パナソニック電工、アジアを代表する“快適&エコ”企業を目指す

~2012年度までの中期経営計画を発表

 パナソニック電工は、2012年度に売上高1兆6,200億円、営業利益770億円、海外売り上げ比率22.5%を目指す中期経営計画を発表した。売上高では2009年度比11.1%増、営業利益は115.1%増となる。

 4月27日に大阪市内にて行なわれた2009年度連結業績の記者会見で、パナソニック電工の畑中浩一社長と、6月18日付けで新たに社長に就任する長榮周作副社長が同席、発表した。

 同社では、2018年度に創業100周年を迎えるのに合わせ、パナソニック電工が目指す姿として「アジアを代表する『快適&エコ』のグローバル企業」を掲げ、2018年度に売上高2兆円、海外売り上げ比率20%(4,000億円)、営業利益率で10%(2,000億円)を目指すことを示した。その上で、「2018年度までを3つに期間に分け、2012年度までを第1段階として、新たな成長に向けた起爆剤の充填期間と位置づける」(長榮周作次期社長)とした。

2009年度の連結決算の記者会見に出席した、パナソニック電工の畑中社長(右)と、長榮副社長(左)創業100周年となる2018年度には、2兆円の売上高となる挑戦目標を掲げる。その第一段階として、2012年度に売上高1兆6,200億円、海外比率で22.5%を目指す

 新中期経営計画では、5つの戦略を掲げる。

 まずは、2つのニューフロンティア(新規開拓分野)として、「AC&I(アジア、 中国、インド)市場の徹底攻略~ボリュームゾーンへの展開」、「新たな成長事業の育成~快適とエコのトレードオン」を設定。さらに、これらのニューフロン ティアに到達するための戦略として、「既存事業の利益成長~成長の原資となるキャッシュの確保」、「新結合による効果の最大化~社内外リソースの最適活 用」、「人財育成への積極投資~成長を支える逞しい人財の育成」の3点を挙げた。

2018年度の創業100周年に向け、アジア市場のボリュームゾーン展開など、5つの戦略を掲げる6月18日付けで社長に就任する、長榮周作副社長

中国やインドなど、海外向けボリュームゾーン製品を拡大


ミドルエンド層に向けても展開するなど、ボリュームゾーン向け商品を本格展開していくという
 AC&I(アジア、中国、インド)市場の徹底攻略では、これまでのアッパーミドル層を対象にしていた戦略から、ミドルエンド層を加えた層をボリュームゾーンも照準に据える。

 「ボリュームゾーン向け商品とは、こだわりと割り切りで基本機能に徹した商品、現地の風習ニーズにあわせた商品、現地においてリーズナブルな価格を実現する商品になる。例えばシェーバーでは、中国人の髭の特性にあわせて商品を開発し、ドライヤーやマッサージチェアでは中国人が好むデザインによる開発を行なう。これまでは1級都市だけが対象だったが、2級都市、3級都市にもターゲットを広げていく」(長榮次期社長)。

 また、インドではM&Aによって作り上げた基盤を生かしながら、総合電材メーカーとして配線器具や電路関連製品などを展開するいう。

 2012年度の中国における売上高規模は2009年度比で1.7倍、インドでは1.4倍を目指す考えを示した。

快適とエコを両立する商品を投入していくという。特にLED照明事業については、2015年度には1,000億円規模を目指すという
 新たな成長事業の育成では、“快適性”と“エコ”という、これまでは相反していた要素を、高いレベルでバランスした商品を投入する考えを示す。

 具体的な例では、2009年度実績で124億円だったLED照明事業を、2015年度には1,000億円の規模を目指すことを明らかにした。長榮氏は「LEDそのものは省エネの商品だが、そのまま使うとなるとまぶしい。配光技術の活用などにより、まぶしさを減らした快適な商品に改良するといった取り組みがここにあたる」とする。


事業部を再編。“ナノイーを下駄箱に入れる”といったシナジー効果を狙う


現在6つに分かれている事業本部を組み合わせることで、新たな製品を創出していくという
 さらに、既存事業の利益成長や成長の原資となるキャッシュの確保では、現在、6つに分かれている事業本部を2つずつ組み合わせて、新たな製品を創出する姿勢をみせた。

 具体的には、照明と情報機器を組み合わせた「エコエネルギー・マネジメント」、電器と住建による「エコウェルネス・ライフ」、電子材料と制御機器による「エコ・デバイス」といった領域がそれで、これらのシナジー効果によって、新たな製品を創出するほか、三洋電機を含むパナソニックグループとの積極的な連携、さらには同業種、異業種、政府機関などとの社外連携なども積極化させるという。

 「(パナソニック独自の除菌技術である)ナノイーを下駄箱に入れる、あるいはナノイーをお風呂に入れるといった融合のほか、家庭内で事故が起こりがちな階段などに、LEDを活用するといった提案も広がりにも取り組む」(パナソニック電工の畑中浩一社長)という。

 また、新結合による効果の最大化では、コスト競争力の強化、在庫削減、変動原価の低減、総費用削減などの取り組みを行なうほか、人財育成への積極投資では、2011年度からパナソニック電工アカデミーを社内で開講し、職制に合わせた教育をする考えなどを示した。

 長榮次期社長は、「日本国内では、住宅着工件数が縮小するなど、売り上げは横這いとみている。中期経営計画の達成には、中国、アジア、インドでの事業拡大が鍵になる」と語った。

リーマンショックで長期計画は未達も、新中期経営計画に自信


パナソニック電工の畑中社長
 畑中社長は会見の席上、約6年半に渡る社長在任期間を振り返り、「就任2年目に、2010年プランを打ち出し、売上高で1兆8,000億円、営業利益で1,500億円を目指したが、2007年の建築基準の変更、2009年のリーマンショックの影響を受けて、肝心の売り上げ、利益が達成できなかった」としながらも、「デバイス事業の拡大、国内商品の高付加価値化、ITを中心とした営業/経営インフラの確立といった点では成果があった」と話した。

 今後については、「2010年プランの計画を達成できなかったことは心残りだが、成長のための種を蒔いて、芽を出して、双葉になったところ。新たな中期経営計画は、成長に舵を切るものになる」と見通した。

 なお、2009年度の連結決算の結果は、売上高は1兆4,574億円、営業利益は358億円、純利益が85億円の黒字となっている。

2009年度の決算概要中国を中心に、海外の売上が回復しているという2010年度は、150億円の純利益を見通している



(大河原 克行)

2010年4月28日 00:00