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パナソニックが国内65%のトップシェア! ホームエレベーターの工場を公開
(2015/6/11 13:57)
ホームエレベーター事業で2018年に100億
パナソニック ホームエレベーターは、6月10日、大阪府門真市において、同社の事業戦略を説明し、その中で2018年度には、ホームエレベータ事業で売上高100億円を目指すことを明らかにした。内訳は国内で90億円、海外で10億円を目指す。さらに、設立10周年記念モデルとして、「1608ジョイモダンS200V」を発売。旺盛なリフォーム需要に対応していく。
パナソニック ホームエレベーターの高野忠昭社長は、「当社は、国内ホームエレベータ市場において、約65%のシェアを持ち首位。小型エレベータでは約40%のシェアを持つ。今後、リフォーム、非住宅、海外という3つの観点から事業成長に取り組む」とした。
パナソニック ホームエレベーターは、2005年7月に、松下電工(当時)と、日本オーチス・エレベーターのホームエレベータ部門の合弁会社として設立。現在は、パナソニックの100%出資子会社となっており、今年7月1日に設立10周年を迎える。
戸建住宅向けのホームエレベータおよび福祉施設向けの小型エレベータを主力に展開しているが、約8割をホームエレベータが占める。これまでに、国内では累計6万台以上を販売。海外向けには、OEM供給し、日本オーチス・エレベーターを通じて「OTIS」ブランドで販売しており、累計1,500台以上の実績を持つという。
2014年度の売上高実績は70億円。国内が67億円、海外が3億円。国内向けには約3,000台のホームエレベータを出荷しており、そのうち8割が新築需要、2割がリフォーム需要だという。また、2015年度の売上高見通しは80億円。そのうち国内は76億円、海外は4億円を見込んでいる。
開発からアフターサービスまでのすべてを網羅
パナソニック ホームエレベーターの社員数は120人。全国8カ所の営業拠点を設置し、油圧式エレベータを生産する門真工場、ロープ式エレベータを生産する成田工場の2つの製造拠点を持つ。
「ホームエレベータの技術開発からアフターサービスまでのすべてを網羅したバリューチェーンを有しているのが特徴である」(パナソニック ホームエレベーター・高野社長)とした。
同社では、ホームエレベータの製品ラインアップとして、設置スペースや定員、デザイン、機能などの違いにより、16機種をラインアップ。さらに、ホームエレベータに乗りすぎ防止のための「量り機能」を搭載した小型エレベータとして4機種を製品化している。ロープ式大型ルームの「XLワイドV」がルーム内に樹脂・鋼板を採用している以外は、すべて木製ルームとしているのが特徴だ。
畳一畳サイズで、ピット深さ200mmに対応
今回新たに投入した「1608ジョイモダンS200V」は、畳一畳に納まる横長設計とし、さらに業界最小となる200mmピット深さを実現しているのが特徴。これまでにも畳一畳サイズの製品や、ピット深さ200mmの製品は個別に用意していたが、2つの特徴を兼ね備えた製品は今回が初めてだ。主にリフォーム用途での利用を想定しているという。
「従来のホームエレベータを設置する際には、最下階床下寸法として、約550mmが必要であり、一般的に床下地盤が450mm以上であることを考えると、床下地盤をさらに掘り下げ、地盤工事をする必要があった。だが、当社の製品では、ピット寸法を200mmとすることで、建設工事の省施工化を実現することができた。重機が入らないといった課題も解決し、建築日数が3日間短縮できる。また、一畳サイズで設置できることから、不要になったクローゼット部分などを利用して、エレベータを後付けすることができる」とする。
1608ジョイモダンS200Vでは、1,675mm×840mmのスペースに納まることから、一畳サイズ(1,820×910mm)の収納スペースをエレベータに置き換える提案も行なっていく。
「従来製品では、油圧ユニットを底面に設置する必要があったため、ピット深さが必要だったが、200Vシリーズでは油圧ユニットをコンパクト化するとともに、横面に配置できることから、ピット深さを極小化でき、さらに一畳のスペース内に、エレベータ本体と油圧ユニットを設置できる」という。
また、同社製品では、標準機能として、停電時などには近くの階に止まる「停電時自動着床装置」、異常停止した場合でもボタンを押せば少しずつブレーキが解除され、下の階まで移動して、自力で脱出できる「緊急時手動下方階着床装置」、ドアが閉まりかけたときにも人に当たるとドアを開く「ドア自動反転機能」を搭載。さらにオプションで人を感知して閉まりかけのドアを開く「マルチビームドアセンサー」を用意しており、ホームエレベータとしては高い付加価値を提供しているという。
ホームエレベータを設置する件数は2%以下だが、今後拡大を見込む
パナソニック ホームエレベーターでは、2018年度には売上高を100億円とする目標を掲げた。これは、2014年度実績の約1.5倍規模になる。
パナソニック ホームエレベーターの高野忠昭社長は、「ホームエレベータは、10年前には、年間1万台近い出荷規模があったが、一般エレベータの事故や、耐震偽装問題などが、ホームエレベータの需要にもマイナス影響を及ぼし、市場が半分にまで縮小した。だが、2011年度を底に右肩上がりの状況にある。今後は、ホームエレベータの需要が高まるとみている。現在、新築着工件数のうち、ホームエレベータを設置する件数は2%以下。私が子供の頃は、自家用車を持っている家庭が少なかったが、現在では多くの家庭で自家用車を所有している。それと同じように、近い将来にはもっと多くの家庭でエレベータを付ける時代がくるだろう」などとし、「今後は、リフォーム、非住宅、海外の3つの観点から事業を拡大する」と語った。
リフォームにおいては、リフォーム最適製品の品揃え、リフォーム政策店を通じた販売拡大により、2018年度には、2014年度比で2倍以上の売上高を目指す。
「個人相続税対策による多世帯住宅、資産運用のために併用住宅が増加しているほか、新築時に将来のリフォーム設置を見越しての建築などの動きがある。だが、リフォーム現場に行くと、様々な理由によって、エレベータ設置に至らないケースが出ている。上下貫通のエレベータ設置プランが作れない、建築工事が大変、基礎工事が難しいといった課題を解決できる製品を投入することで、リフォームにおけるエレベータ設置を加速させる」とした。
また、リフォーム時にエレベータを設置する際、どこに相談していいかわからないという声に対応するため、リフォーム相談室(0120-03-11020120-03-1102)を設置。さらに、三井住友トラスト・パナソニックファイナンスとの連携により、「ホームエレベーターリフォームローン」を用意。400万円をローンにした場合、月々の返済額が約3万円で済むという。
非住宅では、高齢者住宅や医療施設向け市場の拡大、パナソニック・コムハートとの連携強化により、サービス付き高齢者向け住宅への提供を強化。2018年度には2014年度比2倍以上の売上高を目指す。
「高齢者向け施設は今後増加するとみており、そうした需要にあわせて福祉施設向け特別仕様のウェルハートVを用意した。ルーム内をいつでも快適にできるナノイー発生装置や、万が一での停電でも安心できる停電灯、ドアに挟まれる心配がないマルチビームセンサーなどを装備している」とした。
そのほか、学校や保育所、幼稚園などの活用増加、寮や寄宿舎などでの活用増加にも対応していくという。
海外では、東南アジアの富裕層向け住宅市場における事業拡大を目指し、2018年度には2014年度比で3倍以上の売上高を目指す。「高級住宅は3階建てでエレベータを導入するといった動きがある。MADE IN JAPANならではの高品質、安全性を生かして、海外展開していく」と述べた。
出荷前に1,000項目の検査を実施
一方、同社では、大阪・門真市の同社工場の様子も公開した。
同社では、油圧式を生産する門真工場(大阪府門真市)と、ロープ式を生産する成田工場(千葉県成田市)の2つを持つが、それぞれに、カゴ、乗り場枠、ドア、構造材、駆動装置、制御装置、開閉装置、ケーブルといったエレベータ構成部材を、各専門サプライヤーで生産後、門真工場および成田工場に集約。一部部品を組み立てたのちに、各案件ごとに邸別発送し、現地で組み上げる仕組みをとっている。
工場では、1件ごとの仕様や寸法にあわせて、約120種類の部材のなかから、現場にあわせた部材選定をし、出荷検査を行なったのちに出荷する。また、心臓部ともいえる制御コントローラ(駆動コントローラ、扉開閉コントローラ)や安全装置は、門真工場および成田工場で組み立てる。ここでは約1,000項目の検査を行ない、正常に動作することを確認するという。
さらに、門真工場内に隣接する形で、パナソニック エコソリューションズ社全体の品質を評価する品質評価技術センターがあり、油圧式エレベータとロープ式エレベータの実際の製品を設置して、品質評価を行なっている。
門真工場の様子を写真で追ってみる。