長期レビュー

三菱電機「霧ヶ峰 ムーブアイFit ZWシリーズ」

~センサー制御の威力を実感
by

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



 センサー技術で先端を行くエアコン「霧ヶ峰」のレビューの第2回は、センサー技術でどれだけ室内をムラなく冷やせるかについて述べたい。現在のエアコン市場のトレンド、なぜ霧ヶ峰を選んだか、設置工事については第1回をお読みいただきたい。

 霧ヶ峰の神髄はまず、なんといってもその高度なセンサー技術にある。今でこそ、「人を追うセンサーエアコン」は決して珍しい存在ではないが、そのセンサーにいち早く取り組んでいたのが三菱電機。「人」「床温度」「空間」の3つを認識し、冷やすべきところを冷やし、そうでないところは省く、という効率の良い冷房を行なうわけだ。

かならず「設置場所の設定」を

設置場所の設定スイッチ。電池の右上の溝にある

 まず重要になるのが事前の設定だ。設置位置を、中央、左寄り、右寄りの3つから選ばなければならない。この設定をしておかないと、センサーの機能を十分に活かすことができないのだ。リモコンの電池蓋の中に設定レバーが隠されている。ペンなど先の細いものでレバーを動かそう。右寄り、左寄りの判定基準は、エアコン本体の端が、壁から50cm以内かどうかを基準にする。我が家の場合、配管の関係上、右側の壁沿いに設置したので、そのように設定した。

 なお、この設定は設置業者の作業には含まれていなかった。もちろん、やってくれるケースもあるだろうが、いずれにしても冷暖房の効率を大きく左右する設定項目なので使い込む前に必ず、自分で確かめていただきたい。設定状況はリモコンの液晶に表示されるので、確認は簡単だ。

どれだけ人を追えるか

人、床、空間の3つを見るセンサー「ムーブアイ」

 それではさっそく、センサー制御の威力を確かめてみよう。センサー3大機能のうちの1つ目、まずは「人」を追う機能だ。

 人追う機能には、大きく分けて2つの効能がある。風を直接、人に当てるかどうかを選べる点と、室内にいる複数の人に合わせた空調ができる点だ。

 人に風を当てるかどうかを選べる機能は、もっともシンプルに、センサーの恩恵を肌で感じられる機能だ。リモコンには「保湿風よけ」「快速風あて」と2つのボタンが割り振られていて、わかりやすい。ただ風あて、風よけ、ではなく、それぞれのメリットについて「保湿」「快速」と、端的に表現されているのも好感が持てる。

 「風あて」モードにすると、おおよそ10~20秒くらいで認識し、自分のいる場所を認識し、風を当ててくれる。動きにぴったり追従する、というほどではないが、たとえば一人がソファに座り、もう一人がキッチンで立ち仕事、なんてケースには十分対応するだろう。逆に、走り回る子供に対して常時冷風を当てる、といったところまでは難しい。

 非常に便利なのは、体が冷えてくると自動的に風が弱くなること。いる場所だけでなく人の温度も見ているからだ。暑い中帰ってきて、「風あて」モードにしてたら、途中で寒くなって慌てて「風よけ」に切り替える、なんてことがないように配慮されている。我が家では常時、「風あて」モードで使っているが、特に寒いと感じたことはない。いいことずくめである。

 もう1つ、触れておきたいポイントが足下が冷えすぎないこと。冷房といえば、強くすればするほど足下だけが冷えがち。ところがこのエアコン、相当強めに冷やしても足下だけ冷えるということがない。これについては後述する床温度もからんでくるだろうが、センサーが効いていることだけは間違いないだろう。

モニタ左端には、今、どの部分に風を送っているかを表すランプがついている本体右側の温度表示は「現在の体感温度」を意味する

冷房ではその効果がいまいちわかりにくい「床温度」

 次は「床温度」だ。しかしこの機能、本当の威力を発揮するのは冬場の暖房時だろうと考えている。人と床温度を検知して、すばやく足を暖める、という使い方だ。というわけで、冷房時にはなかなか体感で実感しにくい。

 そこで、以前使っていた2005年に4万円で購入した10畳用の廉価な機種と比較テストをした。

 28℃設定、自動運転で1時間運転した後、エアコンから3mの位置の床の温度と、同じ場所に置いた高さ1mのテーブルの上の気温を測り、その差を出した。つまり、いかに足下を冷やしすぎないか、というテストだ。

 結果は、旧機種がテーブル27℃、床24℃と、3℃、床が低かったのに対し、霧ヶ峰の方はテーブル28℃、床27℃と、差は1℃しかなかった。つまり、足下がより冷えにくいということが言える。もっとも、これは床温度のセンサーだけでなく、フラップによる気流制御の効果もあるだろう。

 後は冬場、どれだけ頭ではなく足下を暖めてくれるかだが、今回は検証していない。



抜群の効果「空間認識」


リモコンは大きめ

 今回、テストした中でもっともその効果に驚いたのが空間認識センサーだ。これは部屋の形状を記憶し、壁や窓、ドアなど温度変化が起きやすいポイントを認識して、必要であればそのポイントを重点的に冷やす、という機能だ。

 このエアコンを購入した理由は、前に使っていた機種のパワー不足が原因だった。12畳のLDKなのだが、エアコン設置場所から一番遠く離れたキッチンに全く冷風が届かないのだ。食器棚など邪魔しているものが冷えない一因であることは間違いない。が、それ以上に根本的なパワー不足と、センサーがないため、キッチンまで冷やそうとするとエアコンに近いリビング側が寒くなるという問題があったのだ。

 そこで今回の霧ヶ峰なのだが、先に書いた人の認識と空間認識を組み合わせて、難しい問題にうまく対処してくれる。もっとも印象的だったのが、キッチンへの壁となっている食器棚の方向にはまったくといっていいほど風を送らないこと。食器棚をすり抜けるように、人がいる奥の空間に向かってピンポイントで風を送っていることが肌で確認できた。その証拠に、食器棚のフタ表面の温度は29℃だったのに対し、もっともエアコンから遠い、キッチン下の棚の表面温度は26℃だった。いずれも同じ材質である。


新しいエアコンは「室温」から「体感温度」のコントロールへ

リモコンは大きめ
 実は今回、レビューするに当たって非常に困惑したことがある。それは、部屋のエリアを細かく分割して、気温変化を計測しようとしたのだが、結論から言うと誤差程度の差しかなかったのだ。実際に気温計測をすると、実は部屋のどのポイントでも大きな差はない。

 ではセンサーは意味がないのかと言えばそうではない。センサーは「体感温度」のコントロールをしているのである。同じ気温でも風が当たれば涼しく感じるし、風を当てなければ低く感じる。遠くにいれば風を届け、近くにいれば優しく当てる。「室温」ではなく「体感温度」のコントロールこそが、今時のセンサーエアコンなのだと実感した次第だ。

 最終回となる次回は、気になる省エネ性能や細かい使い勝手、そしてよくある疑問について答えたい。

使用頻度の高いボタンは大きく、そうでないものは小さくデザインされている湿度と温度を別個に制御できるのも特徴フタを開けた中にあるのは使用頻度が低いボタン



その1  /  その2  /  その3



2009年7月15日 00:00