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第41回:「ユニバーサルデザイン」とは



 

パナソニックのななめドラム式洗濯機も、ユニバーサルデザインのひとつ。洗濯物が取り出しやすいよう、ドラムを斜めに傾けている
 家電製品を買い換えた時に、同じ機能の製品なのに、やけに使いにくいと感じたり、基本的な機能ですら操作に迷ってしまう……一昔前ならこのように感じることがありましたが、最近ではかなり少なくなりました。これは、最近の家電製品が、「ユニバーサルデザイン」という考えに基づいてデザインされることが多くなったからです。

 ユニバーサルデザインとは、性別、年齢、国籍、言語の違いや障害の有無などにかかわらず、誰でも簡単に利用できるように、製品や施設などの設計を行なうことです。英語表記「Universal Design」の頭文字を取って「UD」とも表記されます。現在では、ユニバーサルデザインの考え方は、不特定多数の人が利用する“もの”ほぼ全てで取り入れられていると言っても過言ではありません。

 生活家電におけるユニバーサルデザインのわかりやすい具体例としては、パナソニックの「ななめドラム洗濯機」が挙げられます。ドラムを斜めに配置することで、腰を曲げたりかがんだりせずに、楽に洗濯物を取り出すことができます。

 冷蔵庫では、ワンタッチで開けられるよう扉を電動にした東芝の「トリプル電動タッチオープンドア」機能や、レバーで簡単に棚の高さを簡単に調節できる三菱の「動くん棚」も、ユニバーサルデザインに該当するでしょう。冷蔵庫ではこのほか、奥のものも取り出しやすいように野菜室や冷凍室が引き出しになっていたり、容量を保ったまま高さを低くして女性でも扱いやすくした製品が多いですが、これもユニバーサルデザインの考えからデザインされたものです。

東芝の冷蔵庫に搭載されている「トリプル電動タッチオープンドア」機能。冷蔵庫や野菜室の扉が、ワンタッチで開けられる 三菱の冷蔵庫の「動くん棚」は、庫内のスライドを横に動かすだけで棚の高さが調節できる

ダイキンの「クリアフォース」は、加湿/除湿/空気清浄など多機能ではあるが、基本的には「おまかせボタン」1つで簡単に操作できる(写真の上半分。写真下の)ように細かいボタンも用意されている
 また、ダイキンの除加湿空気清浄機「クリアフォース」では、多くのボタンを隠して、「電源」と「おすすめ」の2ボタンのみを表面に配置したデザインとなっています。これも複雑な操作を強いず簡単に多機能を使いこなせるように工夫したという意味では、ユニバーサルデザインと言っていいでしょう。

 ほかにも、家電に付属するリモコンでは、ボタンの数を減らすとともにボタンのサイズを大きくしたり、色分けするといったことで、誰でも簡単に操作できるように配慮されたものが増えています。また、家電製品ではありませんが、シャンプーとリンスのボトルを見ると、シャンプーのボトルにだけ側面などに突起が付いていることがわかります。これは、目を閉じた状態でもシャンプーとリンスを区別できるようにするためです。

 こういったものが、ユニバーサルデザインの身近な例です。ごくごく限られた例ですが、どれも“誰でも簡単に扱える”というのユニバーサルデザインの基本的な考え方でデザインされていることがよくわかるでしょう。

誰でも公平に使える、事故につながらない……7つの原則

  ユニバーサルデザインの考え方は、米国のノースカロライナ州立大学で1980年代より発展しました。そして、同大学のユニバーサルデザイン研究所では、ユニバーサルデザインの基本原則として、以下に示す7つの項目を定義しています。


原則 ユニバーサルデザインの7原則
1 誰でも公平に使える
2 柔軟な使い方ができる
3 使い方が簡単で、すぐ理解できる
4 使う人に必要な情報がきちんと伝わる
5 使い方を誤っても重大な事故につながらない
6 少ない身体的負担で効率よく使える
7 使いやすい大きさや広さがある

 原則的には、これらをクリアしたものがユニバーサルデザインとなります。従って、単に「直感的に操作できる」だけの製品よりも、それに「安全」「使いやすい」といった要素が加わったものの方が、より簡単で、より多くの人が使用できるということになります。

 このような考え方が出てきたのは、以前は多くの企業が、製品の利用者として特定のユーザー像を一方的に決めつけて、そのユーザー像に合わせて製品をデザインすることが多かったからです。その特定のユーザー像として最も多かったのが、「健康で右利きの若い男性」というものでした。

 もともと特定の人のみが使用する製品であれば、そのような考え方でデザインされても問題はありません。しかし、家電のような不特定多数の人が使用する製品では、左利きの人や障害のある人、女性など、特定のユーザー像から外れる人にとって、大きな不都合が発生するのはもちろん、その製品を使えない場合もあって、不公平感も強かったのです。

 企業側の一方的な考えでデザインするのではなく、利用者の立場に立って、全ての利用者が簡単に使えるようにデザインすることが重要と考えるのが、ユニバーサルデザインの基本となります。

 

万人を対象とする点で「バリアフリー」とは異なる

 子供や年配者、障害者にやさしいデザインとしておなじみの「バリアフリー」も、ユニバーサルデザインに近い考え方です。ただし、ユニバーサルデザインは、子供や年配者、障害者などに対象を限定していない点が大きな違いです。年配者や障害者に配慮して、段差をなくしたりエスカレーターやエレベーターを設置することはバリアフリーです。しかし、単にエスカレーターやエレベーターを設置するだけではなく、誰でも扱いやすい場所に配置して設置することはユニバーサルデザインとなります。

 つまり、ユニバーサルデザインは、“万人を対象としたバリアフリー”と見ることができるでしょう。


【ユニバーサルデザイン】の、ここだけは押さえたいポイント

・性別や年齢、障害の有無などに関わらず、誰でも簡単に利用できるようなデザイン
・ワンタッチで扉が開く冷蔵庫など、家電でも導入例が多い
・年配者だけでなく万人を対象としている点で、バリアフリーとは異なる

200943日 初版




平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑 誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを 執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。
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