ同じ味になっていた。オリジナルとコピーを続けて食べても、味に敏感な人でなければたぶんわからない、そのくらいそっくりの味になっていた。すごい!
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8時間経過してスイッチを止めてフタを開けてみる。淡黄色の乳清(ホエー)が周囲に分離して、ゆるく固まっている
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右がオリジナル、左がクローン。写真だとわかりにくいが、クローンの方は発酵が足りないせいか、ゆるく泡立てた生クリームのように表面がつるんとしている。食べてみると、オリジナルに似てはいるがあまりぴんとこない味
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冷蔵庫に一晩置いて、いくぶん発酵が進んだらしい。見た感じはオリジナルとそっくり
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味もオリジナルとあまり違いは感じられない。クローンを作るという当初の目的は達成したと言っていいと思う。ただし、5℃の冷蔵庫内に置いて一晩でこれだけ発酵が進むということは、たくさん作ってもあまり日持ちがしないことを意味する
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もっとも、ヨーグルトを増殖させてあとは牛乳代だけで美味しいヨーグルト食べ放題というわけにはいかなかった。というのは、やはりヨーグルトを種菌として使うと、数世代で弱ってしまうため、結局種菌として新鮮なヨーグルトが必要なのだ。また、製品のヨーグルトと違って密封されていないため、クローンのヨーグルトは冷蔵庫に入れておくと、どんどん発酵が進む。
人数の多い家庭ならこの増殖技は十分使えると思う。しかし、我が家のように2人世帯では、オリジナルのヨーグルトもある程度の量がいちどに届く上、あまり持たないクローンを作っても食べきれないという結果になった。
ただ、980円で、オリジナルとほぼ同じ味になったことには本当に感動した。なにしろ安いので、ヨーグルトメーカーを使ってみたいという人は、お試し用に、高い機種を買う前に購入するのもありだと思う。また、お子さんがいる家庭では、発酵と温度の関係を身をもって学習する教材としても使えるのではないかと思う。夏休みの工作キットも1,000円くらいするものも少なくないので、夏休みの課題レポート用に購入してもいいのではないかと思った。
なお、わたしが「TSK-5109」を購入したのは2006年11月で、現在Amazonでは1,180円で販売されている。少し値上がりしたとはいえ、とりあえず試してみたいという場合には、お手頃な価格ではないかと思う。
■URL
EUPA(燦坤日本電器株式会社)
http://www.tsannkuen.jp/
製品情報
http://www.tsannkuen.jp/tkj/jsp/tkj_web/ProdPopWin.jsp?pid=261
2007/03/13 00:00
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