パナソニック、中国・北京で環境フォーラムを開催

~大坪社長が出席し、日中間の環境協力を強化
中国・北京で開催された「パナソニック・中国環境フォーラム2009」

 パナソニックは、5月19日、中国・北京の北京リッツカールトンホテルで、「パナソニック・中国環境フォーラム2009」を開催した。共催はパナソニックチャイナ、中国日本友好協会。

 同フォーラムは、日中の民間企業における環境保護活動に関する協力関係について、各界の関係者と検討することを目的に実施するもので、パナソニックからは大坪文雄社長、大月均専務取締役、パナソニックチャイナ・城阪俊郎会長などが出席。中国側からは、環境保護部・李幹傑副部長、中国財務弁公室・楊澤軍局長、国務院発展研究中心・趙晋平副部長、中国日本友好協会・宋健会長などが出席。また、在中国日本国大使館・宮本雄二特命全権大使が出席し、全体会議およびパネルディスカッションを行なった。参加者は日中あわせて約300人。

 

会場となった中国・北京のリッツカールトンホテル
 フォーラムの開催目的としては、「社会各界との積極的な交流を通じ、環境保護活動の推進のあり方を探る」、「パナソニックグループの中国における新たな環境活動計画の発表」の2点が掲げられている。中国政府、研究機関、メディア、企業における環境専門家、技術者が集い、中国環境問題の現状と企業責任、地球温暖化対策、工場の省エネと生産性向上などの観点から、環境を切り口とした活動や、企業競争力の向上について討議し、資源節約型の環境に配慮した社会の建設に貢献することを目指すとしている。

 パナソニックでは、2007年9月に、「中国環境フォーラム2007」を中国・北京で開催するとともに、環境に配慮した企業経営を目指す「中国環境貢献企業宣言」を発表。具体的な取り組みとして、2007年4月から2010年3月までの3カ年に渡り、中国エコプロジェクトを開始し、高い環境性能を有する商品づくり、製造事業場における環境負荷低減、従業員の環境意識の向上とエコ活動の展開の3点から、中国の環境保護事業に貢献してきた経緯がある。

 また、2008年5月に来日した中国・胡錦濤国家主席は、唯一の公式訪問企業として、大阪府門真市のパナソニック本社を訪問し、中村邦夫会長、松下正幸副会長、大坪文雄社長らと面談。その際に、「中国の省エネ、環境保護分野における協力を積極的に展開し、日中互恵協力に新たな功績を果たして欲しい」と提案され、中国政府の呼びかけに応じる形で、今回のフォーラム開催につながっている。

パナソニックの大坪文雄社長

 午前9時から開始した全体会議では、パナソニック・大坪社長が登壇。「胡錦濤国家主席の要請に応えたいとの思いから、これまで以上に中国に溶け込み、直接的に環境貢献できる目に見える活動とはなにか、環境への取り組みを牽引する人材が中国で育つために、パナソニックができる活動は何かを考えてきた。創業者である松下幸之助は中国での事業を展開し、外資のモデル企業として中国の経済発展に努めてきた。新たな要請に対して、パナソニックは中国での環境貢献におけるモデル企業となることを決意している」と挨拶した。


中国日本友好協会・宋健会長

 また、中国日本友好協会・宋健会長は、「中国は、資源の欠乏、環境圧力が高まるといった課題を持ち、環境への貢献が求められている。省エネ環境保全において、パナソニックの英知を集め、積極的な貢献を期待する」と語った。


在中国日本国大使館・宮本雄二特命全権大使

 在中国日本国大使館・宮本雄二特命全権大使は、「麻生首相が訪中した際に、日中環境・省エネルギー総合協力プランを提唱したところであり、このフォーラム開催は、時期を得たもの。フォーラムを通じて民間企業の技術を紹介することで、成功体験を共有でき、中国の環境問題の解決に力を果たす」とした。

 さらに、国務院発展研究中心・趙晋平副部長は、「企業の環境責任は法外の状況にある。多国籍企業は環境に対して、先行した理念を持っており、環境責任履行のモデル企業になってもらいたい。また、パナソニックには、エコ産業の創出に力を発揮し、環境活動のリーダーになってほしい」などとした。


パナソニックチャイナ・城阪俊郎会長

 続いて登壇したパナソニックチャイナの会長であり、中国・北東アジア本部長の城阪俊郎氏は、環境に対する具体的な方針について説明した。

 「パナソニックでは、製品づくり、モノづくり、人づくりの3つの観点から、中国における環境活動に取り組む。製品づくりでは、全製品において省エネトップレベルの開発を強化し、中国政府が進めるエネルギー効率ラベルの対象商品では、全品目でのラベル取得を目指す。また機器の省エネに留まらず、創エネ、蓄エネ、エネルギーマネジメントにも取り組む。モノづくりでは、これまで培ってきた環境ノウハウを社会に開放し、工場技術者育成への活用を8月から開始。中国・杭州にあるパナソニックの製造技術学院や、北京の中日友好環境保全センター、および各地域での研修実施を予定している。理論のみならず、即実践可能な省エネの基本や、着眼点、具体的事例を習得することで、専門技術と実践力を持つ現場リーダーを育成する。そして、人づくりでは従業員のエコ活動を地域社会に広げて展開していく。パナソニックの事業場が所在する地域において、子供環境教育を10年間に渡り、合計100万人を対象に実施し、さらに植樹活動を10年間で100万本を実施することで、将来に向けた環境意識の醸成、自然環境の改善に取り組む」とした。

3つの取り組みから中国における環境貢献モデル企業を目指す創エネ、蓄エネを含めて、あらゆる分野から環境商品を中国市場に投入する
パネルディスカッションの様子

 また、午前10時過ぎから始まったパネルディスカッションでは、商務部研究院の王志楽主任をコーディネーターに、環境保護部・李幹傑副部長、中国財務弁公室・楊澤軍局長、国務院発展研究中心・趙晋平副部長など6人がパネリストとして出席。パナソニックの中国の生産拠点であるパナソニック万宝コンプレッサー広州(PWCG)の雷衛東総監も出席し、同社での環境における各種取り組みを紹介したあと、中国の環境問題と企業の役割、工場の省エネにおける生産性向上などについて意見を交わした。


環境保護部・李幹傑副部長パナソニック万宝コンプレッサー広州(PWCG)・雷衛東総監パナソニック万宝コンプレッサー広州(PWCG)の環境への取り組み

 パネリストの間からは、中国が世界最大のCO2排出国であることを前提に、今後大きな試練と挑戦が求められていること、その解決に向けては政府だけでなく、民間企業の努力や海外企業の協力が求められること、金融危機の回復にはグリーンエコノミーが鍵になることなどが提示された。また、パナソニックの環境への投資が、すでに収益につながっている点を指摘しながら、モデル企業としてノウハウを吸収する必要があること、今後も継続的なフォーラム開催を求める声も挙がった。

 1人5分間のコメントとされたものの、10分以上コメントするパネリストが相次ぐなど、白熱した議論が行なわれ、中国国内における環境に対する関心の高さを示した。

 コーディネーターを務めた商務部研究院の王志楽主任は、「パナソニックはこれまでの30年間、中国の近代化建設、電子工業化に大きく貢献してきた。今後30年間は中国の省エネ・環境分野のモデル企業として、中国に貢献することを期待している」と締めくくった。

 なお、同社では、2008年度の中国国内におけるCO2排出量目標を85万トンとしていたが、実績は74万トンと計画を大きく上回る結果となった。「中国におけるグループ各社が、高い目標に対して努力をした結果であるとともに、一部生産が落ちている部分も影響している」とした。

 2009年度においては、78万トンを目標としているが、昨今の情勢を捉えて、さらに削減する方向へ修正するという。





(大河原 克行)

2009年5月19日 17:15