パナソニック、北米市場で白物家電事業を本格展開へ

~大坪文雄社長が、2011 International CES会場で言及
パナソニック 大坪文雄社長

 パナソニックの大坪文雄社長は、北米市場向けにおいて、白物家電事業を本格化する考えがあることを認めた。

 米国時間の1月6日から、米ラスベガスで開催されている2011 International CESの会場において行なわれた共同インタビューの中で明らかにした。

 大坪社長は、「ここ数年の間に、サムスン、LG電子に対抗するような主力の大物商品の投入を考える必要がある」として、2009年3月の欧州市場への白物家電参入に続き、近い将来、米国市場でも白物家電事業を本格化させる考えだ。冷蔵庫や洗濯乾燥機、エアコンといった製品の投入が見込まれる。

 CES 2011の展示会場では、韓国のサムスン、LG電子が、スマートアプライアンスと呼ばれるようなネットワーク接続型の商品展示を行ない、それを利用した省エネ、環境配慮の提案を前面に打ち出していた。

 冷蔵庫や洗濯機がネットワークでつながり、それによって最適な制御を行なうというものだ。

 一方で、パナソニックは、国内市場を中心に電気製品が最適な省エネ環境を判断して動作する「エコナビ」を提案しているが、北米市場での認知度はゼロに近い。

 「サムソンやLG電子が提案しているスマート家電は、パナソニックのエコナビ商品であれば、単品レベルで同じようなことができると考えている。だが、北米市場ではエコナビが知られていない。それに対して、LG電子は北米市場での白物家電ナンバーワンというブランド力を活用して、これを提案できる。この差は大きい。知ってもらわなくては、LG電子のコンセプトを、我々のコンセプトに置き換えていくという提案もできない」と、北米市場における白物家電事業の出遅れに危機感を募らせる。

 現在、パナソニックでは、電子レンジなどの一部製品については、北米市場に製品を投入しているが、冷蔵庫、洗濯機といった主力製品は投入していない。

 「パナソニックは、いまから2年前に、白物家電を欧州で展開すると決めて、現在では、冷蔵庫、洗濯機といった主要分野でラインアップを強化した。また、ブラジルなどの新興国市場にも、生活研究をベースとして、機能を割り切った現地仕様の製品投入を展開しはじめている」と前置きし、「北米市場は、サムスン、LG電子といった強いメーカーがおり、価格競争は世界で最も厳しい。担当ドメインとも詳細を詰めなくてはならないが、個人的な意見としては、早く北米市場に白物家電を本格投入したい」と意欲をみせた。

 同社では、エネルギーの地産地消を視野に捉えた都市型コミュニティグリッド事業を推進。機器・システム・ソリューションのまるごと提案を切り口にしたスマートタウン構想にも取り組んでいる。

 「北米市場は、発電事業者と送電事業者が異なるなど、日本とは異なる市場環境にあり、それぞれの領域において、ケース・バイ・ケースで提携していく必要がある。送電を受けたAC、DCの電気を有効に活用したり、あるいはAC/DC変換を行ない、これを有効活用する家庭内エネルギーマネジメントを提案することにパナソニックの役割がある。ここに省エネ型の製品と、蓄エネ、創エネを組み合わせた提案を行なっていきたい」としており、白物家電事業の本格化も、コミュニティグリッド事業との連動を視野に入れたものになるといえよう。

 CESの展示ブースにおいても、日本市場向けに出荷されている白物家電のほか、エネルギーマネジメントの提案を行なっており、これも北米市場での事業拡大を意識したものとなっている。

パナソニックブースで展示された白物家電製品2009年に欧州市場向けに投入した第1号冷蔵庫および洗濯乾燥機

 一方で、ビルエネルギーマネジメントをはじめとするBtoB提案も加速する考えを示した。

 大坪社長によると、北米の大手総合アミューズメント企業との商談では、ビルの壁面全体にLEDを使用した大型ディスプレイを配置。パナソニックによるカスタマイズ対応によって、省エネ型の大型ディスプレイの運用が可能になったという。

 「この企業では、次のステップとして、ソーラーパネルによるエネルギーの創出や、ビルエネルギーマネジメントの領域でも相談にのってほしいという話がある。パナソニックでは、すでに地産地消型のエネルギーマネジメントの提案が可能になっており、しかも、これらは10年以上に渡る長期の商談になる。こうした取り組みを通じて、北米市場での存在感を高めたい」と、事業拡大に意欲をみせた。





(大河原 克行)

2011年1月11日 00:28