三菱、インドにエアコン・半導体事業を拡大する新会社を設立

~世界有数の消費市場で“4兆円企業”復活を目指す

 三菱電機は、同社のインド拠点となる総合販売会社「三菱エレクトリック・インド社」を設立したと、12日発表した。

三菱エレクトリック・インド社のグルガオン本社がある建物首都ニューデリー近郊のグルガオンに本社を、インド南部の都市バンガロールに支店を設ける

 三菱エレクトリック・インド社は、同社のアジア事業を担う三菱エレクトリック・アジア社のインド拠点2支店を現地法人化した新会社。事業内容は、家庭用・業務用のエアコンをはじめとする空調システム、FA製品(ファクトリーオートメーションの略。工場の生産工程を自動化するシステムのこと)、家電や鉄道、自動車などの省エネ・高性能化に貢献するパワー半導体の3つが中心となる。

 本店はハリヤナ州グルガオン、支店はカルナタカ州バンガロール。資本金は5億ルピー(約9.5億円)。営業開始予定日は11月30日。従業員数は60名。出資比率は、三菱エレクトリック・アジア社が70%、三菱電機が30%。


エアコンはASEAN間の関税カットでコスト削減。パワー半導体は日本製

 事業のひとつである空調システム事業については、従来は日本、タイ、シンガポールから、インドの現地代理店に輸出販売する形態を取っていたが、新会社設立により、地域に密着した販売・サービス網を整備、強化する方針という。具体的には、従来は高所得者層をターゲットにした高価格帯機種を中心に販売してきたが、今後は中間層を視野に入れた製品を開発、投入する。また販売経路も、現地代理店経由に加えて、直販も拡大していく。

 三菱電機 常務執行役の 笹川隆国際部長は、インド市場に販売するエアコンを「マーケットにミートした製品を開発しなければならない」としたうえで、「三菱はタイにエアコンの生産拠点を設けており、タイからインドに輸出することで、生産・物流コストを抑え、関税もASEANのアーリーハーベスト(自由貿易協定が締結・発効される前に、関税の撤廃・削減を行なうこと)で無税化されている」と、コスト面の利点を強調した。なお、インドの空調事業におけるライバルはダイキン工業という。

空調事業は、家庭用、業務用、ビル用いずれも需要が伸長しているエアコンはこれまで高級ゾーンをメインターゲットとしてきたが、中級ゾーンも拡大していくという三菱電機 常務執行役 笹川隆 国際部長

 パワー半導体については、将来的には需要拡大が期待されることから、営業力を強化し販売規模を拡大していくという。すべて日本製のものとなる。

 このほか、電力や鉄道、昇降機(エレベーター)といった、現在展開中の社会インフラ事業についても、新会社がコーポレート機能を担うという。

 2009年度の三菱電機のインドにおける売上高は、全体の2.5%弱に当たる約250億円。2015年には、現在の3倍となる750億円へ高めるという。

パワー半導体事業は、現在は需要が低いが、将来を見越して強化されるFA(ファクトリーオートメーション)製品は、1年で10%以上のペースで伸長するという2015年度には、2009年度の3倍となる750億円の売上高を目指す


“4兆円企業”の復活には、世界有数の消費市場・インドの販売強化が必要

 笹川氏は、新会社設立の理由について、海外の売り上げを伸ばすことで、年間の連結売上高を4兆円へ引き上げたい狙いがあることを指摘した。

 「当社は2007年度に4兆円の売り上げを達成したが、その後はリーマンショックなどでかなり減らしている(2009年度は約3兆3千億円)。4月に就任した山西健一郎新社長も『なるべく早い段階で“4兆円企業”に戻したい』と発言しており、2013年には4兆円企業に復活したい。そのためには、海外売上高のポジションを高めていかなければならない」

 インドに重点を置く理由について、笹川氏は「BRICs(経済の発展が著しいブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国を指す経済用語)の中でも高いGDP経済成長率を維持している」とした。さらに、インドでは低所得層が減少し、その分、中間層・新中間層が拡大しており、将来的には世界でも有数の巨大な消費市場になる可能性があるという。

 「5~10年前は欧米の先進地域の売り上げが60~70%ほどの割合だったが、ここにきて欧米が50%を割り、逆にアジアやその他の地域が50%を越えた。今後、海外売り上げを伸ばすならば、注力地域は新興市場になる。特にインドは、2025年の1人当たりの実質消費で、ドイツを抜くであろうと言われている」(笹川氏)

三菱電機の売上高のグラフ(連結)。2007年度には4兆円を超えたが、リーマンショックにより2008年度、2009年度は対前年マイナスが続いているインドでは低所得者層が年々減少し、その分、中間層・新中間層の割合が高まっている2009年度の、三菱電機の海外売上高比率。アジアとその他の地域で50%を超える結果となった
三菱エレクトリック・インド社の山部真司社長

 三菱エレクトリック・インド社の山部真司社長は、インドという国“多様性”を指摘。「インドは言語、人脈、気候、商習慣、交渉スタイルも多様で、富裕層・中間層・低所得者層でも、商品を選ぶ価値観が異なる。(攻略には)強い基盤となる人脈を形成することと、お客様の求める商品を提供していくことが大事になる」と語った。






(正藤 慶一)

2010年10月12日 15:35