太陽電池/燃料電池/蓄電池を組み合わせたスマートハウス、仙台にオープン

~“3電池”をHEMSで自動連携。停電しても約1日分の電気が使える
スマートコモンシティ明石台

 積水ハウスは、太陽電池・燃料電池・蓄電池を組み合わせたスマートハウスを軸とした大型住宅団地「スマートコモンシティ明石台(あかいしだい)」を、宮城県の仙台市郊外にオープン。4月27日にまち開き式典を行なった。


太陽電池/燃料電池/蓄電池で商用電力を抑えた生活。停電時も発電・給湯できる

太陽電池、燃料電池、蓄電池を組み合わせた「グリーンファーストハイブリッド」住宅を展開している点が特徴。同社ではこれらを“3電池”と呼んでいる

 スマートコモンシティ明石台は、東日本大震災後としては同県で“最大級”を謳う、積水ハウスによる大型住宅団地で、街区の一部に、太陽電池・燃料電池(エネファーム)・蓄電池の“3電池”を搭載したスマートハウス「グリーンファーストハイブリッド」を展開している点が特徴となる。所在地は宮城県黒川郡富谷町明石台7-72-1。

 区画数は471戸で、うち2割程度がグリーンファーストハイブリッド仕様となる予定。第1期のグリーンファーストハイブリッドは7戸で、すべて売約済み。現在、第2街区以降の募集を受け付けている。グリーンファーストハイブリッド住宅の販売価格の目安は4,000万円~4,500万円。


グリーンファーストハイブリッド住宅の外観。パッと見では、普通の住宅と違いがわからないグリーンファーストハイブリッド住宅は今のところ7戸が建設されているスマートコモンシティ明石台の模型
グリーンファーストハイブリッド住宅の概略

 グリーンファーストハイブリッド住宅では、太陽電池・燃料電池・蓄電池に加えて、これらをバランスよく制御するホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)を搭載する。例えば日中の場合は、燃料電池を優先的に使用し、太陽電池の発電による売電量を増やす。電力消費が増える夕方から夜は、蓄電池から電力の供給を受けることで、商用電力の購入を減らし、電力使用量のピーク時間帯の電力需要を抑える。

 電力使用の優先順位は、(1)燃料電池、(2)太陽電池、(3)蓄電池、(4)商用電力の順番。蓄電池の充電には、電力供給に余裕があり、電気代が安価な深夜電力を使用する。

 燃料電池は新日本石油グループのENEOSソルテック製。太陽電池には、シャープの瓦一体型タイプを採用する。出力は3kW。蓄電池はGSユアサの鉛蓄電池で、容量は8.96Wh。1日分の電力が蓄えられるという。

燃料電池は新日本石油グループのENEOSソルテックの製品を使用
太陽電池はシャープの瓦一体型パネルを使用瓦に埋め込まれているため、パネルの位置がわかりにくい電力メーターも買電用と売電用が用意される
蓄電池はGSユアサの鉛蓄電池を使用。部屋のクローゼット内に収納されている鉛蓄電池の上に用意されているパワーコンディショナ

 また停電時には、“3電池”で自立運転する電力供給システムに自動で切り替わり、商用電力なしで電力の供給が可能となる。燃料電池では発電と給湯をともに行なうため、入浴もできるという。蓄電池の充電には、太陽電池の発電の余剰分を利用する。自立運転時は枠が黒いコンセントが通電する仕様となる。

 さらに、グリーンファーストハイブリッドシステムの稼働状況を“見える化”するサービスも搭載。商用電力の使用料や、太陽電池による発電量/売電量、燃料電池の発電量、蓄電池の残量などが、テレビやスマートフォンで確認できる。蓄電池の残り使用時間の目安も表示する。

停電時には自動で自立運転に切り替わる燃料電池はガスが止まっていなければ、停電時でも使用可能。発電と同時に給湯もできる
電力使用状況はテレビやスマートフォンで確認できる写真は太陽光発電の電力を売電しているところ。取材当日は曇りだったが発電できていた蓄電池の残量も確認できる
写真は停電時の電力使用状況。商用電力ではなく、太陽電池と蓄電池でまかなっていることがわかる停電時の蓄電池残量表示画面。推定残り時間や、太陽電池と燃料電池が発電しなくなった場合の残り時間も表示されるスマートフォンでも閲覧可能
自立運転時は、写真のような黒いコンセントに接続された機器が使用できる写真のような白いコンセントは、自立運転時は電力が供給されない
電気自動車に電力も供給可能

 このほか、太陽電池と燃料電池から、電気自動車のバッテリーの充電にも対応する。停電時でも電力供給が可能という。

 スマートコモンシティ明石台では、グリーンファーストハイブリッド住宅のほか、太陽電池と燃料電池を備えた「グリーンファーストプレミアム」住宅も展開している。スマートコモンシティ明石台全体が1年間に発電する電力量は、電力消費量の約1.7倍の2,508MWhになるという。さらに、近隣世帯に1,039MWhの出力供給も可能という。同社では「まち全体が発電所」としている。

 なお、電力網への負担を抑えるため、トランス(変圧器)を大きくしたり、電力網の線を大きくするなどの対応を、東北電力側と予め協議したうえで行なっているという。

屋外のケーブル差込口停電時でも電気自動車に電力が供給できるスマートコモンシティ明石台全体で、近隣世帯に1,039MWhの出力供給が可能という

通常より費用はかかるがニーズは高い。世の中の趨勢はオール電化よりも創エネ

積水ハウスの阿部俊則代表取締役社長兼COO

 まち開き式典には、積水ハウスの阿部俊則代表取締役社長兼COOが登壇。今後はグリーンファーストハイブリッド住宅を含んだスマートタウンを、茨城県古河市、千葉県市原市と四街道市、神奈川県横浜市、福岡県福岡市にオープンしていくという。

 「(グリーンファーストハイブリッドは)我々の環境への取り組みの集大成。いろんな機能を取り入れている。まず被災地から、という思いがあったためここ(明石台)からスタートするが、全国に展開し、エナジーフリーの暮らしを進めていきたい」

 阿部社長はまた、グリーンファーストハイブリッド住宅の価格について、「従来の住宅の水準よりも500万円ほど高い」としながらも、「グリーンファーストハイブリッド住宅から購入していただいている。思っている以上に要望がある」と、市場のニーズの高さを指摘した。

 さらに、オール電化住宅にしなかった点については、「我々はオール電化も燃料電池もやってきて、お客さんに選んでいただく形だったが、世の中の趨勢は『自分たちが発電する』ことに変わらざるを得ないと思う。グリーンファーストハイブリッドのリリース時期も、本来は2012年の春の予定だったが、急遽、去年の8月に前倒しした。世の中のニーズによって変わっていく」と説明。また、蓄電池の種類については、「今、安全で容量が大きい電池ということで鉛蓄電池を採用しているが、リチウムイオン電池についても検討している」とした。

 このほか、東日本大震災の被災地における住宅の需要については、「仙台は前年の2.3~2.5倍の受注がある。実は私も、震災当日は仙台にいて被災したが、すぐに復旧にスピードを挙げて取り組み、宮城県全体で営業や設計など人員要因を増やしている。福島県については、いわき市で復興需要が増えている」と話した。






(正藤 慶一)

2012年5月7日 00:00