パナソニック、テレビ不振で2012年度のCO2削減貢献目標を下方修正へ
■エコナビ搭載機種を世界90カ国、270機種に拡大
パナソニック 環境本部本部長の宮井真千子役員 |
パナソニックは、2012年度の環境活動への取り組みなどについて公表した。
2012年度のCO2削減貢献目標を、5,000万トンから、4,100万トンに下方修正した。この目標は2012年度を最終年度とする中期経営計画「GT(Green Transformation)12」で掲げていたもので、環境目標でも未達となる。
パナソニック 環境本部本部長の宮井真千子役員は、「テレビの構造改革の影響があり、2012年度は、商品においてCO2削減貢献目標を下回ることになる。しかし、2018年に1億2,000万トンの削減を目指すという方針には変更がない」とした。
また、「今後、パナソニックが目指す方向が単品からソリューションへと変化するなかで、どの商品で、どんな貢献をするのかということを見直しをしている段階にある。GT12で掲げた5,000万トンについては、達成時期はまだ明らかにできない」などとした。
なお、2018年度には1億2,000万トンのCO2削減貢献目標を目指している。
テレビなどの不振を理由として2012年度のCO2削減貢献目標を下方修正した | 2018年度に設定した1億2,000万トンのCO2削減貢献目標については変更されなかった |
さらに、これまで日本およびアジアに展開していたエコナビを、2012年度には世界90カ国で、約270機種に展開する予定であり、エコナビによる製品の省エネ化の推進も重要な取り組みとなることを示した。
エコナビを海外展開を拡大。2012年度には世界90カ国で、約270機種に搭載する予定だという | アジア各国でエコナビ訴求のキャンペーンも行なっている |
「各国の環境意識、生活スタイルには大きな差があり、それぞれの地域にあった形で、エコナビ機能をチューニングすることになる」という。
また、ブラジルでは、これまで30年の歴史を持つ電子レンジや薄型テレビを生産するマナウス工場と、2012年9月に稼働する冷蔵庫および洗濯機の最新鋭工場であるエスレトマ工場を、それぞれエコアイディア工場として環境配慮型の拠点に位置づける一方、シンガポールでは、環境配慮商品の比重を、2011年度の70%から、2012年度は80%に拡大する考えなどを示した。
ブラジルでの取り組み。ブラジルにある2つの工場を環境に配慮したエコアイディア工場に位置づける |
一方、2011年度の環境活動への取り組みなどをまとめた「エコアイディアレポート2012」を発行。その中で触れた環境活動の取り組み成果などについても言及した。
2011年度は、CO2削減貢献量は4,037万トンに達し、目標の3,700万トンを上回った。そのうち、商品における貢献量は、省エネで3,505万トン、創エネで282万トンの合計3,787万トン。また、生産活動では250万トンの削減となった。
2011年度においては、業界最高水準とする太陽光発電とリチウムイオン電池の組み合わせによる創・蓄連携システムや、消費電力、省資源、リサイクル設計の14項目の認定基準に適合したブルーレイディスクレコーダーの投入、蛍光灯型に比べて約60%の消費電力を削減したLED防犯灯などを投入したほか、再生樹脂、再生ガラスを使用した資源循環型製品として、今年2月から掃除機、炊飯器、洗濯機を、4月からは冷蔵庫をそれぞれ出荷。「資源循環型製品は、再生資源を使いながらも、デザインや風合いが優れており、商品から商品へと循環するモノづくりを加速するというコンセプトがお客様からも好評である」とした。
2011年度に展開した創・蓄・省エネ商品。太陽光発電とリチウムイオン電池を組み合わせた創・蓄連携システムや業界最高水準の発電量を実現した太陽光発電システム、LED照明などを挙げる | スマートフォンやデジタルカメラでは、製品の軽量化をすすめる |
さらに、スマートフォンでは従来製品に比べて約20%の軽量化を図ったソフトバンク向けの102Pや、デジタルカメラでは体積比で約25%の軽量化を図ったDMC-G3を発売したことにも触れ、「製品軽量化への取り組みは、様々な面で効果がある」と語った。
加えて、これまでパナソニックグループとして推進してきたエコキャップ回収プロジェクトでは、エコキャップ推進協会への寄付によるワクチンの調達支援や、再生バケツなどへの利用を行なってきたが、新たに冷蔵庫の庫内部品への採用を検討しているという。
資源循環の取り組みでは、投資入資源を減らし、資源を効率的に回収し、再生資源を活用するという基本的な姿勢を示しながら、「再生資源利用率は14.7%と計画を1.1ポイント上回った。廃棄物リサイクル率では98.9%と0.4ポイント計画を上回った」という。
これまで工場における廃棄物リサイクルに関しては、国内の工場においては99%以上のリサイクル率を達成していたが、海外の生産拠点では低いのが現状だった。「海外の生産拠点におけるリサイクルを徹底することで、全体のリサイクル率を引き上げることになる。海外拠点においても、工程ごとの廃棄物を見える化するといった活動を加速した」という。
循環循環の取り組みでは資入資源を減らし、資源を効率的に回収 | リサイクル率、再生資源使用率ともに、当初の計画を上回っているという | 工場における廃棄物リサイクルは、海外での取り組みを加速。欧州・中国においては99%達成しているという |
資源回収においては、兵庫県加東市パナソニックエコテクノロジーセンターにおいて、エアコンのコンプレッサモーターのネオジム磁石回収装置を今年2月から稼働。さらに、パナソニックエコテクノロジー関東では、エアコンのコンプレッサモーターとドラム洗濯機のモーターを対象としたネオジム磁石回収装置を導入し、資源回収向上へとつなげるという。
エアコンのコンプレッサモーターに内蔵されているネオジム磁石を回収する装置を今年2月から稼働している | 白物家電分野においても、再生樹脂・再生ガラスの使用率を向上 |
生産活動におけるCO2排出量削減では、2011年度実績で356万トンにまで削減。原単位では、2005年度を100とした場合に、82にまで改善することができたという。
ここでは、省エネルギー診断による対策の掘り起こしや、CO2イタコナ活動、省エネ・創エネトップランナー工場の推進、専門人材の育成などの効果があったという。
同社では、10カ国50工場以上で実施してきた省エネ診断によるエネルギー管理ノウハウをベースにした工場省エネ支援ツール「SE-Navi」を活用。これを国内11拠点、海外3拠点に展開して、工場におけるエネルギーの見える化を進めている。
「工程ごとのエネルギーの出入りをリアルタイムで計ることができるもので、さらにきめ細かい管理が可能となり、省エネの促進に寄与する。このノウハウをビジネスに結びつけるために、外販を開始している」などとした。
■関西電力と協議し「みなし節電」を実施
一方、節電の取り組みについても言及した。
同社では、2011年7月に、節電本部を設置。全社横断組織として、政府の要請などに対処。「工場・オフィス」、「働き方」、「家庭」といった観点から一元的な対策を推進してきた。
昨年夏の節電では、電気代で前年同期比10%減の実績を達成し、約2億5,000万円の電力料金を節電したほか、社員の家庭における節電も昨年8月には、前年同月比12%減を達成したという。
さらに昨年冬には、オフィスの空調温度を19℃に設定したほか、電力ピーク時間帯の暖房回避、在宅勤務と直行直帰の励行などに取り組んだ事例を紹介。「2011年冬における社員の家庭での節電量の約1%をLED電球に換算。大船渡市教育委員会に572個のLED電球を寄贈した。このアクションプランには今後も継続的に取り組んでいく」という。
同アクションプランでの節電量の申告者は1万1,920人で、従業員一世帯あたりの平均節電量は35.87kWh/月となった。
2012年夏の節電への取り組みについては、従来通り、「工場・オフィス」、「働き方」、「家庭」という観点からの取り組みを継続するほか、新たに関西電力との協議により、節電要請している電力会社に電力の買い取りを求め、買い取られた分を節電とみなす「みなし節電」への取り組みを行なうという。
これは北陸電力管内の同社生産拠点にあるコ・ジェネレーションシステムを活用し、関西電力管内へとみなし融通するもので、関西電力管内の約1.7%に相当する0.6万kWを対象に削減量を融通するという。
また、本社(門真地区)の勤務シフトとして、7月16日(海の日)、9月17日(敬老の日)、11月23日(勤労感謝の日)の3日間を出勤日とする一方で、8月の夏季休暇に加えて、7月21日~29日までの9連休を設定し、夏休み期間を2回とする。
「多くの電気が必要となる時期にまとめて休むことで、節電につなげることができる」としている。
なお、パナソニックは、あらゆる事業活動の基軸に環境を置くとともに、創業100周年を迎える2018年のビジョンとして、「エレクトロニクスNo.1の環境革新企業」を掲げている。
(大河原 克行)
2012年7月17日 00:00