長期レビュー
ダイキン工業「うるおい光クリエール MCK75L」 その1
●インフルエンザは落ち着いたが、実はまだまだ売れていた空気清浄機
今回レビューする、ダイキン工業の加湿空気清浄機「うるおい光クリエール MCK75L」 |
異常な暑さとなった夏もあっという間に過ぎ、季節はもう10月。いつの間にやら空気も乾燥しはじめ、朝夕もだんだんと肌寒く感じるようになった。読者の皆様は、風邪など引いていないだろうか。
さて、一般家庭での風邪対策として、昨年(2009年)のこの時期に人気を集めたのが「空気清浄機」だ。新型インフルエンザが世界的に大流行したが、これを受けて各社とも、インフルエンザウイルスの除菌効果を謳う機能を空気清浄機に搭載することで、売り上げが一気に伸びた。
具体的な数字を挙げれば、2009年10月の空気清浄機の販売台数は、対前年同月比で55.5%増の27万4千台、同年11月も対前年同月で33%増の28万台と、大幅に数字を伸ばしている(数値はすべて台数ベース。日本電機工業会発表のもの)。
そんな大流行した空気清浄機だから、今年はさすがに売れていないだろう……と思いきや、実は意外や意外、その今年に入ってもその好調さが続いている。例えば、6月は対前年同月で40.1%増、7月も同63.4%増と、花粉やウイルスのシーズンからは外れているものの、対前年を大きく上回っている。細かいことを言うと、8月は同6.9%の減少になっているが、これはエアコンや扇風機といった冷房機器に持って行かれた影響があるかもしれない。
ともかく、インフルエンザの流行はいったん終わりを見たが、空気清浄機の需要はまだまだ高いようだ。そこで今回の長期レビューでは、この秋から発売された空気清浄機の新商品を紹介したい。
●ダイキンを選んだ理由は (1)独特の空気清浄機構、(2)新しくなった加湿機能
今回選んだのは、表題の通りダイキン工業の「うるおい光クリエール MCK75L-W」だ。9月に発売したばかりの新製品で、同社のラインナップでは最上位に当たる高級モデルだ。適用床面積は最大28畳までで、ワイドリビングにも対応。加湿機能も搭載している。同社独自の除菌機能「光速ストリーマ」も付いている。
メーカー | ダイキン工業 |
製品名 | うるおい光クリエール |
品番 | MCK75L-W |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 45,000円 |
MCK75Lをチョイスした理由はいくつかあるが、簡単に言うと (1)空気清浄の機構が、他社とは異なるところ、(2)加湿機能が進化したこと、という2点が大きい。
(1)についてだが、ダイキンの空気清浄機は他社の空気清浄機とは一風変わった集塵機構を採用している。一般的なメーカーの空気清浄機だと、本体内に搭載した集塵フィルターと脱臭フィルターに空気を通すことで、ホコリや花粉、ニオイなどを取ったりする仕組みになっている。もちろんダイキンにだって、集塵フィルターや脱臭フィルターは備えているが、これに加えて「プラズマイオン化部」という装置を加えることで、ホコリや花粉が捕らえやすくなっているという。さらには、除菌・脱臭効果もある「光速ストリーマ」ユニットもあり、同社では空気をキレイにするための装置が合計6つ入った“6層構造”としている。
ダイキンの空気清浄機では、この“6層構造”を採用した製品はこれまでにも出しており、MCK75Lが初めてというわけではない。新機能というわけではないが、このように本体内に多くの空気清浄機能を搭載している点は、他社製品とは明らかに違う。今回改めてスポットを当ててみたい。
ダイキンの空気清浄機の内部構造。「光速ストリーマ(図では電撃ストリーマ)」をはじめ、合計6つの空気清浄装置が入っていることになる |
(2)の「新しくなった加湿機能」については、MCK75Lでは加湿機能が従来モデルからリニューアルされた。同社独自の除菌・脱臭技術「光速ストリーマ」が、加湿トレー内の水の細菌を除菌し、キレイな水で加湿できるほか、加湿トレーや加湿フィルターのメンテナンスの手間が省けるようになったのだ。加湿器、加湿空気清浄機を使ったことがある人なら、加湿ユニットには定期的な手入れが必要になるご存じのはず。その便利さを一度実感してみたい。
実はこのほかに、(3)としてタイミングが良かったということもある。空気清浄機の新モデルが発売されるのは、毎年だいたい9月~10月だが、MCK75Lは7月後半に製品発表、9月に発売というスケジュールだったので、検討~導入までの準備期間に余裕があったのだ。
なお、今シーズンの加湿空気清浄機の発売スケジュールは、ダイキンのほかパナソニックと三洋が9月1日、東芝と日立が10月となっている。業界で高いシェアを占めるシャープについては、10月8日の原稿執筆時点で新製品はリリースされていない。
というわけで、上記の(1)独自の空気清浄機能、(2)新しくなった加湿機能、(3)導入するタイミングが合っていた、という3つの条件に当てはまったダイキン工業の「うるおい光クリエール MCK75L-W」について、全3回に渡って紹介させていただこう。初回となる今日は、まずはとりあえず使ってみたファーストインプレッションについて述べてみよう。2回目では、その独特の集塵機能が他社とどう違うか、3回目では加湿機能について紹介する。
●やっぱり大きい本体も、風のパワーはトップクラス
我が家にMCK75Lが到着したのは、まだまだ残暑厳しい9月のある日。宅配便のおじさんが運んできたのは、ダイキンのロゴが付いたドーンと大きな段ボールケースだった。
箱から本体を取り出しても、まだまだデカいと感じる。何しろ、本体サイズが415×290×618mm(幅×奥行き×高さ)だから、体積は以前当レビューで紹介した、加湿+除湿機能搭載の空気清浄機「クリアフォース MCK65K」と、ほとんど同じだ。除湿機能がないのに同じサイズとは……正直、面食らってしまった。
本体を右側から見たところ。空気を吸い込むスリットが開いている | 本体右側からは、加湿ユニットが取り出せる。詳しくは第3回目で紹介する |
本体左側。基本的には右側とあまり変わらないが、写真上部の穴が開いた点々の部分がホコリセンサーとなる | 背面には何もない。壁にピッタリとくっつけても使えるという |
ただ、サイズに見合ったパワーは備えているようだ、スペック表の「風量」の欄を見ると、1分当たりの風量は1.0~7.5立方mとあり、同社では“業界トップクラス”としている。空気清浄機における風量とは、数値が大きいほど、空気を循環するスピードが早くなり、強力に空気清浄できるということになる。
他社のワイドリビング対応の加湿空気清浄機では、パナソニックの最上位モデル「F-VXF70」は1.2~6.8立方m、三洋電機の「ABC-VWK71C」は1.0~7.1立方mという数値になっている。MCK75Lの方が、よりパワフルで幅広い風を生み出せるということが言えそうだ。ちなみに、MCK75Lの適用床面積は最大28畳、F-VXF70とABC-VWK71Cは最大33畳となっている。
なお、室内の空気は、本体下部と左右から吸い込み、本体後部から上方向に放出する構造。床面に溜まりがちなハウスダストも吸引できるという。
●24時間運転で部屋の空気はいつも爽やか。新搭載「ecoモード」は静音にも効果
操作パネル。いろいろボタンがあるが、右端の「運転 入/切」ボタンで電源を入れれば、自動運転モードに移行するので、操作は簡単 |
まずは、空気清浄運転で稼働させてみよう。説明書に従ってフィルター類を本体にセットし、スタートボタンを押せば、「自動」モードで運転がスタートする。これは、通常は能力を抑えた静音運転で、ホコリやニオイをセンサーが感知した場合は、自動で強運転に切り替えるモード。風量は任意に5段階に切り替えられるが、普段使いなら勝手に調節してくれる自動で問題ないだろう。
このホコリ・ニオイセンサーの反応の早さはすごい。例えば、整髪料を使ったり、パンを焼くといったニオイが立つような行為をすると、すぐに風量をパワーアップし、大風量であっという間にニオイを取り去ってくれる。これは「クリアフォース」でもそうだったが、ニオイ(またはホコリ)にすぐ反応→大風量であっという間に清浄というのは、ダイキンの空気清浄機の伝統のようだ。
センサーが反応した際の強運転時は、さすがに「ゴー」という強い風の音が気になるが、静音運転に戻ると、まったくうるさくない。テレビの音も聞き取れるし、音楽鑑賞をしていても、特に問題はないだろう。
写真はホコリセンサー。緑は通常モードだが、色が赤に近づくにつれて、運転音が大きくなる | ニオイもすぐに検知し、大風量で清浄してくれるが、パンの香りまで反応してしまうのは玉に瑕。香りを楽しみたい場合は、電源を切るか、後述するecoモードにしておくのが良い |
写真の「eco」ボタンを押せば、消費電力を抑えてた静音運転に切り替わる。テレビやオーディオの音をしっかり聞きたい時には、これが便利 |
運転音を気にする場合には、「eco」モードがお勧めだ。これは、今年のモデルから搭載された新機能で、通常の自動モードでは、センサーの反応に合わせて、風量を「しずか/弱/標準/強」の4段階に切り替えるが、ecoモードは「しずか/弱」の2つのみ。パワフルな運転は難しいが、ホコリやニオイを検知しても強運転に切り替わらないので、ずっと静かに使うことができるのだ。
これは、本来は消費電力を抑えるためのモードではあるのだが、個人的には、テレビを見ている時、音楽を聞いている時、電話をしているときにとても便利だった。
ところで、“ダイキンは大風量だからうるさいんでしょ”というイメージを持っている人もいるかもしれないが、他社の高級ゾーンの空気清浄機よりも、決して運転音が高いわけではない。前述のパナソニック「F-VXF70」の運転音が18~54dB、三洋の「ABC-VWK71C」が21~54dBであるが、MCK75Lの場合は17~51dBと、むしろ若干静かな部類に入る。それでいて、1分間に7.5立方mというパワフルな風量も備えているのだ。実際に使い比べたわけではなく、あくまでスペック上の話ではあるが、各社とも意外と性能が違うのがわかっていただけるだろう。
手動で運転を切り替えているところ。順番はしずか→弱→標準→強→ターボ→花粉→自動。風量を可視化するため、ビニールテープを取り付けている。テープ同士が擦れてカサカサ音がする点はご理解いただきたい |
さて我が家では、在宅中も外出中も、ずっと自動モード、あるいはecoモードで運転している。導入当初は外出して家を留守にするたびに電源をOFFにしていたのだが、どうも帰ってくると、家独特のニオイだったり、空気がどんよりしているのを感じる。我が家はリビングに窓がなく、空気の入れ替えが難しいのだ。でも、MCK75Lを常時運転していれば、ニオイはないし、空気もフレッシュに感じる。
そういえば、衣替えで収納しておいた長袖の服を取り出したりもしたが、くしゃみが止まらなくなることもない。ウイルスに効果があるかどうかはわからないが、とりあえずは今のところは風邪を引くこともなく過ごせている。個人的には、使用していることによる効果はあると思っている。
もちろん付けっ放しにしておくことで、その分電力がかかるが、個人的には“せっかく導入したのだから活躍してほしい”という思いの方が強い。「しずか」運転時の消費電力は8W程度なので、そこまで電気代を食うということでもないだろう。
第1回目については以上だ。今回は空気清浄運転を軽く紹介させていただいたが、第2回目では、空気清浄の機構についてもう少し詳しくスポットを当て、ダイキンと他社がどう違う構造になっているかを見てみよう。
2010年10月12日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)