ヤマハ、電動アシスト自転車「PAS」2012年モデルの試乗会

~新モデル、子乗りタイプの小径車に乗ってみた
子乗りタイプの小径車をラインナップに追加した電動アシスト自転車「PAS」2012年モデル

 ヤマハ発動機は、電動アシスト自転車「PAS」2012年モデルの試乗会を、東京都新宿区の国立競技場にて、報道陣向けに開催した。

 街乗り向けの電動アシスト自転車シリーズ。2012年モデルでは、同社初となる子乗せタイプの小径車をラインナップに追加し、子育て世代向けの製品を強化した。また、通学・通勤向けの「PAS CITY M/PAS CITY L8」や、長距離走行向けの「PASナチュラLシリーズ」、幼児2人同乗基準をクリアした「PAS リトルモア/PAS Raffini L」はいずれもバッテリー容量が従来比で約10%アップし、走行距離を伸ばしている。

2012年モデルでは、子乗せ対応の4機種が登場した左から、幼児2人同乗可能な小径車「PAS Kiss mini(パス キス ミニ)」と「PAS Babby(パスバビー)」会場に展示されていた、幼児2人同乗可能な「PAS Raffini L」と「PAS リトルモア」

 新たにラインナップに加わったのは、幼児1人同乗可能な「PAS Babby(パスバビー)」と、幼児2人同乗可能な「PAS Kiss mini(パス キス ミニ)」。いずれも、前後輪に20型ファットタイヤを採用し、低重心で子供を乗せても安定して走行できるうえ、子供の乗せ降ろしもしやすいという。さらに、おしゃれに街中で乗れるよう、デザイン性にもこだわっている。

低重心のため、女性でも子供の乗せ降ろしがしやすいという

 フレームには、安心して子供を乗せられるよう、強度の高い「U型タフフレーム」を採用。また、安定してスタンドがかけられる「らくらく幅広スタンド」、手元操作でハンドルの回転を半固定できる「テモトデロック」、リアキャリア下部には足や衣類を巻き込みにくい「大型ドレスガード」、コントロールしやすい「スマートコントロールブレーキ(前)」などを備えている。

モデル試乗中の様子。子供を前後に2人乗せても、安定して走行していた子供の乗り心地に配慮した「スーパーエンジェルシート」。子供の成長に合わせて、ヘッドサポートとフットレストの高さを調整できる子供の成長後は、別売りのフロントバスケットに付け替えることもできる
スタンドは、安定して駐車できる「らくらく幅広スタンド」を採用したリアキャリアの下には、チャイルドシート装着時に、子供が手足や衣類を巻き込みにくい「大型ドレスガード」を採用し、子供に配慮している

 今回小径タイプの子乗せモデルを開発した背景には、ユーザー層の広がりや、健康、節約、環境への配慮などの意識の変化があるという。電動アシスト自転車市場は、1994年と2011年を比べると市場規模は12倍に拡大し、右肩上がりで伸長してきた。元々は、1994年にヤマハが他社に先駆けて初代PASを発売したが、当初のユーザーはシニア世代がターゲットで、近所の移動や買い物といった用途に限られていたという。

 だが、1998年には10万円を切るモデルが発売され、ユーザーは主婦層まで広がり、さらに2001年に発売した「PAS スマイル」では価格が7万円を切ったことで、若い子育て世代に浸透する起爆剤となったという。

1994年にヤマハが他社に先駆けて発売した初代PASはシニア世代向け。当時は鉛バッテリを採用し、車体重量は31kgと重く、希望小売価格は149,000円と高価なものだった1997年に発売したPASでは価格が10万円を切り、主婦層までユーザーが拡大した2001年には、価格が7万円を切るお買い得モデルが登場し、若い子育て世代に浸透する起爆剤となった

 電動アシスト自転車を巡る法整備も、普及を後押しした。2009年には、幼児2人同乗の3人乗り自転車が認められた。これにより、2001年には12%だった子乗せ使用率は、2009年には35%まで高まった。メインの用途は、近所への買い物や、幼稚園や保育園への送迎という。

 この流れをふまえて、同社では子乗せユーザーのトレンドを探るインタビューを実施。これによると、最近の子乗せユーザーには、小径モデルの電動アシスト自転車にチャイルドシートを取り付けて使うスタイルがトレンドであることがわかった。その理由として、おしゃれさやかっこ良さ、人と同じではないといった志向を満たすと同時に、扱いやすさ、安定感や低重心、駐車しやすさなどを叶えていることが挙げられている。

小径モデルの自転車にチャイルドシートを取り付けて子供を乗せるのがトレンドというおしゃれさと使い勝手の良さを両立

 さらに子育て用の電動アシスト自転車ユーザーは、7割以上が夫婦で共用しているため、車体を選ぶ際には、母親の好みだけでなく、父親の意見も反映されていることが明らかになった。

子育てモデルでは7割以上が夫婦共用安全性や使い勝手の良さだけでなく、ファッション性も重視される

 そこで「PAS Babby(パスバビー)」と、「PAS Kiss mini(パス キス ミニ)」では、夫婦で共有しやすいカラーを採用。また、チャイルドシートもカラーやタイプを11種より選べるようにした。なお同社のホームページでは、車体にシャイルドシートを取り付けた際の見栄えのイメージをシュミレーションできる。

PASの製品ページでは、「PAS Babby(パスバビー)」および「PAS Kiss mini(パス キス ミニ)」の車体と、チャイルドシートのカラーコーディネートのシュミレーションが可能チャイルドシートは、豊富なカラーバリエーション車体とチャイルドシートのカラーコーディネートが楽しめるほか、子供用ヘルメットもレッド、ブルー、ピンクの3色を揃える
PAS Babbyは、太いフレーム、タイヤ、バスケットを採用カラーはトロピカルオレンジ、マットブラック、スノーホワイト、グリッターピンク
PAS Kiss miniでは、子供の座り心地を重視した「スーパーエンジェルシート」や、乗り降りしやすい「オープンワイドタフフレーム」を採用。子供の成長やライフスタイルに合わせてオプションを組み合わせられるカラーはグリッターピンク、マットオリーブ、クリスタルホワイト、オニキスブラック
ヤマハ発動機 森本実SPV事業部長

 ヤマハ発動機の森本実SPV事業部長は、「昨今の厳しい経済環境において、電動アシスト自転車は数少ない成長市場。現在は日本で約43万台、欧州では、ドイツ、オランダを中心に70万台以上が販売されている。ヤマハは、1993年に世界で初めて電動アシスト自転車を開発し、他社に先駆けてきた。その根底には、地球を少しでもきれいな状態で、次世代に引き継ぎたい、という決意がある」と思いを語った。

坂道発進も軽やか! 小径タイプはまたぎやすく、漕ぎやすい

 試乗会では幼児2人同乗可能な「PAS Kiss mini」にトライ。 記者は小径タイプの電動アシスト自転車は初めてだ。乗ってみると、アシスト力は昨年試乗した26型の「PAS VIENTA(ヴィエンタ)」と変わらず、滑らかな印象だ。ちょっとした坂を登る時や、スピードを上げたい時にはペダルを少し強く踏むと、スッと車体が前 に進む。あくまでも自然な力でアシストしてくれるので、おせっかいな感じがしない。

左ハンドル部に位置する「デジタルメーター付きメインスイッチ」電源を入れたところ。バッテリー残量が十分なため、「FL」と表示されているギアは「1/2/3」の3段階から選べる
今回記者が試乗したPAS Kiss miniと同タイプのモデル。前後に20型のファットタイヤを採用しているバッテリーは容量8.9Ahのリチウムイオン電池。充電時間は約4.5時間で、最高44km走行できる

 特に、坂の上に向かって発進する際に、アシスト機能の良さが際立った。ギアを「3」に入れ、アシストモードはサポート力の強い「強」に設定。片方のペダルをぐっと踏み込んだ途端、軽やかに車体が前に進んだ。発進時のペダルの重さは、ほとんど感じられなかった。これはアシストのスムーズさに加え、タイヤが小さい分、膝を高く上げて踏み込む必要がないことも影響しているだろう。

 記者は普段、電動ではない18インチの小径車に乗っている。膝を高く上げず、軽くまたいで漕げるので、スカートなどを履いている時にも走りやすいからだ。これと同様のことが、PAS Kiss miniでも言える。

 小径車だから、ペダルを沢山漕がなければ前に進まないのではないかと思われるかもしれないが、実は「PAS Kiss mini」と「PAS Babby」の場合、ペダルを1度回した時に進む距離は、普通の26型の自転車と変わらないという。

 特に今のような暑い季節では、必死になってペダルを漕ぐ必要がないぶん、だいぶ楽に走れた。

 なお同社ホームページでは、PASが坂を登る際のアシスト力を実験したムービーを「PAS 激坂チャレンジ」と名づけて公開している。大阪府にある日本一の急坂国道「暗峠」と、東京都の都内で最も急な坂である「のぞき坂」を女性が登り、その模様を伝えている。

国内有数の急な坂を電動アシスト自転車で登る「PAS 激坂チャレンジ」の動画をホームページで公開実際に走ったのは、写真のような26度の急な坂道という





(小林 樹)

2012年7月3日 00:00