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大河原克行の「白物家電 業界展望」
欧州本格進出で描く、パナソニックの世界戦略

~パナソニック ホームアプライアンス社・榎坂社長に聞く
Reported by 大河原 克行

 パナソニックは、欧州市場に白物家電事業で本格参入を図る。欧州市場に対しては、これまでにも、エアコン、電子レンジ、掃除機などを販売してきた実績はあったが、冷蔵庫、洗濯機を投入することで、エアコンを含めた白物家電主要3製品が揃うことになる。また、これまで参入している中国向け、アジア向けの商品に加えて、欧州向けの商品を加えることで、世界戦略への足がかりを掴むこともできるという。

 「欧州への白物家電事業の本格参入は、そのままグローバル市場への本格参入と同義語になる」と語る、パナソニック株式会社 ホームアプライアンス社の榎坂純二社長に、パナソニックの白物家電事業への取り組み、欧州市場における勝算について聞いた。


パナソニック=エコを定着させたい

パナソニック株式会社 ホームアプライアンス社・榎坂純二社長
――いよいよ欧州市場に冷蔵庫、洗濯機を投入します。いま、どんな心境ですか。

榎坂氏: これまでにも欧州市場向けには、エアコンのほか、電子レンジ、掃除機、ベーカリー、温水暖房といった商品を展開してきました。ここに、冷蔵庫、洗濯機という主要商品を追加するわけですから、まさに本格参入といえる。エアコンは世界のどこに行っても、市場でも要求されるニーズはほぼ同じといえ、横展開しやすい。しかし、冷蔵庫や洗濯機は、地域ごとの特性が明確にある。日本やアジア向けの仕様をそのまま持っていっても受け入れられません。

 2009年度を最終年度とする中期経営計画GP3計画では、白物家電事業で売上高1兆円を目指している。2007年度実績で、初めて海外の売上高が、国内の売上高を超えた。しかも、海外市場はまだ成長の余地がある。現時点では、中国、アジアで海外売上高の7割を占めており、欧州、米国のほか、BRICsから中国を除いた「BRIs」は、ほとんどが手つかずの市場。今後は、海外での売り上げ拡大が、成長を牽引するのは明らかです。私は、長年、白物家電事業に携わっていますが、今回の欧州市場への本格参入は、まさにグローバル戦略のスタートを切る、大きな一歩だと考えています。

――なぜ、この時期に欧州への本格進出となったのですか。

榎坂氏: 経済環境は悪化していますが、生活必需品となっている白物家電に対する需要は比較的安定したものがある。当社の特徴を打ち出せる冷蔵庫、洗濯機分野での欧州進出は、むしろ、いまこそがチャンスだと捉えています。GP3計画でも、グローバルでの成長を柱の1つしており、欧州での白物家電事業の本格参入は、その点でも重要な意味を持ちます。欧州市場向けには、欧州のユーザーならではのニーズを反映した商品が必要です。これによって、日本向けのほかに、中国向け、アジア向け、欧州向けの商品を揃えることができる。中国、アジア、欧州という3つの基本タイプを持つことで、グローバル戦略を加速できる体制が整う。

 実は、欧州向けの商品は、ロシアや中近東、中南米といった地域の需要と合致する部分が大きい。つまり、欧州進出によって、他の地域にも打って出られる体制が整う。市場環境をよく吟味する必要がありますが、チャンスを伺って、これらの市場に冷蔵庫や洗濯機を投入していく考えです。欧州市場への白物家電本格参入は、そのままグローバル市場に向けた白物家電の本格参入と同義語だといえます。そして、もう1つ、重要なのは、当社が得意とする技術が、世界的に求められているという点です。


――それはどういう点ですか。

榎坂氏: いま地球規模で最大の関心事となっているのは「環境」です。とくに、欧州では環境に対する関心が極めて高い。そこに当社の技術を生かすことができる。例えば、当社が持つインバーターやセンサー技術、独自のななめドラム構造によって、節水や省エネの特徴が打ち出せる。冷蔵庫では、上位機では、業界で初めて欧州のエネルギーラベルでA++に格付けされた霜なし冷凍室を搭載しました。また、運転音も36dbと同クラスの商品に比べて約25%の静音性を実現している。

 一方、洗濯機も、インバーター技術、10度傾けたななめドラム構造、3Dセンサー技術を採用することで、高い洗浄能力を実現するとともに、洗濯時間が短く、使用水量も少なくできる。EUのA-20%エネルギーラベルに適合した省エネ性を実現していますし、自動的に電源が切れる設計も採用しています。こうした省エネ、節水といった環境に配慮した付加価値商品のゾーンにおける存在感を、この1年で高めていきたい。日本の省エネ技術とはこれだけ優れたものだ、そして、パナソニックといえばエコである、というイメージをしっかりと確立したいと思っています。


欧州ならではの要求に対応

--新製品を見ると、ななめドラムといっても、外見上は、水平ドラム方式のものと大差なく見え、日本で発売しているような斬新なデザインではありません。やや慎重な部分も見受けられますが。

榎坂氏:最初の商品ですから、まずは欧州市場のニーズをきっちりと捉えた商品開発が必要だと考えました。例えば、洗濯機は、キッチンの下に、前面がすっきり収まるように、奥行き60cmというサイズが求められる。ジーンズのように重たい洗濯物でも確実にたたき洗いができるように回転数をあげるといった工夫も行なった。また、冷蔵庫では高さはそれほど制限はないが、ステンレス性のものが人気が高いですから、それを考慮したデザインとカラーにした。


欧州市場向けに展開される洗濯機「NA-16VX1」
冷蔵庫「NR-B30FX1」

 それと堅牢性を感じるものでないといけません。もちろん、パナソニックの冷蔵庫や洗濯機の堅牢性には自信がある。大切なのは、堅牢性に優れているという実績だけでなく、それをデザインとして訴求できるものだということです。取っ手の部分を樹脂ではなく、金属にしたのも、欧州ならではの要求に対応したものです。商品企画に生かされた意見は、欧州の販売会社やディーラーの声を集めたものですが、私は、ななめドラムの使いやすさや、省エネ、節水などの環境配慮の部分だけは必ず特徴として盛り込んでほしいと要求してきました。

 今年4月には、ドイツ・ヴィースバーデン市に、欧州HA生活研究センターを開設します。ここで欧州の生活環境を徹底して研究し、白物家電商品の企画などに反映させることになります。成果が出るには1年以上はかかるでしょうが、より欧州市場に密着した商品開発ができるものと期待しています。まずは日本人の所長1人、ドイツ人2人の3人体制でスタートしますが、欧州各国ごとに求められるものが違っていますから、今後は、欧州HA生活研究センターの出先ともいえる人員を主要各国に配置して、国ごとの要求に応じた商品展開をしていくことも考えられます。

――欧州における事業規模は、どの程度を想定していますか。会見では、400億円規模の売上高を、5年後には倍増させるとしています。逆算すれば2013年に800億円ということになりますが。

榎坂氏: 事業としての存在感を持つには、最低ラインが1,000億円ということになる。800億円というよりは、切りがいい1,000億円を目標するのがいいのではと思っていますよ(笑)。

 初年度に、どのぐらいの勢いで立ち上げられるか、どの程度、景気の影響を受けるかといったことにもよりますが、来年度から始まる次期中期経営計画「ポストGP3」の最終年度となる2012年度には、1,000億円程度の規模を狙えるのではないでしょうか。シェアについては明確には言いにくいところもありますが、存在感を持つという意味では、プレミアム商品分野で2桁の市場シェア獲得は必要だと思っています。昨年秋のIFA以降、主要ディーラーの方々との商談や、商品説明会を開催させていただていますが、現時点での反応は極めていい。発売前の手応えとしては強いものを感じています。

 一方で、アジアおよび中国での存在感をさらに高めていくことも必要です。現在は、中国のプレミアム商品領域における主要3商品の市場シェアは20数%ですが、これを2012年度までに30%以上に高めたい。


ベースモデルの開発で効率化を

――欧州における事業拡大に向けた青写真はどうなっていますか。欧州での白物家電工場の建設計画もありましたが。

榎坂氏:まずは、限定された販売店での取り扱いでスタートし、その後、ブランド訴求、販売網の拡大、商品のラインアップ強化に取り組むことになります。3月には、ベルギー、フランス、ドイツ、オランダ、ポーランド、スペイン、英国の7か国で販売を開始し、4月には、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの3カ国、5月にはチェコ、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア、クロアチアの6カ国、9月にはイタリアでの販売を開始しますから、9月までに欧州17カ国での販売体制が整います。その後も販売する国を拡大したい。先ほど、お話ししたように時期を見て、ロシアや中近東にも打って出たいと考えています。

 まずは、冷蔵庫は中国・無錫で、洗濯機は中国・杭州でそれぞれ生産したものを投入しますが、現地生産も視野に入れていく必要はあるでしょう。ただ、冷蔵庫2機種と洗濯機3機種では、欧州に生産拠点を置くわけにはいきませんし(笑)、ラインアップの広がり、販売ルートの拡大にあわせて生産体制を検討していくことになります。欧州で生産拠点を稼働させるには最低でも年間30万台の規模が必要になりますから、いまの段階では、具体的な建設計画については白紙の状態です。


――いま、想定している冷蔵庫、洗濯機の機種数は。

榎坂氏:1年目の立ち上げがどこまでできるかによって、大きく変化するでしょうね。冷蔵庫を例にあげるならば、200L、300L、400L、500L、さらにサイドバイサイドと呼ばれる600~700Lといったように、能力別のラインアップが必要になるでしょう。さらに、それぞれに松竹梅といったグレードも用意しなくてはならない。これだけでも、15機種が必要になる。本格的に戦うには、この規模のラインアップが必要になるでしょうね。

――機種数の増加は、コストの増加や開発速度の低減につながりませんか。

榎坂氏: いま、商品ごとに共通化できるフレームワークを作り上げ、世界規模での共通部品の採用や量産効果によるコストダウン、商品開発のリードタイムの短縮を図る体制を整え始めています。2009年から2010年にかけて、これが完成する。

 世界的に共通化をしやすいエアコンでは、この考え方をいち早く採用し、フレームワークは、すでに5世代目になります。床置型と、壁掛方式の大型モデルおよび小型モデルといった3つのフレームワークを用意している。洗濯機はドラム方式と縦型方式の2つ、冷蔵庫は、サイドバイサイド型のほか、間冷式、直冷式があり、ワンドア、ツードア、多ドアというように、いくつかのフレームワークを用意している。

 こうしたフレームワークの上に、地域ごとの要求にあわせた機能やデザインを採用し、多機種での商品展開が可能となる。欧州においても、将来は国ごとの要求に仕様をあわせた商品展開をする際に、こうしたフレームワークの構築が大きく貢献します。フレームワークの活用によって、コストを削減し、商品化のリードタイムを大きく短縮できます。

――欧州市場での勝算は。

榎坂氏: 競合他社の商品を比較すると、負けているという商品はないと感じています。しかし、冷蔵庫、洗濯機では、新たに参入するわけですから、油断は禁物です。環境・省エネでナンバーワンであること、圧倒的に使いやすい商品であること、キラッと光る先進的な技術を持つことにこだわっていきたい。

 また、次のステップでは、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、掃除機、電子レンジといった商品を「群」として提供することも考えています。パナソニックが提供するこれらの商品群のすべてが、エコとUD(ユニバーサルデザイン)という観点で圧倒的に優れているというイメージを欧州市場に植え付けられればと思っています。





URL
  パナソニック
  http://panasonic.co.jp/

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2009/03/02 00:02

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